出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1102 国書刊行会と「丹鶴叢書」

ずっと春陽堂に関連して書いてきた。前回でひとまず終えるのだが、その間に新たに入手した本によって、不明だったことの一端が判明したこともあり、それらにそれらにふれておきたい。 本探索1075で、昭和円本時代の『日本随筆大成』の編輯部とその代表者の早…

古本夜話1101 改造社『日本文学大全集』

前回の青山毅編著『文学全集の研究』に十二種の円本が挙げられていたが、そのうちの改造社『日本文学大全集』だけはこれまで取り上げてこなかったので、ここで続けて言及してみる。 この四六倍判の個人文学全集は、二十年ほど前にはよく古本屋で見かけたけれ…

古本夜話1100 青山毅編著『文学全集の研究』

文学全集といえば、「月報」が付きものだが、私の架蔵している全集類はこれまで既述してきたように、ほとんど一世紀前の昭和円本時代の出版物が多い。それにすべてが古本屋で買ったものなので、「月報」が揃っていることはないし、そのことは『明治大正文学…

古本夜話1099 泉斜汀『百本杭の首無死体』と徳田秋声「和解」

前回、春陽堂『明治大正文学全集』の編集校訂者たちを挙げ、その中に泉斜汀もいたことを示しておいたが、彼に関しては言及していないので、ここで一編を書いておこう。 それは近年、泉斜汀の探偵小説が『百本杭の首無死体』(幻戯書房)や『泉斜汀探偵小説撰…

古本夜話1098 春陽堂『明治大正文学全集』と木呂子斗鬼次

ずっと続けて春陽堂にふれてきたこともあり、『明治大正文学全集』にも言及するしかない。『明治大正文学全集』は本探索1062の改造社『現代日本文学全集』と異なり、全六十巻を揃えているにもかかわらず、これまで飯田豊一『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』…

古本夜話1097 春陽堂の江戸川乱歩『心理試験』『一寸法師』

春陽堂の奥付、著作権、印税のことばかり続けて書いてきたので、もう一編を加えてみる。今回は江戸川乱歩に登場を願おう。 乱歩は『新青年』の大正十二年四月号に処女作「二銭銅貨」を発表し、続けて、「一枚の切符」「恐ろしき錯誤」、十三年に「二廃人」「…

古本夜話1096 「春陽堂予約出版事業」と『長塚節全集』

前回、買切原稿料から印税制度に移行したのは昭和円本時代を通じてのことだったと述べたが、その実例を大正十五年から昭和二年にかけての春陽堂の『長塚節全集』全六巻に見てみる。 その前に第一巻にはさみこまれた「春陽堂予約出版事業」の払いこみチラシに…

古本夜話1095 長塚節『土』と平福百穂

夏目漱石、『朝日新聞』連載、春陽堂といった三題噺からすれば、必然的に長塚節の『土』が思い出される。 明治四十三年に節は漱石の依頼によって、『東京朝日新聞』に『土』を連載し、四十五年に春陽堂から出版された。しかも漱石の「『土』に就て」という序…

古本夜話1094 夏目漱石、橋口五葉、春陽堂

前回、藤村の自費出版の試みを引き継いだのは、漱石の『こゝろ』だったのではないかとの観測を提出しておいた。ところが実際はその逆で、藤村が範としたのは他ならぬ漱石だったと思われる。それに漱石は藤村より遅れて、明治四十年代になってからだが、『朝…

古本夜話1093 自費出版者としての島崎藤村

『金色夜叉』後編巻末の明治三十三年時点での春陽堂出版広告において、島崎藤村は「詩俳書之部」に分類されていることに気づかされた。そこには『若菜集』『一葉集』『夏草』の三冊が見え、明治三十年代には春陽堂にとって藤村が、尾崎紅葉を始めとする硯友…

出版状況クロニクル151(2020年11月1日~11月30日)

20年10月の書籍雑誌推定販売金額は1000億円で、前年比6.6%増。 書籍は536億円で、同14.0%増。 雑誌は464億円で、同0.8%減。 その内訳は月刊誌が382億円で、同0.5%増、週刊誌は82億円で、同6.4%減。 返品率は書籍が32.2%、雑誌は41.3%で、月刊誌は40.6%、週刊…