2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧
前回、天佑社のゾラ『貴女の楽園』の巻末広告に、やはり三上於菟吉訳『怖ろしき夢魔』『苦き歓楽』、松本泰訳『アベ・ムウレの罪』が既刊として並んでいることにふれた。また『近代出版史探索Ⅵ』1176、1179で、『怖ろしき夢魔』が『獣人』として、改造社の「…
これも三十年ほど探していたゾラの三上於菟吉訳『貴女の楽園』を入手した。同書は『ボヌール・デ・ダム百貨店』の初訳で、大正十一年に天佑社から刊行されていたが、かつては数年に一冊しか古書市場に出ないという稀覯本で、古書価も数万円すると伝えられて…
ゾラの渡辺俊夫訳『陥落』をようやく入手した。これも二十年ほど探し求めていた一冊だったが、『近代出版史探索』193で推測しておいたように、やはり「ルーゴン=マッカール叢書」第十九巻の『壊滅』に他ならなかった。『陥落』は次のように始まっている。 ラ…
昭和円本時代に特価本業界も世界文学全集に類する出版を試みていて、それは中央出版社の「袖珍世界文学叢書」である。その一巻は昭和五年刊行の『ゾラ集』で、そこには『生の悦び』と『呪はれたる抱擁』の二作が収録されている。それに言及する前に、まずは…
もう一冊『女優ナナ』がある。それは大正十五年に大谷徳之助を発行者とする日本橋区蠣殻町の三水社から刊行されている。四六判並製一九八ページの一冊で、クロージング部分はナナの死と「伯林へ、伯林へ、伯林へ!」で終わり、前々回の永井荷風の『女優ナナ…
最近になって、前回の永井荷風訳『女優ナナ』と異なる二冊の『女優ナナ』を入手している。一冊は『近代出版史探索Ⅵ』1179でリストアップしておいたように、大正時代に入っての最初の「ルーゴン=マッカール叢書」の翻訳で、本間久訳として、大正二年に東亜堂…
『近代出版史探索Ⅵ』に、ゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」の出版、翻訳、訳者に関して、十編ほど収録しておいたが、その後さらに六冊入手したので、それらも付け加えておきたい。だがその前に永井荷風『女優ナナ』の出版をめぐる一編を書いておかなければ…
みすず書房の元編集長加藤敬事の『思言敬事』(岩波書店)を読み、教えられることがあったので、それを書いてみたい。 加藤はその「出会った人々のこと」の章において、「翻訳者素描」を試み、最初に大久保和郎にふれている。大久保の名前は『近代出版史探索…
前回、新潮社の「海外文学新選」のポルトガル文学の編集兼訳者として、笠井鎮夫の名前を挙げておいた。だがこの笠井には外国文学者としてのプロフィルの他に、もうひとつの側面があり、それは『日本近代文学大事典』の立項にも見えている。 笠井鎮夫 かさい…
21年9月の書籍雑誌推定販売金額は1102億円で、前年比6.9%減。 書籍は659億円で、同3.8%減。 雑誌は442億円で、同11.1%減。 雑誌の内訳は月刊誌が372億円で、同12.1%減、週刊誌は70億円で、同5.6%減。 返品率は書籍が31.6%、雑誌は41.2%で、月刊誌は40.6%、週…