出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル141(2020年1月1日~1月31日)

 19年12月の書籍雑誌推定販売金額は1060億円で、前年比8.9%減。
 書籍は509億円で、同13.1%減。
 雑誌は550億円で、同4.6%減。
 その内訳は月刊誌が470億円で、同4.2%減、週刊誌は80億円で、同6.6%減。
 返品率は書籍が32.9%、雑誌は38.8%で、月刊誌は38.1%、週刊誌は42.7%。
 書籍の返品率の大幅減は送品が少なかったことが要因で、推定出回り金額は前年比15.8%減。
 雑誌と月刊誌の返品率が40%を割ったのは、19年においてこの12月が初めてである。
 それはコミックの『鬼滅の刃』の新刊が初版100万部で刊行され、品切店が続出し、底上げされたことによっている。その結果、コミックは20%増となった。
鬼滅の刃



1.出版科学研究所による1996年から2019年にかけての出版物推定販売金額を示す。
■出版物推定販売金額(億円)
書籍雑誌合計
金額前年比(%)金額前年比(%)金額前年比(%)
199610,9314.415,6331.326,5642.6
199710,730▲1.815,6440.126,374▲0.7
199810,100▲5.915,315▲2.125,415▲3.6
1999 9,936▲1.614,672▲4.224,607▲3.2
2000 9,706▲2.314,261▲2.823,966▲2.6
2001 9,456▲2.613,794▲3.323,250▲3.0
2002 9,4900.413,616▲1.323,105▲0.6
2003 9,056▲4.613,222▲2.922,278▲3.6
2004 9,4294.112,998▲1.722,4280.7
2005 9,197▲2.512,767▲1.821,964▲2.1
2006 9,3261.412,200▲4.421,525▲2.0
2007 9,026▲3.211,827▲3.120,853▲3.1
2008 8,878▲1.611,299▲4.520,177▲3.2
2009 8,492▲4.410,864▲3.919,356▲4.1
2010 8,213▲3.310,536▲3.018,748▲3.1
20118,199▲0.29,844▲6.618,042▲3.8
20128,013▲2.39,385▲4.717,398▲3.6
20137,851▲2.08,972▲4.416,823▲3.3
20147,544▲4.08,520▲5.016,065▲4.5
20157,419▲1.77,801▲8.415,220▲5.3
20167,370▲0.77,339▲5.914,709▲3.4
20177,152▲3.06,548▲10.813,701▲6.9
20186,991▲2.35,930▲9.412,921▲5.7
20196,723▲3.85,637▲4.912,360▲4.3

 前回の本クロニクルで、19年の販売金額は1兆2400億円前後と予測しておいたが、ほぼそのとおりの数字となった。
 ただ電子書籍は3072億円、前年比23.9%増となり、紙と合算すると、1兆5432億円、同0.2%増で、全体では14年の電子出版統計以来、初めて前年を上回った。
 電子書籍の内訳は電子コミックが2593億円、同29.5%増で、そのシェアは前年の80.8%から84.4%へと伸長している。つまり今さら言うまでもないけれど、電子出版市場もコミック次第であることは明白だ。
 しかしそのかたわらで、紙の出版市場は20年には確実に1兆2000億円を割りこみ、数年後には1兆円を下回っていくことになるだろう。そして出版社、取次、書店をさらなる危機へと追いやっていく。
 そうした20年の幕開けを迎えたのである。



2.ジュンク堂書店京都店とロフト名古屋店が2月末に閉店。
 京都店は1988年に開店し、四条通りのビルの1階から5階を占める代表的な大型書店として、30年以上にわたる歴史を有していた。
 この2店に続いて、福岡店も「ビル建て替えによる一時閉店」が伝えられている。

 19年12月の書店閉店は26店と少なく、大型店はなかったので、師走でもあり、小康状態だと考えていたところに、ジュンク堂の閉店の知らせが入ってきた。
 それは本クロニクルでも繰り返し記してきたように、出版物の店頭売上の落ちこみにより、書店の大型店というビジネスモデルが成立しなくなったことを告げていよう。まだ閉店は続くだろう。
 折しも丸善ジュンク堂の「2019年出版社書籍売上ベスト300社」が発表されているが、こちらも20年はどのような推移をたどるのであろうか。



3.『建築知識』(1月号)が特集「世界一美しい本屋の作り方」を組んでいる。
 内容は「本屋さんになりたい」「設け方/来店者を増やす」「見せ方/美しく本を見せる」「基本/知っておきたい基礎知識」の四章建て、75ページに及ぶ、まさに建築雑誌ならではの「美しい本屋の作り方」である。


建築知識 世界の美しい本屋さん

 このような企画は版元のエクスナレッジが、『世界の美しい本屋さん』などといったピクチャレスクな書籍を刊行していることに起因していると思われる。
 だからあえて問わなくてもいいかもしれないが、「経営持続に必要なことは?」というQページがあるにもかかわらず、そのための売上に関して、まったく言及がないのは気になる。

 昨年に栃木県の那須ブックセンターがよく紹介されていたけれど、『文化通信B.B.B』(19年5/1)の「長岡義幸の街の本屋を見て歩く63」によれば、経営者は内装費、商品代、月々の赤字補填のために、開店1年半で、トータルで5000万円を負担しているという。しかも月商目標は300万円であるにもかかわらず。
 コンビニ跡地、60坪でも1日当たり10万円の売上も難しいのが本屋の現実で、それは「美しい本屋の作り方」を応用しても、ほとんど変わらない現実である。
 特集「世界一美しい本屋の作り方」に水を差すようだが、これだけは付け加えておきたい。



4.『朝日新聞グローブ』(1/5)に、北京の民営書店「万聖書園」の創業者劉蘇里(リウ・スーリー)への「香港が香港であるために中国がいま理解すべきこと」というインタビューが掲載されている。聞き手は編集委員との吉岡桂子である。
 それを要約してみる。

* 劉は中国政法大学講師だったが、1989年に天安門事件にかかわり、20ヵ月間拘束され、釈放後の93年に北京の大学街に民営書店「万聖書園」を開業する。
* 中国政府から弾圧を受けた知識人の支援も行ない、書店内カフェセミナーは知識人や市民活動家の集う場になってきたが、近年は強まる統制で開きにくくなっている。
*「万聖書園」ではジョージ・オーウェルの『1984』『動物農場』がよく読まれているが、いつまで出版や販売が許されるのか、それが心配である。
* 中国ではこの5、6年で、言論活動の制限と市民社会への監視が大幅に強まり、大学の教材への審査が厳しくなり、教室に監視カメラが据えられた。密告が奨励され、知識人のSNSアカウントが閉鎖された。
* 中国は鄧小平の改革開放以来、胡錦涛前政権時代まで、共産党統合の本質は変わらずとも、人々の自由と社会の解放の度合は少しずつ広がっていた。しかしそれが習近平政権となり、逆回転したことが、香港で起きている問題の根本にある。
* 中国のその変わり方は香港の人々に恐怖を抱かせ、中国の都市のように、現在の香港の自由や自治を失うのではないかと思い始めた。
* 香港と中国は19世紀半ばから同じ制度のもとに暮らしたことがないし、香港人と中国人がちがうということを理解しないと問題は収束しない。恐怖と経済力だけで、自由と法治を持っている社会を永遠に封じ込めることは無理だ。
* 中国は返還にあたって定めた香港基本法に立ち戻り、香港を香港に戻すことが必要だ。

1984 動物農場


5.『ウエッジ』(2月号)にジャーナリストの野嶋剛による「一国二制度の形骸化を印象付けた香港の『銅鑼湾書店』、いま台湾へ」というレポートが寄せられている。
 これも要約してみる。

ウエッジ

* 2015年に起きた香港の「銅鑼湾書店」関係者失踪事件から4年が過ぎた。元店長の林栄基は台北に居を定め、書店を再建しようとしている。
* その新しい書店の予定場所は台北市繁華街の雑居ビル10階で、台湾でも香港の店名「銅鑼湾書店」をそのまま用いる。
* 香港情勢の深刻さに世界が気づいたのは、「銅鑼湾書店事件」だったといえるし、その結果、林栄基は香港の居場所を失い、台湾に「流亡」し、もはや香港に戻ることは考えていない。
* 台湾でウェブの募金を通して、600万台湾ドル(約2150万円)が集まり、新書店は2月上旬に開店予定で、しばらくは書店で寝泊まりするつもりだ。
* 林栄基は1955年生まれで、若い頃から書店で働き、書店こそ自分の一生の仕事と決めていた。1994年、香港がまだ英国の植民地だった時代に、自分の店である「銅鑼湾書店」を立ち上げた。そして本を売るだけでなく、出版も手がけ、中国では出せない共産党暴露本や内幕本を刊行し、大きな収入源となっていた。 しかしその出版事業が原因で、林栄基は中国で公安に拘束され、他の仲間の4人も同様だった。
* この「銅鑼湾書店」関係者失踪事件は香港社会にとって大きな衝撃だった。それは香港人が香港での仕事を理由に、中国当局によって香港などから連れ去られたことになり、一国二制度の形骸化を世界に強烈に印象づけた。
* 林栄基は違法な書店経営容疑で、中国での厳しい取り調べ、監視生活を送り、香港での「スパイ」になるように強要された。8ヵ月後に香港に戻ったが、書店の仕事はできず、「銅鑼湾書店」も中国政府の影響の強い会社に買い取られていた。「すべて計画通りに着々と手を下されている。私の書店は中国に奪われた」のである。


 奇しくもこの今月に、中国の「万聖書園」、香港と台湾の「銅鑼湾書店」に関するインタビューや記事がほぼ同時に発信されているので、1、2の日本の書店状況と並んで紹介してみた。
 「万聖書園」や「銅鑼湾書店」については『出版状況クロニクルⅣ』『同Ⅴ』で言及してきたが、いずれの書店状況にしても、国家や社会体制を映し出す鏡のような位置にあることが了承される。それならば、日本の書店状況はどのように理解されるべきなのか。それを確認するために、今年も本クロニクルを書き継いでいくしかないだろう。



6.セブン&アイ・ホールディングスは出版事業からの撤退を決定し、セブン&アイ出版を21年春に清算予定。
 同社は1995年設立で、主婦層向け生活情報誌『saita』などを刊行してきたが、この数年は雑誌の凋落を受け、毎年数億円の赤字を計上していた。


saita(2019年1月号、休刊中)

 20世紀までは婦人誌の時代でもあり、1980年から90年代にかけて、『saita』だけでなく、多くの婦人誌が創刊されたが、そのような時代も終わっていくのだろう。
 しかしそれにしても『saita』はセブンを象徴する雑誌で、社員はノルマで100冊以上買わされていたとの複数のコメントが出されていたことにも驚く。
 21世紀になっても、それが続いていたのであろう。そこにも上意下達のフランチャイズシステムが反映されていたことなろう。



7.日本フランチャイズチェーン協会の発表によれば、2019年の主要コンビニ全売上高は11兆1608億円、前年比1.7%増、14年連続の過去最高を更新。
 だが、19年末の店舗数は5万5620店で、前年比0.2%減と初めての減少。
 コンビニ店舗数と書籍雑誌実販売額の推移を示す。

 

■CVSの店舗数・売上高の推移
CVS店舗数CVS書籍・雑誌
実販売額(億円)
200543,8565,059
200644,0364,852
200743,7294,044
200845,4133,673
200946,4703,166
201045,3752,886
201147,1902,642
201249,7352,466
201353,4512,262
201456,3672,117
201556,9981,908
201656,1601,859
201756,3441,576
201856,5861,445
201955,620

 この2005年から18年にかけてのコンビニの出版物販売額推移に、ダイレクトなかたちで、雑誌の凋落が刻印されている。
 この15年間で、5000億円から1400億円と、3分の1に減少しているのである。まだ19年の数字は出されていないけれど、おそらく確実に1400億円を下回ってしまうだろう。1980年代からの雑誌の成長はコンビニとの蜜月に<よっていたのだが、それも終わろうとしているし、コンビニの減少と雑誌コーナーの行方もどうなるのだろうか。



8.『FACTA』(1月号)が、ジャーナリスト永井総太郎の「週刊文春『30万部割れ』ショック」という記事を発信している。
 そのリードは「まるで『雑誌恐慌!』スクープ連発の文春でさえ止まらぬ部数減。ネットの収入増で補い切れるか。」で、次の「週刊誌実売部数の推移(日本ABC協会調べ)も付されている。

 

■週刊誌実売部数の推移
週刊文春
(文芸春秋)
週刊新潮
(新潮社)
週刊現代
(講談社)
週刊ポスト
(小学館)
2009年 1-6月486,954414,781227,988269,821
2014年 1-6月450,383329,415352,521278,904
2015年 1-6月416,820313,328302,036218,848
2016年 1-6月435,995270,054322,857243,020
2017年 1-6月372,408247,352264,089217,331
2018年 1-6月335,656251,403209,025211,336
2019年 1-6月287,241197,735208,014190,401

 ついに「文春砲」の『週刊文春』ですらも19年上半期には30万部を割ってしまい、『週刊新潮』も20万部を下回ってしまった。
 一般週刊誌は『週刊朝日』など新聞系も含めて12誌だが、実売で10万部を超えているのは、『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』の出版社系4誌のみになってしまったのである。
 『週刊文春』はネットで課金する体制へと移行し、ページビュー(PV)は4月に1億PVを突破し、11月には2億PVをこえ、広告収入も増えているという。
 『週刊文春』だけでなく、12誌の週刊誌はこれからどのような道筋をたどることになるのだろうか。
 同じく直販誌の『選択』(1月号)も、「我が世の春かと思われた『週刊文春』でさえ、一九年上期に二万六千部余りも減らしていました。紙の雑誌の多くが死線をさまよう二〇二〇年代となりそうです。」と書いていることも付記しておこう。



9.『ZAITEN』(1月臨時増刊号)として『激変するマスコミと企業広報』が出されている。

ZAITEN 創

 これはふたつの特集が柱となっている。
 ひとつは「経済メディア『変わる地平線』」、もうひとつは「週刊誌『編集部』の内情」である。
 前者は日経新聞社の現場事情と『日経ビジネス』、『週刊ダイヤモンド』、『週刊東洋経済』の「変わる地平線」に焦点が当てられている。
 後者は『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』に加え、『女性セブン』『女性自身』『週刊女性』のガイド付きでもある。
 タイトルに示されているように、企業広報との関係からの視点も含まれているけれど、『創』(2月号)のような総花的「出版社の徹底研究」ではないので、教えられ鵜ことも多い。また本誌もかつての『噂の真相』のイメージを彷彿させ、この一年は続けて読んでみようかという気にさせられる。



10.「地方・小出版流通センター通信」No.521によれば、同センター設立以来の加入出版社であり、地方出版の時代の先駆であった千葉県流山市の崙書房が廃業するという。
 崙書房はこの半世紀に千葉県をテーマとした「ふるさと文庫」を始めとして、一千点もの出版物を刊行してきたが、後継者もなく、社員たちも70歳を超え、昨年7月末で活動を停止し、清算に向かっているようだ。
 小林規一社長の言として、出版の現状について、出版は「書く人、編集出版する人、流通、書店、書評家などの横断的つながりで出来上るものだが、そのパーツすべてが傷んできている」が引かれている。

 井出彰『書評紙と共に歩んだ五〇年』(「出版人に聞く」9)で語られているように、崙書房は『日本読書新聞』に在籍していた小林規一たちによって、1970年に立ち上げられている。
 なお、地方・小出版流通センター設立時代のエピソードは、中村文孝『リブロが本屋であったころ』(同4)に詳しい。
書評紙と共に歩んだ五〇年 リブロが本屋であったころ



11.『フリースタイル』44が恒例の「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!」を組んでいる。

フリースタイル 海街diary 闇金ウシジマくん 監禁嬢

 残念ながら、年を追う毎に、「BEST 10」どころか、「BEST 20」まで見ても、読んでいる作品が少なくなるばかりだ。
 しかも今年は9の吉田秋生『海街diary』、18の真鍋昌平『闇金ウシジマくん』を途中まで読んでいるだけで、完読していない。両者とも完結しているようだし、早いうちに読まなければ。
 そんなことを思いながら、ゲオに出かけたところ、レンタルコミックバーゲンがあり、『闇金ウシジマくん』46が50円で売られていた。その隣には、呉智英が挙げていた河野那歩也『監禁嬢』(双葉社)1、4、5がやはり50円で放出されていたので、これらを買ってきた。このクロニクルを書き終えてから読むことにしよう。



12.坪内祐三が61歳で急逝した。

 本クロニクル136で既述しておいたように、坪内が拙著『古本屋散策』を『本の雑誌』(9月号)の「読書日記」で紹介してくれたので、次書『近代出版史探索』を論創社から献本してもらった。
 やはり『本の雑誌』(1月号)の「読書日記」に、拙著が届いたことが記されていた。700ページ余の分厚い本なので、読了せずに亡くなったのではないだろうか。
 そのことに関して、少し気になることがあり、それを書きつけておく。いずれも坪内絡みだ。
 かつて坪内の論争相手だった安原顕に、拙著『文庫、新書の海を泳ぐ』(編書房)を献本したが、これも受領したことが日誌に書かれていたが、その直後に安原も亡くなっている。
 また坪内が親交していた山口昌男が、やはり拙著『図書館逍遥』(同前)を『朝日新聞』で書評してくれたけれど、これが山口の書いた最後の書評であり、やはりその後、死去している。
 さらに坪内の対談者だった大村彦次郎も、『古本屋散策』を送ったところ、これから入院するという返信が届き、数ヵ月後に鬼籍に入っている。
 これだけ続くと、呪われた献本のようでもあり、今後の献本はできるだけ自粛したいと思う。

古本屋散策 近代出版史探索 文庫、新書の海を泳ぐ 図書館逍遥

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13.12月の東京古書会館での講演「知るという病」は『図書新聞』(2/8号)に掲載され、続いて別バージョンも『古書月報』にも収録予定。
 今月の論創社HP「本を読む」㊽は「『思潮』創刊号特集と『ミシェル・レリスの作品』」です。
また「web 新小説」の『文芸放談 オカタケ走る!』に出ています。

出版状況クロニクル140(2019年12月1日~12月31日)

 19年11月の書籍雑誌推定販売金額は1006億円で、前年比0.3%増。
 書籍は537億円で、同6.0%増。
 雑誌は468億円で、同5.7%減。
 その内訳は月刊誌が394億円で、同4.3%減、週刊誌は74億円で、同12.4%減。
 返品率は書籍が37.3%、雑誌は41.9%で、月刊誌は41.1%、週刊誌は45.8%。
 ただ書籍のプラスは、前年の返品率40.3%から3%改善されたことが大きく作用しているのだが、書店売上は5%減であることに留意されたい。
 雑誌のほうは定期誌の値上げが支えとなっているけれど、相変わらずの高返品率で、19年は一度も40%を下回ることなく、11月までの返品率は43.3%となっている。


1.出版科学研究所による19年1月から11月までの出版物推定販売金額を示す。

■2019年 推定販売金額
推定総販売金額書籍雑誌
(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)
2019年
1〜11月計
1,130,017▲3.9621,358▲3.0508,659▲5.0
1月87,120▲6.349,269▲4.837,850▲8.2
2月121,133▲3.273,772▲4.647,360▲0.9
3月152,170▲6.495,583▲6.056,587▲7.0
4月110,7948.860,32012.150,4745.1
5月75,576▲10.738,843▲10.336,733▲11.1
6月90,290▲12.344,795▲15.545,495▲8.9
7月95,6194.048,1059.647,514▲1.2
8月85,004▲8.241,478▲13.643,525▲2.4
9月117,778▲3.068,3560.249,422▲7.3
10月93,874▲5.347,040▲3.246,834▲7.4
11月100,6590.353,7966.046,863▲5.7

 19年11月までの書籍雑誌推定販売金額は1兆1300億円、前年比3.9%減である。
 この3.9%減を18年の販売金額1兆2920億円に当てはめてみると、503億円のマイナスで、1兆2417億円となる。つまり19年の販売金額は1兆2400億円前後と推測される。
 現在の出版状況と雑誌の高返品率を考えれば、出版物販売金額と書店市場の回復は困難で、20年には1兆2000億円を割りこみ、数年後には1兆円を下回ってしまうであろう。
 そこに至るまでに、書店だけでなく、出版社や取次はどのような状況に置かれることになるのか。出版業界はどこに向っているのか。
 20年にはそれらのことがこれまで以上に現実的となり、問われていくであろう。



2.愛知県岩倉市の大和書店が破産。
 同書店は「ザ・リブレット」の屋号で、名古屋市内を中心として、岐阜、静岡、神奈川、大阪、岡山にも進出し、20店を超えるチェーン展開をしていた。
 2018年は年商30億円を計上していたが、売上が落ちこみ、資金繰りが悪化し、今回の処置に至ったとされる。
 破産申請時の負債は30億円だが、流動的であるという。

 11月30日に「ザ・リブレット」全23店が閉店し、12月に入ってそのリストもネット上に掲載されている。
 それを見ると、「ザ・リブレット」は主としてイオン・タウン、イオン・モール、アピタ、ららぽーとなどのショッピングセンターやスーパーなどに出店していたとわかる。
 しかも驚きなのは、沼津店が10月4日に開業したららぽーと沼津に出店していたことで、何と2ヵ月足らずで閉店に追いやられている。どのようなテナント出店のからくり、資金調達、取次との交渉が展開されていたのだろうか。坪数は200坪である。
 取次は楽天ブックスネットワークで、1990年代にはトーハンであったことからすれば、今世紀に入った時点で、大阪屋か栗田へと帖合変更がなされ、それから大阪屋栗田を経て、現在へと至ったことになろう。そしてそれはバブル出店を重ね、負債を年商まで増大させ、延命してきたことを意味していよう。

 だが本クロニクル138でふれたように、大阪屋栗田の楽天ブックスネットワークへの社名変更に伴うようなかたちで破産となったのである。楽天ブックスネットワーク帖合の書店破産はまだ続くのではないだろうか。
 この背景には、出版物の売上減少下にあって、書店がテナント料を払うことが困難になってきていることを告げている。かつて郊外消費社会と出店の中枢を占めていた紳士服の青山商事やAOKIも赤字が伝えられているし、その事実から類推すれば、書店は大型店や複合店にしても、もはや成立しないテナントビジネスモデルとなっているかもしれない。
 また全23店同時閉店の書店在庫の行方に注視する必要があるだろう。このような一斉閉店においては、取次による回収もできないと思われるからだ。本当に2020年の書店市場は何が起きようとしているのか。

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3.日販グループホールディングスの中間決算は連結売上高2508億円、前年比5.0%減の減収減益。取次事業は2303億円、同5.2%減。

4.トーハンの中間決算は連結売上高1896億円、前年比1.2%減、中間純損失2億500万円の赤字。トーハン単体売上高は1779億円、同2.9%減の減収減益。

5.日教販の決算は売上高266億円、前年比4.9%減、当期純利益は2億1100万円、同2.0%減。

 日販は減収減益、トーハンは赤字の中間決算で、取次事業は両社とも実質的に赤字と見なしていい。
 物流コストは上昇しているし、書店売上の凋落、台風の影響、消費税増税などを考えれば、通年決算がさらに厳しくなるのは必至であろう。
 日教販の決算は専門取次ゆえに、書籍が学参、辞書、事典で占められていることから、返品率は13.9%となっている。だから減収減益にしても利益が出ている。
 それに比べて、日販は書籍が33.4%、雑誌が47.5%、トーハンは書籍が43.5%、雑誌が49.0%で、この高返品率が改善されない限り、両社の「本業の回復」は不可能だろう。しかも雑誌は返品量の調整が毎月行なわれているにもかかわらず、高止まりしたままで、20年には50%を超える月も生じるのではないかと推測される。

 ちなみに、コミックにしても、返品率は日販が28.2%、トーハンが29.3%で、日教販の書籍返品率の倍以上であり、こちらも30%を上回ってしまうかもしれない。
 そのようにして、取次の20年も始まっていくしかない状況に置かれている。



6.紀伊國屋書店の連結売上高は1212億5500万円、前年比0.8%減、当期純利益は9億8000万円、同11.0%増。
 単体売上高は1022億6600万円、同0.9%減。
 「店売総本部」売上は500億円、同1.3%減、外商の「営業総本部」は477億円、同0.5%減、当期純利益は8億4500万円、同5.0%増。


7.有隣堂の決算は売上高536億5500万円、前年比3.7%増。当期純利益は1億5100万円、同25.8%増。
 分野別では「書籍類」が175億5500万円、同0.5%減、「雑誌」が40億3500万円、同0.6%増とほぼ横ばいだが、その他の「雑貨」「教材類」「OA機器」などが好調だったとされる。

 紀伊國屋書店は国内68店、海外37店で、計105店で、12年連続黒字決算だが、国内店舗の売上の落ちこみは同書店も例外ではないはずだし、来年の決算ではどうなるだろうか。
 有隣堂のほうも増収増益だが、すでに出版物売上シェアは40%まで下がっていて、その他部門の売上が決算の要であるところまできている。そうした意味においても、本クロニクル132で取り上げておいた「誠品生活日本橋店」の売上が気にかかる。その後の動向は伝わってこない。どうなっているのか。
odamitsuo.hatenablog.com



8.『日経MJ』(11/1)が「王道アパレルへ ゲオ衣替え中」という大見出しで、古着店「セカンドストリート」の一面特集を掲載している。
 それによれば、店舗数は630店に達し、しまむら、ユニクロ、洋服の青山に続く店舗数となり、売上も500億円、ゲオ全体売上高の18%を占めている。

 かつては「DVDレンタルが看板」と小見出しにあるように、ゲオの既存店舗などにも出店を加速させているようで、1Fがゲオ、2Fがセカンドストリートという店舗を見ている。
 やはりゲオもユーチューブ、ネットフリックスなどにより、DVDレンタルなどは苦戦し、難しい状況にあるとの遠藤結蔵社長の言も引かれている。
 それもあって、セカンドストリートは現在、年40店ペースで出店し、23年に800店、長期的には1000店をめざすという。
 トーハンとゲオは提携しているし、トーハンとゲオの連携店舗がセカンドストリートになることも考えられるので、ここで紹介しておく。



9.東邦出版が民事再生法を申請。
 11月19日付で、委託期間外商品の返品不可を3000店以上の書店にFAX通知し、取次にも伝えられた。負債は7億円。

 前回の本クロニクルで、シーロック出版社の自己破産にふれ、親会社に当たる出版社も苦境にあると記したが、これはこの東邦出版をさしている。
 委託期間外商品の返品不可の問題は、東邦出版が長きにわたって書店への営業促進をしてきたことから、高橋こうじ『日本の大和言葉を美しく話す』や山口花『犬から聞いた素敵な話』などがベストセラーになっていたことに求められる。
 それらの書店在庫がどのくらいあるのか、当然のことながら、正確にはつかめない。結局のところ、書店は返品不能品処理をするしかないと思われる。
 以前にリベルタ出版の廃業を伝えたが、幸いにして返品は少なく、数十万円で終わったようだ。

日本の大和言葉を美しく話す 犬から聞いた素敵な話



10.宝島社は来年2月に子会社の洋泉社を吸収合併し、その権利義務を継承し、従業員も継続雇用する.。
 ただ月刊雑誌『映画秘宝』は休刊となる。

 洋泉社は元未来社の藤森建二によって1985年に創業され、98年に宝島社の子会社になっていた。
 35年間の出版物は単行本、新書、ムックなど幅広いジャンルにわたる。私も単行本や新書だけでなく、町山智浩が手がけたムック『映画秘宝EX』や実話時報編集部などの編集による極道ジャーナリズムムックをそれなりに愛読してきたので、洋泉社の名前が消えてしまうことに淋しさを感じる。

 だが幸いにして、『出版状況クロニクルⅢ』で既述しておいたように、2011年に藤森の『洋泉社私記―27年の軌跡』(大槌の風)が出され、そこには「刊行図書総目録―1985~2010」も収録されている。また編集者の小川哲生の私家版『私はこんな本を作ってきた』(後に『編集者=小川哲生の本』として言視舎から刊行)、『生涯一編集者』(言視舎)も出されているので、洋泉社の記録としても読まれていくであろう。
映画秘宝  f:id:OdaMitsuo:20191224203458j:plain:h110 編集者=小川哲生の本  生涯一編集者

【付記】
 読者のtwitterによれば、藤森は現在でもブログ「大槌の風」を更新しているので、失明は誤報ではないかとの指摘があった。 確実な情報筋より伝えられたこともあり、藤森に確認せずに記したが、誤報であれば、お詫びしたい。
それゆえにその部分を削除する。


11.緑風出版の高須次郎が朝日新聞社の言論サイト「論座RONZA」(12/5)で、「本屋をのみこむアマゾンとの闘い」という臺宏士のインタビューを受けている。

 これは高須の『出版の崩壊とアマゾン』 (論創社)をベースとするその後の補論と見なせよう。
 しかしそれから年も迫った頃に、アマゾンが日本に法人税を納付していたことが明らかになったので、高須に代わって、補足しておく。
 中日新聞(12/23)などによれば、アマゾンは日本国内の販売額を日本法人売上高に計上する方針に転換し、17、18年の2年間で300億円の法人税を納付したとされる。
 これは国際的な議論となっているデジタル課税の先取り、独禁法にふれる優越的地位の乱用、国内の宅配危機への非難に対する回避処置とも見られる。
 19年は過去最高の売上高になると推測され、その法人税納付に注視すべきだろう。
出版の崩壊とアマゾン



12.みすず書房の編集長だった『小尾俊人日誌1965―1985』 (中央公論新社)が刊行された。

 この小尾、丸山眞男、藤田省三を主人公とし、加藤敬事の「まえおき」にある「みすず書房を舞台に展開された丸山と藤田の間のヒリヒリするような感情のドラマ」が、どのような経緯と事情で中央公論新社から出されることになったのかは詳らかでない。
 それでも、この日誌、加藤と市村弘正の解説対談「『小尾俊人日誌』の時代」を読むと、出版業界に入った1970年代のことが思い出される。人文社会書はまさに小尾や未来社の西谷能雄の時代でもあったけれど、出版業界は小さな共同体であり、彼らは私などに対しても謙虚に接してくれた。
 しかし時は流れ、出版業界も編集という仕事も時代も変わってしまったことを、この一冊は痛感させてくれる。
 『小尾俊人日誌1965―1985』 に関しては、いずれ稿をあらためたいと思う。
小尾俊人日誌1965―1985



13.『出版月報』(11月号)が特集「図書館と出版の今を考える」を組んでいる。

 本クロニクルでも、毎年1回、公共図書館に関してレポートしてきているが、この特集も「公共図書館の現状」「書籍販売部数と公共図書館貸出数」「公立図書館職員数の推移」をフォローしている。
 しかしこの特集の特色は「出版社にとって図書館は大事な存在 求められるのは両社の協働」とあるように、『出版月報』ならではの「出版者と図書館の関わりについて」で、人文書、専門書、実用書、児童書、文芸書の出版社に取材し、それを報告していることにある。
 その筆頭には12のみすず書房が挙げられ、「初版1800部の書籍では、200部程度が図書館分」「10%程度の占有」だとされる。そしてレポートは「公共図書館全国の3千館のうち、千部の発注があれば、初版一千部以上は確定できる。図書館の購入で、少部数でも専門的な多様な出版企画を成立させることが可能になっている」と続いていく。
 だが現実的に公共図書館から少部数の人文書、専門書の「千部の発注」はあり得ない。この問題も含め、公共図書館の現在についての一冊を書くつもりでいる。
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14.『前衛』 (1月号)を送られ、そこに高文研編集者の真鍋かおる「『嫌韓中本』の氾濫と出版の危機」が掲載されていた。

 これは「極私的な出版メディア論」との断わりがあるように、人文書編集者から観た「歴史修正主義本、嫌韓反中本の氾濫」の考察である。
 そのことに関して、真鍋は取次の「見計い」配本も後押ししているのではないかと指摘し、「なぜ書店にヘイト本があふれるのか。理不尽な仕組みに声をあげた一人の書店主」というブログを引いている。
 また真鍋は自らの編集者としてのポジションも表明し、そのようなヘイト本の氾濫状況に抗するために、自分が手がけた本をも挙げているので、興味のある読者は実際に読んでほしい。
前衛



15.沖縄のリトルマガジン『脈』103号の特集「葉室麟、その作家魂の魅力と源」が届き、それとともに編集発行人の比嘉加津夫の急死が伝えられてきた。

 『脈』は友人から恵送されているので、本クロニクルでもしばしば取り上げてきた。2月発売の104号特集「『ふたりの村上』と小川哲生」と予告されている。困難は承知だが、刊行を祈って止まない。
 折しも協同出版が子会社の協同書籍を設立し、沖縄の出版社の書籍の取次事業に参入することを表明したばかりでもあるからだ。
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16.『股旅堂古書目録』22 が出た。

 今回の「巻頭特集」は「或る愛書家秘蔵の地下室一挙大放出 ‼ 」で、書影も4ページ、64点に及び、昭和の時代の「地下本」の面影を伝えてくれる。
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17.拙著『近代出版史探索』は鹿島茂による『毎日新聞』(12/22)書評が出され、12月7日の東京古書組合での講演「知るという病」は『図書新聞』に掲載予定。
近代出版史探索
 また論創社HP「本を読む」㊼は「『アーサー・マッケン作品集成』と『夢の丘』」です。

出版状況クロニクル139(2019年11月1日~11月30日)

 19年10月の書籍雑誌推定販売金額は938億円で、前年比5.3%減。
 書籍は470億円で、同3.2%減。
 雑誌は468億円で、同7.4%減。
 その内訳は月刊誌が380億円で、同6.0%減、週刊誌は87億円で、同12.9%減。
 返品率は書籍が37.0%、雑誌は43.3%で、月刊誌は43.5%、週刊誌は42.3%。
 実際の書店売上は消費税の10%増税と、台風19号とその後の豪雨などにより低調で、書籍は8%減、雑誌は定期誌5%減、ムック12%減、コミックスだけが『ONE PIECE』の新刊と『鬼滅の刃』の大ブレイクで4%増とされる。
10月で、書籍雑誌推定販売金額はようやく1兆円を超え、1兆293億円となっているが、4.3%マイナスで、下げ止まりの気配はまったくないままに、年末を迎えようとしている。

ONE PIECE 鬼滅の刃


1.上場企業の書店と関連小売業の株価をリストアップしてみる。
 

■上場企業の書店と関連小売業の株価
企業18年5月
高値
18年11月21日
終値
19年11月21日
終値
丸善CHI363348377
トップカルチャー498382345
ゲオHD1,8461,8401,326
ブックオフHD8398081,082
ヴィレッジV1,0231,0781,110
三洋堂HD1,008974829
ワンダーCO1,793660726
文教堂HD414239159
まんだらけ636630604
テイツー42

 同じリストを掲載したのは本クロニクル127だったので、早くも1年が過ぎてしまったことになる。
 全体として前年比は横ばいといっていいかもしれないが、文教堂を始めとして、来年は株価も厳しい状況へと追いやられていくだろう。
 それにしてもCCC=TSUTAYA が非上場化したこともあり、株価への影響が確認できないのは残念である。それゆえにここではCCC=TSUTAYAのFCとして最大のシェアを占めるトップカルチャーの株価の推移を注視すべきだろ。3年続きの赤字決算を避けられるだろうか。
 いずれにせよ、大型複合店も2020年はかつてない至難の年を迎えることになろう。

odamitsuo.hatenablog.com
2.『選択』(11月号)が「事業再生HOR成立の文教堂 無理筋の再建策を冷笑する書店業界」という記事を発信している。
それは「これで本当に再建できるか]との声がしきりで、一連の増資にしても、ちょっとした最終赤字を計上しただけで債務超過に逆戻りしてしまうし、アマゾンや電子書籍の普及により、書店ビジネスは逆風下にあるとし、次のように述べている。

「文教堂GHDは不採算店舗の閉鎖や、赤字のキャラクターグッズ販売事業のビッグカメラグループへの売却、利益率の高い文具販売の強化などで、20年8月期に1億円強の最終黒字(前期は40億円弱の赤字)復帰を目指すとしているが、業界筋は「画に描いた餅」として一蹴。「再建策ではなく延命策」と皮肉っている。」

 これは前回の本クロニクルで、文教堂GHDのADR手続きの成立とそのスキームにふれ、「先送り処置」に他ならないと指摘しておいたことをふまえているのだろう。だが業界紙も経済誌も、日販と文教堂への忖度からなのか、言及を見ていない。
 また文教堂の10月の閉店は6店、800坪近くに及んでおりそれは売上のマイナスと多大な閉店コストを積み上げていくはずだ。何のための事業再生ADRだったのかが問われる日もくると考えるしかない。



3.日販から出版社宛に「『令和元年台風第19号』による被災商品入帳及び被災書店様復興支援のお願い」が届いた。

 さて本年10月に発生しました「令和元年台風第19号」の影響により、東日本地域の広範囲で浸水が発生し、その結果、浸水が発生した書店様におきまして、泥水による汚破損商品が発生しております。
 今回の台風被害につきましては、商品の汚破損の度合いが非常に高いため、返品そのものができず、やむを得ず廃棄処理せざるを得ない状況となっており、これらの商品について、返品入帳の取扱いの問題が生じております。
 この問題につきましては、弊社において、台風で大きな被害を受けた被災書店様を支援するため、被災書店様の汚破損品を原則として、全品返品入帳することを決定し、被災書店様にお知らせ申し上げております。
この返品入帳対応におきましては、台風により被害を汚破損商品についての対応であり、汚破損の程度も著しいものがほとんどであることから、現品の返品は求めず、被災書店様において破棄していただき、被災書店様の在庫をベースとして行うことを予定しております。

 上記対応により汚破損等(期限切れとなった商品を含みます)で通常返品が不可能となった商品について、被災書店様のご負担がなくなり弊社がその負担を負うことになりますが、汚破損商品は台風という自然災害により発生したものであることから、出版様にも返品入帳に特別なお取り計らいを賜りたくお願い申し上げる次第です。

 出版社様におかれましても、台風によって一時的に多数の返品が発生するなど、多大な影響を受けていることは十分理解しておりますが、弊社としましては、被災書店様及び被災地域の復興のために全力で支援して参りますので、支援へのご協力をご検討いただきたく重ねてお願い申し上げます。
 大変恐縮なお願いではありますが、ぜひとも趣旨をご理解頂き、別紙回答書をご返送いただくようお願い申し上げます。
 尚、本お願いに対するご回答につきましては、貴社の任意のご判断にお任せ致します。ご回答の内容いかんによって貴社との間の通常の取引に影響を与えることはございませんので、念のため申し添えます。

 これに続いて、「蔦屋書店東松山店」の大雨浸水写真と、同店の「被災商品銘柄別一覧」と「被災品回答書」が添えられている。

 これも前回の本クロニクルでふれておいた、1.6メートルの浸水をこうむった蔦屋書店東松山店の返品問題が、早くも出版社へとはね返ってきたことになる。先に記しておけば、蔦屋書店東松山店はまさに
のトップカルチャーのチェーン店である。
 しかし取協によれば、台風19号による被害書店は全取次で56店に及んでいる。それにもかかわらず、日販が蔦屋書店東松山店だけのために、このような文書を出版社に出すこと自体が「忖度」を想起させる。それに法的に書店在庫は書店の資産とみなされているはずだし、上場企業であるからにはそれなりの災害保険に入っていると考えられる。
 それなのに日販が率先して「全品返品入帳」し、しかもそれが「被害書店様の在庫データをベース」とし、さらにそこに通常返品不能品も含まれるようだから、徳政令に近い。こうした台風に毎年見舞われるかもしれないとすれば、悪しき先例となる可能性もある。
 もちろん同様の処置が東日本大震災において実施されたことは承知しているけれど、このような書店のために文書が出されることはかつてなかったはずだ。
 小出版社と異なり、膨大な返品金額となる大手出版社は、この日販の「お願い」に応じるのであろうか。



4.日経BPと日本経済新聞出版社が2020年4月に経営統合、日経BPが持続会社として、売上規模400億円、社員800人の出版社になる。
 統合後の日経BPはデジタル、雑誌に加え、経済専門書、経営書、ビジネス書、技術・医療ムックなどを手がける日経グループの総合出版社に位置づけられる。

 日経BPは1969年にマグロウヒル社との合弁で設立され、売上高は368億円だが、日本経済新聞出版社は2007年に日経新聞社の出版局を分社化して設立され、売上高は36億円である。
 おそらく後者は分社化したものの、出版状況の凋落の中で、当初の予測に見合う売上高に到達せず、このような統合に至ったと思われる。
 各新聞社の分社化による出版局は黒字化も伝えられているけれど、内実はかなり苦しいのではないかと察せられる。



5.『月刊文藝春秋』はピースオブケイクが運営するプラットフォーム「note」で、月900円読み放題。『週刊文春』もニコニコチャンネルで運営している「週刊文春デジタル」をリニューアルし、月880円で読み放題となる。

 これはKADOKAWAの売上高のうちで、書籍・雑誌のシェアは25%を割りこみ、電子書籍はその半分以上の規模になっていること、もしくは講談社の今期決算が増収増益の見通しで、デジタル広告収入が広告収入の5割を超えるという近況などに対応する試みと判断される。
 ただ両社は続いて、KADOKAWAは「ところざわサクラタウン・角川武蔵野ミュージアム」事業、講談社は池袋での「LIVEエンターテインメントビル」の開設に向かっている。それらの行方の是非はともかく、文春などもそのような試みへと参画していくのであろうか。



6.自由国民社の『現代用語の基礎知識』が従来のB5判と異なる、B5判変型とコンパクトになり、ページ数も1000ページから300ページへとリニューアルされ、定価も従来の半分の1500円となった。

現代用語の基礎知識

『現代用語の基礎知識』の固定的イメージはその厚さにあり、それは婦人誌や少年少女誌の付録も含んだ厚さと共通していたし、長きにわたって、12月から1月にかけての書店の雑誌売り場の正月の風物詩のような平積み光景の立役者の位置にあった。
 しかし今回の平積みは数冊で、平台のよい場に置かれていたにもかかわらず、表紙が黄色であり、すぐにそれが『現代用語の基礎知識』だと認識できなかった。
 考えてみれば、『現代用語の基礎知識』が自由国民社の長谷川国雄によって、1948年に戦後の新事態を知りたいという読者の要望をコアとする新しいジャーナリズムをめざし、創刊されてから、すでに70年余が過ぎている。
 主婦を対象とする婦人誌の時代が終わってしまったように、『現代用語の基礎知識』のリニューアルは、戦後の読者の要望もドラスチックに変わってしまったことを物語っているのだろう。



7.鹿砦社創業50周年記念出版として、鹿砦社編集部編『一九六九年混沌と狂騒の時代』が出された。

混沌と狂騒の時代 書評紙と共に歩んだ五〇年 f:id:OdaMitsuo:20191126164230j:plain:h110(『マルクス主義軍事論』)f:id:OdaMitsuo:20191126165055j:plain:h110 マフノ叛乱軍史

 これは『紙の爆弾』の11月号増刊で、たまたま書店で見つけ、購入してきた一冊である。
 その理由は特集コンセプトよりも、そこに前田利男への「一九六九年、鹿砦社創業のころ」という14ページに及ぶインタビューが掲載されていたことによっている。
 この前田は井出彰『書評紙と共に歩んだ五〇年』(「出版人に聞く」シリーズ9)に出てくる人物で、井出の『日本読書新聞』での同僚であった。それもあって、このインタビューは井出の回想の補足、その後の『日本読書新聞』人脈と出版史となっている。

 前田によれば、鹿砦社は『日本読書新聞』の労働組合メンバーの天野洋一、高岡武志、大河内徹、前田の四人が関わり、1969年に中村丈夫編『マルクス主義軍事論』を刊行してから始まっている。
 私も70年代に『左翼エス・エル戦闘史』『マフノ叛乱軍史』を読み、鹿砦社の名前を知った。前田は当時の出版社設立と出版状況について語っている。
「みんなボコボコ作ってね。せりか書房や、似たようなのが十や二十もあった。運動の夢が破れかかった時に出版社がたくさん生まれた。鹿砦社も初版千部刷るとすぐに売れて、初期のものはたいてい増刷になりました。」
 ところが50年後の現在は出版社も書店も消え、ほとんど増刷もできない出版状況になってしまった。
 この鹿砦社を発売元として、77年に松岡利康のエスエル出版会が発足し、88年には彼が鹿砦社を引き継ぎ、現在に至るのである。



8.シーロック出版社が自己破産。
 同社は1994年に設立され、スポーツ、ギャンブル書を中心とする書籍の企画、製作を手がけてきた。
 2013年には年商5億1500万円を計上していたが、18年には4億6500万円に減少し、その間に赤字決算が重なり、債務超過となっていた。関連会社のデジタルビューも自己破産。

 この出版社は寡聞にして知らないが、設立時期と出版物、企画内容を考えると、バブル時代の余波を受けて立ち上げられた出版社のように思われる。
 1990年代では出版社もかなり設立されていたが、それらの多くが退場してしまったことを知っている。それだけでなく、現在は中小出版社の清算の時期でもあるのかもしれない。
 このシーロック出版の自己破産に伴い、親会社に当たる出版社も苦境に陥り、印刷所は多額の負債が生じたようだ。



9.横田増生『潜入ルポamazon帝国』(小学館)を読了。

潜入ルポamazon帝国 潜入ルポ アマゾン・ドット・コム

 この最初の部分は『週刊ポスト』に発表され、本クロニクル136で取り上げておいた。そのことやタイトルからして、彼の前著『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)の続編かと思っていたが、「潜入」というよりも、広範な取材を通じてのアマゾンの全体像に迫る好著で、教えられることが多かった。
 とりわけマーケットプレイス、フェイクレビューを扱った章は、当事者たちの取材も含め、とても参考になる。アマゾンは多くのパラサイトたちも生み出し、それもエキスとして成長していること、それに対して、出版業界はそうしたエネルギーを失っていることが実感される。
 増田にはさらなるアマゾン密着レポートを期待したい。

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10.中森明夫『青い秋』(光文社)が刊行された。

青い秋  本の雑誌 f:id:OdaMitsuo:20191128120758j:plain:h115 f:id:OdaMitsuo:20191128125134j:plain:h115

 1980年代の出版業界において、オタク、新人類、アイドルが三位一体のかたちで、ブーム、もしくはトレンドとなっていた。彼ら彼女らが「神々の時代」であり、それはバブルの時代でもあった。そして宮崎勤事件が起きてもいた。
 「オタク」の命名者である中森はその中心人物に他ならず、この時代を描いた短編集『青い秋』は誰がモデルなのか、すぐわかるので、中森ならではのゴシップ小説集として楽しく読める。
 それに加えて、出版流通販売史から見れば、1980年代は地方・小出版流通センターを取次とするリトルマガジンの時代でもあった。『本の雑誌』『広告批評』だけでなく、多くの雑誌が同センターを経由して流通販売され、中森もまた『東京おとなクラブ』に携わっていたし、それも描かれている。いずれ、それらの雑誌にも言及してみたいと思う。



11.元小学館国際室長の金平聖之助が91歳で亡くなった。

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 金平には今世紀の初めに会って以来、手紙は何度かもらっているけれど、再会していなかった。彼のことで思い出されるのは著書『世界のペーパーバック』である。これは1970年前半に出版同人という版元から出された一冊だったが、当時としては先駆的な世界のペーパーバックに関する幅広い紹介を兼ねていて、まだ定かでなかったその全体像を垣間見る思いを味わわせてくれた。
 
 現在のアマゾン全盛状況からは考えられないだろうが、半世紀前の1970年代はペーパーバックを自由に買うことも困難で、注文しても3ヵ月は待たされたものだ。ちなみに出版同人はその頃の翻訳出版の啓蒙を図ろうとして、翻訳エージェンシーとその関係者、翻訳書を刊行する出版社などの肝いりで設立されたと思われる。
 そのメンバーのひとりが金平だったのだろう。金平の他に、赤石正『アメリカの出版界』、J・W・トンプソン、箕輪成男訳『出版産業の起源と発達―フランクフルト・ブックフェアの歴史』などが出されていたが、70年代で出版同人は閉じられたのではないだろうか。これも金平に聞いておけばよかったと悔やまれる。
『世界のペーパーバック』を再読することで追悼に代えよう。



12.『ニューズウィーク日本版』(11/5)に、アメリカの出版社ビズメディアから10月に楳図かずおの『漂流教室』第1巻744ページが出版され、好調であることを伝えている。これはシェルドン・ドルヅカによる新訳で、来年の2月には第2巻が刊行される。

ニューズウィーク日本版 漂流教室The Driftting Classroom)

 楳図かずおの『漂流教室』が『週刊少年サンデー』で連載され始めたのは1972年で、当時はどこの喫茶店や酒場でも『週刊少年サンデー』が置いてあったので、ほとんど欠かさず読んでいた。
 80年代になって、息子たちのために「少年サンデーコミックス」版全11巻を買い、それが今でも書棚に残っている。今になって考えてみると、私は同じく楳図の『イアラ』のほうに愛着を覚えていたけれど、実作者たちも含め、大きな影響を与えたのは『漂流教室』だとわかる。
 さいとうたかお『サバイバル』、望月峯太郎『ドラゴンヘッド』、伊藤潤二『うずまき』など、近年の花沢健吾『アイアムヒーロー』に至るまで、『漂流教室』を抜きにしては語れないだろう。
 押井守のアニメ『攻殻機動隊』がアメリカ映画に大いなる刺激となったように、『漂流教室』もあらためてアメリカで受容されていくのかもしれない。
 現在注文中なので、届くのを楽しみに待っている。
f:id:OdaMitsuo:20191128145412j:plain:h115 イアラ サバイバル ドラゴンヘッド うずまき アイアムヒーロー 攻殻機動隊



13.折付桂子『東北の古本屋』(日本古書通信社)が届いた。

f:id:OdaMitsuo:20191126173820j:plain:h110 震災に負けない古書ふみくら

 これは東日本大震災以後の東北全体の古本屋の実態、すなわち岩手、宮城、山形、青森、秋田、福島県の古本屋を訪ね、地域と店の新たな案内となるように仕上げられた一冊である。
 古本屋の写真も含め、収録写真はすべてカラーで、このようにまとめて東北の古本屋がカラー写真で紹介されるのは初めてではないだろうか。
 それこそ故佐藤周一『震災に負けない古書ふみくら』(「出版人に聞く」シリーズ6)のその後も語られ、店が健在なのを知ってうれしい。



14.拙著『近代出版史探索』は「日本の古本屋メールマガジン」に「自著を語る」を書いています。

近代出版史探索

  今月の論創社HP「本を読む」㊻は>「月刊ペン社『妖精文庫』と創土社『ブックス・メタモルファス』」です。

出版状況クロニクル138(2019年10月1日~10月31日)

 19年9月の書籍雑誌推定販売金額は1177億円で、前年比3%減。
 書籍は683億円で、同0.2%増。
 雑誌は494億円で、同7.3%減。その内訳は月刊誌が409億円で、同8.4%減、週刊誌は85億円で、同1.5%減。
 書籍のプラスは4.7%という出回り平均価格の大幅な上昇によるもので、消費増税を前にした駆け込み需要などに基づくものではない。
 返品率は書籍が32.8%、雑誌は40.3%で、月刊誌は40.0%、週刊誌は41.8%。
 10月はその消費増税と台風19号などの影響が相乗し、どのような流通販売状況を招来しているのだろうか。
 大幅なマイナスが予測される。
 今年も余すところ2ヵ月となった。このまま新しい年を迎えることができるであろうか。


1.日販の『出版物販売額の実態2019』が出された。
 17年までは『出版ニュース』に発表されていたが、同誌の休刊により、18年の出版データの切断も生じる危惧もあるので、例年よりも簡略化するけれど、同じ表のかたちで掲載しておく。


f:id:OdaMitsuo:20191026113759p:plain:h115
 

■販売ルート別推定出版物販売額2018年度
販売ルート推定販売額
(億円)
前年比
(%)
1. 書店9,455▲7.8
2. CVS1,445▲8.3
3. インターネット2,094▲5.3
4. その他取次経由528▲28.5
5. 出版社直販1,971▲18.0
合計15,493▲4.5

 出版科学研究所による18年の出版物販売金額は1兆2921億円、前年比5.7%減だったのに対し、こちらは出版社直販も含んで、1兆5493億円、同4.5%減である。
 本クロニクル127で予測しておいたように、18年はついに書店が1兆円、コンビニが1500億円を下回り、取次ルート販売額の落ちこみを示している。それはその他取次のマイナス28.5%にも明らかだ。
 本クロニクルでもふれてきたが、19年の書店閉店は多くのチェーン店や大型店にも及んでいる。またコンビニの場合もセブン-イレブンは1000店の閉店が伝えられているし、書店とコンビニの出版物販売額はさらなるマイナスが続いていくことが確実であろう。
 それらの事実は、取次と書店という流通販売市場がもはや臨界点に達してしまったことを告げていよう。それは生産を担う出版社にしても、インターネットや直販ルートは伸びているけれど、同様であることはいうまでもないだろう。
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2.出版科学研究所による19年1月から9月にかけての出版物販売金額音推移を示す。

■2019年上半期 推定販売金額
推定総販売金額書籍雑誌
(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)
2019年
1〜9月計
935,484▲4.2520,522▲3.8414,962▲4.6
1月87,120▲6.349,269▲4.837,850▲8.2
2月121,133▲3.273,772▲4.647,360▲0.9
3月152,170▲6.495,583▲6.056,587▲7.0
4月110,7948.860,32012.150,4745.1
5月75,576▲10.738,843▲10.336,733▲11.1
6月90,290▲12.344,795▲15.545,495▲8.9
7月95,6194.048,1059.647,514▲1.2
8月85,004▲8.241,478▲13.643,525▲2.4
9月117,778▲3.068,3560.249,422▲7.3

 19年9月までの書籍雑誌推定販売金額は9354億円、同4.2%減、前年比マイナス408億円である。
 この4.2%マイナスを18年の販売金額1兆2920億円に当てはめてみると、1兆2378億円となり、20年は1兆2000億円を割り込んでしまうだろう。そうなれば、1996年の2兆6980億円の半減どころか、1兆円を下回ってしまうことも考えられる。
 それに重なるように、19年の書店閉店は大型店が多く、その閉店坪数は最大に達すると予測される。例えば、9月のフタバ図書MEGA岡山青江店は1100坪で、在庫は軽くなったと見なしても、返品総量は途方もないだろう。19年はそうした大返品が出版社に逆流し、予想もしない大返品に見舞われている。それはいつまで続くのであろうか。



3.文教堂GHDの事業再生ADR手続きが成立し、債務超過をめぐる上場廃止期間が1年延長される。
 筆頭株主の日販は5億円出資し、帳合変更時の在庫の一部支払いを再延長し、事業、人事面で支援する。アニメガ事業はソフマップの譲渡し、20年8月期に債務超過を解消予定。
 一定以上の債権を持つみずほ銀行などの金融機関6行は既存借入金の一部を第三者割当方式により、41億6000万円を株式化することで支援する。
 さらなる詳細は文教堂GHDのHP「事業再生ADR手続きの成立及び債務の株式化等の金融支援に関するお知らせ」を参照されたい。
 なお発表を控えていた文教堂GHDの3月期決算連結業績は売上高243億8800万円、前年比11.0%減、営業損失4億9700万円、経常損失6億1000万円、親会社株主に帰属する当期純損失39億7700万円。42億1200万円の債務超過。


 取次と銀行による46億円の債権の株式化という事業再生計画が提出されたことになる。だが肝心の書店事業に関しては返品率の減少や不採算店の閉鎖などが謳われているだけで、上場廃止猶予期間を1年間延長する先送り処置と判断するしかない。
 このような銀行の債権の株式化を含むスキームは、出版業界の内側から出されたものではなく、経産省などが絵を描いたと思わざるをえない。書店という業態がまさに崩壊しつつある現在、このような金融支援だけで再生するわけがないことは、出版業界の人間であれば、誰もが肌で感じていることだろう。折しも『創』(11月号)で、「書店が消えてゆく」特集が組まれているが、そこからは書店の悲鳴の声が聞こえてくる。
 
 本クロニクルから見れば、文教堂問題は、1980年代から形成され始めた郊外消費社会における出店のための不動産プロジェクトの帰結といっていい。チェーン店のための出店バブルは、書店という業態が成長しているうちは露呈しないが、衰退していくと必然的に崩壊していくプロセスをたどる。それは書店のみならず、コンビニやアパレルをも襲っている現実である。
 またレオパレス21問題とも共通している。レオパレス21はサブリースのアパート、マンション3万9000棟、その関連会社は4、5000社に及び、破綻した場合、その影響は多くのオーナーだけにとどまらない。そのために資産売却で特別利益を計上している。
 文教堂の場合も、上場廃止となれば、出版業界に与える影響が大きく、日販を直撃するし、このような先送り処置が選択されたのであろう。
創



4.精文館書店の売上高は194億200万円、前年比1.9%減、当期純利益2億7500万円、同7.8%増の減収減益決算。

 あまり遠くないところに精文館書店があるので、時々出かけているが、数年前からTSUTAYAの屋号となっている。
 それに期中の精文館は静岡のTSUTAYA佐鳴台店864坪を始めとして、出店を続けている。それは精文館もTSUTAYAのFCに組みこまれたことを示しているのだろう。日販、子会社書店、TSUTAYAの複雑な絡み合いの行方はどうなるのであろうか。
 精文館の書籍・雑誌売上は114億円、同1.4%増で、そのシェアは58%となり、DVD、CDなどのセル、レンタルは大きく減少し、出店しなければ、さらなる減収は明らかだ。そのようなメカニズムの中で、出店がなされ、閉店が続いているのである。



5.台風19号により、埼玉県の蔦屋書店東松山店は床上1.6メートルの浸水など、多くの書店で被害が生じたようだ。

 蔦屋書店東松山店の近くに住む出版関係者からの知らせによれば、浸水は深刻で、雑誌、書籍はすべてが水につかり、自然災害ゆえに、出版社は全部を返品入帳するしかない状況になるのではないかということだった。
 博文堂書店千間台店にしても、かなりの出版物にそのような処置をとらざるをえないだろう。それにまだ書店被害の全貌は明らかになっていないけれど、トータルとすれば、大きな返品となり、これも出版社へとはね返っていく。
 それに加えて、台風21号も千葉県や福島県などで河川が氾濫し、市街地や住宅地が冠水、浸水したとされるので、10月の台風による書店被害はさらに拡がり、閉店へと追いやられる書店も出てくるように思われる。



6.出版物貸与権センターは2018年度の貸与兼使用料を契約出版社48社に分配した。
 分配額は16億300万円で、レンタルブック店は1973店。
 17年度の分配額は21億1000万円だったから、5億円以上のマイナスとなった。

 本クロニクル126で、18年全国のCDレンタル店が2043店であることを既述しておいたが、定額聞き放題音楽サービスの広がりもあり、19年はさらに減少しているだろう。
 それはコミックレンタルも同様で、電子コミックの普及により、19年度は20億円を大きく割りこみ、レンタルブック店も減少していくことは確実だ。
 大型複合店の業態を支えてきたのはレンタル部門で、それがCD、DVD、コミックとトリプルの衰退に見舞われている。
 またこれらの水害の後始末はどのような経緯をたどるのであろうか。
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7.大阪屋栗田は楽天ブックスネットワーク株式会社へ社名変更。
 「親会社である楽天家牛木会社とのシナジーをより強固なものにするとともに、出版社等の株主の各社との連携のもと、書店へのサービスネットワークをさらに拡充することを目指す」と声明。
 その一方で、株式会社KRT(旧商号:栗田出版販売株式会社)から、「再生債権の追加弁済(最終弁済)のご連絡」が届いている。これは「50万円超部分」を対象債権額とし、その6.9%を追加弁済するというものである。

 これらのプロセスを経て、大阪屋と栗田の精算は終了し、楽天ブックスネットワーク株式会社へと移行していくのであろう。
 それとパラレルに、旧大阪屋と栗田を取次としていた書店はどのような回路をたどっていくのか。例えば、栗田をメインとしていた戸田書店は8月に2店、続けて9月には青森店350坪を閉店しているし、これから大阪屋栗田時代の書店の選別がさらに本格化するにちがいない。



8.『日経MJ』(10/25)が「シニアの市場 トーハン攻める」との見出しで、「出版不況受け、収益源開拓」として、「高齢者住宅10棟体制へ」をレポートしている。
 それによれば、トーハンはグループ会社のトーハン・コンサルティングを通じ、3月にサ高住「プライムライフ西新井」を開業した。今後の自社所有地の他にも用地を探し、中期的に10施設まで増やす計画で、トーハンの掲げる「事業領域の拡大」に当たる。

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 本クロニクル125などで、トーハンと学研の提携による「サ高住」事業進出にふれ、取次による不動産事業と介護事業の陥穽にふれておいた。
 それは出版社も同様で、『FACTA』(11月号)が「『冠心会』理事負債が10億円の不正流用!」という記事を発信している。これは同誌8月号の医療法人「冠心会」傘下の一成会の「さいたま記念病院」の破産レポートに続くものである。この冠心会の事業パートナーは小学館のグループ会社「オービービー」で、不動産投資して病院建物などを32億円で取得し、経営は冠心会に丸投げしていた。
 ところが冠心会は毎月の診療報酬債権を次々と売り払い、そのファクタリング代金を簿外に移し、一成会は経営不振に陥り、「オービービー」はさらに7億円を注ぎこみ、支援を余儀なくされていた。刑事事件化は必至で、「オービービー」は代理人弁護士を通じて、冠心会前理事夫妻に交渉を始めたが、もはや連絡が取れなくなっているという。
 「病院経営に明るくないオービービーは与しやすい相手」だったとされ、ここにその不動産投資の典型的陥穽が示されていることになる。
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9.能勢仁の『平成出版データブック―「出版年鑑」から読む30年史』(ミネルヴァ書房)が出された。

平成出版データブック―「出版年鑑」から読む30年史 出版の崩壊とアマゾン

 同書は出版ニュース社が刊行していた『出版年鑑』に基づく、平成時代の出版データで、「記録」の他に、「統計・資料」もコンパクトにまとめられ、まさに平成出版史を俯瞰する一冊といえよう。出版関係者は座右に置いてほしいと思う。
 これはと関連してだが、本クロニクル136で、能勢の「大阪屋栗田は情報発信を」という『新文化』(7/25)の投稿にふれておいた。しかしおそらく楽天ブックスネットワークへと移行したことで、出版業界に対する「情報発信」はさらに後退すると考えられる。
 またこちらは『出版の崩壊とアマゾン』(論創社)の高須次郎によれば、『出版ニュース』が休刊してから、一段と「情報発信」が少なくなったという。それは『出版ニュース』休刊だけでなく、肝心な情報、重要な問題への言及は極めて少なくなっており、そこには出版業界の行き詰った閉塞感がこめられていよう。
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10.東京・新宿区の和倉印刷が破産手続き決定。
 1963年創業で、パンフレット、マニュアルを主体とする書籍・雑誌などのオフセット印刷を手がけ、2010年には売上高3億5000万円を計上していたが、近年は売上が減少し、赤字決算を余儀なくなれていた。
 負債は5億8000万円。

11.東京・板橋区の倉田印刷が事業を停止し、破産申請予定。
 1966年設立で、法令関連の書籍や定期刊行物を主力としてきた。
 2013年には売上高8億円を計上していたが、インターネットにおける格安印刷業者の台頭などで、業者間の競合が激化し、売上減少と利益低迷が続いていた。

 出版業界の危機は当然のことながら、印刷業界にも及び、中小の印刷業者の破産となって表出している。その典型がこの2社ということになろう。
 それは製本業界も同様のようで、これらの中小企業、関係会社は相互保証し合っていることもあり、連鎖倒産している。
 これから年末にかけて、中小出版社、書店だけでなく、印刷、製本業界にもこうした倒産が否応なく起きていくだろう。



12.『ニューズウィーク日本版』(10/8)が水谷尚子明治大学准教授による「ウイグル文化が地上から消える日」を掲載している。
 リードは「元大学学長らに近づく死刑執行/出版・報道・学術界壊滅で共産党は何をもくろむ?」
 それによれば、地理学、地質学の専門家の新彊大学学長、ウイグル伝統医学の大家で、新彊医科大学元学長、新彊ウイグル自治区教育長の元庁長らが拘束され、その後の消息が不明で、死刑執行が懸念されている。
 中国共産党はウイグル人社会を担ってきた知識人を強制収容所送りとし、その収監者数は100万人を超すとされる。ウイグル語や文化の消滅を目的とするようで、この2年間で、知識人の社会からの「消失」とともに、ウイグル語の言語空間は消滅しつつある。
 それはウイグル語専門書店の相次ぐ閉鎖、経営者たちの強制収容所への収監、ウイグル語出版社の壊滅、出版社員、編集者、作家、ジャーナリストも同様である。
 「共産党によって押し込められた『ウイグル社会の宝』は今、劣悪な矯正収容所の中で消えようとしている」

 ニューズウィーク日本版 ウイグル人に何が起きているのか
 
 ひとつの民族迫害が起きる時、知識人のみならず、言語、書店、出版が壊滅的状況に追いやられ、かつてのソ連に代わって、あらたに中国が「収容所群島」と化していることを告げていよう。
 さらなる詳細なレポートとして、福島香織『ウイグル人に何が起きているのか』(PHP新書)も出されていることを付記しておこう。



13.アビール・ムカジー『カルカッタの殺人』(田村義道訳、ハヤカワ・ミステリ)を読了。

カルカッタの殺人

 1919年の英国当時下のインド帝国のカルカッタを舞台とするミステリで、著者は1974年生まれのインド系移民2世である。
 主人公はインド帝国警察の英国人警部だが、その存在と登場人物たちは植民地における帝国主義のメカニズムと葛藤を象徴的に浮かび上がらせ、事件もまたその渦中から発生したことを物語っていよう。
 このような帝国主義下の混住ミステリ小説を読むと、船戸与一の「ハードボイルド試論序の序―帝国主義下の小説について」における、次のような一節を想起してしまう。

 「ハードボイルド小説とは帝国主義がその本性を隠蔽しえない状況下で生まれた小説形式である。したがって、その作品は作者が右であれ左であれ、帝国主義のある断面を不可避的に描いてしまう。優れたハードボイルド小説とは帝国主義の断面を完膚なきまでに描いてみせた作品を言うのである。」

 今年ももはや2ヵ月しか残されていないし、多くを読めないだろう。そこでこの『カルカッタの殺人』を海外ミステリのベスト1に挙げておく。



14.下山進『2050年のメディア』(文藝春秋)を恵送された。

2050年のメディア
 これはタイトル、帯文に示されているように、インターネット出現後の読売、日経、ヤフーの三国志的ドラマ、「技術革新とメディア」の20年の物語と見なしていいし、それは本文中の次のような一節に端的に示されていよう。

 「既存の市場が技術革新によって他の市場に移ろうとする時、技術革新によって生まれる市場は最初小規模な市場として始まる。そうなると、大手企業は、わざわざそのゼロの市場に勢力をつぎこみ出て行こうとしないのだ。カニバリズムが恐れられる場合はなおさらだ。」


 この言はジャーナリズムのみならず、出版業界に当てはめることができる。
 だがそれらはともかく、同書からうかがえるのは、2019年まで下山が在籍していた文藝春秋の社内事情で、本クロニクルの立場からすれば、どうしてもそのような裏目読みに傾いてしまうのである。



15.拙著『近代出版史探索』(論創社)が10月25日に刊行された。

近代出版史探索

 今月の論創社HP「本を読む」㊺は「立風書房『現代怪奇小説集』と長田幹彦『死霊』」です。

出版状況クロニクル137(2019年9月1日~9月30日)

 19年8月の書籍雑誌推定販売金額は850億円で、前年比8.2%減。
 書籍は414億円で、同13.6%減。
 雑誌は435億円で、同2.4%減。その内訳は月刊誌が359億円で、同1.2%減、週刊誌は75億円で、同7.5%減。
 書籍の大幅減は7月に大物新刊が集中したこと、前年同月が3.3%増と伸びていたことによっている。
 返品率は書籍が41.6%、雑誌は43.3%で、月刊誌も43.3%、週刊誌は43.4%。
 トリプルで40%を超える高返品率となった。
 いよいよ10月からは消費税が10%となる。この増税は出版業界にどのような影響を与えることになるだろうか。


1.8月の書店閉店状況は76店で、6月が57店、7月が33店だったことに比べ、増加している。
 9月以降はどうなるのか、書店市場は予断を許さない事態を迎えているはずだ。

 やはりチェーン店の閉店が続いているので、それらを挙げてみる。
 TSUTAYA5店、未来屋5店、フタバ図書3店、文教堂、戸田書店、くまざわ書店、とらのあなが各2店である。ちなみに閉店合計坪数はTSUTAYA 1460坪、フタバ図書 1530坪、文教堂 350坪。
 この3店を抽出したのは本クロニクルなどで、TSUTAYAの18年から続く大量閉店、フタバ図書の長きにわたる粉飾決算、文教堂の債務超過と「事業再生ADR手続き」などに関して、ずっと言及してきたからだ。
 しかも文教堂の場合、このタイムリミットは9月末であり、どのような結末となるのだろうか。経済誌などでも、その後の推移はレポートされていない。

 月末になって、文教堂の再生計画が報道され始めている。また文教堂は「事業再生ADR手続の成立及び債務の株式化等の金融支援に関するお知らせ、日販は株式会社文教堂グループホールディングス事業再生計画における当社の支援についてというニュースリリースを出している。これらは10月に言及することにする。



2.8月の書店閉店状況において、突出しているのは日本雑誌販売を取次とする24の小さな書店がリストアップされていることだろう。

 これは本クロニクル134で既述しておいた日本雑誌販売の債務整理と、それに続く自己破産を受けての閉店に他ならない。そのことに関して、多くのアダルト誌を扱う「小取次の破綻だが、その波紋は小さなものではないように思われる」と記したばかりだが、所謂 街のエロ雑誌屋を壊滅状態へと追いやっていく状況が浮かび上がってくる。
 折しもこの9月からセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートが「成人向け雑誌」の販売を中止した。それに合わせるかのいうに、『ソフト・オン・デマンド』10月号が「コンビニエロ本・イズ・デッド」と銘打ち、最終号となっている。
 エロ雑誌の終わりは前々回の安田理央『日本エロ本全史』においても伝えたが、まさに取次や販売市場も終わりを迎えようとしている。
日本エロ本全史
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3.丸善丸の内本店と日本橋店が日販からトーハンへ帳合変更。

 本クロニクル131などでふれてきた、日販の10月1日付での持株会社移行に伴う取次事業としての新子会社日本出版販売の発足とほとんどパラレルであるから、連関していると考えざるをえない。2店の売り上げは60億円に及んでいるので、日販にとっては痛みを伴うであろう。
 それに1に挙げた3社の書店の問題も大きく影響していることは想像に難くない。それこそ、はたして落としどころはあるのだろうか。
 いずれにせよ、丸善の帳合変更、3社の書店問題を抱えて、日販の持株会社体制への移行は最初から波乱含みということになろう。
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4.9月27日に日本橋の複合商業施設「コレド室町テラス」に「誠品生活日本橋」がオープン。

 これは本クロニクル132でふれておいたように、台湾の人気複合書店の日本初出店で、有隣堂がライセンス契約を得て運営する。
 坪数は877坪で、取次は日販。当然のことながら、この「誠品生活日本橋」の出店も丸善のトーハンへの帳合変更の理由のひとつに挙げられるであろう。しかし有隣堂も書店経営というよりも、「誠品生活」を中心とするサブリース・デベロッパーで、年商7億円をめざすとされている。
 このような複合書店は「誠品生活」だけでなく、カナダの「インディゴ」もアメリカに初進出している。同社はカナダ最大の書籍チェーンだが、ブックストアではなく、「カルチュラル・デパートメントストア」として、書籍だけでなく、ホームファッション、衣料、雑貨などを揃えるフォーマットである。
 おそらく10月以後の出版業界の話題は「誠品生活」一色になるだろうし、いずれ「インディゴ」の日本進出もありうるかもしれない。その際にはもちろん取次はトーハンとなろう。
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5.大垣書店の今期決算見通り売上高は119億9000万円、前年比6%増で、過去の最高額を更新。直営店35店、提携店2店で、既存店だけでも2%増。
 部門別では「Book」前年比4%増、「CD・DVD」同7%減、「文具」同6%増、「カフェ」同36%増、「カードBox」同18%増。

 これも本クロニクル132で取り上げておいたように、大垣書店は京都経済センターの「SUINA室町」に京都本店をオープンしている。それは大垣書店が1階全フロア700坪を借り上げ、そのうちの350坪を書籍、雑誌、文具、雑貨売場とし、残りの350坪は大垣書店のサブリースによる8社の飲食店、カフェなど104店が出店している。
 いうなれば、の有隣堂と同じデベロッパーを兼ねるポジションの出店で、それが部門別売上にもリンクしているのだろう。しかし利益面に関しては公表されていないし、来期売上高目標は121億円となっているので、やはりデベロッパーも難しいことを告げているように思われる。



6.集英社の決算は売上高1333億円で、前年比14.5%増。当期純利益も前年の4倍強の98億7700万円。
 その内訳は「雑誌」が513億円、同2.3%増、「書籍」が123億円、同3.9%増、「広告」96億円、同3.7%増、デジタル、版権、物販などの「その他」は599億円、同30.0%増。

 前期売上高は1164億円で、「その他」は461億円だったので、今期の決算の好業績はデジタル、版権、物販などの「その他」の138億円の増加に多くを負っていることはいうまでもないだろう。
 「雑誌」も内訳を見てみると、コミックスの映像化によるヒット、『ONE PIECE』の単行本が前年より1巻多いことに支えられ、「書籍」にしても、書籍扱いの『SLAM DUNK』新装再編版全20巻の寄与によるものである。
 つまり定期雑誌や書籍が回復したわけではなく、コミックスのフロック的寄与が大きい。したがって来期も続くとは限らない。結局のところ、集英社の場合も「その他」収入がどれだけ伸ばせるかということに尽きるだろう。
ONE PIECE SLAM DUNK



7.光文社の決算は売上高203億円、前年比6.5%減の3年連続の減収で、経常損失7億6500万円。だが保有していた光文社ビルを売却したことにより、当期純利益は36億2400万円と黒字決算。

 やはりその内訳を見てみると、「販売」96億7500万円、前年比9.7%減で、そのうちの雑誌66億1500万円、同7.3%減、書籍が30億6000万円、同14.6%減となっている。
 月刊誌『VERY』『STORY』も振るわず、光文社文庫や光文社新書も前年を下回り、返品率は雑誌が48.5%、書籍は40.2%と高止まりしたままだ。
 本クロニクル129で、光文社古典新訳文庫の誕生秘話としての駒井稔『いま、息をしている言葉で。』(而立書房)を推奨したこともあり、同文庫がリストラの対象とならないことを祈るばかりだ。

 いま、息をしている言葉で。
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8.メディア・コンテンツを展開するイードはポプラ社と資本業務提携し、第三者割当による25万株の自己株式の処分を行う。
 両者の業務提携の内容は、既存事業のノウハウの共有、相互連携強化などによる事業の拡大と深耕、ポプラ社の有する多数のコンテンツとイードのデジタルマーケッティング力を融合させた新規事業の創出である。

 具体的にいえば、イードが第三者割当により2億円を超える資金を投入し、ポプラ社の大株主になることだ。またイードは富士山マガジンサービスとも業務提携している。
 出版社のM&Aは公表されているケースとそうでないケースが多く生じているけれど、やはりM&Aされた場合、既存の出版路線を貫くことは難しく、在庫の問題も含め、否応なく転換が迫られているようだ。

【付記】10月1日
その後、消息筋からの情報によれば、ポプラ社がイードの株を引き受けたとのことで、イードがポプラ社の大株主になったのではないようだとの指摘もなされている。



9.『人文会ニュース』(No132)で知ったが未来社が人文会から退会し、誠信書房も2年連続の休会となっている。

 人文会は創立50周年を迎えていることからすれば、1960年代末に創立されている。
 そういえば、かつて人文書取次の鈴木書店の店売には、人文会会員社の書籍が揃って常備として置かれていた光景を思い出す。それももはや20年前のものになってしまった。
 まさに人文会の「オリジナルメンバー」に他ならない未来社の退会も、人文会の設立、鈴木書店の倒産と同様に、出版業界の変容を象徴しているのだろう。



10.『岩田書院図書目録』(2019~2000)が届いた。

 巻末に「新刊ニュースの裏だより2018・7~2019・4」がまとめて収録されている。
 久しぶりに「裏だより」を読み、歴史書の岩田書院のこの10カ月の動向と内部事情を教えられる。岩田書院も創立25周年を迎えているのだ。その中から興味深い記述を拾えば、4回にわたる「在庫半減計画」が挙げられる。これは直接読んでもらったほうがいいだろう。
 また一人だけの「新たな出版社」として、歴史、民俗、国文系の3社が紹介されていた。
 「「小さ子社」は思文閣出版にいた原さん、「七月社」は森話社にいた西村さん、「文学通信」は笠間書院にいた岡田さん」で、私もここで初めて知ったといっていい。
 それは次のように続いている。
 「私が岩田書院を作った時(25年前)は、景気こそ良くなかったけど、今に比べると、まだ本が売れていた時代。でもこれからやる人はたいへんだ。10年先、この業界がどうなっているかも、見えないし。」
 この続きもあるが、これも直接読まれたい。



11.日本ABC協会の新聞発行社レポートによる、2019年上半期(1月~6月)の平均部数(販売部数)が出されたので、全国紙5紙のデータを挙げてみる。

■2019年上半期(1~6月)ABC部数
新聞社2019年上半期前年同期比増減率(%)
朝日新聞5,579,398▲374,938▲6.3
毎日新聞2,435,647▲388,678▲13.8
読売新聞8,099,445▲413,229▲4.9
産経新聞1,387,011▲115,009▲7.7
日経新聞2,333,087▲102,886▲4.2
合計19,834,588▲1,394,740

 全国紙5紙の合計マイナスは139万4740部で、『毎日新聞』は約39万部減で、ついに250万部を割り込んでしまった。新聞配達の人に聞いても、地方紙はともかく、近年の全国紙の落ち込みは激しということだ。朝日新聞の500万部割れも近づいていよう。
 本クロニクルで繰り返し書いてきたように、毎日の新聞に掲載される雑誌や書籍広告が書店へと誘うチラシであり、それによって出版物販売と購入が促進されてきたのである。
 しかしこのような新聞の落ち込みは、その効果がもはや衰退しつつあることを示しているし、まして新聞書評に至ってはいうまでもないことだろう。



12.またしても訃報が届いた。
 それは木村彦次郎で、講談社の『群像』や『小説現代』の編集長を務め、退社後『文壇栄華物語』(筑摩書房)などを著わしている。

 大村からは5月に手紙が届き、下咽頭癌で入院すると知らされていた。それから便りがなかったので、その後どうしているのかと気になっていたところに、訃報がもたらされたのだった。
 彼からは何度も「浅酌」に誘われていたが、なかなか時間がとれず、またしても呑まずじまいに終わってしまった。
 大村の死で、宮田昇に続き、私のいう出版界の四翁のうちの二翁が失われ、これまた講談社の原田裕、白川充の三トリオも鬼籍に入ってしまったことになる。
文壇栄華物語



13.こちらも死者をめぐってだが、追悼本『漫画原作者 狩撫麻礼1979-2018』(双葉社)が出された。

 狩撫麻礼に関しては本クロニクル135でもふれたばかりだが、このような追悼本が刊行されるとは予想だにしていなかった。しかもそれは双葉社・小学館・KADOKAWA・日本文芸社による狩撫麻礼を偲ぶ会・編である。
 確かに1960年代から70年代にかけて、「漫画原作者」の時代があり、狩撫がその系譜上に位置する最後の「漫画原作者」だったことをあらためて認識させられる。
 それも含め、現代マンガ史のための必読の一冊として推奨しよう。
漫画原作者 狩撫麻礼1979-2018
odamitsuo.hatenablog.com



14.『古本屋散策』に続き、10月半ばに『近代出版史探索』(論創社)が刊行される。
 やはり200編収録だが、こちらは長編連作で、前著を上回る770ページの大冊となる。

古本屋散策  近代出版史探索

 今月の論創社HP「本を読む」㊹は「平井呈一『真夜中の檻』と中島河太郎」です。