出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話857 桜沢如一、岩波書店、カレル『人間』

前回、本連載146の桜沢如一が戦時下の横光利一の近傍にいたらしいことにふれておいた。桜沢に関しては、その実用的東洋哲学の無双原理=「極東のすべての科学、哲学、すべての大宗教、すべての文明の母胎」の紹介である自著『東洋医学の哲学』(日本CI協…

古本夜話856 横光利一『夜の靴』

前回、鎌倉文庫の『人間』に橋本英吉の小説が連載されていたことに加え、彼が横光利一のところに出入りし、その影響を受けていたことを既述しておいた。これは別の機会とも考えていたが、鎌倉文庫と横光といえば、生前の最後の著書は鎌倉文庫から出された『…

古本夜話855 橋本英吉『東方の種族』と翼賛出版協会「農村建設文学叢書」

前回はふれなかったけれど、橋本英吉の「富士山頂」が鎌倉文庫の『人間』昭和二十一年十月号で、「連載完結」とあった。連載が始まったのは七月号からで、二十三年には鎌倉文庫で単行本化されている。この十月号で見るかぎり、唯一の連載小説だったと思われ…

古本夜話854 鎌倉文庫『人間』と木村徳三

本連載825などの鎌倉文庫の文芸雑誌『人間』の一冊が出てきたので、これも書いておきたい。 『人間』は『日本近代文学大事典』にほぼ一ページにわたって立項されているように、戦後の雑誌として、思想と文芸、新人と旧人、海外文学なども包含した多角的編…

古本夜話853 新潮社『文章倶楽部』とアジール

前々回『若き剣士物語』の森本岩夫が新潮社の『文章倶楽部』の記者だったことを既述しておいた。 『文章倶楽部』は『新潮社七十年』においても、「日本にただひとつの文章雑誌として新潮社より刊行され、文章研究者の手引たると共に新文芸入門者の伴侶たるこ…

古本夜話852 大倉書店と落合直文『言泉』

前回はふれられなかったが、森本岩夫の『若き剣士物語』の中において、ニューヨークのモルガン邸のマダム・モンの居間の光景が描かれていた。彼女は太郎一が思いを寄せた女学生のモンで、アメリカ人と結婚し、渡米したが、夫を亡くし、未亡人となっていた。…

古本夜話851 新潮社「新作青年小説叢書」と森本岩夫『若き剣士物語』

昭和十九年になって、新潮社から「新作青年小説叢書」として、森本岩夫の『若き剣士物語』が刊行されている。しかし「同叢書」は『新潮社七十年』の「刊行図書年表」を確認してみると、ほぼ同時に和田伝『父祖の声』が出されただけで、その後は続かなかった…

古本夜話850 荒木巍『幸運児』、「博文館純文学書」、石光葆

昭和十七年にやはり博文館から刊行された荒木巍の小説集『幸運児』という一冊がある。荒木の名前は本連載782の河出書房の「書きおろし長篇小説叢書」や同785の「短篇集叢書」の著者として名前を挙げてきたけれど、現在ではもはや忘れ去られてしまった…

古本夜話849 坂口安吾『吹雪物語』と竹村書房

前回ふれた坂口安吾『吹雪物語』の昭和十三年の竹村書房版は、『坂口安吾』(「新潮日本文学アルバム」35)で書影を見ているだけだが、昭和二十三年に山根書店から刊行された山根書店版は入手している。これは同二十二年の新體社の再版に続く三度目の出版…

古本夜話848 『日暦』と川端康成『抒情歌』

本連載840の昭和十年前後の文芸リトルマガジンの相次ぐ創刊が、その後の文学書出版の隆盛へとリンクして行ったと見なすことができる。そうした出版状況を考えると、それは必然的に当時の小出版社の位相へとも結びついていくことになる。 『日本近代文学大…

出版状況クロニクル127(2018年11月1日~11月30日)

18年10月の書籍雑誌推定販売金額は991億円で、前年比0.3%減。1%未満のマイナスは16年12月以来である。 書籍は485億円で、同2.5%増。雑誌は505億円で、同2.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が404億円で、同0.3%減、週刊誌は100億円で、同11.5%減。 返品率は書籍が41…