出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1472 大柴四郎と梅原北明、杉井忍訳『露西亜大革命史』

大正時代はロシア革命とその関連書出版がトレンドであったと見なせるけれど、その全貌は定かではない。だがそれは『近代出版史探索Ⅱ』203の左翼系出版社ばかりでなく、様々な版元が参入し、発禁処分も相次いでいたと思われる。そうした一冊として、大正十四…

古本夜話1471 尾瀬敬止『労農露西亜の文化』と弘文館

前回、富田武『日本人記者の観た赤いロシア』における同時代の「記録」をリストアップしてみた。そこには見えていないけれど、尾瀬敬止による『労農露西亜の文化』も入手している。同書もこのジャンルの一冊に加えることができよう。大正十年に神田区山本町…

古本夜話1473 第一書房の『文藝年鑑』

続けてジョン・リード『世界をゆるがした十日間』を始めとするロシア革命ルポルタージュを取り上げ、また日本人ジャーナリストによるレポートなどもリストアップしておいた。それらはロシア革命とソヴエトに関する出版が一つのトレンドでもあり、確たる分野…

古本夜話1470 章華社、角澄惣五郎『京都史話』、大竹博吉『新露西亜風土記』

前回、黒田乙吉の『悩める露西亜』の『ソ連革命をその目で見た一日本人の記録』としての復刻に言及しておいた。だが富田武『日本人記者の観た赤いロシア』によれば、同時代の新聞記者のもたらした「記録」は予想以上に多いけれど、古本屋でも出会っていない…

古本夜話1469 黒田乙吉『悩める露西亜』

友人から黒田乙吉『ソ連革命をその目で見た一日本人』を恵送された。これは大正九年に弘道館から『悩める露西亜』として刊行の一冊で、昭和四十七年に世界文庫によって、新たなタイトルで復刻されていたのである。 黒田のことは『近代出版史探索Ⅲ』540で、ロ…

古本夜話1468 ジョン・リード『反乱するメキシコ』

ジョン・リードの『反乱するメキシコ』(野田隆、野村達朗、草間秀三郎訳、筑摩叢書、昭和五十七年)は『世界をゆるがした十日間』に比して遅れ、最初の邦訳は昭和四十五年に小川出版から刊行されたが、それもほどなく絶版となっている。この小川出版の一冊…

古本夜話1467 ベンヤミン『モスクワの冬』

ジョン・リード『世界をゆるがした十日間』や『エマ・ゴールドマン自伝』をめぐる数編を書きながら思い出されたのは、ベンヤミンも一九二〇年代にモスクワを訪れていたことで、その記録が『モスクワの冬』(藤川芳郎訳、晶文社、昭和五十七年)として残され…

古本夜話1466 ツヴァイク『人類の星の時間』と「封印列車」

『近代出版史探索Ⅶ』1391のツヴァイクは一九二七年に歴史小説集『人類の星の時間』(片山敏彦訳、みすず書房)を刊行している。「星の時間」とはツヴァイクの造語と見なしていいし、彼はその「序」で記している。 多くのばあい歴史はただ記録者として無差別…

古本夜話1465 エルジェ『タンタン ソビエトへ』

続けてアーサー・ランサムにふれ、彼のロシア革命とのかかわりも既述したので、イギリスとベルギーのちがいはあれ、同時代のエルジェの「タンタンの冒険」シリーズにも言及しておきたい。それはこのシリーズの最初の作品が『タンタンのソビエト旅行』でもあ…

古本夜話1464 アーサー・ランサムとロシア革命

前回、アーサー・ランサムの著作として、『一九一九年のロシア、六週間』や『ロシア革命の危機』を挙げておいたが、彼もまたジョン・リードの『世界をゆるがした十日間』を同じように体験していたのである。そのために『アーサー・ランサム自伝』の「はじめ…

古本夜話1463 「ツバメ号」シリーズ以前のアーサー・ランサム

アーサー・ランサムは『ツバメ号とアマゾン号』(神宮輝夫訳、岩波書店、昭和三十三年)に始まる十二冊の冒険児童文学の著者としてよく知られている。だが『アーサー・ランサム自伝』(白水社、昭和五十九年)、シューブローガン『アーサー・ランサムの生涯…

出版状況クロニクル187(2023年11月1日~11月30日)

23年10月の書籍雑誌推定販売金額は848億円で、前年比0.4%増。 書籍は498億円で、同2.8%増。 雑誌は350億円で、同2.9%減。 雑誌の内訳は月刊誌が295億円で、0.2%減、週刊誌は54億円で、15.6%減。 返品率は書籍が33.8%、雑誌が44.9%で、月刊誌は43.7%、週刊誌…