出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

旧刊メモ

大藪春彦とスティーヴンスン

少年時代の読書は小説が中心だったけれども、その主人公やストーリーに引きこまれるだけでなく、物語の展開の中にあって、登場人物たちが言及する別の小説や書物にも必然的に興味を抱かされたものだった。そのような作家のひとりに大藪春彦がいて、以前に彼…

多島斗志之『〈移情閣〉ゲーム』

講談社ノベルスなどの創刊に始まる新しいプログラムノベルスの流れは多くの注目すべき作家たちを生み出していった。一作だけで消えてしまった作家もいたけれども。それらの人々と作品に関して、言及していくときりがないので、志水辰夫と大沢在昌にとどめて…

「プログラムノベルス」と「プログラムピクチャー」

八〇年代に創刊された「プログラムノベルス」が多くの作家たちを生み出したことを既述したが、大沢在昌はまさにその典型であろう。彼の長編第一作『標的走路』 は八〇年に双葉社ノベルス、第二作『ダブル・トラップ』 は八一年に太陽企画出版のサンノベルス…

志水辰夫『うしろ姿』

〇五年に刊行され、〇八年に文庫化された志水辰夫の短編集『うしろ姿』 (文春文庫)の「あとがき」は、それまで作家たちが自覚しつつあったにしても、当時はほとんど誰も発してこなかった出版状況をめぐる生々しい言葉と感慨が書きこまれていた。それに志水…

相田良雄『出版販売を読む』

みすず書房の元営業部長だった相田良雄が亡くなった。相田も戦前には羽田書店に在籍し、戦後のみすず書房の創業メンバーの一人で、四十年以上にわたって営業に携わり、彼ならではの人文書の営業と販売の指針を具体的に教えてくれた。かつて出版社を立ち上げ…

三冊の日本住宅公団史

『週刊ダイヤモンド』(9/5号)が「ニッポンの団地」特集を組んでいる。 1955年に日本住宅公団が設立され、翌年に大阪の金岡団地や千葉の稲毛団地の竣工が始まり、58年には団地族という言葉も生まれた。ダイニングキッチンと六畳、四畳半の二間からなる2DKに…

中島梓『ベストセラーの構造』再読

中島梓が死去した直後に書いたものであるが、どこにも掲載していないので、[旧刊メモ]の一編とする。彼女は中島梓名で評論、栗本薫名でファンタジー大河小説「グイン・サーガ」やミステリーなどを書き、その広範な執筆活動は、80年代以後のファンタジーや…