2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧
昭和十年代後半には「名作歴史文学」といったシリーズが刊行され、かなりの売れきを示したようだ。これは昭和十八年に聖紀書房から出され、そのうちの一冊の吉川英治『大谷刑部』を浜松の時代舎で購入している。 これは表題作をタイトルとする短編集だが、四…
昭和十年代には小説や外国文学の叢書やシリーズだけでなく、前回の石坂洋次郎の『雑草園』ではないけれど、随筆なども出されている。そのひとつとして、昭和十二年に東宛書房から刊行の「学芸随筆」があり、その一冊である五来素川『動乱の静観』を入手して…
本連載842の正宗白鳥とは異なる意味で、少しばかり意外に思われるかもしれないが、石坂洋次郎にしても改造社との関係は深く、昭和十一年の『麦死なず』、翌年に『若い人』を改造社から刊行し、作家的地位を確立したとされる。しかも前者は同社の『文芸』…
本連載839の新潮社「新日本少年少女文庫」の著者として、前回の高須芳次郎と並んで、林髞の名前も挙がっていた。林は慶應大学医学部出身で、ソ連に留学し、パブロフの下で条件反射理論を学び、大脳生理学を研究し、昭和九年から慶大医学部教授に就任して…
前回の正宗白鳥の証言によれば、『文芸評論』や『現代文芸評論』にしても、改造社の『現代日本文学全集』や春陽堂の『明治大正文学全集』の出現によって、それらの作家や作品を初めて読んだり、再読したことを通じて、あらためて書くことができたという。そ…
前回の「文芸復興叢書」も含めて、改造社の文芸書の全貌を俯瞰することは難しい。それは本連載でも繰り返しふれているように、改造社も社史や全出版目録が出されていないし、シリーズ物はともかくとして、単行本に関しては実物を見るまで、改造社から出てい…
本連載でずっとふれてきた本連載でずっとふれてきた昭和十年代半ばの外国文学も含んだ文芸書出版の隆盛は、突然もたらされたものではなく、そこに至る出版ムーブメントの結実と考えるべきだろう。高見順は『昭和文学盛衰史』の一章を「文芸復興」と題し、昭…
前々回の新潮社の「日本少国民文庫」の他にも、多くの「少国民」をタイトルにすえたシリーズ、及び同じく前回の「新日本少年少女文庫」のような科学的色彩の強いシリーズも、戦時下において増えていったと見られる。その双方と備えた企画として、岩波書店か…
『新潮社七十年』は「日本少国民文庫」に続いて、昭和十四年から島崎藤村編「新日本少年少女文庫」全二十巻の刊行を始めたが、内容は「日本少国民文庫」と大同小異であるが、福永恭助『国の護り(陸・海・空)』を第一回配本としたことはすでに時局の緊迫を…
前回に続いて、この際だから児童書にも言及してみる。『新潮社七十年』において、昭和十年に刊行された山本有三編「日本少国民文庫」全十六巻は「新潮社の誇るに足る出版」として、その一章を当てている。だがそれらは全巻の書影が見えているだけなので、「…
18年9月の書籍雑誌推定販売金額は1215億円で、前年比5.4%減。 書籍は682億円で、同5.3%減。雑誌は533億円で、同5.6%減。 雑誌の内訳は月刊誌が446億円で、同4.5%減、週刊誌は86億円で、同10.4%減。 返品率は書籍が32.3%、雑誌が39.8%で、月刊誌は39.4%、週刊…