出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話737 桑名文星堂とロストウツエフ『古代の南露西亜』

前回の『シベリヤ年代史』が刊行された昭和十九年に、やはりロストウツエフの『古代の南露西亜』が坪井良平、 本亀次郎訳で、京都の桑名文星堂から出版されている。函の有無は不明だが、並製の菊判四二〇ページ、初版二千部、定価は十二円五十銭で、千ページ…

古本夜話736 日本公論社とシチェグロフ、吉村柳里訳『シベリヤ年代史』

大東亜戦争下において、その大東亜共栄圏幻想の拡大とパラレルに、この時期にしか刊行されなかったと思われる翻訳書を見ることができる。そのような一冊として、前回の『蒙古社会制度史』と同じく、シチェグロフの『シベリヤ年代史』も挙げられる。 しかもこ…

古本夜話735 ウラヂミルツォフ『蒙古社会制度史』

本連載725でドゥルーズ/ガタリ『千のプラトー』において、原注に『蒙古社会制度史』が挙げられていることにふれた。幸いにしてその『蒙古社会制度史』を入手できたので、ここで取り上げておきたい。 同書はソ連の有数の蒙古学者ウラヂミルツォフが一九三…

古本夜話734 小池新二『汎美計画』

前回、山岳書の翻訳者の小池新二にふれ、彼が日本工作文化連盟を組織し、デザインや建築の面からの国策協力を推進していたことにも言及しておいた。 その小池の主著『汎美計画』が手元にある。昭和十八年に発行者を福山須磨子とするアトリエ社から初版二千部…

古本夜話733 博文館「最新世界紀行叢書」とベヒトールト『ヒマラヤに挑戦して』

本田靖春の『評伝今西錦司』が『山と渓谷』に連載されたことを象徴するように、同書は今西の京都一中と三高での山岳部体験から始められている。そして大興西嶺探検に加わる梅棹忠夫、吉良龍夫、川喜田二郎たちも三高山岳部に属し、当然のことながら全員が京…

古本夜話732 磯野富士子『冬のモンゴル』

前回、昭和十七年の『大興安嶺探検』が戦後の二十七年になって刊行されたことを既述しておいた。それは今西錦司の内蒙古レポートも同様で、第二回調査は『草原行』(府中書院、昭和二十二年)、第三回調査は『遊牧論そのほか』(秋田屋、昭和二十三年、平凡…

古本夜話731 昭和十七年の『大興安嶺探検』

本連載719などの今西錦司がモンゴルの張家口に新設された蒙古善隣協会の西北研究所長として迎えられたのは昭和十九年四月で、京大からも所員が召喚された。それには前史があるので、たどってみたい。 昭和十四年に今西は、会長を羽田亨京大総長とする京都…

古本夜話730 山本実彦『蒙古』とハルヴァ『シャマニズム』

昭和十年に山本実彦の『蒙古』が改造社から刊行されている。彼は近代出版業界の立役者というべき人物だが、改造社も消滅して半世紀以上経つので、その立項を鈴木徹造の『出版人物事典』から引いておこう。 [山本実彦 やまもと・さねひこ]一八八五~一九五…

古本夜話729 萬里閣書房『大支那大系』

これは昭和十年代の出版物ではないけれど、昭和初期の円本時代に萬里閣書房から『大支那大系』が刊行されている。所謂支那シリーズとしては先駈けのように思われるので、ここで取り上げておく。ただ『全集叢書総覧新訂版』で確認してみると、昭和五年に全十…

古本夜話728 創元社「アジア問題講座」

前回、戦後の出版ではあるけれど、東京創元社の京都大学文学部東洋史研究室編『東洋史辞典』は、平凡社の『東洋歴史大辞典』の延長線上に成立したという推測を述べておいた。それはこれも既述しておいたように、『東洋歴史大辞典』の主たる執筆者たちは東京…

出版状況クロニクル115(2017年11月1日~11月30日)

17年10月の書籍雑誌の推定販売金額は993億円で、前年比7.9%減。 書籍は473億円で、同5.2%減。 雑誌は520億円で、同10.3%減と2ヵ月連続の2ケタマイナス。 その内訳は月刊誌が406億円で、同12.6%減、週刊誌は114億円で、同1.3%減。 週刊誌のマイナスは17年で最…