出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話

古本夜話1154 村上静人、赤城正蔵、「アカギ叢書」

前回『ハウプトマン名作選集』が村上静人訳編によることを既述しておいたけれど、村上は『日本近代文学大事典』に立項されておらず、「アカギ叢書」の訳者の一人としての記載を散見するだけである。 (『ハウプトマン名作選集』) それに加えて、「アカギ叢書…

古本夜話1153 『ハウプトマン名作選集』と『寂しき人々』

前々回の「独逸文学叢書」に収録予定だったハウプトマン『ソアーナの異教徒』(奥津彦重訳)は、昭和三年に岩波文庫として刊行された。この特異な小説に言及するつもりでいたが、その岩波文庫が紛れてしまい、出てこないので、代わりに『ハウプトマン名作選…

古本夜話1152 岩波書店『ストリントベルク全集』

岩波書店としては関東大震災直後の企画だが、前回の「独逸文学叢書」と併走するように刊行され、同じく岩波文庫へと移ることで中絶してしまったのは『ストリントベルク全集』だったと思われる。 (「独逸文学叢書」、『世襲山林監督』) その一冊である『大…

古本夜話1151 岩波書店「独逸文学叢書」、藤代禎輔、ルードヴィヒ『世襲山林監督』

前回の三笠書房『ホフマン全集』が時期尚早ゆえに二冊で中絶してしまったことにふれた。それより十年ほど前になるけれど、岩波書店でも「独逸文学叢書」が企画され、こちらは十四冊出されたが、やはり後が続かなかったと思われる。 その3にあたるルードヴィ…

古本夜話1150 三笠書房『ホフマン全集』と『黄金の壺』

茅野蕭々の『独逸浪漫主義』は昭和十年代において、最もまとまったドイツロマン派に関する紹介と研究を兼ねた一冊だったと思われる。しかも丁寧な索引も付され、作家と作品をたどる便宜もはかられている。 (『独逸浪漫主義』) 例えば、小説のところで、ノ…

古本夜話1149 茅野蕭々『独逸浪漫主義』

前回の 近藤春雄『ナチスの青年運動』のような時宜にかなったナチズム書ばかりでなく、昭和十年代には多くのドイツ文学、思想書も出版されていたはずだが、それらの全貌は明らかにされていない。フランス文学に関しては『近代出版史探索Ⅴ』で多く言及してい…

古本夜話1148 近藤春雄『ナチスの青年運動』

『三省堂書店百年史』は昭和十年代の書店に関しては多くの写真を掲載して、支那事変以後の売場の変遷、また「名著目録(昭和五年―十五年)」示して、「名著の供給を絶やさなかった」事実を伝えてようとしているが、自社出版物についてはほとんど語っていない…

古本夜話1147 啓文社、河原万吉『趣味の古書通話』、水原堯榮『女性と高野山』『邪教立川流の研究』

河原万吉の本がもう一冊出てきたこともあり、前回の彼の宗教と絡めて、もう一編書いてみよう。 それは『趣味の古書通話』で、昭和十二年、発行者を生地優吾とする、本郷区元町の啓文社からの刊行である。河原の「序」によれば、同書は古書に関する四冊目の著…

古本夜話1146 河原万吉訳、スエデンボルグ『天界と地獄』

前回の河原万吉がゾラ『居酒屋』の訳者であることを既述したが、その他にも思いがけない翻訳が見出される。それは拙稿「スウェーデンボルグ『天界と地獄』と静思社」(『古本屋散策』所収)、やはり『近代出版史探索Ⅱ』247の鈴木大拙訳『天界と地獄』と異な…

古本夜話1145 四六書院「通叢書」と河原万吉『猥談奇考』

前回、『三省堂書店百年史』に何の説明もないけれど、四六書院「通叢書」の河原万吉『古書通』の書影が掲載されていることを既述しておいた。 (『古書通』) (『西洋音楽通』) この「通叢書」は昭和四年十二月に、現代人における趣味の欠乏が問題なので、「…

古本夜話1144 四六書院、小松清『西洋音楽通』、三省堂『レコード音楽全集』

前回、大正時代に上方屋出版部の楽譜本や歌本がまさに飛ぶように売れていたことにふれたが、昭和に入ると、それらも含めた音楽書や雑誌の分野も活発になっていったと推測される。それは『近代出版史探索Ⅱ』339のアルスの「音楽大講座」や春秋社の『世界音楽…

古本夜話1143 金星堂と上方屋『ヴアヰオリン独習』

前回の『日本精神文化大系』に合わせるように、昭和十年に金星堂から『現代随筆全集』が出版されている。これは『全集叢書総覧新訂版』によれば、全十二巻とある。例によって浜松の時代舎で、その第一巻「学藝篇」を見つけ、購入してきた。B6判函入の一冊で…

古本夜話1142 金星堂と『日本精神文化大系』

前回の先進社『大日本思想全集』の解題と明細は『世界名著大事典』第六巻の「全集・双書目録」に見出したけれど、金星堂の『日本精神文化大系』は含まれていなかった。残念ながら『金星堂の百年』(平成三十年)においても何の言及もなく、タイトルすらも挙…

古本夜話1141 先進社『大日本思想全集』

昭和六年に先進社から『大日本思想全集』が刊行されている。その第五巻に当たる『貝原益軒・平賀源内集』の一冊だけが手元にある。タイトルは正確にいえば、「付心学一派・石田梅巖・手島堵庵・中澤道二」との断わりが示されているけれど、煩雑なので、先の…

古本夜話1140 坂本嘉治馬と吉田東伍『大日本地名辞書』

本探索1133において、冨山房の『漢文大系』には言及しなかったので、ここでその代わりとしてではないけれど、これも同じく予約出版だったと見なせる吉田東伍の『大日本地名辞書』を挿入しておきたい。 私が架蔵しているのは明治三十三年初版、昭和十二年十二…

古本夜話1139 齋藤秀三郎『ENGLISH CONVERSATION-GRAMMAR』と『齋藤和英大辞典』

漢文書出版の系譜をたどる中に、英語文法書や辞典を挿入して違和感を与えるかもしれないけれど、そうしたダブルイメージこそが近代出版の現実でもあった。またそこには思いがけない出版経済のメカニズムすらも潜んでいたのではないかとも推測されるので、そ…

古本夜話1138 博文館「少年叢書」と興文社「少年叢書漢文学講義」

漢文書出版の裾野は想像する以上に広く拡がり、それは博文館も例外ではなく、明治二十五年には「支那文学全書」全二十四巻の刊行を始めている。そのことに関して、『博文館五十年史』は書影を示し、「当時国文学の気勢稍ゝ衰へ、漢文学が漸く頭を擡げたので…

古本夜話1137 米田祐太郎、支那文献刊行会『支那珍籍全集』、伊藤禱一

こちらは昭和円本時代になってしまうのだが、やはり漢文書に関連すると見なせる『支那珍籍全集』が刊行されている。これは『全集叢書総覧新訂版』によれば、昭和三年に甲子社から四冊出され、その後は続かなかったとされる。(『支那珍籍全集』) 私にしても…

古本夜話1136 至誠堂「新訳漢文叢書」

続けて漢文出版を取り上げてきたけれど、明治から大正にかけて、思いがけずに新書判や袖珍判としても出版されていたのである。 紀田順一郎の『古書収集十番勝負』(創元推理文庫)において、その勝負の六番目に「有朋堂対訳詳解漢文叢書」が挙げられていた。…

古本夜話1135 小杉放庵、公田連太郎『全訳芥子園画伝』とアトリエ社

前回の『国訳漢文大成』続編の『資治通鑑』を始めとする「経子史部」全二十四巻の訳注のほとんどは公田連太郎によるものである。もちろん正編も『史記本紀』などの四冊を受け持っているし、この事実からすれば、『国訳漢文大成』の企画と編集自体が公田を抜…

古本夜話1134 鶴田久作と『国訳漢文大成』

かつて「鶴田久作と国民文庫刊行会」(『古本探究』所収)を書き、その際は「世界名作大観」とダントン、戸川秋骨訳『エイルヰン物語』を取り上げのだが、『国訳漢文大成』と『国訳大蔵経』はそれぞれ二万部という成功を収めたことにふれておいた。またその…

古本夜話1133 早稲田大学出版部『漢籍国字解全書』

本探索1130の石井研堂の『増訂明治事物起原』における「予約出版の始」で、漢籍の複刻が挙げられていたこともあって、以前に早稲田大学出版部の『漢籍国字解全書』と冨山房の『漢文大系』の何冊かを拾っていたことを思い出した。これらはいずれも明治末に刊…

古本夜話1132 気賀林一『編集五十年』と『頭註国訳本草綱目』補遺

二回ほど飛んでしまったが、ようやく気賀林一『編集五十年』(医道の日本社、昭和58年)が出てきたので、『頭註国訳本草綱目』にまつわる補遺編を書いておきたい。この気賀の著書の版元は月刊『漢方の臨床』や『医道の日本』を刊行する横須賀市の漢方雑誌社…

古本夜話1131 野口米次郎『芸術殿』と春陽堂文庫出版株式会社

本探索1126で、昭和六年の国劇向上会による演劇『芸術殿』の創刊、同1127で春陽堂と大日本文庫刊行会の関係にふれてきたこともあって、それらにまつわる一編も書いておこう。 その雑誌のほうを意識していたのかは不明だが、『芸術殿』という同じタイトルの一…

古本夜話1130 石井研堂『増訂明治事物起原』と「予約出版の始」

また春陽堂が続いてしまったので、ここで単行本ではあるけれど、大正十五年刊行の石井研堂の『増訂明治事物起原』も挙げておきたい。そこには『近代出版史探索』152で既述したように、「予約出版の始」という項目もあるからだ。残念ながら「外交販売の始」は…

古本夜話1129 白井光太郎、鈴木眞海、『頭註国訳本草綱目』

『春陽堂書店発行図書総目録』を繰っていて、『頭註国訳本草綱目』が昭和九年に十五冊目の索引を刊行し、完結したことをあらためて知った。十五年ほど前だが、今はなき三島の北山書店で『頭注国訳本草綱目』第一冊から第六冊までの五冊を購入している。なお…

古本夜話1128 吉澤義則、武藤欽、文献書院「全訳王朝文学叢書」

前回の「大日本文庫」の各巻校訂者の名前を見ていて、「文学篇」の『物語文学集』を吉澤義則が担当していたることに気づかされた。 (「大日本文庫」) 実はいつか取り上げなければならないと思っていた「全訳王朝文学叢書」の訳者の一人が吉澤だったからだ…

古本夜話1127 春陽堂「大日本文庫」

ずっと続けて予約出版と外交販売による古典籍類の全集や大系などをたどってきたけれど、そうした企画は様々な出版社に持ち込まれ、おそらくスポンサーや公的助成金付きで、刊行されていったと思われる。まだ残されているそれらをいくつか取り上げてみたい。 …

古本夜話1126 創元社『シェークスピヤ全集』一巻本

これは戦後のことになってしまうが、坪内逍遥訳『シェークスピヤ全集』の再刊にもふれておきたい。 それを意識したのは辻佐保子の『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』(中央公論新社)を読んだからでもあった。私は辻邦生のよき読者とはいえないけれど、『…

古本夜話1125 正宗白鳥『人間嫌ひ』、坪内逍遥訳『新修シェークスピヤ全集』、松本清張『行者神髄』

本探索1120で挙げた正宗白鳥『人間嫌ひ』はまったく読まれていないだろうし、『近代出版史探索Ⅴ』854の『人間』の、昭和二十四年における連載時の評判に関しても伝えられていない。 ただイニシャル表記であっても、戦後の混乱と再生の中にある出版界の出来事…