出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1483 今田謹吾『陶器の鑑賞』と『編輯著述便覧』

前回、第一書房と花森安治の暮らしの手帖社が伊東胡蝶園と片山廣子を通じてリンクしているのではないかと既述しておいたが、花森に関してはもう一つのミッシングリンクとおぼしき人物もいるので、それも続けて書いておきたい。その人物は『近代出版史探索Ⅴ』…

古本夜話1482 『美しい暮しの手帖』と片山廣子『燈火節』

本探索1478で、第一書房の長谷川巳之吉と『暮しの手帖』の花森安治がともに伊藤(伊東)胡蝶園と関係があり、また花森の大政翼賛会を通じて、長谷川と面識があったのではないかという推測を既述しておいた。そのような想像をたくましくさせるのは、前回の片…

古本夜話1481 片山廣子訳『シング戯曲全集』

「川田順自叙伝」とある『葵の女』はタイトルが象徴しているように、自叙伝というよりも、徳川の娘を始めとし、「老いらくの恋」に至る川田の女性遍歴、それも遠回しな「ヴィタ・セクスアリス」と読むこともできる。それは川田が明治十五年に、宮中に近い東…

古本夜話1480 『短歌文学全集』と『吉井勇篇』

第一書房の「戦時体制版」には川田順の『幕末愛国歌』と『定本吉野朝の悲歌』の二著が入っている。 川田といえば、最近「『定本川田順歌集』と『老いらくの恋』」(『古本屋散策』234、『日本古書通信』連載』)を書いたこともあって、「川田順自伝」とされる…

古本夜話1479 野口米次郎『歌麿北斎廣重論』

前回、「野口米次郎ブックレット」の第十三編『小泉八雲伝』を取り上げたばかりだが、続けて静岡のあべの古書店で、もう一冊見つけてしまった。ところがそれは「同ブックレット別冊」と表記された第七編『歌麿北斎廣重論』で、四六判のブックレットとは体裁…

古本夜話1478 円本としての「野口米次郎ブックレット」と『小泉八雲伝』

野口米次郎に関しては『近代出版史探索Ⅱ』372、『同Ⅵ』1131ですでに取り上げているが、後者では昭和十八年の春陽堂『野口米次郎選集』にふれた際に、第一書房「野口米次郎ブックレット」のタイトルだけを挙げ、後述するつもりだと記しておいた。浜松の時代舎…

古本夜話1477 第一書房と「戦時体制版」

第一書房はバアル・バック『大地』三部作のベストセラー化と併走するように、昭和十二年の日中戦争の始まりと翌年の創業十五年を機として、「戦時体制版」を刊行していく。まずは昭和十三年十月に杉浦重剛謹撰『選集倫理御進講草案』、高神覚昇『般若心経講…

古本夜話1476 アンドレ・マロウ、新居格訳『熱風』

最近になって浜松の時代舎で、新居格の翻訳をもう一冊入手した。それは『近代出版史探索Ⅴ』892で書名を挙げておいたアンドレ・マロウの『熱風』で、昭和五年に『近代出版史探索Ⅱ』365などの先進社から刊行されている。 『熱風』はマロウという表記、及び「革…

古本夜話1475 スタインベック、新居格訳『怒りの葡萄』

パアル・バック『大地』の訳者新居格はもはや忘れられたジャーナリスト作家、評論家だと思われるが、『日本近代文学大事典』にはほぼ二段、半ページに及ぶ立項が見出される。それを要約すれば、明治二十一年徳島県生まれ、七高、東大政治家卒業後、『読売新…

古本夜話1474 パアル・バック『大地』と深沢正策

第一書房が新潮社、改造社に続いて、前回の『文藝年鑑』の版元を引き継いだのは、昭和六年の『セルパン』の創刊、及び拙稿「第一書房と『セルパン』」(『古雑誌探究』所収)で書いているように、同十年の春山行夫の招聘による総合雑誌としての成功によるこ…

出版状況クロニクル188(2023年12月1日~12月31日)

23年11月の書籍雑誌推定販売金額は865億円で、前年比5.4%減。 書籍は493億円で、同2.9%減。 雑誌は372億円で、同8.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が313億円で、同9.2%減、週刊誌は58億円で、同4.2%減。 返品率は書籍が34.0%、雑誌が42.2%で、月刊誌は41.0%、週刊…