出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話960 柳田国男と『山島民譚集』

前回ふれておいたように、金田一京助の『北蝦夷古謡遺篇』は「甲寅叢書」、知里幸恵の『アイヌ神謡集』は「爐辺叢書」の一冊として、それぞれ郷土研究社から刊行されたのである。(『北蝦夷古謡遺篇』) (『アイヌ神謡集』) 「甲寅叢書」に関しては、拙稿…

古本夜話959 金田一京助『北の人』と知里幸恵『アイヌ神謡集』

伊波普猷の『古琉球』の「改版に際して」の中に、青磁社の山平太郎が見え、「北人の『ユーカラ概説』に対して、南人の『おもろ概説』が欲しい」といわれ、それは少なくとも一ヶ年を要するので、代わりに『古琉球』の「改版」を提案したとの言があった。 その…

古本夜話958 伊波普猷『古琉球』

南島研究の嚆矢が、前回もその名を挙げた伊波普猷の『古琉球』であることは今さらいうまでもないだろうし、現在では今世紀に入って岩波文庫化もされ、読むことに関してもアクセスが容易になっている。ところがその出版史をたどってみると、それが困難な道筋…

古本夜話957 「爐辺叢書」と本山桂川『与那国島図誌』

前回の『生蕃伝説集』と併走するように、同時代に南島文献が出され始めていた。柳田国男研究会編『柳田国男伝』(三一書房)は、「甲寅叢書」の継続事業ともいうべき郷土研究社の「炉(ママ)辺叢書」が、南島研究史に大きな意味を持ち、全三十六冊のうち八冊が…

古本夜話956 佐藤融吉、大西吉寿『生蕃伝説集』と杉田重蔵書店

きだみのるは『道徳を否む者』の中で、台湾の町の印象に関して、「アルジェリア・モロッコに範を取ったと云われる台北の町は美しく、そして歩道は張り出した二階の下になって、日射が遮られていた」と記している。そして「植民地に漂う異種文化は少年の中に…

古本夜話955 トラピスト修道院と間世潜『トラピスチヌ大修道院』

きだみのるの『道徳を否む者』において、「私」は十五歳の少年時代を回想する。「少年」は台湾の父のところから東京の叔父の家に引き取られ、中学時代を送っていた。しかしそれは台湾の自然と光に包まれた暮らしと異なり、「溝泥の霧の中で生活しているよう…

古本夜話954 きだみのる『道徳を否む者』

もう一編、ジョゼフ・コットに関して書いてみる。 前回取り上げた小説 『道徳を否む者』は『きだみのる自選集』第二巻に収録されている。これは明らかにきだみのる=山田吉彦の自伝というべきものだが、「山村槙一の手記」によるとのサブタイトルが付されて…

古本夜話953 ジョゼフ・コットとオリバー・ロッジ『心霊生活』

本連載946から少し飛んでしまったが、もう一度山田吉彦に戻る。山田はきだみのるの名での『道徳を否む者』の中で、「J…C…」=ジョゼフ・コットのポルトレを描いている。コットのことは本連載926でもふれているが、もう少し詳細にたどってみる。 彼は日…

古本夜話952 花森安治、生活社『くらしの工夫』、今田謹吾

本連載927に続けて、同948でも生活社にふれたこともあり、やはり生活社に関しても一編を挿入しておきたい。それは後者を書き終え、浜松の時代舎に出かけたところ、ずっと探していた生活社の一冊を見つけることができたからでもある。 その一冊とは昭和…

古本夜話951 マスペロ『道教』

続けてマスペロに言及してみる。まず『世界名著大事典』(平凡社)の著者立項を挙げてみよう。 マスペロ Henri Maspero(1883-1945)フランスの中国学者。オリエント史の大家ガストン・マスペロの子。中国学者シャヴァンヌに師事。ハノイ極東学院研究員、コ…

出版状況クロニクル137(2019年9月1日~9月30日)

19年8月の書籍雑誌推定販売金額は850億円で、前年比8.2%減。 書籍は414億円で、同13.6%減。 雑誌は435億円で、同2.4%減。その内訳は月刊誌が359億円で、同1.2%減、週刊誌は75億円で、同7.5%減。 書籍の大幅減は7月に大物新刊が集中したこと、前年同月が3.3%…