出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル143(2020年3月1日~3月31日)

 20年2月の書籍雑誌推定販売金額は1162億円で、前年比4.0%減。
 書籍は713億円で、同3.2%減。
 雑誌は448億円で、同5.2%減。
 その内訳は月刊誌が370億円で、同4.6%減、週刊誌は78億円で、同8.2%減。
 返品率は書籍が31.8%、雑誌は41.5%で、月刊誌は41.2%、週刊誌は42.9%。
 書店売上は書籍が2%減だが、学校の一斉休校もあり、小学ドリルなどの学参は12%増、学習漫画などの児童書は5%増で、新型コロナによるプラスということになる。
 まだ2月の書籍雑誌推定販売金額に、新型コロナの影響は実質的に表われていないといえるかもしれないが、3月にはかつてないマイナスとして現実化するだろう。
 それは出版業界の生産、流通、販売のさらなる未曽有の危機として表出していく。
 すでにその渦中にあると考えるしかない。


1.『文化通信』(3/2)が一面特集「新型コロナ・ウィルスの影響が広がる」で、新聞、出版、広告業界のイベントや会合中止を伝えている。
 出版業界では「全国トーハン会代表者総会」、5回目の「本のフェス」、丸善ジュンク堂の「丸の内BOOKCON2020」などが中止。
 また『新文化』(3/5)も同じく一面特集「新型コロナ 店頭売上に影響およぶ」として、「住宅地・郊外型」の書店では比較的影響が少ないが、「大型施設や駅前型」の書店は前年比10%近くの減少で、大きなダメージを受け、ある地方書店では20%マイナスも生じているとレポートしている。

 これらは3月上旬の記事であり、その後のイベントや会合中止はさらに増加し、3月の書店売上もさらに減少しているようだ。
 日本百貨店協会の発表によれば、3月1日から17日の百貨店売上高は前年比40%減となり、1965年の統計開始以来、過去最大の落ち込みになるという。2月の売上高は同12.2%減。
 本クロニクルはその根底的視座として、高度資本主義消費社会は平和と安全が前提だと認識してきたが、それが思いがけない新型コロナによって侵蝕されてしまったのだ。グローバリゼーション化と相俟って、リーマンショックや東日本大震災を超える経済不況に見舞われつつある。



2.株式市場も急落しているの、上場企業書店と関連小売業も見てみる。

 

■上場企業の書店と関連小売業の株価
企業18年5月
高値
18年11月21日
終値
19年11月21日
終値
20年3月20日
終値
丸善CHI363348377348
トップカルチャー498382345250
ゲオHD1,8461,8401,3261,334
ブックオフHD8398081,082808
ヴィレッジV1,0231,0781,110856
三洋堂HD1,008974829814
ワンダーCO1,793660726484
文教堂HD41423915995
まんだらけ636630604492
テイツー4223

 本クロニクル139で、同じリストを掲載したばかりだが、トップカルチャー、ワンダーCO、文教堂は株価が急落しているといっていいだろう。
 しかも新型コロナによる売上減少が反映されるのはまだこれからだし、これら以外の大手チェーンに及んでいくことは確実だ。
 また2月の書店閉店状況を見ても、ジュンク堂だけでなくTSUTAYA5店、ヴィレヴァン4店、文教堂2店、それから廣文館やフタバ図書の大型店も閉店している。
 おそらく新型コロナによる書店売上マイナスは何よりも大型店を直撃し、どこまで高い家賃コストに耐えられるかという状況へと追いやられていくだろう。
odamitsuo.hatenablog.com



3.『新文化』(3/12)に、図書館に勤めている20代の匿名の女性による寄稿「図書館サービス制限に違和感」が掲載されている。
 これは新型コロナによる図書館イベントやサービスの中止、とりわけ「レファレンス」と「資料の閲覧」ができなくなったことをさしている。彼女の言葉を引こう。

 中止されたサービスの内容が、私には信じられないものでした。主に資料(新聞を含む)の閲覧、閲覧席の利用、利用者が調べる内容に関しての相談(レファレンス)、館内に設置されているパソコンでのインターネットの使用などです。
 これは、利用者の滞在時間を短時間にすることと、対人接触を可能な限り避けることを目的としています。そうして残ったサービスは、予約資料の受取り、資料の返却、館内の検索機またはホームページを使用してのセルフ検索くらいです。

 続けて彼女は「図書館の自由に関する宣言」に言及し、これらの「今回のサービスの制限」に疑問を呈している。

 こうした新型コロナの影響が図書館現場において、広く実施されているのかどうか、詳らかにしないが、かなり休館に及んでいることは仄聞している。
 かつてであれば、このような図書館状況は『出版ニュース』で報じられていただろうが、休刊となった現在ではそれも不可能となってしまった。
 多くの出版社のデジタルコンテンツ無料公開は、業界紙でも報じられているけれど、まさに図書館に関するレファレンスも、これから難しくなっていくことを知らしめているのかもしれない。



4.戸田書店静岡本店が5月に閉店。
 静岡本店はJR静岡駅北口前の複合商業ビル「葵タワー」の地下1階から2階までの3フロアで、文芸書から専門書なども含め、60万冊を揃えていた。
 2002年に旧長崎屋静岡店ビルを取得して開業し、07年に再開発事業に伴い、一次退去したが、10年に「葵タワー」完成とともに再オープンしていた。
 また戸田書店の富士店、富士宮店(いずれも静岡)、桐生店(群馬)、長岡店(新潟)、三川店(山形)の5店舗は丸善ジュンク堂の運営となり、丸善CHIグループの傘下に置かれることになった。

 静岡呉服町通りには、かつて御三家とされた谷島屋、江崎書店、吉見書店があった。それに戸田書店も加わったわけだが、いずれも閉店という事態を迎えた。
 通りにはTSUTAYAだけが残り、静岡の書店の一時代が終わったことになろう。駅ビルに谷島屋、新静岡駅ビルに丸善ジュンク堂があるにしても。
 戸田書店の静岡本店は地元のデベロッパーに売却されるようだが、その背後には栗田と大阪屋、大阪屋栗田から楽天に至る取次買掛金の問題が潜んでいるだろうし、その清算はどうなるのだろうか。
 それと同時に、戸田書店は2の三洋堂と並んで、1970年代後半からの郊外店出店の先駆けだった。
 今日の事態は書店の郊外店の終わりを告げていよう。



5.『出版月報』(2月号)が特集「コミック市場2019」を組んでいる。
 その「コミック市場全体(紙版&電子)販売金額推移維」と「コミックス・コミック誌 推定販売金額推移」を示す。

■コミック市場全体(紙版&電子)販売金額推移(単位:億円)
電子合計
コミックスコミック誌小計コミックスコミック誌小計
20142,2561,3133,56988258874,456
20152,1021,1663,2681,149201,1694,437
20161,9471,0162,9631,460311,4914,454
20171,6669172,5831,711361,7474,330
20181,5888242,4121,965372,0024,414
20191,6657222,3872,593コミックス
コミック誌統合
2,5934,980
前年比(%)104.887.699.0129.5129.5112.8


■コミックス・コミック誌の推定販売金額(単位:億円)
コミックス前年比(%)コミック誌前年比(%)コミックス
コミック誌合計
前年比(%)出版総売上に
占めるコミックの
シェア
(%)
19972,421▲4.5%3,279▲1.0%5,700▲2.5%21.6%
19982,4732.1%3,207▲2.2%5,680▲0.4%22.3%
19992,302▲7.0%3,041▲5.2%5,343▲5.9%21.8%
20002,3723.0%2,861▲5.9%5,233▲2.1%21.8%
20012,4804.6%2,837▲0.8%5,3171.6%22.9%
20022,4820.1%2,748▲3.1%5,230▲1.6%22.6%
20032,5492.7%2,611▲5.0%5,160▲1.3%23.2%
20042,498▲2.0%2,549▲2.4%5,047▲2.2%22.5%
20052,6024.2%2,421▲5.0%5,023▲0.5%22.8%
20062,533▲2.7%2,277▲5.9%4,810▲4.2%22.4%
20072,495▲1.5%2,204▲3.2%4,699▲2.3%22.5%
20082,372▲4.9%2,111▲4.2%4,483▲4.6%22.2%
20092,274▲4.1%1,913▲9.4%4,187▲6.6%21.6%
20102,3151.8%1,776▲7.2%4,091▲2.3%21.8%
20112,253▲2.7%1,650▲7.1%3,903▲4.6%21.6%
20122,202▲2.3%1,564▲5.2%3,766▲3.5%21.6%
20132,2311.3%1,438▲8.0%3,669▲2.6%21.8%
20142,2561.1%1,313▲8.7%3,569▲2.7%22.2%
20152,102▲6.8%1,166▲11.2%3,268▲8.4%21.5%
20161,947▲7.4%1,016▲12.9%2,963▲9.3%20.1%
20171,666▲14.4%917▲9.7%2,583▲12.8%18.9%
20181,588▲4.7%824▲10.1%2,412▲6.6%18.7%
20191,6654.8%722▲12.4%2,387▲1.0%19.3%

 19年のコミック全体の販売金額は4980億円、前年比12.8%増。その内訳は紙のコミックスが1665億円、同4.8%増、電子コミックス2593億円、同29.5%増で、2年連続のプラスとなった。
 電子コミックは14年の統計開始以来、過去最高の売上で、ついに紙のコミックスとコミック誌の販売金額を上回った。これは「漫画村」などの海賊版サイトの閉鎖も大きく影響しているはずだ。
 紙のコミックスの増は『鬼滅の刃』(集英社)の大ヒットによるもので、12月発売の18巻は初版100万部、19年末には18巻累計で2339万部に達し、2000年2月の19巻は初版150万部、電子版を含めると累計が4000万部を突破している。
 19年の書籍扱いコミックスの販売部数が2375万部であることを考えれば、大ブレイクと呼ぶしかない『鬼滅の刃』の売れ行きだ。出版業界においては、久方ぶりの明るいニュースだ。

 だが留意すべきは、毎年のようにこうした大ブレイクが起きるわけではないし、コミック誌は722億円、前年比12.4%減で、14年の半分ほどの売上となっている。それはまだ続くだろうし、『鬼滅の刃』にしても、『週刊少年ジャンプ』がもたらした大ブレイクであり、紙のコミック誌の存在を抜きにしては語れないことを忘れるべきではない。
鬼滅の刃 鬼滅の刃



6.講談社の決算は1358億3900万円、前年比12.7%増で、2年連続の増収増益。
 その内訳は「製品」643億円、同3.9%減、「広告収入」59億円、同18.4%増、「事業収入」は613億円、同38.5%増。
 「事業収入」の「デジタル関連収入」は465億円、同39.2%増、「国内版権収入」は81億円、同36.5%増、「海外版権収入」は66億円、同39.5%増。
 年間を通じて、電子書籍売上が好調で、版権収入も映像化による配信、商品化ビジネスが拡大、ニューメディア、デジタルメディア広告も伸長した。
 それにより、営業利益は89億円、同293.8%増、当期純利益は72億円、同152.9%増となった。

 講談社の2年連続の増収増益はの電子コミック市場の伸長と連動しているし、それはコミックを柱とする他の大手出版社の決算にも表われてくるだろう。
 しかしそこでも問題なのは、電子コミックの隆盛は取次や書店に対してほとんど寄与しないし、リアルな流通や販売にとってはマイナス要因でしかない。それこそ大手出版社のマス雑誌とコミックは中小書店によって支えられていたにもかかわらず、現在ではもはやそうした関係は切断されようとしている。



7.丸善CHIホールディングスの決算は売上高1762億5800万円、前年比0.5%減。
 営業利益34億5400万円、同6.8%増、当期純利益は21億8900万円、同14.3%減。
 その内訳は図書館サポート事業が278億円、同5.2%増、受託館数は1489館、大学・研究機関向け設備工事の文教市場販売は536億円、同5.0%減、丸善ジュンク堂などの店舗・ネット販売事業は737億円、同0.5%減、店舗数は88。

 文教市場と丸善ジュンク堂などの店舗・ネット販売事業のマイナスを、図書館サポート事業の伸びが補っていることになる。
 期初の受託感寸は1356館だったことからすれば、133館の増加で、公共図書館はそれほど増えていないわけだから、TRCに切り替わったところも多いと考えられる。これから公共図書館にしても、著しい増加は期待できないし、ゼロサムゲームの中で、図書館の所謂帳合変更も必至ということになるのだろうか。
 なお21年の決算予想について、新型コロナ問題もあり、現時点での予想は困難で、未定としている。



8.日販とトーハンは「物流協業」において、雑誌返品業務を出版共同流通(株)蓮田センターで実施すると発表。
 出版共同流通は日販、楽天、ブックネットワーク、日教販、講談社、小学館、集英社が出資し、蓮田センターは日販、楽天、日教販の雑誌返品業務を受託していた。
 これにトーハン、中央社、協和出版販売の雑誌返品も受託することになる。これらはトーハンの東京ロジスティクスセンターが手がけていたが、同センターは新たな物流拠点として活用していくとされる。

 日販やトーハンの物流拠点として、まだ多くの流通センターがあるけれど、東京ロジスティクスセンターの取次の新たな物流拠点としての活用は難しいだろう。
 雑誌にしても、書籍にしても、この20年で物流は半減してしまったのだし、しかも下げ止まってもいないからだ。といって他業種の3PL物流への移行も困難である。
 そのような視点から見れば、不動産の有効活用が模索されているはずだが、そこで「文喫」やホテル「本箱」は展開できないので、やはり高齢者施設ということになるのだろうか。



9.日販GHDは新会社の日販セグモと日販ビジネスパートナーズの設立を発表。
 前者は各種イベントを運営するエンタメ事業会社で、社長は日販GHDの安井邦好執行役員、後者はグループの管理部門を手がけるシェアードサービス会社で、社長は同西堀新二執行役員。


10.CCCグループの徳間書店は平野健一社長が取締役となり、小宮英行取締役が社長に就任。
 また同じく主婦の友社の社長に平野が就任する。

 日販の新たな2社は、本クロニクル131で示しておいた「グループ体制の概要(予定)」に基づくもので、「エンタメ事業」と「シェアードサービス」として予告していたものだ。
 日販セグモのほうは「エンタメ事業」であるがゆえに、CCCの移行に寄り添っているはずだ。とすれば、ほぼ同時期に発表されたCCCグループの徳間書店や主婦の友社の社長人事にしても、そうした動向とパラレルであるのかもしれない。
odamitsuo.hatenablog.com



11.デイズ・ジャパン社が破産。

 DAYS JAPAN (最終号)

 『DAYS JAPAN』に関しては本クロニクル131などで、発行者の広河隆一のセクハラ問題を取り上げてきた。
 同誌は19年3・4月号で「広河隆一性暴力報道を受けての検証委員会報告」と「性暴力をどう考えるか、連鎖を止めるために」を特集し、それが最終号となっていた。
 ところがその後に「性暴力」損害賠償請求が積み上がり、結局のところ破産するしかなかったようだ。
 そのために『DAYS JAPAN』はセクハラで休刊となり、会社自体もそのことによって破産するという不名誉な記録を出版史に残したことになろう。
 ただそれとは別に、写真による原発特集などは、他では見ることも読むこともできなかったものであることは記しておく。



12.1953年創刊のアメリカの男性誌『PLAYBOY』が終刊。

 創刊号はマリリン・モンローのヌードを掲載し、72年には700万部を超える部数に達し、インターナショナルな雑誌神話を確立した。それを範として、多くの男性雑誌が各国で創刊されていったことはいうまでもないだろう。
 『PLAYBOY日本版』が集英社から創刊されたのは1975年であり、それは日本が消費社会化した時代のとば口においてだった。
 70年代後半から80年代にかけては、その影響下に多くの男性雑誌が創刊され、雑誌の時代の輝きを放っていたことはまだ記憶に残っている。
 アメリカ版を最初に見たのは高度成長期下の1960年代半ばで、その多くのグラビアと華やかさは当時の日本社会とかけ離れたもののように思えた。だがその後10年で、日本もまたアメリカ的消費社会を迎えたことになろう。
 それらはともかく、終刊もコロナウィルスの感染拡大を受け、版元の決断も早められたという。
PLAYBOY f:id:OdaMitsuo:20200326142105j:plain(『PLAYBOY日本版』、1975年創刊号)



13.風船舎の古書目録第15号が届いた。
 特集は「異郷にて」で、536ページ、5731の出品が並び、多くの未知の手紙や写真が満載である。


f:id:OdaMitsuo:20200326114601j:plain:h120

 風船舎の目録は音楽が中心となっていて、私はその分野に門外漢なので、あまり購入していない。そんな私にも恵送してくれるので、とても有難い。
 ただ知人の言によれば、音楽関係者にとっては不可欠の古書目録であるようだし、少しでも多くの目にふれればと思い、紹介を試みている次第だ。



14.平凡社の編集者の松井純が51歳で急逝した。
 『週刊読書人』(3/31)に明石健吾「追悼 松井純 二〇〇冊に及ぶ本の産婆役」が掲載され、編集書名がリストアップされている。

 面識はなかったけれど、その編集書はかなり読んでいて、人文書院時代の鈴木雅雄/真島一郎編『文化解体の想像力』は拳々服膺させてもらった。奇しくも同書の編集覚書「そんなものはエグゾティスムだと非難されるかもしれない」は松井自らの手になるものだった。これで『マルセル・モース著作集』の実現は遠のいてしまったと考えるしかない。
文化解体の想像力



15.今月の論創社HP「本を読む」㊿は「『マラルメ全集』と菅野昭正『ステファヌ・マラルメ』」です。
 『近代出版史探索Ⅱ』は5月連休明けに刊行予定。

出版状況クロニクル142(2020年2月1日~2月29日)


 20年1月の書籍雑誌推定販売金額は865億円で、前年比0.6%減。
 書籍は495億円で、同0.6%増。
 雑誌は370億円で、同2.2%減。
 その内訳は月刊誌が295億円で、同0.7%減、週刊誌は74億円で、同8.0%減。
 返品率は書籍が33.1%、雑誌は45.1%で、月刊誌は46.1%、週刊誌は40.6%。
 書籍の微増は前月の大幅減に加え、返品が減少したこと、雑誌のうちの月刊誌の微減は
 コミックス『鬼滅の刃』全巻の重版の影響による。
 2月はコロナウィルスの感染拡大もあり、出版業界にどのような影響を及ぼしたのであろうか。
 それは2月の書籍雑誌推定販売金額に反映されるはずだ。

鬼滅の刃



1.出版科学研究所による19年度の電子出版市場販売金額を示す。

■電子出版市場規模(単位:億円)
201420152016201720182019前年比
(%)
電子コミック8821,1491,4601,7111,9652,593129.5
電子書籍192228258290321349108.7
電子雑誌7012519121419313083.3
合計1,1441,5021,9092,2152,4793,072123.9

 19年の電子出版市場は3072億円で、前年比23.9%増。
 それらの内訳は電子コミックが2593億円、同29.5%増、電子書籍は349億円、同8.7%増、電子雑誌は130億円、同16.7%減。
 電子コミックは海賊版サイト「漫画村」の18年4月の閉鎖以来、順調に伸びた。その結果、電子コミック占有率は前年の80.8%から84.4%となり、19年の日本の電子出版市場は18年よりもさらに、電子コミック市場の色彩が強くなっていったことになる。 
 それに対し、電子雑誌は2年連続のマイナスで、「dマガジン」の会員数も17年から減少している。
 紙と電子を合わせた出版市場は1兆5432億円で、前年を0.2%上回っているが、結局のところ、電子コミックの伸長と密接にリンクしている。
 もちろん文春オンラインの月間3億PVを超えたことや、集英社コミック『鬼滅の刃』の大ブレイクも承知しているけれど、大手出版社の今後の行方も電子コミック次第ということになるのかもしれない。



2.アルメディアによる19年の書店出店・閉店数が出された。

■2019年 年間出店・閉店状況(面積:坪)
◆新規店◆閉店
店数総面積平均面積店数総面積平均面積
10008210,028127
22220110588,437145
3202,957148856,37785
4122,010168474,25997
55435877610,401139
6142,754197575,28294
7101,732173332,36774
861,090182767,535118
9113,344304466,566149
1061,610268274,376175
1191,740193373,828103
1248142042664231
合計9918,70618965070,098115
前年実績8420,23224166457,25491
増減率(%)17.9▲7.5▲21.6▲2.122.426.6

 出店99店に対して、閉店は650店である。
 出店は18年の84店から15店増え、閉店も同664店から14店減っている。
 その一方で、書店の開店増床面積は1万7806坪、閉店減少面積は7万98坪で、この20年間で最大の5万1392坪の売場が失われたことなる。
 19年の書店閉店に関しては、本クロニクルでもTSUTAYAを始めとする大型店の閉店にふれてきたが、それがトータルな閉店減少面積にそのまま重なっているのである。
 しかもそれは20年1月も続いていて、フタバ図書ジアウトレット広島店800坪、紀伊國屋書店ららぽーと豊洲店540坪、蔦屋書店塩尻店400坪、TSUTAYA高倉店300坪、戸田書店豊見城店370坪、宮脇書店福山多治米店320坪などが閉店している。しかもこれらはナショナルチェーンであり、20年は19年を超える書店の閉店減少面積となるかもしれない。



3.2と同じくアルメディアによる取次別新規書店数と新規書店売場面積上位店を示す。

■2019年 取次別新規書店数 (面積:坪、占有率:%)
取次会社カウント増減(%)出店面積増減(%)平均面積増減(%)占有率増減
(ポイント)
日販41▲14.68,036▲49.1196▲40.443.0▲35.0
トーハン54107.710,090171.118730.853.935.5
楽天BN40.05779.31449.13.10.5
中央社0000.0▲0.5
その他0000.00.0
合計9917.918,706▲7.5189▲21.6100.0
                           (カウント:売場面積を公表した書店数)


■2019年 新規店売場面積上位店
順位 店名面積(坪)所在地
1誠品生活日本橋877中央区
2くまざわ書店大分明野店770大分市
3喜久屋書店松戸店572松戸市
4紀伊國屋書店天王寺ミオ店492大阪市
5TSUTAYA 利府店490宮城県利府町
6TSUTAYA BOOK STORE 宮交シティ店488宮崎市
7三洋堂書店アクロスプラザ恵那店450恵那市
8紀伊國屋書店mozoワンダーシティ店422名古屋市
9TSUTAYA BOOK STORE ワイプラザ新保店415福井市
10TSUTAYA BOOK STORE 近鉄草津店400草津市

 取次別で見ると、18年は日販が48店、1万5790坪で、全体の半部以上、売場面積シェアも78%に達していた。だが19年の出店41店はともかく、売場面積は半減したといっていい
 その代わりにトーハン54店、売場面積も1万坪を超えている。このような日販とトーハンの出店状況は20年も続いていくと考えられる。
 新規店売場面積は最大の誠品生活日本橋が877坪で、最大面積が1000坪を下回ったのは2002年以来初めてとされる。TSUTAYAが4店を占めているが、18年は7店だったことと売場面積のことを考えると、日販の売場面積シェアのマイナスもTSUTAYAとパラレルだとわかる。
 でフタバ図書ジアウトレット広島店の閉店を伝えたが、本クロニクル130で示しておいたように、18年開店で4位となっていた。つまり2年ほどで撤退してしまったのである。この後始末はどうなるのだろうか。
 それから楽天は4店の出店だが、すでに19年1月だけでそれを上回る5店の閉店を見ているし、まだ続いていくであろう。
odamitsuo.hatenablog.com



4.日販GHDの事業会社日販は奥村景二常務が代表権をもって社長、安西浩和専務が副社長に昇任。
 吉川英作副社長は会長、平林彰社長は取締役に就任。

 この日販の役員人事には 1、2、3の出版業界状況、CCC=TSUTAYAの19年における大量閉店が強く投影されているのだろう。
 日販の常務でMPDの社長だった奥村がいきなり日販の社長に省にするのはそれらのことを抜きにして説明できない。しかも代表権は平林社長と吉川副会長が持っていたが、今回は奥村だけが代表権を持ち、また日販GHDの専務のともなる。
 それに加えて、新たにMPDの社長、及び奥村とともに日販GHDの執行役員に就任する長豊光は日販GHDのみならず、日販やMPDの役員リストにもその名前は見当らなない。
 おそらくCCC=TSUTAYAの関係筋から招聘されたと考えるしかない。
 とすれば、今回の役員人事は本来の大手取次の正道というよりも、傀儡人事という印象が拭い難い。



5.TechCrunch Japan「『ストリーミング戦争』の正体:Disney、Netflix、Amazon、Apple など各社徹底解説」がネットで発信されている。

 唐突ながら、ここに挿入しておくべきだと考え、ふれておく。
 TSUTAYAの大量閉店の背景にあるのは、出版物の売上の凋落とともに、複合の柱であったDVDレンタルの低迷も挙げられる。それは映画にしてもレンタルの時代ではなく、映像配信の時代へと移行しつつあることを物語っている。
 私にしてもアマゾンプライムに加え、今年になってマーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』を見たいので、ネットフリックスの会員となり、映画の配信の時代を実感しているからだ。
 おそらくそれは、映画のDVDを付録とする分冊百科=パートワーク誌の企画を不可能に追いやるだろう。DVD付録は『出版状況クロニクルⅤ』で既述しておいたように、ディアゴスティーニ・ジャパンや講談社などが主として手がけていて、私もかなり買っている。
 その中には講談社の『男はつらいよ 寅さんのDVDマガジン』もあったけれど、現在ではネットフリックスで全作品を見ることができるのだ。
 映画もまたDVDを買わなくていいし、レンタルする必要もない時代を迎えているのだが、先のネット発信はその映画配信ですらも、さらに新たな競合状況となっていること、すでに配信戦国時代であることを教えてくれる。
男はつらいよ 寅さんのDVDマガジン



6.京都の三月書房からの来信があり、早ければ今年の5月か6月に閉店すると伝えられてきた。

 これはすでに三月書房のメールマガジンでも記されているし、『朝日新聞』(2/16)の京都地方版にも「京都の名物書店、三月書房が閉店へ」という記事が出されたので、それらも参照してほしい。
 閉店理由は「出版業界の危機的状況とは無関係」で、「店主の高齢(現在70歳)と後継者の不在」が挙げられている。
 三月書房に関しては先代のことも含め、いずれ書きたいと思っているが、たまたま2月の「朝日歌壇」に次のような一首を見つけたので、それを引いて、来信への返歌としよう。


   百年の書店を廃(や)めるときは来ぬ
   本の衰へ吾の衰へ
              (長野県)沓掛喜久男



7.アマゾンジャパンは法人・個人事業主の購買専門サイト「Amazonビジネス」を通じて、書店への仲間卸を行うと発表。 
 全国の書店が対象で、書店への卸値は取次ルートより割高だが、1冊のみの注文にも対応し、アマゾン独自の配達ルートのために、指定日に注文品が届くとされる。
 2月現在で、アマゾンと直接取引している出版社は3631社で、前年比689社増、出版社の直接取引比率は66%に達している。

 確かにアマゾンの配達ルートであれば、書店からの1冊の注文品にしても、指定日に届くことになろう。しかし問題なのはその卸値と送料のことだ。おそらく客注などの1冊の注文では定価の問題はあるにしても、赤字になってしまうのではないだろうか。
 といって、それらの書店への卸値や送料を明確化し、公表しないかぎり、取引は難しいと思われる。だがアマゾンから「仲間卸」を提案される事態となったことには苦笑させられると付け加えるしかない。



8.『新文化』(2/20)が「アダルトの老舗 芳賀書店、赤字脱却への軌跡」という一面特集を組んでいる。
 その現在を要約してみる。
 かつての3店は、全3フロア、各階23坪の本店の1店だけになった。本売場の占有面積比は雑誌とコミックが各40%、書籍が20%、商材別売上占有比はDVD60%、本20%、グッズ20%。
 DVDとグッズは前年比増が続いているし、アダルト系のショップとして、坪単価日本一をめざしているので、現在の2万円を3万円にしたい。
 本の売上は減少傾向で、風俗情報誌はネットの普及で落ち幅が大きく、それは主としてコンビニで販売されていたDVD付き雑誌も同様である。最盛期の50%以下となってしまった。
 それは出版社がAVメーカーと連携し、映像コンテンツなどの素材を流用して誌面をつくる編集が、雑誌からオリジナル性を奪ってしまったことが原因だろう。
 これからのアダルト本は「本そのものに人格をもたせないと、かつてのコンビニ本向けのように、業界全体が共倒れになってしまう」と芳賀英紀専務は語っている。

 私たちの世代にとって芳賀書店は、まず文芸書の出版社、それから映画本、その次にはビニール本販売で名を馳せ、そのビニール本販売の延長が現在のアダルトの老舗という位置づけになるのだろう。
 それを意識してか、芳賀書店もカルチャーウェブマガジンとしての「HAGAZINE」をオープンし、3年以内に出版業にも回帰する予定であるという。



9.浜松や静岡に16店舗を展開する谷島屋書店がレジ袋を有料化。
 これは7月1日からの容器包装リサイクル法の改定に伴うレジ袋有料化に先立つ対応で、有料化後のレジ袋利用率は2割ほどだという。

 環境保護問題はあるにしても、有料化にあたって大4円、小2円とされるので、16店のレジ袋コストもトータルすれば、かなりの金額になっていたはずだ。
 ちょうど書店のレジ袋のコストは出版社に例えれば、スリップコストに当たるはずで、出版社にしても続々とスリップレス化されていっているように、書店のレジ袋有料化も広がっていくであろう。
 だがブックオフなどの場合、利益率からいってレジ袋コストは考える必要もないであろうが、レジ袋有料化ということになるのだろうか。



10.トランスメディアが事業停止。
 同社は2000年設立で、女性ライフスタイルの月刊誌『GLITTER』や女優、海外セレブ関係の書籍を刊行していた。
 2006年には売上高16億円だったが、雑誌販売が落ちこみ、15年には売上高が6億円を割っていた。
 その後『小悪魔ageha』の復刊、海外セレブ情報誌『GOSSIPS』の休刊、人員整理を進めていたが、業況は好転せず、『GLITTER』も2月号で休刊し、今回の事態となった。
 負債額は現在調査中。

GLITTER
 前回のクロニクルでもセブン&アイ出版の事業停止と主婦層向け生活情報誌『saita』の休刊を伝えたばかりだ。
 20世紀は婦人誌の時代でもあったが、それが終わったしまったこと、あるいはまた21世紀の女性誌の時代も終わりつつあるのかもしれない。
 そういえば、婦人誌や女性誌と関係の深かった百貨店も19年には閉店数が2桁に及び、20年も閉店ラッシュが止まらない。百貨店の時代も終わっていく。両者は連鎖しているのではないだろうか。



11.佐藤幹夫個人編集のリトルマガジン『飢餓陣営』50号が届いた。

f:id:OdaMitsuo:20200226174648j:plain:h120(『飢餓陣営』)  f:id:OdaMitsuo:20191226114417j:plain:h120

 これは「追悼 加藤典洋」と銘打たれた特集号だが「終刊宣言」凍結号とあった。
 同誌は50号で終刊が予告されていたが、それは凍結され、60号までは断言できないが、55号まではなんとしても続けると宣言されている。
 その理由として、「もしこれから言論弾圧や検閲的な風潮、治安維持法的な動向が強くなるとしたら、責任をもって対応していくためには自分の足場となる発表媒体が不可欠です」からと佐藤は語っている。

 本クロニクル140で、沖縄のリトルマガジン『脈』の編集発行人比嘉加津夫の死を記しておいたが、その後『脈』が出ていないので、終刊となったのであろう。『飢餓陣営』の続刊に期待したい。
 折しも、これも前回ふれた香港の銅羅湾書店関係者の作家桂民海に対し、中国の浙江省地裁が国外に違法に情報提供したとして、懲役10年の判決を下したとのニュースが入ってきている。
 
odamitsuo.hatenablog.com



12.『盛岡さわや書店奮戦記』(「出版人に聞く」シリーズ2)の伊藤清彦が65歳で急逝した。

盛岡さわや書店奮戦記 震災に負けない古書ふみくら 「奇譚クラブ」から「裏窓」へ」 戦後の講談社と東都書房 鈴木書店の成長と衰退 三一新書の時代 「週刊読書人」と戦後知識人


 これも前回のクロニクルで、坪内祐三の死を伝えたばかりだが、またしても旧知の人物が亡くなってしまった。
 「出版人に聞く」シリーズの著者の死は『震災に負けない古書ふみくら』の佐藤周一、『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』の飯田豊一、『戦後の講談社と東都書房』の原田裕、『鈴木書店の成長と衰退』の小泉孝一、『三一新書の時代』の井家上隆幸、『「週刊読書人」と戦後知識人』の植田康夫に続いて7人目である。
 インタビューしておいてよかったと思うと同時に、このシリーズも死者ばかりを生じさせ、死のイメージに覆われていくことを如何ともし難い。
 あらためてこれらを読み、それぞれに補遺の論稿を書き継ぐことで、彼らへの追悼に代えようと思う。



13.19年暮れにパイ・インターナショナルからティル=ホルガー・ボルヒェルト、熊澤弘訳『ヒエロニムス・ボスの世界』が出された。
 サブタイトルは「大まじめな風景のおかしな楽園へようこそ」。

ヒエロニムス・ボスの世界 Bosch in  Detail

  これはボスの「悦楽の園」を始めとする美術世界の様々なディテールをクローズアップした多くの図版によって再発見する試みであり、新たな面白さを実感できる。
 原書はベルギーの出版社Ludion のBosch in Detail などのシリーズのようで、続刊を期待したいこともあり、ここに紹介してみた。
 編集は原瑛莉子とあり、知らなかった出版社とそのシリーズの翻訳企画に拍手を送りたい。



14.青木正美『古書と生きた人生曼陀羅図』(日本古書通信社)を恵送された。

 これは青木の『古本屋群雄伝』(ちくま文庫)に『古本屋奇人伝』(東京堂出版)から3編、及び新稿を加えた決定版古本屋列伝というべき一冊で、同時に昭和古本屋史を形成してもいる。
 表裏見返しには昭和初年と敗戦直後の神田神保町古書店街の写真が使われているのも懐かしい。
古本屋群雄伝 f:id:OdaMitsuo:20200226161822j:plain:h110



15.『近代出版史探索Ⅱ』のゲラが出てきた。
 『近代出版史探索』がそれでも500部は売れ、続刊が決まった次第で、読者と図書館に感謝したい。
近代出版史探索
 論創社HP「本を読む」㊾は「生田耕作とベックフォード『ヴァテック』」です。

出版状況クロニクル141(2020年1月1日~1月31日)

 19年12月の書籍雑誌推定販売金額は1060億円で、前年比8.9%減。
 書籍は509億円で、同13.1%減。
 雑誌は550億円で、同4.6%減。
 その内訳は月刊誌が470億円で、同4.2%減、週刊誌は80億円で、同6.6%減。
 返品率は書籍が32.9%、雑誌は38.8%で、月刊誌は38.1%、週刊誌は42.7%。
 書籍の返品率の大幅減は送品が少なかったことが要因で、推定出回り金額は前年比15.8%減。
 雑誌と月刊誌の返品率が40%を割ったのは、19年においてこの12月が初めてである。
 それはコミックの『鬼滅の刃』の新刊が初版100万部で刊行され、品切店が続出し、底上げされたことによっている。その結果、コミックは20%増となった。
鬼滅の刃



1.出版科学研究所による1996年から2019年にかけての出版物推定販売金額を示す。
■出版物推定販売金額(億円)
書籍雑誌合計
金額前年比(%)金額前年比(%)金額前年比(%)
199610,9314.415,6331.326,5642.6
199710,730▲1.815,6440.126,374▲0.7
199810,100▲5.915,315▲2.125,415▲3.6
1999 9,936▲1.614,672▲4.224,607▲3.2
2000 9,706▲2.314,261▲2.823,966▲2.6
2001 9,456▲2.613,794▲3.323,250▲3.0
2002 9,4900.413,616▲1.323,105▲0.6
2003 9,056▲4.613,222▲2.922,278▲3.6
2004 9,4294.112,998▲1.722,4280.7
2005 9,197▲2.512,767▲1.821,964▲2.1
2006 9,3261.412,200▲4.421,525▲2.0
2007 9,026▲3.211,827▲3.120,853▲3.1
2008 8,878▲1.611,299▲4.520,177▲3.2
2009 8,492▲4.410,864▲3.919,356▲4.1
2010 8,213▲3.310,536▲3.018,748▲3.1
20118,199▲0.29,844▲6.618,042▲3.8
20128,013▲2.39,385▲4.717,398▲3.6
20137,851▲2.08,972▲4.416,823▲3.3
20147,544▲4.08,520▲5.016,065▲4.5
20157,419▲1.77,801▲8.415,220▲5.3
20167,370▲0.77,339▲5.914,709▲3.4
20177,152▲3.06,548▲10.813,701▲6.9
20186,991▲2.35,930▲9.412,921▲5.7
20196,723▲3.85,637▲4.912,360▲4.3

 前回の本クロニクルで、19年の販売金額は1兆2400億円前後と予測しておいたが、ほぼそのとおりの数字となった。
 ただ電子書籍は3072億円、前年比23.9%増となり、紙と合算すると、1兆5432億円、同0.2%増で、全体では14年の電子出版統計以来、初めて前年を上回った。
 電子書籍の内訳は電子コミックが2593億円、同29.5%増で、そのシェアは前年の80.8%から84.4%へと伸長している。つまり今さら言うまでもないけれど、電子出版市場もコミック次第であることは明白だ。
 しかしそのかたわらで、紙の出版市場は20年には確実に1兆2000億円を割りこみ、数年後には1兆円を下回っていくことになるだろう。そして出版社、取次、書店をさらなる危機へと追いやっていく。
 そうした20年の幕開けを迎えたのである。



2.ジュンク堂書店京都店とロフト名古屋店が2月末に閉店。
 京都店は1988年に開店し、四条通りのビルの1階から5階を占める代表的な大型書店として、30年以上にわたる歴史を有していた。
 この2店に続いて、福岡店も「ビル建て替えによる一時閉店」が伝えられている。

 19年12月の書店閉店は26店と少なく、大型店はなかったので、師走でもあり、小康状態だと考えていたところに、ジュンク堂の閉店の知らせが入ってきた。
 それは本クロニクルでも繰り返し記してきたように、出版物の店頭売上の落ちこみにより、書店の大型店というビジネスモデルが成立しなくなったことを告げていよう。まだ閉店は続くだろう。
 折しも丸善ジュンク堂の「2019年出版社書籍売上ベスト300社」が発表されているが、こちらも20年はどのような推移をたどるのであろうか。



3.『建築知識』(1月号)が特集「世界一美しい本屋の作り方」を組んでいる。
 内容は「本屋さんになりたい」「設け方/来店者を増やす」「見せ方/美しく本を見せる」「基本/知っておきたい基礎知識」の四章建て、75ページに及ぶ、まさに建築雑誌ならではの「美しい本屋の作り方」である。


建築知識 世界の美しい本屋さん

 このような企画は版元のエクスナレッジが、『世界の美しい本屋さん』などといったピクチャレスクな書籍を刊行していることに起因していると思われる。
 だからあえて問わなくてもいいかもしれないが、「経営持続に必要なことは?」というQページがあるにもかかわらず、そのための売上に関して、まったく言及がないのは気になる。

 昨年に栃木県の那須ブックセンターがよく紹介されていたけれど、『文化通信B.B.B』(19年5/1)の「長岡義幸の街の本屋を見て歩く63」によれば、経営者は内装費、商品代、月々の赤字補填のために、開店1年半で、トータルで5000万円を負担しているという。しかも月商目標は300万円であるにもかかわらず。
 コンビニ跡地、60坪でも1日当たり10万円の売上も難しいのが本屋の現実で、それは「美しい本屋の作り方」を応用しても、ほとんど変わらない現実である。
 特集「世界一美しい本屋の作り方」に水を差すようだが、これだけは付け加えておきたい。



4.『朝日新聞グローブ』(1/5)に、北京の民営書店「万聖書園」の創業者劉蘇里(リウ・スーリー)への「香港が香港であるために中国がいま理解すべきこと」というインタビューが掲載されている。聞き手は編集委員との吉岡桂子である。
 それを要約してみる。

* 劉は中国政法大学講師だったが、1989年に天安門事件にかかわり、20ヵ月間拘束され、釈放後の93年に北京の大学街に民営書店「万聖書園」を開業する。
* 中国政府から弾圧を受けた知識人の支援も行ない、書店内カフェセミナーは知識人や市民活動家の集う場になってきたが、近年は強まる統制で開きにくくなっている。
*「万聖書園」ではジョージ・オーウェルの『1984』『動物農場』がよく読まれているが、いつまで出版や販売が許されるのか、それが心配である。
* 中国ではこの5、6年で、言論活動の制限と市民社会への監視が大幅に強まり、大学の教材への審査が厳しくなり、教室に監視カメラが据えられた。密告が奨励され、知識人のSNSアカウントが閉鎖された。
* 中国は鄧小平の改革開放以来、胡錦涛前政権時代まで、共産党統合の本質は変わらずとも、人々の自由と社会の解放の度合は少しずつ広がっていた。しかしそれが習近平政権となり、逆回転したことが、香港で起きている問題の根本にある。
* 中国のその変わり方は香港の人々に恐怖を抱かせ、中国の都市のように、現在の香港の自由や自治を失うのではないかと思い始めた。
* 香港と中国は19世紀半ばから同じ制度のもとに暮らしたことがないし、香港人と中国人がちがうということを理解しないと問題は収束しない。恐怖と経済力だけで、自由と法治を持っている社会を永遠に封じ込めることは無理だ。
* 中国は返還にあたって定めた香港基本法に立ち戻り、香港を香港に戻すことが必要だ。

1984 動物農場


5.『ウエッジ』(2月号)にジャーナリストの野嶋剛による「一国二制度の形骸化を印象付けた香港の『銅鑼湾書店』、いま台湾へ」というレポートが寄せられている。
 これも要約してみる。

ウエッジ

* 2015年に起きた香港の「銅鑼湾書店」関係者失踪事件から4年が過ぎた。元店長の林栄基は台北に居を定め、書店を再建しようとしている。
* その新しい書店の予定場所は台北市繁華街の雑居ビル10階で、台湾でも香港の店名「銅鑼湾書店」をそのまま用いる。
* 香港情勢の深刻さに世界が気づいたのは、「銅鑼湾書店事件」だったといえるし、その結果、林栄基は香港の居場所を失い、台湾に「流亡」し、もはや香港に戻ることは考えていない。
* 台湾でウェブの募金を通して、600万台湾ドル(約2150万円)が集まり、新書店は2月上旬に開店予定で、しばらくは書店で寝泊まりするつもりだ。
* 林栄基は1955年生まれで、若い頃から書店で働き、書店こそ自分の一生の仕事と決めていた。1994年、香港がまだ英国の植民地だった時代に、自分の店である「銅鑼湾書店」を立ち上げた。そして本を売るだけでなく、出版も手がけ、中国では出せない共産党暴露本や内幕本を刊行し、大きな収入源となっていた。 しかしその出版事業が原因で、林栄基は中国で公安に拘束され、他の仲間の4人も同様だった。
* この「銅鑼湾書店」関係者失踪事件は香港社会にとって大きな衝撃だった。それは香港人が香港での仕事を理由に、中国当局によって香港などから連れ去られたことになり、一国二制度の形骸化を世界に強烈に印象づけた。
* 林栄基は違法な書店経営容疑で、中国での厳しい取り調べ、監視生活を送り、香港での「スパイ」になるように強要された。8ヵ月後に香港に戻ったが、書店の仕事はできず、「銅鑼湾書店」も中国政府の影響の強い会社に買い取られていた。「すべて計画通りに着々と手を下されている。私の書店は中国に奪われた」のである。


 奇しくもこの今月に、中国の「万聖書園」、香港と台湾の「銅鑼湾書店」に関するインタビューや記事がほぼ同時に発信されているので、1、2の日本の書店状況と並んで紹介してみた。
 「万聖書園」や「銅鑼湾書店」については『出版状況クロニクルⅣ』『同Ⅴ』で言及してきたが、いずれの書店状況にしても、国家や社会体制を映し出す鏡のような位置にあることが了承される。それならば、日本の書店状況はどのように理解されるべきなのか。それを確認するために、今年も本クロニクルを書き継いでいくしかないだろう。



6.セブン&アイ・ホールディングスは出版事業からの撤退を決定し、セブン&アイ出版を21年春に清算予定。
 同社は1995年設立で、主婦層向け生活情報誌『saita』などを刊行してきたが、この数年は雑誌の凋落を受け、毎年数億円の赤字を計上していた。


saita(2019年1月号、休刊中)

 20世紀までは婦人誌の時代でもあり、1980年から90年代にかけて、『saita』だけでなく、多くの婦人誌が創刊されたが、そのような時代も終わっていくのだろう。
 しかしそれにしても『saita』はセブンを象徴する雑誌で、社員はノルマで100冊以上買わされていたとの複数のコメントが出されていたことにも驚く。
 21世紀になっても、それが続いていたのであろう。そこにも上意下達のフランチャイズシステムが反映されていたことなろう。



7.日本フランチャイズチェーン協会の発表によれば、2019年の主要コンビニ全売上高は11兆1608億円、前年比1.7%増、14年連続の過去最高を更新。
 だが、19年末の店舗数は5万5620店で、前年比0.2%減と初めての減少。
 コンビニ店舗数と書籍雑誌実販売額の推移を示す。

 

■CVSの店舗数・売上高の推移
CVS店舗数CVS書籍・雑誌
実販売額(億円)
200543,8565,059
200644,0364,852
200743,7294,044
200845,4133,673
200946,4703,166
201045,3752,886
201147,1902,642
201249,7352,466
201353,4512,262
201456,3672,117
201556,9981,908
201656,1601,859
201756,3441,576
201856,5861,445
201955,620

 この2005年から18年にかけてのコンビニの出版物販売額推移に、ダイレクトなかたちで、雑誌の凋落が刻印されている。
 この15年間で、5000億円から1400億円と、3分の1に減少しているのである。まだ19年の数字は出されていないけれど、おそらく確実に1400億円を下回ってしまうだろう。1980年代からの雑誌の成長はコンビニとの蜜月に<よっていたのだが、それも終わろうとしているし、コンビニの減少と雑誌コーナーの行方もどうなるのだろうか。



8.『FACTA』(1月号)が、ジャーナリスト永井総太郎の「週刊文春『30万部割れ』ショック」という記事を発信している。
 そのリードは「まるで『雑誌恐慌!』スクープ連発の文春でさえ止まらぬ部数減。ネットの収入増で補い切れるか。」で、次の「週刊誌実売部数の推移(日本ABC協会調べ)も付されている。

 

■週刊誌実売部数の推移
週刊文春
(文芸春秋)
週刊新潮
(新潮社)
週刊現代
(講談社)
週刊ポスト
(小学館)
2009年 1-6月486,954414,781227,988269,821
2014年 1-6月450,383329,415352,521278,904
2015年 1-6月416,820313,328302,036218,848
2016年 1-6月435,995270,054322,857243,020
2017年 1-6月372,408247,352264,089217,331
2018年 1-6月335,656251,403209,025211,336
2019年 1-6月287,241197,735208,014190,401

 ついに「文春砲」の『週刊文春』ですらも19年上半期には30万部を割ってしまい、『週刊新潮』も20万部を下回ってしまった。
 一般週刊誌は『週刊朝日』など新聞系も含めて12誌だが、実売で10万部を超えているのは、『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』の出版社系4誌のみになってしまったのである。
 『週刊文春』はネットで課金する体制へと移行し、ページビュー(PV)は4月に1億PVを突破し、11月には2億PVをこえ、広告収入も増えているという。
 『週刊文春』だけでなく、12誌の週刊誌はこれからどのような道筋をたどることになるのだろうか。
 同じく直販誌の『選択』(1月号)も、「我が世の春かと思われた『週刊文春』でさえ、一九年上期に二万六千部余りも減らしていました。紙の雑誌の多くが死線をさまよう二〇二〇年代となりそうです。」と書いていることも付記しておこう。



9.『ZAITEN』(1月臨時増刊号)として『激変するマスコミと企業広報』が出されている。

ZAITEN 創

 これはふたつの特集が柱となっている。
 ひとつは「経済メディア『変わる地平線』」、もうひとつは「週刊誌『編集部』の内情」である。
 前者は日経新聞社の現場事情と『日経ビジネス』、『週刊ダイヤモンド』、『週刊東洋経済』の「変わる地平線」に焦点が当てられている。
 後者は『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』に加え、『女性セブン』『女性自身』『週刊女性』のガイド付きでもある。
 タイトルに示されているように、企業広報との関係からの視点も含まれているけれど、『創』(2月号)のような総花的「出版社の徹底研究」ではないので、教えられ鵜ことも多い。また本誌もかつての『噂の真相』のイメージを彷彿させ、この一年は続けて読んでみようかという気にさせられる。



10.「地方・小出版流通センター通信」No.521によれば、同センター設立以来の加入出版社であり、地方出版の時代の先駆であった千葉県流山市の崙書房が廃業するという。
 崙書房はこの半世紀に千葉県をテーマとした「ふるさと文庫」を始めとして、一千点もの出版物を刊行してきたが、後継者もなく、社員たちも70歳を超え、昨年7月末で活動を停止し、清算に向かっているようだ。
 小林規一社長の言として、出版の現状について、出版は「書く人、編集出版する人、流通、書店、書評家などの横断的つながりで出来上るものだが、そのパーツすべてが傷んできている」が引かれている。

 井出彰『書評紙と共に歩んだ五〇年』(「出版人に聞く」9)で語られているように、崙書房は『日本読書新聞』に在籍していた小林規一たちによって、1970年に立ち上げられている。
 なお、地方・小出版流通センター設立時代のエピソードは、中村文孝『リブロが本屋であったころ』(同4)に詳しい。
書評紙と共に歩んだ五〇年 リブロが本屋であったころ



11.『フリースタイル』44が恒例の「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!」を組んでいる。

フリースタイル 海街diary 闇金ウシジマくん 監禁嬢

 残念ながら、年を追う毎に、「BEST 10」どころか、「BEST 20」まで見ても、読んでいる作品が少なくなるばかりだ。
 しかも今年は9の吉田秋生『海街diary』、18の真鍋昌平『闇金ウシジマくん』を途中まで読んでいるだけで、完読していない。両者とも完結しているようだし、早いうちに読まなければ。
 そんなことを思いながら、ゲオに出かけたところ、レンタルコミックバーゲンがあり、『闇金ウシジマくん』46が50円で売られていた。その隣には、呉智英が挙げていた河野那歩也『監禁嬢』(双葉社)1、4、5がやはり50円で放出されていたので、これらを買ってきた。このクロニクルを書き終えてから読むことにしよう。



12.坪内祐三が61歳で急逝した。

 本クロニクル136で既述しておいたように、坪内が拙著『古本屋散策』を『本の雑誌』(9月号)の「読書日記」で紹介してくれたので、次書『近代出版史探索』を論創社から献本してもらった。
 やはり『本の雑誌』(1月号)の「読書日記」に、拙著が届いたことが記されていた。700ページ余の分厚い本なので、読了せずに亡くなったのではないだろうか。
 そのことに関して、少し気になることがあり、それを書きつけておく。いずれも坪内絡みだ。
 かつて坪内の論争相手だった安原顕に、拙著『文庫、新書の海を泳ぐ』(編書房)を献本したが、これも受領したことが日誌に書かれていたが、その直後に安原も亡くなっている。
 また坪内が親交していた山口昌男が、やはり拙著『図書館逍遥』(同前)を『朝日新聞』で書評してくれたけれど、これが山口の書いた最後の書評であり、やはりその後、死去している。
 さらに坪内の対談者だった大村彦次郎も、『古本屋散策』を送ったところ、これから入院するという返信が届き、数ヵ月後に鬼籍に入っている。
 これだけ続くと、呪われた献本のようでもあり、今後の献本はできるだけ自粛したいと思う。

古本屋散策 近代出版史探索 文庫、新書の海を泳ぐ 図書館逍遥

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13.12月の東京古書会館での講演「知るという病」は『図書新聞』(2/8号)に掲載され、続いて別バージョンも『古書月報』にも収録予定。
 今月の論創社HP「本を読む」㊽は「『思潮』創刊号特集と『ミシェル・レリスの作品』」です。
また「web 新小説」の『文芸放談 オカタケ走る!』に出ています。

出版状況クロニクル140(2019年12月1日~12月31日)

 19年11月の書籍雑誌推定販売金額は1006億円で、前年比0.3%増。
 書籍は537億円で、同6.0%増。
 雑誌は468億円で、同5.7%減。
 その内訳は月刊誌が394億円で、同4.3%減、週刊誌は74億円で、同12.4%減。
 返品率は書籍が37.3%、雑誌は41.9%で、月刊誌は41.1%、週刊誌は45.8%。
 ただ書籍のプラスは、前年の返品率40.3%から3%改善されたことが大きく作用しているのだが、書店売上は5%減であることに留意されたい。
 雑誌のほうは定期誌の値上げが支えとなっているけれど、相変わらずの高返品率で、19年は一度も40%を下回ることなく、11月までの返品率は43.3%となっている。


1.出版科学研究所による19年1月から11月までの出版物推定販売金額を示す。

■2019年 推定販売金額
推定総販売金額書籍雑誌
(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)(百万円)前年比(%)
2019年
1〜11月計
1,130,017▲3.9621,358▲3.0508,659▲5.0
1月87,120▲6.349,269▲4.837,850▲8.2
2月121,133▲3.273,772▲4.647,360▲0.9
3月152,170▲6.495,583▲6.056,587▲7.0
4月110,7948.860,32012.150,4745.1
5月75,576▲10.738,843▲10.336,733▲11.1
6月90,290▲12.344,795▲15.545,495▲8.9
7月95,6194.048,1059.647,514▲1.2
8月85,004▲8.241,478▲13.643,525▲2.4
9月117,778▲3.068,3560.249,422▲7.3
10月93,874▲5.347,040▲3.246,834▲7.4
11月100,6590.353,7966.046,863▲5.7

 19年11月までの書籍雑誌推定販売金額は1兆1300億円、前年比3.9%減である。
 この3.9%減を18年の販売金額1兆2920億円に当てはめてみると、503億円のマイナスで、1兆2417億円となる。つまり19年の販売金額は1兆2400億円前後と推測される。
 現在の出版状況と雑誌の高返品率を考えれば、出版物販売金額と書店市場の回復は困難で、20年には1兆2000億円を割りこみ、数年後には1兆円を下回ってしまうであろう。
 そこに至るまでに、書店だけでなく、出版社や取次はどのような状況に置かれることになるのか。出版業界はどこに向っているのか。
 20年にはそれらのことがこれまで以上に現実的となり、問われていくであろう。



2.愛知県岩倉市の大和書店が破産。
 同書店は「ザ・リブレット」の屋号で、名古屋市内を中心として、岐阜、静岡、神奈川、大阪、岡山にも進出し、20店を超えるチェーン展開をしていた。
 2018年は年商30億円を計上していたが、売上が落ちこみ、資金繰りが悪化し、今回の処置に至ったとされる。
 破産申請時の負債は30億円だが、流動的であるという。

 11月30日に「ザ・リブレット」全23店が閉店し、12月に入ってそのリストもネット上に掲載されている。
 それを見ると、「ザ・リブレット」は主としてイオン・タウン、イオン・モール、アピタ、ららぽーとなどのショッピングセンターやスーパーなどに出店していたとわかる。
 しかも驚きなのは、沼津店が10月4日に開業したららぽーと沼津に出店していたことで、何と2ヵ月足らずで閉店に追いやられている。どのようなテナント出店のからくり、資金調達、取次との交渉が展開されていたのだろうか。坪数は200坪である。
 取次は楽天ブックスネットワークで、1990年代にはトーハンであったことからすれば、今世紀に入った時点で、大阪屋か栗田へと帖合変更がなされ、それから大阪屋栗田を経て、現在へと至ったことになろう。そしてそれはバブル出店を重ね、負債を年商まで増大させ、延命してきたことを意味していよう。

 だが本クロニクル138でふれたように、大阪屋栗田の楽天ブックスネットワークへの社名変更に伴うようなかたちで破産となったのである。楽天ブックスネットワーク帖合の書店破産はまだ続くのではないだろうか。
 この背景には、出版物の売上減少下にあって、書店がテナント料を払うことが困難になってきていることを告げている。かつて郊外消費社会と出店の中枢を占めていた紳士服の青山商事やAOKIも赤字が伝えられているし、その事実から類推すれば、書店は大型店や複合店にしても、もはや成立しないテナントビジネスモデルとなっているかもしれない。
 また全23店同時閉店の書店在庫の行方に注視する必要があるだろう。このような一斉閉店においては、取次による回収もできないと思われるからだ。本当に2020年の書店市場は何が起きようとしているのか。

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3.日販グループホールディングスの中間決算は連結売上高2508億円、前年比5.0%減の減収減益。取次事業は2303億円、同5.2%減。

4.トーハンの中間決算は連結売上高1896億円、前年比1.2%減、中間純損失2億500万円の赤字。トーハン単体売上高は1779億円、同2.9%減の減収減益。

5.日教販の決算は売上高266億円、前年比4.9%減、当期純利益は2億1100万円、同2.0%減。

 日販は減収減益、トーハンは赤字の中間決算で、取次事業は両社とも実質的に赤字と見なしていい。
 物流コストは上昇しているし、書店売上の凋落、台風の影響、消費税増税などを考えれば、通年決算がさらに厳しくなるのは必至であろう。
 日教販の決算は専門取次ゆえに、書籍が学参、辞書、事典で占められていることから、返品率は13.9%となっている。だから減収減益にしても利益が出ている。
 それに比べて、日販は書籍が33.4%、雑誌が47.5%、トーハンは書籍が43.5%、雑誌が49.0%で、この高返品率が改善されない限り、両社の「本業の回復」は不可能だろう。しかも雑誌は返品量の調整が毎月行なわれているにもかかわらず、高止まりしたままで、20年には50%を超える月も生じるのではないかと推測される。

 ちなみに、コミックにしても、返品率は日販が28.2%、トーハンが29.3%で、日教販の書籍返品率の倍以上であり、こちらも30%を上回ってしまうかもしれない。
 そのようにして、取次の20年も始まっていくしかない状況に置かれている。



6.紀伊國屋書店の連結売上高は1212億5500万円、前年比0.8%減、当期純利益は9億8000万円、同11.0%増。
 単体売上高は1022億6600万円、同0.9%減。
 「店売総本部」売上は500億円、同1.3%減、外商の「営業総本部」は477億円、同0.5%減、当期純利益は8億4500万円、同5.0%増。


7.有隣堂の決算は売上高536億5500万円、前年比3.7%増。当期純利益は1億5100万円、同25.8%増。
 分野別では「書籍類」が175億5500万円、同0.5%減、「雑誌」が40億3500万円、同0.6%増とほぼ横ばいだが、その他の「雑貨」「教材類」「OA機器」などが好調だったとされる。

 紀伊國屋書店は国内68店、海外37店で、計105店で、12年連続黒字決算だが、国内店舗の売上の落ちこみは同書店も例外ではないはずだし、来年の決算ではどうなるだろうか。
 有隣堂のほうも増収増益だが、すでに出版物売上シェアは40%まで下がっていて、その他部門の売上が決算の要であるところまできている。そうした意味においても、本クロニクル132で取り上げておいた「誠品生活日本橋店」の売上が気にかかる。その後の動向は伝わってこない。どうなっているのか。
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8.『日経MJ』(11/1)が「王道アパレルへ ゲオ衣替え中」という大見出しで、古着店「セカンドストリート」の一面特集を掲載している。
 それによれば、店舗数は630店に達し、しまむら、ユニクロ、洋服の青山に続く店舗数となり、売上も500億円、ゲオ全体売上高の18%を占めている。

 かつては「DVDレンタルが看板」と小見出しにあるように、ゲオの既存店舗などにも出店を加速させているようで、1Fがゲオ、2Fがセカンドストリートという店舗を見ている。
 やはりゲオもユーチューブ、ネットフリックスなどにより、DVDレンタルなどは苦戦し、難しい状況にあるとの遠藤結蔵社長の言も引かれている。
 それもあって、セカンドストリートは現在、年40店ペースで出店し、23年に800店、長期的には1000店をめざすという。
 トーハンとゲオは提携しているし、トーハンとゲオの連携店舗がセカンドストリートになることも考えられるので、ここで紹介しておく。



9.東邦出版が民事再生法を申請。
 11月19日付で、委託期間外商品の返品不可を3000店以上の書店にFAX通知し、取次にも伝えられた。負債は7億円。

 前回の本クロニクルで、シーロック出版社の自己破産にふれ、親会社に当たる出版社も苦境にあると記したが、これはこの東邦出版をさしている。
 委託期間外商品の返品不可の問題は、東邦出版が長きにわたって書店への営業促進をしてきたことから、高橋こうじ『日本の大和言葉を美しく話す』や山口花『犬から聞いた素敵な話』などがベストセラーになっていたことに求められる。
 それらの書店在庫がどのくらいあるのか、当然のことながら、正確にはつかめない。結局のところ、書店は返品不能品処理をするしかないと思われる。
 以前にリベルタ出版の廃業を伝えたが、幸いにして返品は少なく、数十万円で終わったようだ。

日本の大和言葉を美しく話す 犬から聞いた素敵な話



10.宝島社は来年2月に子会社の洋泉社を吸収合併し、その権利義務を継承し、従業員も継続雇用する.。
 ただ月刊雑誌『映画秘宝』は休刊となる。

 洋泉社は元未来社の藤森建二によって1985年に創業され、98年に宝島社の子会社になっていた。
 35年間の出版物は単行本、新書、ムックなど幅広いジャンルにわたる。私も単行本や新書だけでなく、町山智浩が手がけたムック『映画秘宝EX』や実話時報編集部などの編集による極道ジャーナリズムムックをそれなりに愛読してきたので、洋泉社の名前が消えてしまうことに淋しさを感じる。

 だが幸いにして、『出版状況クロニクルⅢ』で既述しておいたように、2011年に藤森の『洋泉社私記―27年の軌跡』(大槌の風)が出され、そこには「刊行図書総目録―1985~2010」も収録されている。また編集者の小川哲生の私家版『私はこんな本を作ってきた』(後に『編集者=小川哲生の本』として言視舎から刊行)、『生涯一編集者』(言視舎)も出されているので、洋泉社の記録としても読まれていくであろう。
映画秘宝  f:id:OdaMitsuo:20191224203458j:plain:h110 編集者=小川哲生の本  生涯一編集者

【付記】
 読者のtwitterによれば、藤森は現在でもブログ「大槌の風」を更新しているので、失明は誤報ではないかとの指摘があった。 確実な情報筋より伝えられたこともあり、藤森に確認せずに記したが、誤報であれば、お詫びしたい。
それゆえにその部分を削除する。


11.緑風出版の高須次郎が朝日新聞社の言論サイト「論座RONZA」(12/5)で、「本屋をのみこむアマゾンとの闘い」という臺宏士のインタビューを受けている。

 これは高須の『出版の崩壊とアマゾン』 (論創社)をベースとするその後の補論と見なせよう。
 しかしそれから年も迫った頃に、アマゾンが日本に法人税を納付していたことが明らかになったので、高須に代わって、補足しておく。
 中日新聞(12/23)などによれば、アマゾンは日本国内の販売額を日本法人売上高に計上する方針に転換し、17、18年の2年間で300億円の法人税を納付したとされる。
 これは国際的な議論となっているデジタル課税の先取り、独禁法にふれる優越的地位の乱用、国内の宅配危機への非難に対する回避処置とも見られる。
 19年は過去最高の売上高になると推測され、その法人税納付に注視すべきだろう。
出版の崩壊とアマゾン



12.みすず書房の編集長だった『小尾俊人日誌1965―1985』 (中央公論新社)が刊行された。

 この小尾、丸山眞男、藤田省三を主人公とし、加藤敬事の「まえおき」にある「みすず書房を舞台に展開された丸山と藤田の間のヒリヒリするような感情のドラマ」が、どのような経緯と事情で中央公論新社から出されることになったのかは詳らかでない。
 それでも、この日誌、加藤と市村弘正の解説対談「『小尾俊人日誌』の時代」を読むと、出版業界に入った1970年代のことが思い出される。人文社会書はまさに小尾や未来社の西谷能雄の時代でもあったけれど、出版業界は小さな共同体であり、彼らは私などに対しても謙虚に接してくれた。
 しかし時は流れ、出版業界も編集という仕事も時代も変わってしまったことを、この一冊は痛感させてくれる。
 『小尾俊人日誌1965―1985』 に関しては、いずれ稿をあらためたいと思う。
小尾俊人日誌1965―1985



13.『出版月報』(11月号)が特集「図書館と出版の今を考える」を組んでいる。

 本クロニクルでも、毎年1回、公共図書館に関してレポートしてきているが、この特集も「公共図書館の現状」「書籍販売部数と公共図書館貸出数」「公立図書館職員数の推移」をフォローしている。
 しかしこの特集の特色は「出版社にとって図書館は大事な存在 求められるのは両社の協働」とあるように、『出版月報』ならではの「出版者と図書館の関わりについて」で、人文書、専門書、実用書、児童書、文芸書の出版社に取材し、それを報告していることにある。
 その筆頭には12のみすず書房が挙げられ、「初版1800部の書籍では、200部程度が図書館分」「10%程度の占有」だとされる。そしてレポートは「公共図書館全国の3千館のうち、千部の発注があれば、初版一千部以上は確定できる。図書館の購入で、少部数でも専門的な多様な出版企画を成立させることが可能になっている」と続いていく。
 だが現実的に公共図書館から少部数の人文書、専門書の「千部の発注」はあり得ない。この問題も含め、公共図書館の現在についての一冊を書くつもりでいる。
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14.『前衛』 (1月号)を送られ、そこに高文研編集者の真鍋かおる「『嫌韓中本』の氾濫と出版の危機」が掲載されていた。

 これは「極私的な出版メディア論」との断わりがあるように、人文書編集者から観た「歴史修正主義本、嫌韓反中本の氾濫」の考察である。
 そのことに関して、真鍋は取次の「見計い」配本も後押ししているのではないかと指摘し、「なぜ書店にヘイト本があふれるのか。理不尽な仕組みに声をあげた一人の書店主」というブログを引いている。
 また真鍋は自らの編集者としてのポジションも表明し、そのようなヘイト本の氾濫状況に抗するために、自分が手がけた本をも挙げているので、興味のある読者は実際に読んでほしい。
前衛



15.沖縄のリトルマガジン『脈』103号の特集「葉室麟、その作家魂の魅力と源」が届き、それとともに編集発行人の比嘉加津夫の急死が伝えられてきた。

 『脈』は友人から恵送されているので、本クロニクルでもしばしば取り上げてきた。2月発売の104号特集「『ふたりの村上』と小川哲生」と予告されている。困難は承知だが、刊行を祈って止まない。
 折しも協同出版が子会社の協同書籍を設立し、沖縄の出版社の書籍の取次事業に参入することを表明したばかりでもあるからだ。
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16.『股旅堂古書目録』22 が出た。

 今回の「巻頭特集」は「或る愛書家秘蔵の地下室一挙大放出 ‼ 」で、書影も4ページ、64点に及び、昭和の時代の「地下本」の面影を伝えてくれる。
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17.拙著『近代出版史探索』は鹿島茂による『毎日新聞』(12/22)書評が出され、12月7日の東京古書組合での講演「知るという病」は『図書新聞』に掲載予定。
近代出版史探索
 また論創社HP「本を読む」㊼は「『アーサー・マッケン作品集成』と『夢の丘』」です。

出版状況クロニクル139(2019年11月1日~11月30日)

 19年10月の書籍雑誌推定販売金額は938億円で、前年比5.3%減。
 書籍は470億円で、同3.2%減。
 雑誌は468億円で、同7.4%減。
 その内訳は月刊誌が380億円で、同6.0%減、週刊誌は87億円で、同12.9%減。
 返品率は書籍が37.0%、雑誌は43.3%で、月刊誌は43.5%、週刊誌は42.3%。
 実際の書店売上は消費税の10%増税と、台風19号とその後の豪雨などにより低調で、書籍は8%減、雑誌は定期誌5%減、ムック12%減、コミックスだけが『ONE PIECE』の新刊と『鬼滅の刃』の大ブレイクで4%増とされる。
10月で、書籍雑誌推定販売金額はようやく1兆円を超え、1兆293億円となっているが、4.3%マイナスで、下げ止まりの気配はまったくないままに、年末を迎えようとしている。

ONE PIECE 鬼滅の刃


1.上場企業の書店と関連小売業の株価をリストアップしてみる。
 

■上場企業の書店と関連小売業の株価
企業18年5月
高値
18年11月21日
終値
19年11月21日
終値
丸善CHI363348377
トップカルチャー498382345
ゲオHD1,8461,8401,326
ブックオフHD8398081,082
ヴィレッジV1,0231,0781,110
三洋堂HD1,008974829
ワンダーCO1,793660726
文教堂HD414239159
まんだらけ636630604
テイツー42

 同じリストを掲載したのは本クロニクル127だったので、早くも1年が過ぎてしまったことになる。
 全体として前年比は横ばいといっていいかもしれないが、文教堂を始めとして、来年は株価も厳しい状況へと追いやられていくだろう。
 それにしてもCCC=TSUTAYA が非上場化したこともあり、株価への影響が確認できないのは残念である。それゆえにここではCCC=TSUTAYAのFCとして最大のシェアを占めるトップカルチャーの株価の推移を注視すべきだろ。3年続きの赤字決算を避けられるだろうか。
 いずれにせよ、大型複合店も2020年はかつてない至難の年を迎えることになろう。

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2.『選択』(11月号)が「事業再生HOR成立の文教堂 無理筋の再建策を冷笑する書店業界」という記事を発信している。
それは「これで本当に再建できるか]との声がしきりで、一連の増資にしても、ちょっとした最終赤字を計上しただけで債務超過に逆戻りしてしまうし、アマゾンや電子書籍の普及により、書店ビジネスは逆風下にあるとし、次のように述べている。

「文教堂GHDは不採算店舗の閉鎖や、赤字のキャラクターグッズ販売事業のビッグカメラグループへの売却、利益率の高い文具販売の強化などで、20年8月期に1億円強の最終黒字(前期は40億円弱の赤字)復帰を目指すとしているが、業界筋は「画に描いた餅」として一蹴。「再建策ではなく延命策」と皮肉っている。」

 これは前回の本クロニクルで、文教堂GHDのADR手続きの成立とそのスキームにふれ、「先送り処置」に他ならないと指摘しておいたことをふまえているのだろう。だが業界紙も経済誌も、日販と文教堂への忖度からなのか、言及を見ていない。
 また文教堂の10月の閉店は6店、800坪近くに及んでおりそれは売上のマイナスと多大な閉店コストを積み上げていくはずだ。何のための事業再生ADRだったのかが問われる日もくると考えるしかない。



3.日販から出版社宛に「『令和元年台風第19号』による被災商品入帳及び被災書店様復興支援のお願い」が届いた。

 さて本年10月に発生しました「令和元年台風第19号」の影響により、東日本地域の広範囲で浸水が発生し、その結果、浸水が発生した書店様におきまして、泥水による汚破損商品が発生しております。
 今回の台風被害につきましては、商品の汚破損の度合いが非常に高いため、返品そのものができず、やむを得ず廃棄処理せざるを得ない状況となっており、これらの商品について、返品入帳の取扱いの問題が生じております。
 この問題につきましては、弊社において、台風で大きな被害を受けた被災書店様を支援するため、被災書店様の汚破損品を原則として、全品返品入帳することを決定し、被災書店様にお知らせ申し上げております。
この返品入帳対応におきましては、台風により被害を汚破損商品についての対応であり、汚破損の程度も著しいものがほとんどであることから、現品の返品は求めず、被災書店様において破棄していただき、被災書店様の在庫をベースとして行うことを予定しております。

 上記対応により汚破損等(期限切れとなった商品を含みます)で通常返品が不可能となった商品について、被災書店様のご負担がなくなり弊社がその負担を負うことになりますが、汚破損商品は台風という自然災害により発生したものであることから、出版様にも返品入帳に特別なお取り計らいを賜りたくお願い申し上げる次第です。

 出版社様におかれましても、台風によって一時的に多数の返品が発生するなど、多大な影響を受けていることは十分理解しておりますが、弊社としましては、被災書店様及び被災地域の復興のために全力で支援して参りますので、支援へのご協力をご検討いただきたく重ねてお願い申し上げます。
 大変恐縮なお願いではありますが、ぜひとも趣旨をご理解頂き、別紙回答書をご返送いただくようお願い申し上げます。
 尚、本お願いに対するご回答につきましては、貴社の任意のご判断にお任せ致します。ご回答の内容いかんによって貴社との間の通常の取引に影響を与えることはございませんので、念のため申し添えます。

 これに続いて、「蔦屋書店東松山店」の大雨浸水写真と、同店の「被災商品銘柄別一覧」と「被災品回答書」が添えられている。

 これも前回の本クロニクルでふれておいた、1.6メートルの浸水をこうむった蔦屋書店東松山店の返品問題が、早くも出版社へとはね返ってきたことになる。先に記しておけば、蔦屋書店東松山店はまさに
のトップカルチャーのチェーン店である。
 しかし取協によれば、台風19号による被害書店は全取次で56店に及んでいる。それにもかかわらず、日販が蔦屋書店東松山店だけのために、このような文書を出版社に出すこと自体が「忖度」を想起させる。それに法的に書店在庫は書店の資産とみなされているはずだし、上場企業であるからにはそれなりの災害保険に入っていると考えられる。
 それなのに日販が率先して「全品返品入帳」し、しかもそれが「被害書店様の在庫データをベース」とし、さらにそこに通常返品不能品も含まれるようだから、徳政令に近い。こうした台風に毎年見舞われるかもしれないとすれば、悪しき先例となる可能性もある。
 もちろん同様の処置が東日本大震災において実施されたことは承知しているけれど、このような書店のために文書が出されることはかつてなかったはずだ。
 小出版社と異なり、膨大な返品金額となる大手出版社は、この日販の「お願い」に応じるのであろうか。



4.日経BPと日本経済新聞出版社が2020年4月に経営統合、日経BPが持続会社として、売上規模400億円、社員800人の出版社になる。
 統合後の日経BPはデジタル、雑誌に加え、経済専門書、経営書、ビジネス書、技術・医療ムックなどを手がける日経グループの総合出版社に位置づけられる。

 日経BPは1969年にマグロウヒル社との合弁で設立され、売上高は368億円だが、日本経済新聞出版社は2007年に日経新聞社の出版局を分社化して設立され、売上高は36億円である。
 おそらく後者は分社化したものの、出版状況の凋落の中で、当初の予測に見合う売上高に到達せず、このような統合に至ったと思われる。
 各新聞社の分社化による出版局は黒字化も伝えられているけれど、内実はかなり苦しいのではないかと察せられる。



5.『月刊文藝春秋』はピースオブケイクが運営するプラットフォーム「note」で、月900円読み放題。『週刊文春』もニコニコチャンネルで運営している「週刊文春デジタル」をリニューアルし、月880円で読み放題となる。

 これはKADOKAWAの売上高のうちで、書籍・雑誌のシェアは25%を割りこみ、電子書籍はその半分以上の規模になっていること、もしくは講談社の今期決算が増収増益の見通しで、デジタル広告収入が広告収入の5割を超えるという近況などに対応する試みと判断される。
 ただ両社は続いて、KADOKAWAは「ところざわサクラタウン・角川武蔵野ミュージアム」事業、講談社は池袋での「LIVEエンターテインメントビル」の開設に向かっている。それらの行方の是非はともかく、文春などもそのような試みへと参画していくのであろうか。



6.自由国民社の『現代用語の基礎知識』が従来のB5判と異なる、B5判変型とコンパクトになり、ページ数も1000ページから300ページへとリニューアルされ、定価も従来の半分の1500円となった。

現代用語の基礎知識

『現代用語の基礎知識』の固定的イメージはその厚さにあり、それは婦人誌や少年少女誌の付録も含んだ厚さと共通していたし、長きにわたって、12月から1月にかけての書店の雑誌売り場の正月の風物詩のような平積み光景の立役者の位置にあった。
 しかし今回の平積みは数冊で、平台のよい場に置かれていたにもかかわらず、表紙が黄色であり、すぐにそれが『現代用語の基礎知識』だと認識できなかった。
 考えてみれば、『現代用語の基礎知識』が自由国民社の長谷川国雄によって、1948年に戦後の新事態を知りたいという読者の要望をコアとする新しいジャーナリズムをめざし、創刊されてから、すでに70年余が過ぎている。
 主婦を対象とする婦人誌の時代が終わってしまったように、『現代用語の基礎知識』のリニューアルは、戦後の読者の要望もドラスチックに変わってしまったことを物語っているのだろう。



7.鹿砦社創業50周年記念出版として、鹿砦社編集部編『一九六九年混沌と狂騒の時代』が出された。

混沌と狂騒の時代 書評紙と共に歩んだ五〇年 f:id:OdaMitsuo:20191126164230j:plain:h110(『マルクス主義軍事論』)f:id:OdaMitsuo:20191126165055j:plain:h110 マフノ叛乱軍史

 これは『紙の爆弾』の11月号増刊で、たまたま書店で見つけ、購入してきた一冊である。
 その理由は特集コンセプトよりも、そこに前田利男への「一九六九年、鹿砦社創業のころ」という14ページに及ぶインタビューが掲載されていたことによっている。
 この前田は井出彰『書評紙と共に歩んだ五〇年』(「出版人に聞く」シリーズ9)に出てくる人物で、井出の『日本読書新聞』での同僚であった。それもあって、このインタビューは井出の回想の補足、その後の『日本読書新聞』人脈と出版史となっている。

 前田によれば、鹿砦社は『日本読書新聞』の労働組合メンバーの天野洋一、高岡武志、大河内徹、前田の四人が関わり、1969年に中村丈夫編『マルクス主義軍事論』を刊行してから始まっている。
 私も70年代に『左翼エス・エル戦闘史』『マフノ叛乱軍史』を読み、鹿砦社の名前を知った。前田は当時の出版社設立と出版状況について語っている。
「みんなボコボコ作ってね。せりか書房や、似たようなのが十や二十もあった。運動の夢が破れかかった時に出版社がたくさん生まれた。鹿砦社も初版千部刷るとすぐに売れて、初期のものはたいてい増刷になりました。」
 ところが50年後の現在は出版社も書店も消え、ほとんど増刷もできない出版状況になってしまった。
 この鹿砦社を発売元として、77年に松岡利康のエスエル出版会が発足し、88年には彼が鹿砦社を引き継ぎ、現在に至るのである。



8.シーロック出版社が自己破産。
 同社は1994年に設立され、スポーツ、ギャンブル書を中心とする書籍の企画、製作を手がけてきた。
 2013年には年商5億1500万円を計上していたが、18年には4億6500万円に減少し、その間に赤字決算が重なり、債務超過となっていた。関連会社のデジタルビューも自己破産。

 この出版社は寡聞にして知らないが、設立時期と出版物、企画内容を考えると、バブル時代の余波を受けて立ち上げられた出版社のように思われる。
 1990年代では出版社もかなり設立されていたが、それらの多くが退場してしまったことを知っている。それだけでなく、現在は中小出版社の清算の時期でもあるのかもしれない。
 このシーロック出版の自己破産に伴い、親会社に当たる出版社も苦境に陥り、印刷所は多額の負債が生じたようだ。



9.横田増生『潜入ルポamazon帝国』(小学館)を読了。

潜入ルポamazon帝国 潜入ルポ アマゾン・ドット・コム

 この最初の部分は『週刊ポスト』に発表され、本クロニクル136で取り上げておいた。そのことやタイトルからして、彼の前著『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)の続編かと思っていたが、「潜入」というよりも、広範な取材を通じてのアマゾンの全体像に迫る好著で、教えられることが多かった。
 とりわけマーケットプレイス、フェイクレビューを扱った章は、当事者たちの取材も含め、とても参考になる。アマゾンは多くのパラサイトたちも生み出し、それもエキスとして成長していること、それに対して、出版業界はそうしたエネルギーを失っていることが実感される。
 増田にはさらなるアマゾン密着レポートを期待したい。

odamitsuo.hatenablog.com



10.中森明夫『青い秋』(光文社)が刊行された。

青い秋  本の雑誌 f:id:OdaMitsuo:20191128120758j:plain:h115 f:id:OdaMitsuo:20191128125134j:plain:h115

 1980年代の出版業界において、オタク、新人類、アイドルが三位一体のかたちで、ブーム、もしくはトレンドとなっていた。彼ら彼女らが「神々の時代」であり、それはバブルの時代でもあった。そして宮崎勤事件が起きてもいた。
 「オタク」の命名者である中森はその中心人物に他ならず、この時代を描いた短編集『青い秋』は誰がモデルなのか、すぐわかるので、中森ならではのゴシップ小説集として楽しく読める。
 それに加えて、出版流通販売史から見れば、1980年代は地方・小出版流通センターを取次とするリトルマガジンの時代でもあった。『本の雑誌』『広告批評』だけでなく、多くの雑誌が同センターを経由して流通販売され、中森もまた『東京おとなクラブ』に携わっていたし、それも描かれている。いずれ、それらの雑誌にも言及してみたいと思う。



11.元小学館国際室長の金平聖之助が91歳で亡くなった。

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 金平には今世紀の初めに会って以来、手紙は何度かもらっているけれど、再会していなかった。彼のことで思い出されるのは著書『世界のペーパーバック』である。これは1970年前半に出版同人という版元から出された一冊だったが、当時としては先駆的な世界のペーパーバックに関する幅広い紹介を兼ねていて、まだ定かでなかったその全体像を垣間見る思いを味わわせてくれた。
 
 現在のアマゾン全盛状況からは考えられないだろうが、半世紀前の1970年代はペーパーバックを自由に買うことも困難で、注文しても3ヵ月は待たされたものだ。ちなみに出版同人はその頃の翻訳出版の啓蒙を図ろうとして、翻訳エージェンシーとその関係者、翻訳書を刊行する出版社などの肝いりで設立されたと思われる。
 そのメンバーのひとりが金平だったのだろう。金平の他に、赤石正『アメリカの出版界』、J・W・トンプソン、箕輪成男訳『出版産業の起源と発達―フランクフルト・ブックフェアの歴史』などが出されていたが、70年代で出版同人は閉じられたのではないだろうか。これも金平に聞いておけばよかったと悔やまれる。
『世界のペーパーバック』を再読することで追悼に代えよう。



12.『ニューズウィーク日本版』(11/5)に、アメリカの出版社ビズメディアから10月に楳図かずおの『漂流教室』第1巻744ページが出版され、好調であることを伝えている。これはシェルドン・ドルヅカによる新訳で、来年の2月には第2巻が刊行される。

ニューズウィーク日本版 漂流教室The Driftting Classroom)

 楳図かずおの『漂流教室』が『週刊少年サンデー』で連載され始めたのは1972年で、当時はどこの喫茶店や酒場でも『週刊少年サンデー』が置いてあったので、ほとんど欠かさず読んでいた。
 80年代になって、息子たちのために「少年サンデーコミックス」版全11巻を買い、それが今でも書棚に残っている。今になって考えてみると、私は同じく楳図の『イアラ』のほうに愛着を覚えていたけれど、実作者たちも含め、大きな影響を与えたのは『漂流教室』だとわかる。
 さいとうたかお『サバイバル』、望月峯太郎『ドラゴンヘッド』、伊藤潤二『うずまき』など、近年の花沢健吾『アイアムヒーロー』に至るまで、『漂流教室』を抜きにしては語れないだろう。
 押井守のアニメ『攻殻機動隊』がアメリカ映画に大いなる刺激となったように、『漂流教室』もあらためてアメリカで受容されていくのかもしれない。
 現在注文中なので、届くのを楽しみに待っている。
f:id:OdaMitsuo:20191128145412j:plain:h115 イアラ サバイバル ドラゴンヘッド うずまき アイアムヒーロー 攻殻機動隊



13.折付桂子『東北の古本屋』(日本古書通信社)が届いた。

f:id:OdaMitsuo:20191126173820j:plain:h110 震災に負けない古書ふみくら

 これは東日本大震災以後の東北全体の古本屋の実態、すなわち岩手、宮城、山形、青森、秋田、福島県の古本屋を訪ね、地域と店の新たな案内となるように仕上げられた一冊である。
 古本屋の写真も含め、収録写真はすべてカラーで、このようにまとめて東北の古本屋がカラー写真で紹介されるのは初めてではないだろうか。
 それこそ故佐藤周一『震災に負けない古書ふみくら』(「出版人に聞く」シリーズ6)のその後も語られ、店が健在なのを知ってうれしい。



14.拙著『近代出版史探索』は「日本の古本屋メールマガジン」に「自著を語る」を書いています。

近代出版史探索

  今月の論創社HP「本を読む」㊻は>「月刊ペン社『妖精文庫』と創土社『ブックス・メタモルファス』」です。