出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1082『東京書籍商組合員図書総目録』

『一誠堂古書籍目録』に続いて、やはり巌松堂の同じ目録『日本志篇』を取り上げてきたわけだが、これらには範があったと思われる。 それは『東京書籍商組合員図書総目録』(以下『図書総目録』)である。この目録は拙稿「図書総目録と書店」(『書店の近代』…

古本夜話1081 波多野重太郎と『日本志篇』

前回の『一誠堂古書籍目録』の他にも、少し遅れてだが、同時代に古書籍目録が出されている。それは巌松堂書店古典部が昭和三年に刊行した『古書籍在庫目録日本志篇』(以下『日本志篇』)である。こちらは四六判で、発行者は波多野重太郎となっている。彼も…

古本夜話1080 酒井宇吉と『一誠堂古書籍目録』

前回の水谷不倒の『明治大正古書価之研究』の背景にあるのは、明治二十年代における近代出版業界の誕生と成長による古典類の復活だった。それらを通じての近代古書業界も形成され、そうした動向は古書展覧会や古書販売目録に支えられ、大正九年の東京古書籍…

古本夜話1079 水谷不倒『明治大正古書価之研究』、駿南社、奥川栄

前回は『其磧自笑傑作集』などの校訂者である水谷不倒に言及できなかったので、ここでふれておきたい。水谷は『日本近代文学大事典』に立項を見出せるので、まずはそれを要約してみる。 水谷は近世文学研究者で、安政五年に国学者水谷民彦の子として名古屋に…

古本夜話1078  円本としての博文館「帝国文庫」

やはり円本時代の昭和三年に博文館から「帝国文庫」の再版が刊行され、『博文館五十年史』はそれに関して次のように述べている。 「帝国文庫」は前年正編五十編、続編五十編が大好評の裡に完成したが、爾来既に数十年を過ぎ、偶たま世間には定価一円にて故書…

古本夜話1077 大槻文彦『言海』と林平次郎

前々回の吉川弘文館の『日本随筆大成』の合板、つまり共同出版のかたちにふれたことで、吉川半七と吉川弘文館がやはり大槻文彦の『言海』を共同出版していたことを思い出した。(『日本随筆大成』) これは背と本扉には『言海』、奥付には『改版言海縮刷』と…

古本夜話1076 桜井庄吉、日本随筆大成刊行会、『日本図会全集』

前回の日本随筆大成刊行会は昭和三年から四年にかけて、『日本図会全集』全十二巻を出版している。これは江戸時代に出された代表的な名所図会を収録したものであり、『図解現代百科辞典』(三省堂、昭和八年)を引いてみると、「名所図会」は以下のように述…

古本夜話1075 早川純三郎、『日本随筆大成』、吉川弘文館

『嬉遊笑覧』だが、これは昭和円本時代にも刊行されている。それは『日本随筆大成』の別巻としてで、その別巻は各二冊からなる大田南畝『一話一言』、『嬉遊笑覧』、寺島良安編『和漢三才図会』である。『一話一言』上下は所持しているけれど、残念ながら『…

古本夜話1074 「有朋堂文庫」、魯山人、岡本かの子「食魔」

前回の『骨董集・燕石雑志・用捨箱』を取り上げるに当たって、「有朋堂文庫」は、同じく昭和円本時代に刊行された興文社の類似企画『日本名著全集』と比べ、入手した巻が少ないと思っていた。だが実際は逆で、古本屋で一冊ずつ拾っているうちに、いつの間に…

古本夜話1073 「有朋堂文庫」と『骨董集・燕石雑志・用捨箱』』

前回の 喜多村信節『嬉遊笑覧』が山東京伝『骨董集』や柳亭種彦『用捨箱』と通底していることを既述しておいたが、この両書が同じ一冊に収録され、昭和円本時代に刊行されている。それは「有朋堂文庫」シリーズで、『骨董集・燕石雑志・用捨箱』としての出版…

出版状況クロニクル149(2020年9月1日~9月30日)

20年8月の書籍雑誌推定販売金額は840億円で、前年比1.1%減。 書籍は433億円で、同4.6%増。 雑誌は40億円で、同6.5%減。 その内訳は月刊誌が335億円で、同6.8%減、週刊誌は71億円で、同5.1%減。 返品率は書籍が37.2%、雑誌は40.1%で、月刊誌は39.9%、週刊誌は…