2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧
脇阪要太郎は『大阪出版六十年のあゆみ』において、明治二十年代後半の大阪の新しい文芸書出版の草分けは駸々堂と嵩山堂によって担われたと述べている。その出版と書店を兼ねた駸々堂が破綻したのは今世紀を迎えた最初の年であり、それは出版危機の象徴的事…
また続けて大阪の出版社のことにふれてきたので、田中宋栄堂=秋田屋宋栄堂を取り上げておきたい。この版元に関して、特価本業界とダイレクトな関係は見ていないけれど、本連載279で示したように、ずっと参照してきた『大阪出版六十年のあゆみ』の著者の…
前回の笹倉明の『遠い国からの殺人者』が発表された同じ八九年に、内山安雄の『ナンミン・ロード』が「特別書き下ろし長篇小説」として、講談社から刊行された。これは中絶してしまった船戸与一の「東京難民戦争・前史」の系列に位置する作品と見なせるし、…
本連載などで、昭和円本時代がエロ・グロ・ナンセンスの時代でもあり、梅原北明たちによって多くのポルノグラフィが、アンダーグラウンド的出版として刊行されたことに言及してきた。その時代にあって、「変態」や「猟奇」という言葉が流行語にもなっていた…
講談において、立川文庫を発祥とする猿飛佐助や霧隠才蔵などの真田一族の物語が大きな魅力であったことを、新島広一郎の『講談博物志』を始めとして、当時の多くの読者が語っている。また実際にそれらの物語は現在に至るまで、様々な小説、映画、コミックな…
(集英社文庫) 前々回の佐々木譲『真夜中の遠い彼方』や前回の船戸与一「東京難民戦争・前史」に先駆け、八三年に笹倉明によって『東京難民事件』が三省堂から出されている。これは小説ではなくノンフィクションであるが、まったく無視されたようだ。だが幸…
もう一編だけ、新島広一郎の『講談博物志』に関連して書いておく。それも新島の収集によって明らかになったのであり、戦後出されたものではあるけれど、明らかに戦前版の焼き直しだと確認できたからだ。それは富士屋書店から昭和三十年に刊行された『侠客国…
新島広一郎の『講談博物志』に、シリーズとしての掲載ではないけれど、立川文庫のところで、三教書院の「袖珍文庫」の書影を掲載している。それは脇阪要太郎の『大阪出版六十年のあゆみ』で、立川文庫は東京のアカギ文庫にヒントを得たと述べられているが、…
これは一九八五年に『問題小説』に「東京難民戦争・前史」の総タイトルで、「運河の流れに」(1月号)、「巣窟の鼠たち」(7月号)、「銃器を自由を!」(10月号)と三回にわたって連載され、残念なことにそのまま中絶してしまった作品である。その後、『男…
新島広一郎の『講談博物志』の中に挙げられた講談本シリーズをリストアップしながら、あらためて確認したのは、講談本出版が赤本業界=特価本業界、それらと取引している大阪の出版社群、及び講談社によって担われていた事実である。大日本雄弁会は明治四十…
前回の末尾のところで、新島広一郎の『講談博物志』に言及したが、これは講談本に対する情熱と長い年月にわたる収集をベースにした驚くべき労作である。その収集は明治二十年代の大川屋の講談本から始まり、昭和六十年の講談社の「歴史講談」に至る、ほぼ百…
出版状況クロニクル61(2013年5月1日〜5月31日) 今月インタビューした『裏窓』の元編集長飯田豊一から、大衆演劇に関する教示を得た。そこで早速調べてみると、焼津の黒潮温泉で常に観劇できることがわかり、出かけることにした。5月公演は劇団新で、昼の部…