2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧
前回、杉捷夫編訳『メリメ怪奇小説選』を挙げたが、この中に「ヴィーナスの殺人」が収録されている。これは『プロスペル・メリメ全集』第三巻所収の「イールのヴィーナス」を改題したものである。 (『プロスペル・メリメ全集』) この杉捷夫訳「イールのヴ…
『プロスペル・メリメ全集』のほうは『ボードレール全集』と異なり、全六巻を架蔵している。これも六隅許六=渡辺一夫装幀で、渡辺も第二巻の「エトルリアの壺」や「雙六将棋の勝負」などの訳者であるけれど、同巻には左翼から転向後の水野成夫が「シャルル…
河出書房は昭和九年の『バルザック全集』に続いて、十年には『モーパッサン傑作短篇集』、十三年には『ボードレール全集』、『プロスペル・メリメ全集』を刊行するに至る。(『バルザック全集』)(『モーパッサン傑作短篇集』) (『プロスペル・メリメ全集…
前回のクルティウスの『バルザック論』は昭和十七年九月刊行だが、それに先行して、同年一月に中央公論社から杉山英樹の『バルザックの世界』が上梓されている。これはA5判並製で、『バルザック論』の装丁や造本に比べ、地味な一冊であるけれど、日本人によ…
河出書房における昭和九年と十六年の二度に及ぶ『バルザック全集』の刊行は、他に外国文学としての例を見ていないはずで、それだけバルザックが読者を得ていたことを意味しているのだろうか。それとも単なる焼き直しの金融出版と考えるべきなのか、その判断…
前回の河出書房の『新世界文学全集』の翻訳企画へと結実していく伏線は、それまでに刊行されていた、主としてフランス文学の個人全集などに胚胎していたのではないだろうか。 その先駆けは昭和九年に刊行された『バルザック全集』だったように思われる。これ…
河出書房は昭和十年代になって、本連載628や783で既述しておいたように、多くの全集類の刊行を始めている。しかもその特色は外国文学の翻訳に顕著だ。それはこれまでもふれてきたが、河出書房が社史や全出版目録を刊行していないので、詳らかな経緯と…
本連載785で、『阿部知二自選集』にふれ、河上徹太郎の証言を引き、同787において、昭和十年代半ばの「間違ひなく売れる」四人の作家の一人としての阿部の『北京』を紹介しておいた。他の三人は島木健作、石川達三、丹羽文雄だが、島木は正続『生活の…
前回、阿部知二の『北京』において、支那が有史以前のゴビ砂漠にたとえられていることにふれ、それで閉じた。 実はそれから数日後、まったく偶然に浜松の時代舎で、ゴビ沙漠学術探検隊編『ゴビの沙漠』を見つけ、購入してきたばかりなのである。つまりここで…
昭和十年代半ばには本連載でふれてきた実業之日本社や河出書房だけでなく、多くの日本文学シリーズが刊行されていたし、驚くほどの売れ行きを見ていたのである。 本連載767の『道徳と教養』の中で、河上徹太郎は「昭和十四年度文壇の回顧」において、本年…
18年4月の書籍雑誌推定販売金額は1018億円で、前年比9.2%減。 書籍は538億円で、同2.3%減。 雑誌は480億円で、同15.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が393億円で、同15.7%減、週刊誌は87億円で、同16.2%減。 返品率は書籍が35.2%、雑誌が46.6%。 雑誌返品率の改善…