出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話513 島地黙雷『維摩経』

もう一冊、光融館の「仏教通俗講義」シリーズを見つけているので、それも書いておこう。それは前回挙げた島地黙雷の『維摩経』である。本連載510でふれた渡辺海旭の増上寺での日曜講演において、相馬黒光たちに語ったテキストの黙雷版ということになる。…

古本夜話512 光融館と南条文雄『梵文阿彌陀経』

本連載505でふれた南条文雄の『懐旧録』の中に、「牛津生活一―梵語研究」と題された一章がある。そこで東洋文庫版のサブタイトルとなっている「サンスクリット事始め」が語られている。南条は明治十一年八月にロンドンに着き、翌年の正月に紹介状をもらい…

混住社会論122 カムマーン・コンカイ『田舎の教師』(勁草書房、一九八〇年)

前回の谷恒生の『バンコク楽宮ホテル』の一文を書くために、難民写真集、タイ文献などに目を通した。それらは谷の小説のモデルとされている人物たちによる『難民 終りなき苦悩』(文・犬養道子、写真・小林正典、岩波書店)や『難民 国境の愛と死』(写真と…

古本夜話511 実業之日本社『岡田式静坐法』と大田黒重五郎

本連載143「岡田虎二郎、岸本能武太『岡田式静坐三年』、相馬黒光」を書いた時、明治四十五年に実業之日本社から刊行された『岡田式静坐法』は未見であると述べておいたが、その後入手しているし、前回とも関連するので、これにもふれておきたい。 [f:id:…

古本夜話510 渡辺海旭と相馬黒光『黙移』

本連載506などで、渡辺海旭が大東出版社の名付け親にして後ろ盾であったことを既述しておいた。その渡辺の生涯に関して、同じく大東出版社から刊行された芹川博通の『渡辺海旭研究―その思想と行動』(昭和五十三年)を参照してきた。その第四章「渡辺海旭…

混住社会論121 谷恒生『バンコク楽宮ホテル』(講談社、一九八一年)

バンコクは癌が進行していくような速さで拡大し、周辺の田園地帯を飲み込み、水田を、投機的な住宅開発、 あわただしく作られた郊外地図、そして巨大な新しいスラムへと変化させた。ベネディクト・アンダーソン『比較の亡霊』(糟谷啓介他訳、作品社) 本連…

古本夜話509 東方書院『昭和新纂国訳大蔵経』

『世界宗教大事典』によれば、大東出版社の『国訳一切経』と東方書院の『昭和新纂国訳大蔵経』はいずれも「漢訳大蔵経」の国訳ということになる。巻数は前者が百五十六巻、後者は四十八巻と異なるにしても、刊行開始はいずれも昭和三年である。これは円本時…

古本夜話508 鈴木大拙と大東出版社版『日本的霊性』

もう一冊大東出版社の本を取り上げてみたい。それはやはり『世界聖典全集』の執筆者で、『大正新修大蔵経』の会員でもあった鈴木大拙の『日本的霊性』である。これは昭和十九年十二月に初版が出されているが、私の所持しているのは戦後の二十一年三月の再版…

混住社会論120 矢作俊彦『THE WRONG GOODBY ロング・グッドバイ』(角川書店、二〇〇四年)

(角川文庫版)(『複雑な彼女と単純な場所』) 横浜には絵になる景色の港などどこにもない。私が生まれてこのかた、一度としてそんなものは存在しない。たしかに十数年前まで、調布の日活撮影所の塀の中に、その幻影が転がっていた。 しかし、幻影であっても…

古本夜話507 木村鷹太郎と『バイロン傑作集』

岩野喜久代の『大正・三輪浄閑寺』にはここにしか書かれていないと思われる人物のエピソードも含まれているので、それも紹介しておきたい。しかもその人物は本連載83の『プラトーン全集』の訳者にして、『世界聖典全集』の『波斯教聖典』の訳者でもあるか…

出版状況クロニクル89(2015年9月1日〜9月30日)

出版状況クロニクル89(2015年9月1日〜9月30日)15年8月の書籍雑誌の推定販売金額は1094億円で、前年比7%減。 その内訳は書籍が497億円で、前年比1.5%減、雑誌は597億円で11%減、そのうちの月刊誌は11.3%減、週刊誌は10.6%減。雑誌は5月に続いて2ケタの…