出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話16 坂本篤の「口伝・艶本紳士録」と『文芸市場』

久保書店が『裏窓』や『あまとりあ』を刊行しながら、ハードボイルド専門誌『マンハント』も創刊していたように、昭和艶本時代も異なるジャンルの民俗学の出版物を派生させていく。それを担ったのはこの時代に伊藤晴雨の『責めの研究』や『論語通解』(『最…

出版状況クロニクル 20

論創社サイトにて「出版状況クロニクル 20(2009年11月26日〜12月25日)」を更新しました。

 2 太宰治とジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』

2001年に翻訳されたジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』(三浦陽一他訳、岩波書店)は「第二の敗戦」的状況の中で刊行されたこともあり、その出版は偶然のように思われなかった。そして戦後日本が敗者として始まったこと、占領が現在まで続いている実態を…

古本夜話15 「変態十二史」と「変態文献叢書」

「世界奇書異聞類聚」と並んで、梅原北明たちが企画出版したシリーズとして、その広範な人脈を知らしめている「変態十二史」と「変態文献叢書」にも言及しておく必要がある。これは「変態」という言葉によって、エロ・グロ・ナンセンスの時代を象徴させ、後…

1 堤清二、渥美俊一、藤田田

「辻井喬+堤清二回顧録」である『叙情と闘争』(中央公論新社)を、戦後の消費社会のキーパーソンの記録として読んでいくと、そこに渥美俊一と藤田田についての知らなかった事実が述べられていたので、驚いてしまった。 渥美は読売新聞の経済記者を経て、チ…

古本夜話14 村山知義と艶本時代

これまで伊藤晴雨を源流とする「アブノーマル雑誌」の系譜を、『奇譚クラブ』『風俗草紙』『裏窓』までたどってきた。また一方で、カストリ雑誌『赤と黒』から「性風俗誌」の『人間探究』や『あまとりあ』に至る流れも追ってきた。そしてこの二つの人脈が久…

チャールズ・H・ゴールド『マーク・トウェインの投機と文学』

ヘミングウェイの言によれば、現代アメリカ文学はマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』をもって始まるとされている。 そのトウェインがミズーリ州に生まれ、ハックルベリー・フィンの舞台となるミシシッピー川沿いの小さな町で育ったこと、…

古本夜話13 前田静秋・西幹之助共訳『アフロディト』と紫書房

前々回、帆神煕についてはまったく手がかりがないと書いたが、ひとつだけ気になることがある。それは風俗文献社の『太陰の娘サロメ』と『マドリッドの男地獄』の出版と同じ昭和二十七年に、表紙に原書名と著者名が記され、女性の裸体が描かれているのは異な…

相田良雄『出版販売を読む』

みすず書房の元営業部長だった相田良雄が亡くなった。相田も戦前には羽田書店に在籍し、戦後のみすず書房の創業メンバーの一人で、四十年以上にわたって営業に携わり、彼ならではの人文書の営業と販売の指針を具体的に教えてくれた。かつて出版社を立ち上げ…

出版状況クロニクル 19

論創社サイトにて「出版状況クロニクル 19(2009年10月26日〜11月25日)」を更新しました。

古本夜話12 伏見冲敬訳『肉蒲団』をめぐって

第一出版社の本は一冊だけ持っていて、それは伏見冲敬訳の『肉蒲団』である。A5判並製ながら、童画家の武井武雄による装丁装画の本は昭和二十六年の刊行から考えれば、瀟洒な一冊と言えるだろう。発行人は石川四司で、前回記したように元改造社編集局長にし…