2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧
前回の『金色夜叉』後編の巻末広告によって、明治三十年代初めの春陽堂が文壇の大家にして社会的名士の紅葉の著書二十九冊、村井弦斎は二十七冊、ちぬの浦浪六は十二冊を出していたとわかる。『金色夜叉』は当時のベストセラーだったし、弦斎と浪六は本探索…
前回、明治二十年代に春陽堂が文学書版元としての隆盛を見た一因が、文芸誌『新小説』の創刊であることにふれた。ただ『新小説』第一期は明治二十二年に創刊され、翌年には休刊となっているので、第二期『新小説』の明治二十九年創刊のほうが近代文芸誌とし…
前回のように、明治二十五年の黙阿弥「狂言百種」第三号と同二十六年の村上浪六『深見笠』の奥付裏の春陽堂の出版目録を見ていると、明治二十年代の近代文学が春陽堂とともに歩んできたことをあらためて実感してしまう。 もちろんその背景にあるのは明治二十…
前回の「狂言百種」の他に、同じく春陽堂のちぬの浦浪六の『深見笠』があり、これも明治二十七年二月初版、九月第三版の一冊で、やはり菊判和綴じ、一六七ページの和本仕立てであった。ちぬの浦浪六とは村上浪六の初期のペンネームで、故郷の堺にちなんでつ…
本探索1068において、久保田彦作が江戸生まれの狂言作者、戯作者で、河竹黙阿弥門下だったが、黙阿弥と親しかった仮名垣魯文に引き立てられ、『仮名読新聞』にも関係し、明治十一年に『鳥追阿松海上新話』を上梓するに至ったことを既述しておいた。 黙阿…
本探索1065で蛯原八郎の『明治文学雑記』を取り上げたが、その後続けて明治開花期文学をたどっていくと、この一冊が「雑記」のタイトルにもかかわらず、参考文献として必ずといっていいほど挙げられている。それに同書にはこの時代に蛯原しか書かなかっ…
本探索1067や1068で、筑摩書房の『明治開化期文学集(一)』、角川書店の『明治開花期文学集』を参照してきたが、これらのタイトルとコンテンツのいずれもが、改造社の『明治開化期文学集』(『現代日本文学全集』1)を範としていることは明白である…
少し飛んでしまったが、本探索1067で、仮名垣魯文『高橋阿伝夜刃譚』、同1068で久保田彦作『鳥追阿松海上新話』といった所謂「毒婦物」に続けてふれたのは、最近になって三角寛の『縛られた女たち』を偶然に入手したこと、また三角のサンカ小説にし…
もう一編、中山太郎編著『校註諸国風俗問状答』に関連して書いておきたい。それは中山がその序文にあたるものとして、冒頭に「本書を先づ異郷の学友/ニコライ・ネフスキー氏に御目にかけ候」という一文を掲げているからだ。(『校註諸国風俗問状答』) そこ…
本探索1072で喜多村信節『嬉遊笑覧』を取り上げ、また同1078の博文館「帝国文庫」の校訂者が柳田国男と中山太郎であることにもふれておいた。その関連から、『喜遊笑覧』と同様に柳田が推奨し、しかも中山が編者とし、上梓している一冊に言及してみ…
20年9月の書籍雑誌推定販売金額は1183億円で、前年比0.5%増。 書籍は685億円で、同0.3%増。 雑誌は498億円で、同0.8%増。 その内訳は月刊誌が423億円で、同3.6%増、週刊誌は74億円で、同12.7%減。 返品率は書籍が31.7%、雑誌は37.5%で、月刊誌は36.5%、週刊…