出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話20 クラウス『日本人の性生活』に関するミステリ

フックスの『風俗の歴史』やキントの『女天下』のいずれも、挿絵や図版も含めた完全な邦訳が出版されていなことを既述しておいた。だがあらためて考えてみると、十九世紀末から二十世紀初頭にかけて刊行されたセクソロジー文献は、いまだにほとんど抄訳の状…

6 「女王」中村うさぎ

一九七〇年代半ばに起きた戦後日本の消費社会化に続いて、主要幹線道路沿いにロードサイドビジネスが林立する郊外消費社会が形成され始めたのは八〇年だった。全国的に広がった郊外消費社会の出現は風景、生活、環境、産業構造のすべてをドラスチックに変え…

古本夜話19 佐藤紅霞と『世界性欲学辞典』

梅原北明の出版人脈について、全員に言及したくなる誘惑に駆られてしまうが、それはこの[古本夜話]の連載の目的から外れるので断念するしかないだろう。それでもテーマと本の関係で必要とあれば、召喚するつもりでいる。ここでは何度も名前を挙げたこともあ…

5 中内功の流通革命

〇六年に「中内ダイエーと高度成長の時代」のサブタイトルが付された、佐野眞一編著『戦後戦記』(平凡社)に、「オクターヴ・ムーレと中内㓛」という一文を寄せたことがあった。残念ながら、ムーレの名前が馴染みのないものだったこともあり、それは編集者…

古本夜話18 下位春吉と『全訳デカメロン』

梅原北明の『全訳デカメロン』刊行に際し、ボッカチオ五百五十年祭と出版記念パフォーマンスとしての浅草での仮装パレードを、前回伊藤竹酔の証言を通じて紹介しておいた。そのメンバーの中に一人だけ、梅原の出版人脈と決めつけられない人物がいて、それは…

4 エミール・ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』

ジョン・ダワーは『敗北を抱きしめて』の中で、パンパンを始めとする占領下の日本人たちがアメリカに魅せられたのは、その豊かで快適な生活ゆえだと述べていた。それはアメリカ的消費社会を体現しているからだと解釈できよう。占領時の日本は第一次産業就業…

古本夜話17 『竹酔自叙伝』と朝香屋書店

坂本篤は『「国貞」裁判・始末』の中で、当然のことながら、梅原北明の一方の盟友であった伊藤竹酔にふれ、「たいへんな編集者」にして「一つの道を拓いた男」で、「梅原北明がいちばん最初に出したボッカチオの『デカメロン』とか、『ロシア革命史』なんか…

 3 アンドレ・シフレン『理想なき出版』

ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』の原書『Embracing Defeat』は一九九九年にハードカバーとして出版され、翌年にペーパーバック化されている。私が入手したのは後者で、これはニュープレス社発行、ノートン出版社発売となっている。 " src="http://imag…