出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話

古本夜話1111 穂積陳重『法窓夜話』と有斐閣

前回の田口卯吉『日本開化小史』の文庫化を確認するために、『岩波文庫解説総目録(上)』を繰ったところ、その下に続けて穂積陳重『法窓夜話』全2冊が掲載されていた。実は浜松の典照堂で田口の『支那開化小史』と一緒に買い求めてきたのが、この原本に他な…

古本夜話1110 田口卯吉『支那開化小史』と塩島仁吉

前々回に田口卯吉と経済雑誌社の名前を挙げておいたが、田口の『支那開化小史』を入手しているので、この一冊も取り上げておこう。同書は『日本開化小史』(岩波文庫)と異なり、文庫化されていないが、中扉、奥付などから判断すると、明治十六年から二十一…

古本夜話1108『群書類従』の近代出版史

『古事類苑』を取り上げたからには、その範ともなった『群書類従』にも言及すべきだろうし、実は前者と異なり、後者は架蔵してもいるからだ。この江戸時代の盲人塙保己一によって編まれた日本で初めての百科事典は文芸叢書の成立と出版事業に関しては、紀田…

古本夜話1107『古事類苑』の流通と販売

近代の先駆的公共出版にして古典籍刊行の試みともいうべき『古事類苑』のタイトルをずっと挙げてきたけれど、実は端本すらも所持していない。それもあって『古事類苑』を取り上げることはためらっていた。しかし私の利用している公共図書館には「赤松則良文…

古本夜話1106 吉川弘文館と『和漢三才図会』

本探索1075の『日本随筆大成』別巻の『和漢三才図会』は入手していないと記しておいたが、その後やはり浜松の時代舎で明治時代に刊行された一巻本を見出し、買い求めてきたので書いておこう。(『日本随筆大成』) 現在であれば、『和漢三才図会』は平凡社の…

古本夜話1105 郁文舎と内藤耻叟、三輪文次郎『一覧博識漢学速成』

前々回、『古事類苑』に端を発して、古典籍などに関する出版人脈が形成されていったのではないかと述べたが、流通や販売のみならず、それは印刷業界の人々も含んでだったと推測される。そのことを立証する一冊を入手したので、やはりここで書いておきたい。 …

古本夜話1104 金谷真『川面凡児先生伝』

ここで間奏的一編を挿入しておこう。 前回、『神道辞典』から今泉定介(助)の立項を引いたところ、大正十年頃に川面凡児の大寒禊の行事に挺身参加した後、「皇道」の宣布に東奔西走するとの記述が見出された。さらに『同辞典』で川面凡児を繰ってみると、神…

古本夜話1103 今泉定介と「増訂故実叢書」

前回、国書刊行会は吉川弘文館顧問の今泉定介が市島謙吉と計らって設立し、その第二期以後は早川純三郎が編集長として引き継いだこと、また国書刊行会の第一期事業の成功が大正時代の予約出版の範となり、様々な刊行会や出版社が立ち上げられ、それが昭和円…

古本夜話1102 国書刊行会と「丹鶴叢書」

ずっと春陽堂に関連して書いてきた。前回でひとまず終えるのだが、その間に新たに入手した本によって、不明だったことの一端が判明したこともあり、それらにそれらにふれておきたい。 本探索1075で、昭和円本時代の『日本随筆大成』の編輯部とその代表者の早…

古本夜話1101 改造社『日本文学大全集』

前回の青山毅編著『文学全集の研究』に十二種の円本が挙げられていたが、そのうちの改造社『日本文学大全集』だけはこれまで取り上げてこなかったので、ここで続けて言及してみる。 この四六倍判の個人文学全集は、二十年ほど前にはよく古本屋で見かけたけれ…

古本夜話1100 青山毅編著『文学全集の研究』

文学全集といえば、「月報」が付きものだが、私の架蔵している全集類はこれまで既述してきたように、ほとんど一世紀前の昭和円本時代の出版物が多い。それにすべてが古本屋で買ったものなので、「月報」が揃っていることはないし、そのことは『明治大正文学…

古本夜話1099 泉斜汀『百本杭の首無死体』と徳田秋声「和解」

前回、春陽堂『明治大正文学全集』の編集校訂者たちを挙げ、その中に泉斜汀もいたことを示しておいたが、彼に関しては言及していないので、ここで一編を書いておこう。 それは近年、泉斜汀の探偵小説が『百本杭の首無死体』(幻戯書房)や『泉斜汀探偵小説撰…

古本夜話1098 春陽堂『明治大正文学全集』と木呂子斗鬼次

ずっと続けて春陽堂にふれてきたこともあり、『明治大正文学全集』にも言及するしかない。『明治大正文学全集』は本探索1062の改造社『現代日本文学全集』と異なり、全六十巻を揃えているにもかかわらず、これまで飯田豊一『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』…

古本夜話1097 春陽堂の江戸川乱歩『心理試験』『一寸法師』

春陽堂の奥付、著作権、印税のことばかり続けて書いてきたので、もう一編を加えてみる。今回は江戸川乱歩に登場を願おう。 乱歩は『新青年』の大正十二年四月号に処女作「二銭銅貨」を発表し、続けて、「一枚の切符」「恐ろしき錯誤」、十三年に「二廃人」「…

古本夜話1096 「春陽堂予約出版事業」と『長塚節全集』

前回、買切原稿料から印税制度に移行したのは昭和円本時代を通じてのことだったと述べたが、その実例を大正十五年から昭和二年にかけての春陽堂の『長塚節全集』全六巻に見てみる。 その前に第一巻にはさみこまれた「春陽堂予約出版事業」の払いこみチラシに…

古本夜話1095 長塚節『土』と平福百穂

夏目漱石、『朝日新聞』連載、春陽堂といった三題噺からすれば、必然的に長塚節の『土』が思い出される。 明治四十三年に節は漱石の依頼によって、『東京朝日新聞』に『土』を連載し、四十五年に春陽堂から出版された。しかも漱石の「『土』に就て」という序…

古本夜話1094 夏目漱石、橋口五葉、春陽堂

前回、藤村の自費出版の試みを引き継いだのは、漱石の『こゝろ』だったのではないかとの観測を提出しておいた。ところが実際はその逆で、藤村が範としたのは他ならぬ漱石だったと思われる。それに漱石は藤村より遅れて、明治四十年代になってからだが、『朝…

古本夜話1093 自費出版者としての島崎藤村

『金色夜叉』後編巻末の明治三十三年時点での春陽堂出版広告において、島崎藤村は「詩俳書之部」に分類されていることに気づかされた。そこには『若菜集』『一葉集』『夏草』の三冊が見え、明治三十年代には春陽堂にとって藤村が、尾崎紅葉を始めとする硯友…

古本夜話1092 戸川残花『幕末小史』と人物往来社「幕末維新史料叢書」

前回の『金色夜叉』後編の巻末広告によって、明治三十年代初めの春陽堂が文壇の大家にして社会的名士の紅葉の著書二十九冊、村井弦斎は二十七冊、ちぬの浦浪六は十二冊を出していたとわかる。『金色夜叉』は当時のベストセラーだったし、弦斎と浪六は本探索…

古本夜話1091 富岡永洗『八雲の契り』

前回、明治二十年代に春陽堂が文学書版元としての隆盛を見た一因が、文芸誌『新小説』の創刊であることにふれた。ただ『新小説』第一期は明治二十二年に創刊され、翌年には休刊となっているので、第二期『新小説』の明治二十九年創刊のほうが近代文芸誌とし…

古本夜話1090 春陽堂と尾崎紅葉『金色夜叉』

前回のように、明治二十五年の黙阿弥「狂言百種」第三号と同二十六年の村上浪六『深見笠』の奥付裏の春陽堂の出版目録を見ていると、明治二十年代の近代文学が春陽堂とともに歩んできたことをあらためて実感してしまう。 もちろんその背景にあるのは明治二十…

古本夜話1089 ちぬの浦浪六『深見笠』と春陽堂

前回の「狂言百種」の他に、同じく春陽堂のちぬの浦浪六の『深見笠』があり、これも明治二十七年二月初版、九月第三版の一冊で、やはり菊判和綴じ、一六七ページの和本仕立てであった。ちぬの浦浪六とは村上浪六の初期のペンネームで、故郷の堺にちなんでつ…

古本夜話1088 河竹黙阿弥と「狂言百種」

本探索1068において、久保田彦作が江戸生まれの狂言作者、戯作者で、河竹黙阿弥門下だったが、黙阿弥と親しかった仮名垣魯文に引き立てられ、『仮名読新聞』にも関係し、明治十一年に『鳥追阿松海上新話』を上梓するに至ったことを既述しておいた。 黙阿…

古本夜話1087 蛯原蛯原八郎「村井弦斎小論」、中央公論社『日本近世大悲劇名作全集』、『小猫』

本探索1065で蛯原八郎の『明治文学雑記』を取り上げたが、その後続けて明治開花期文学をたどっていくと、この一冊が「雑記」のタイトルにもかかわらず、参考文献として必ずといっていいほど挙げられている。それに同書にはこの時代に蛯原しか書かなかっ…

古本夜話1086 改造社『明治開化期文学集』と成島柳北『柳橋新誌』

本探索1067や1068で、筑摩書房の『明治開化期文学集(一)』、角川書店の『明治開花期文学集』を参照してきたが、これらのタイトルとコンテンツのいずれもが、改造社の『明治開化期文学集』(『現代日本文学全集』1)を範としていることは明白である…

古本夜話1085 三角寛『縛られた女たち』

少し飛んでしまったが、本探索1067で、仮名垣魯文『高橋阿伝夜刃譚』、同1068で久保田彦作『鳥追阿松海上新話』といった所謂「毒婦物」に続けてふれたのは、最近になって三角寛の『縛られた女たち』を偶然に入手したこと、また三角のサンカ小説にし…

古本夜話1084 『秋田風俗問状答』とネフスキー『月と不死』

もう一編、中山太郎編著『校註諸国風俗問状答』に関連して書いておきたい。それは中山がその序文にあたるものとして、冒頭に「本書を先づ異郷の学友/ニコライ・ネフスキー氏に御目にかけ候」という一文を掲げているからだ。(『校註諸国風俗問状答』) そこ…

古本夜話1083 中山太郎編著『校註諸国風俗問状答』と東洋堂

本探索1072で喜多村信節『嬉遊笑覧』を取り上げ、また同1078の博文館「帝国文庫」の校訂者が柳田国男と中山太郎であることにもふれておいた。その関連から、『喜遊笑覧』と同様に柳田が推奨し、しかも中山が編者とし、上梓している一冊に言及してみ…

古本夜話1082『東京書籍商組合員図書総目録』

『一誠堂古書籍目録』に続いて、やはり巌松堂の同じ目録『日本志篇』を取り上げてきたわけだが、これらには範があったと思われる。 それは『東京書籍商組合員図書総目録』(以下『図書総目録』)である。この目録は拙稿「図書総目録と書店」(『書店の近代』…

古本夜話1081 波多野重太郎と『日本志篇』

前回の『一誠堂古書籍目録』の他にも、少し遅れてだが、同時代に古書籍目録が出されている。それは巌松堂書店古典部が昭和三年に刊行した『古書籍在庫目録日本志篇』(以下『日本志篇』)である。こちらは四六判で、発行者は波多野重太郎となっている。彼も…