出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1337 三宅雪嶺と『志賀重昂全集』

『日本及日本人』(『日本人』)が三宅雪嶺や志賀重昂を中心とする政教社から刊行され、そこに前回の鵜崎鷺城『薩の海軍 長の陸軍』、中島端『支那分割の運命』、コナン・ドイル、藤野鉦齋訳『老雄実歴談』、『青木繁画集』、長谷川如是閑『額の男』『倫敦』…

古本夜話1336 鵜崎鷺城『頭を抱へて』と興成館書店

前回の大正二年の『日本及日本人』第六〇四号のトップ書名記事に鷺城学人「誤られたる大隈伯」が挙げられていることにふれた。これは「人物評論」としての連載の一編のようで、武内理三他編『日本近現代史小辞典』(角川書店)を参照し、大正二年三月の政治…

古本夜話1335 政教社『日本及日本人』

前回の満川亀太郎『三国干渉以後』において、大正三年に彼は『大日本』の編集者となり、その六年近くに及ぶ雑誌記者生活の中で、「日本国家改造と亜細亜復興問題」を生涯の事業と決意したと述べている。 (論創社版) この『大日本』の立項は他に見出せない…

古本夜話1334 満川亀太郎『三国干渉以後』

前回既述しておいたように、下中弥三郎『維新を語る』の出版をきっかけとして、維新懇話会が発足し、下中がその代表世話人となり、そのメンバーに満川亀太郎も名を連ねていた。 実はこの満川も『維新を語る』の翌年に平凡社から自伝『三国干渉以後』を刊行し…

古本夜話1333 下中弥三郎『維新を語る』と維新懇話会

前回の維新社だが、『平凡社六十年史』はダイレクトに言及していないけれど、昭和六年の『大百科事典』の刊行後、満州事変などを背景として、下中弥三郎の社会活動が活発になっていったことが記述されている。これを補足しているのは『下中弥三郎事典』の「…

古本夜話1332 陸軍画報社と中山正男『一軍国主義者の直言』

『神近市子自伝』において、日蔭茶屋事件で出獄後の大正九年に、彼女が四歳年少の鈴木厚と結婚したことが語られている。彼は早稲田大学を中退した評論家で、文学、歴史、社会主義に通じていて、辻潤が連れてきたのだった。 ところがその後、三人の子どもをな…

古本夜話1331 雑誌委託制の始まりと婦人誌の全盛

明治三十年代後半から大正にかけて、多くの女性誌が創刊され、大正時代には神近市子や望月百合子たちが新聞の婦人記者となり、昭和に入ると婦人誌が全盛となっていく。だが二十世紀の昭和時代が婦人誌の全盛だったことを記憶している読者や出版人はもはや少…

古本夜話1330 阿部真之助『現代世相読本』

『神近市子自伝』に戻ると、そこには思いがけない人物が出てくる。それは神近の東京日日新聞社の婦人記者としての社会的ポジションと英語ができる女性という評判が作用していたのであろう。ところがそうしたキャリアも、大正五年に大杉栄との恋愛問題で反故…

古本夜話1329 中西悟堂と『野鳥』

前々回、石川三四郎の近傍の人脈として中西悟堂の名前を挙げたが、彼は思いがけないことに『日本アナキズム運動人名事典』にも長く立項され、それは『日本近代文学大事典』も同様なので、悟堂にまつわる一編も書いておこう。 小林照幸の「評伝・中西悟堂」と…

古本夜話1328 上野英信編『鉱夫』と新人物往来社『近代民衆の記録』

前回の最後のところで、本探索で続けて言及してきた田口運蔵、片山潜、近藤栄蔵、永岡鶴蔵たちと加藤勘十が社会主義運動史において、炭鉱と鉱(坑)夫というラインでつながり、そこにゾラの『ジェルミナール』の翻訳も必然的にリンクしていたことにふれておい…

出版状況クロニクル174(2022年10月1日~10月31日)

22年9月の書籍雑誌推定販売金額は1051億円で、前年比4.6%減。 書籍は635億円で、同3.7%減。 雑誌は416億円で、同6.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が353億円で、同5.2%減、週刊誌は62億円で、同10.5%減。 返品率は書籍が30.9%、雑誌は39.4%で、月刊誌は38.4%、週…