2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧
やはり本連載541で、前回の田中貢太郎編『桂月随筆集』と同様に、相馬御風著『一茶随筆選集』も人文会出版部から刊行されていて、それを所持していることを既述しておいた。タイトルと「著」に齟齬を感じさせるが、その「緒言」を見ると、「この度人文会…
本連載541で、人文会出版部の田中貢太郎編『桂月随筆集』を所持していることにふれておいた。桂月に関しては先に同223「大町桂月編著『文章宝鑑』と『書翰文大観』」で言及しているが、この『桂月随筆集』は田中の「冤言」が大正十四年十月末日の日付…
前回のカポーティの『冷血』とほぼ時代を同じくして、アップダイクの『カップルズ』(宮本陽吉訳)が刊行され、日本でもほどなくして翻訳された。それは前者が一九五〇年代末のアメリカ郊外の犯罪をテーマとするノンフィクションだったことに対し、後者は六…
これは前回挙げた植村鞆音の『直木三十五伝』(文春文庫)でもふれられているが、直木=植村宗一は人間社の破産の後に、こりることなく、またしても出版社を興している。それは元泉社で、直木は大正七年から十二年にかけてのそれほど長くない年月の間に、春…
本連載540において、小説家の水守亀之助が随筆社と人文会出版部の経営に携わり、植村宗一=直木三十五が冬夏社で企画し、青野季吉に翻訳させたロープシンの『蒼ざめたる馬』が、この両社からも出されていたことを既述した。 『蒼ざめたる馬』 この時代に…
(毎日新聞社版) しかしこれらの話法(ディスクール―引用者注)はそれだけで、それぞれの異質性によって、一つの作品や一つのテキストを形づくっているのではなく、様々な話法を通して、話法どうしの、独特の闘争、対決、力関係、戦闘を形成しているのである…
前回、人文会出版部からヴァイニンガーの『性と性格』が片山孤村訳で刊行されていることを既述した。これは入手していないが、同じく片山が大正十一年に文献書院から上梓した『現代の独逸文化及文芸』は手元にあるので、ここで続けて書いておく。しかし原著…
さてここでようやく人文会出版部に関して語ることができる。私が所持している人文会出版部の刊行書は、前々回のバアク『美と崇高』の他に、田中貢太郎編『桂月随筆集』、相馬御風著『一茶随筆選集』の二冊である。前者は大正十四年に『明治大正随筆選集』第…
続けてコミックの『団地ともお』や『ヒミズ』を取り上げてきたので、三回連続となってしまうが、ここでもう一編を追加しておきたい。それは山上たつひこ原作、いがらしみきお作画『羊の木』全五巻である。この作品もまた古谷実『ヒミズ』と通底する「不幸のD…
前回バアクの『美と崇高』を刊行した人文会出版部にはふれず、訳者の村山勇三の関係から、同人誌『主潮』や鷲尾雨工=浩の冬夏社に話が進んでしまった。ところがこれも定かに把握できないのだが、人文会出版部と冬夏社も同時代の出版社として関係があり、前…
これは『資本論』などと異なり、前世紀の一冊だが、新渡戸稲造の『武士道』にエドマンド・バークの『崇高と美の観念の起原』も出てくることを、本連載535で既述した。 バークに関しては『増補改訂版新潮世界文学辞典』に簡潔な立項があるので、それをまず…
出版状況クロニクル94(2016年2月1日〜2月29日)16年1月の書籍雑誌の推定販売金額は1039億円で、前年比4.5%減。 その内訳は書籍が540億円で、前年比0.1%増、雑誌は498億円で、同9.1%減、そのうちの月刊誌は398億円で、8.0%減、週刊誌は100億円で、13.2%…