出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話1138 博文館「少年叢書」と興文社「少年叢書漢文学講義」

漢文書出版の裾野は想像する以上に広く拡がり、それは博文館も例外ではなく、明治二十五年には「支那文学全書」全二十四巻の刊行を始めている。そのことに関して、『博文館五十年史』は書影を示し、「当時国文学の気勢稍ゝ衰へ、漢文学が漸く頭を擡げたので…

古本夜話1137 米田祐太郎、支那文献刊行会『支那珍籍全集』、伊藤禱一

こちらは昭和円本時代になってしまうのだが、やはり漢文書に関連すると見なせる『支那珍籍全集』が刊行されている。これは『全集叢書総覧新訂版』によれば、昭和三年に甲子社から四冊出され、その後は続かなかったとされる。(『支那珍籍全集』) 私にしても…

古本夜話1136 至誠堂「新訳漢文叢書」

続けて漢文出版を取り上げてきたけれど、明治から大正にかけて、思いがけずに新書判や袖珍判としても出版されていたのである。 紀田順一郎の『古書収集十番勝負』(創元推理文庫)において、その勝負の六番目に「有朋堂対訳詳解漢文叢書」が挙げられていた。…

古本夜話1135 小杉放庵、公田連太郎『全訳芥子園画伝』とアトリエ社

前回の『国訳漢文大成』続編の『資治通鑑』を始めとする「経子史部」全二十四巻の訳注のほとんどは公田連太郎によるものである。もちろん正編も『史記本紀』などの四冊を受け持っているし、この事実からすれば、『国訳漢文大成』の企画と編集自体が公田を抜…

古本夜話1134 鶴田久作と『国訳漢文大成』

かつて「鶴田久作と国民文庫刊行会」(『古本探究』所収)を書き、その際は「世界名作大観」とダントン、戸川秋骨訳『エイルヰン物語』を取り上げのだが、『国訳漢文大成』と『国訳大蔵経』はそれぞれ二万部という成功を収めたことにふれておいた。またその…

古本夜話1133 早稲田大学出版部『漢籍国字解全書』

本探索1130の石井研堂の『増訂明治事物起原』における「予約出版の始」で、漢籍の複刻が挙げられていたこともあって、以前に早稲田大学出版部の『漢籍国字解全書』と冨山房の『漢文大系』の何冊かを拾っていたことを思い出した。これらはいずれも明治末に刊…

古本夜話1132 気賀林一『編集五十年』と『頭註国訳本草綱目』補遺

二回ほど飛んでしまったが、ようやく気賀林一『編集五十年』(医道の日本社、昭和58年)が出てきたので、『頭註国訳本草綱目』にまつわる補遺編を書いておきたい。この気賀の著書の版元は月刊『漢方の臨床』や『医道の日本』を刊行する横須賀市の漢方雑誌社…

出版状況クロニクル155(2021年3月1日~3月31日)

21年2月の書籍雑誌推定販売金額は1203億円で、前年比3.5%増。 書籍は718億円で、同0.6%増。 雑誌は484億円で、同8.0%増。 20年12月、21年1月に続く3ヵ月トリプル増で、かつてない連続プラスとなっている。 雑誌の内訳は月刊誌が412億円で、同11.5%増、週刊誌…

古本夜話1131 野口米次郎『芸術殿』と春陽堂文庫出版株式会社

本探索1126で、昭和六年の国劇向上会による演劇『芸術殿』の創刊、同1127で春陽堂と大日本文庫刊行会の関係にふれてきたこともあって、それらにまつわる一編も書いておこう。 その雑誌のほうを意識していたのかは不明だが、『芸術殿』という同じタイトルの一…

古本夜話1130 石井研堂『増訂明治事物起原』と「予約出版の始」

また春陽堂が続いてしまったので、ここで単行本ではあるけれど、大正十五年刊行の石井研堂の『増訂明治事物起原』も挙げておきたい。そこには『近代出版史探索』152で既述したように、「予約出版の始」という項目もあるからだ。残念ながら「外交販売の始」は…

古本夜話1129 白井光太郎、鈴木眞海、『頭註国訳本草綱目』

『春陽堂書店発行図書総目録』を繰っていて、『頭註国訳本草綱目』が昭和九年に十五冊目の索引を刊行し、完結したことをあらためて知った。十五年ほど前だが、今はなき三島の北山書店で『頭注国訳本草綱目』第一冊から第六冊までの五冊を購入している。なお…

古本夜話1128 吉澤義則、武藤欽、文献書院「全訳王朝文学叢書」

前回の「大日本文庫」の各巻校訂者の名前を見ていて、「文学篇」の『物語文学集』を吉澤義則が担当していたることに気づかされた。 (「大日本文庫」) 実はいつか取り上げなければならないと思っていた「全訳王朝文学叢書」の訳者の一人が吉澤だったからだ…

古本夜話1127 春陽堂「大日本文庫」

ずっと続けて予約出版と外交販売による古典籍類の全集や大系などをたどってきたけれど、そうした企画は様々な出版社に持ち込まれ、おそらくスポンサーや公的助成金付きで、刊行されていったと思われる。まだ残されているそれらをいくつか取り上げてみたい。 …

古本夜話1126 創元社『シェークスピヤ全集』一巻本

これは戦後のことになってしまうが、坪内逍遥訳『シェークスピヤ全集』の再刊にもふれておきたい。 それを意識したのは辻佐保子の『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』(中央公論新社)を読んだからでもあった。私は辻邦生のよき読者とはいえないけれど、『…

古本夜話1125 正宗白鳥『人間嫌ひ』、坪内逍遥訳『新修シェークスピヤ全集』、松本清張『行者神髄』

本探索1120で挙げた正宗白鳥『人間嫌ひ』はまったく読まれていないだろうし、『近代出版史探索Ⅴ』854の『人間』の、昭和二十四年における連載時の評判に関しても伝えられていない。 ただイニシャル表記であっても、戦後の混乱と再生の中にある出版界の出来事…

古本夜話1124 大日本歌人協会『支那事変歌集 戦地篇』

前回、松村英一が『田園短歌読本』を編むにあたって、改造社の『新万葉集』と『支那事変歌集 銃後篇』から選出したことにふれておいた。(『田園短歌読本』)(『新万葉集』) 実は一年ほど前に、浜松の時代舎で、『支那事変歌集 戦地篇』を入手していて、こ…

古本夜話1123 松村英一『田園短歌読本』と海南書房

前回の紅玉堂書店の「新釈和歌叢書」の著者に松村英一がいて、同じく彼は『歌集やますげ』『現代一万歌集』も上梓し、「新歌壇の中堅作家」、『短歌雑誌』の編集者、寄稿者の一人であったことを既述しておいた。 その松村が昭和十七年に海南書房から刊行した…

古本夜話1122 紅玉堂書店「新釈和歌叢書」と半田良平『香川景樹歌集』

前回の『桂園遺稿』に関連して、確か二十年以上前に、紅玉堂書店の『香川景樹歌集』を拾っていたことを思い出した。 その当時、「西村陽吉と東雲堂書店」(『古本探究』所収)を書き、西村が東雲堂書店の編集者で、若山牧水『別離』、石川啄木『一握の砂』、…

出版状況クロニクル154(2021年2月1日~2月28日)

21年1月の書籍雑誌推定販売金額は896億円で、前年比3.5%増。 書籍は505億円で、同1.9%増。 雑誌は391億円で、同5.7%増。 前月の20年12月に続くトリプル増である。 雑誌の内訳は月刊誌が321億円で、同8.9%増、週刊誌は69億円で、同7.2%減。 返品率は書籍が31.…

古本夜話1121 五車楼『桂園遺稿』

前回、正宗敦夫は井上通泰に師事して歌を学び、与謝野寛・晶子夫妻ともに『日本古典全集』を編集して予約出版で刊行し、その別バージョンの「歌文珍書保存会本」として、井上の『万葉集新考』も出していることを既述しておいた。 (『日本古典全集』) そう…

古本夜話1120 正宗敦夫と『日本古典全集』

『世界名著大事典』第六巻の「全集・双書目録」を繰っていると、『日本古典全集』も見つかり、それによって初めてまとまった大部の明細リストを目にすることができた。ただそれは一ページ半に及ぶので、挙げられないし、またこの全集の揃いは古本屋でも見た…

古本夜話1119 原田三夫と『誰にもわかる科学全集』

三回続けて中塚栄次郎と国民図書の外交販売を主とする「大系」や「全集」をたどってきたけれど、その流通販売のアウトラインはつかめても、実際の売上、つまりどれほどの成功であったかは不明である。ただ現実的にはすべてが成功したわけでもなく、それは『…

古本夜話1118 時事新報社『福澤全集』と国民図書

国民図書株式会社の全集類については、拙稿「中塚栄次郎と国民図書株式会社」の他に、『近代出版史探索Ⅲ』551で『現代戯曲全集』、本探索1019で『泡鳴全集』、前々回と前回で『校註日本文学大系』『校註国歌大系』を取り上げてきた。そこでもうひとつの『福…

古本夜話1117 国民図書『校註国歌大系』と佐伯常麿

前回の『校註日本文学大系』に少し遅れて昭和三年からほぼ併走するかたちで、やはり国民図書による『校註国歌大系』が刊行されている。(『校註日本文学大系』) これは『世界名著大事典』の「全集・双書目録」において、誠文堂版が挙げられ、次のような解題…

古本夜話1116 国民図書『校註日本文学大系』と中山泰昌

小川菊松の『出版興亡五十年』を援用しながら、吉川弘文館の外交販売にふれてきたが、そうした出版社・取次・書店という「正常ルート」以外の流通販売は古典類の出版にあって、かなり多く採用されていたと見るべきなのかもしれない。しかもそれを当の小川と…

古本夜話1115 石原俊明、国際情報社、大正通信社『国際画報』

前回、小川菊松が証言する「外交販売専門で、大正期に早くも大成功した」石原信明の名前を挙げておいたが、石原は『出版人物事典』にも立項が見出せるので、まずそれを引いてみる。 [石原俊明 いしはら・としあき]一八八八~一九七三(明治二一~昭和四八…

古本夜話1114 村上信明『出版流通図鑑』と外交販売の系譜

続けて二編ほど「外交販売」に関して書いてみる。 昭和六十三年に出版業界紙『新文化』の記者だった村上信明による『出版流通図鑑』(新文化通信社)が出された。これは出版社・取次・書店という「正常ルート」以外の十四のルートを取材し、上梓した一冊で、…

古本夜話1113 書籍専門取次と外交販売

前回の岩波書店『国書総目録』は戦後の出版だし、その流通販売が岩波出版神話に基づく取次や書店、とりわけ全国各地の老舗書店の学校、図書館、職域などを中心とする外商を通じてのものであったと考えられる。それを抜きにして『国書総目録』全八巻の五千部…

出版状況クロニクル153(2021年1月1日~1月31日)

20年12月の書籍雑誌推定販売金額は1148億円で、前年比8.3%増。 書籍は552億円で、同8.3%増。 雑誌は596億円で、同8.3%増。 かつてないトリプルの8.3%増である。 雑誌の内訳は月刊誌が523億円で、同11.2%増、週刊誌は73億円で、同8.7%減。 返品率は書籍が29.9…

古本夜話1112 佐村八郎『国書解題』、岩波書店『国書総目録』、梅徳

本探索1107、1108で続けて『古事類苑』と『群書類従』をたどってきたので、これは戦後の出版ではあるけれど、『国書総目録』にもふれてみたい。実は拙稿「浜松の泰光堂書店の閉店」(『古本屋散策』所収)で既述しているように、二十年ほど前のことになるが…