2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧
今橋映子編著『展覧会カタログの愉しみ』(東大出版会)があるのは承知しているけれど、展覧会カタログの全容は把握しがたく、刊行も古本屋の店頭で出合うまでは知らずにいたことも多い。それに市販されていないので、目にふれる機会も少ない。そのような一…
大下藤次郎の『水彩画之栞』に序文ともいうべき「題言」をよせた森鷗外は、大下が明治二十三年、二十一歳の時に書いた手記「ぬれきぬ」(「濡衣」)によって、大正二年に「ながし」という小説を書いている。このことは前々回の『みづゑ』の土方定一「藤次郎…
水彩画というと、ただちに思い出されるのは島崎藤村の「水彩画家」である。この作品は春陽堂の『新小説』の明治三十七年一月号に掲載され、同四十年にやはり春陽堂の藤村の最初の短編集『緑葉集』に収録されている。 水彩画の隆盛が明治三十年代から四十年代…
宮嶋資夫の義兄大下藤次郎のことは何編か書かなければならないので、本探索1353に続けてと思ったのだが、少しばかり飛んでしまった。大下に関しては他ならぬ『みづゑ』が創刊900号記念特集「水彩画家 大下藤次郎」(昭和五十五年三月号)を組んでいる。 ( 9…
実用書に関して、出版社、著者、翻訳者の問題も絡めて、もう一編書いてみたい。実用書の出版史は『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』(昭和五十六年)にその一角をうかがうことができるけれど、こちらの世界も奥が深く、謎も多いので、とても細部まで…
かつて「実用書と図書館」(『図書館逍遥』所収)を書き、日常生活に役立つことを目的とする実用書出版社にふれたことがあった。実用書はそうしたコンセプトゆえに、生活と時代の要求に寄り添い、ロングセラーとして版を重ねているものが多いのだが、文芸書…
佐藤紅霞に関しても、もう一編書いておきたい。それは最近になって彼の『貞操帯秘聞』という一冊を入手しているからだ。同書は昭和九年に丸之内出版社から刊行され、その発行者は麹町区丸の内の多田鐵之助で、版元にしても出版社名にしても、ここでしか目に…
本探索1354の百瀬晋『趣味のコクテール』だが、『近代出版史探索』19の佐藤紅霞が戦後になって刊行した『洋酒』(ダヴィッド社、昭和三十四年、三版)を読んでみると、酒を飲まない百瀬がそうした一冊を書くことができたとは思えないのである。 佐藤の『洋酒…
もう一冊、大杉栄と伊藤野枝の共著があることを思い出したので、そちらも書いておきたい。それはアルスからか刊行された菊半截判、フランス装三三八ページの『二人の革命家』で、奥付には大正十二年六月初版、同十二年十二月十七版とあり、この版も前回の『…
ここで宮嶋資夫の『坑夫』に関して、ほとんど知られていないエピソードを付け加えておこう。 私の手元にある大杉栄、伊藤野枝共著『乞食の名誉』は大正十二年九月二十八日の発行で、同年十二月一日の九版となっている。これは大杉の「死灰の中から」に、伊藤…
22年12月の書籍雑誌推定販売金額は972億円で、前年比5.7%減。 書籍は522億円で、同3.5%減。 雑誌は449億円で、同8.2%減。 雑誌の内訳は月刊誌が388億円で、同9.1%減、週刊誌が61億円で、同1.8%減。 返品率は書籍が29.0%、雑誌が37.8%で、月刊誌は36.4%、週刊…