出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

南方閑話 の検索結果:

古本夜話37 岡書院の『南方随筆』

…二月に坂本書店から『南方閑話』、五月と十一月に岡書院から『南方随筆』 と『続南方随筆』 が刊行された。この三冊の刊行を機にして、熊楠は一部の愛読者たちばかりでなく、広く知られる存在になっていったように思われる。 (沖積舎復刻版)以前にそれほど間を置かず、浜松の時代舎で『南方閑話』と『南方随筆』 の二冊を入手し、その感を強くした。それまでに熊楠が様々なリトルマガジンに多くの論文を寄稿し、高い評価を得ていた事実は承知しているが、やはり書物というかたちにあらためて接してみて、当時の…

古本夜話36 南方熊楠と酒井潔

…書店から刊行された『南方閑話』で、編輯責任者を本山桂川とする「閑話叢書」の第一巻となっている。もちろん発行者は坂本篤である。岡書院の『南方随筆』 は同年五月出版だから、三ヵ月先行していたことになる。『南方閑話』の印税にまつわる話を岡茂雄が『本屋風情』 (中公文庫)の中で、イニシャルを用いて書いている。 大正十五年の春『南方随筆』 上梓の少し前、S書店から『南方閑話』が出版されているが、その世話をしたM氏が、翁に届けられたものは、その何冊かと金三十円だけで、もう何冊送ってくれと…

古本夜話16 坂本篤の「口伝・艶本紳士録」と『文芸市場』

…川とする南方熊楠の『南方閑話』や中山太郎の『土俗私考』に始まる「閑話叢書」、自らの企画による「性の表徴叢書」と銘打った、澤田五倍子の『無花果』、最初の艶本『末摘花』を出版しているうちに、関東大震災後になって、梅原たちとの出版人脈が形成されたと思われる。大正十四年十一月に梅原によって創刊された『文芸市場』は当初プロレタリア雑誌として始まったが、昭和二年六月号から猟奇的な色彩を強め、翌年創刊の『グロテスク』につながるエロ・グロ・ナンセンスの発祥となる。『文芸市場』の内容にまつわる…