出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話615 国際経営会、『猶太研究』、増田正雄

前回も挙げておいたが、宮沢正典の『増補ユダヤ人論考』によれば、同じく本連載で言及してきたように、ナチス文献の翻訳が盛んになる一方で、昭和十年に入ると、ユダヤ関係の出版物も激増していった。そして従来の一般雑誌に加えて、ユダヤ問題専門の雑誌も…

古本夜話614 ヘンリー・フォード『世界の猶太人網』と包荒子

前回、長野敏一が挙げたユダヤ人問題書として、ヘンリー・フォードの『世界の猶太人網』があったことを示しておいたが、世界の自動車主のフォードこそがユダヤ人陰謀論の冠たるイデオローグだったのである。 本連載160などでふれた宮下軍平の二松堂書店か…

古本夜話613 ゾンバルト『ユダヤ人と資本主義』、長野敏一、国際日本協会

前々回に続いて、もう一冊ゾンバルトの戦前の翻訳があるので、これにもふれてみたい。それは昭和十八年に長野敏一によって訳された『ユダヤ人と資本主義』で、出版社は国際日本協会である。奥付に「訳者略歴」が見えているので、それを記すと、「大阪出身、…

古本夜話612 ゾラ『金』、博文館、大鐙閣

前回、ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』収録の「経済史の自然的基礎」というフランス産業史の発展から、ゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」の諸作品を想起し、それにゾンバルトの『恋愛と贅沢と資本主義』を重ね合わせてしまったことを記した。 (…

古本夜話611 ゾンバルト『三つの経済学』と『恋愛と贅沢と資本主義』

前回はふれることができなかったが、ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』の第四編は「経済史の自然的諸基礎」と題され、意外なことに中国やアジアではなく、一七八九年以後のフランス産業の発展をたどることから始められている。そこでウィットフォー…

古本夜話610 ウィットフォーゲル『東洋的社会の理論』

本連載582などで、『新独逸国家大系』やナチス関連書のことを書いてきたけれど、日本評論社は多くの研究書や学術書も出していて、ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』もその一冊で、訳編者は平野義太郎と森谷克巳である。美作太郎は『戦前戦中を歩…

古本夜話609 山田静雄、小壺天書房、春陽文庫

もう一社、戦後の小出版社にふれてみたい。前回の『風雪』の参照のために、中村八朗の『文壇資料十五日会と「文学者」』を読んでいたら、小笠原貴雄と大学や同人誌『辛巳』を同じくした山田静雄という人物が出てきた。おそらくこの山田が実質的に小笠原の遺…

古本夜話608 文芸誌『風雪』、風雪社、小笠原貴雄『風雪』

前回、六興出版社の大門一男が文芸誌『風雪』の発行を引き受け、それに専念しようとしたことを、清水俊二の『映画字幕五十年』を通じて記しておいた。 その『風雪』だが、これは『日本近代文学大事典』に立項されている。それは意外に長いもので、この『風雪…

古本夜話607 清水俊二と六興出版社

これも日本評論社とは関係ないけれど、本連載585と586でふれた六興出版社(部)のことが判明したので、少しばかり飛んでいるが、ここで書いておきたい。その後身の六興出版社も同599に出てきたばかりだからだ。同586でエドマンド・ウィルソンの…

古本夜話606 山本茂美『葦』、大和書房、青春出版社

戦後のことが続いてしまうが、人生論雑誌に関して、もう一編書いておきたい。それは『人生手帖』に先行する雑誌として、『葦』があり、それにもふれておくべきだと思われるからだ。『葦』についても、『戦後史大事典』に立項があるので、こちらも引いてみる…

出版状況クロニクル103(2016年11月1日〜11月30日)

出版状況クロニクル103(2016年11月1日〜11月30日) 16年10月の書籍雑誌の推定販売金額は1079億円で、前年比12.1%減。 書籍は499億円で、同15.1%減、雑誌は579億円で、同9.3%減。 雑誌内訳は月刊誌が464億円で、同8.5%減、週刊誌が115億円で、同12.3%減…