出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話585 太平洋協会編「太平洋図書館」と六興出版部

前回ふれた川村湊の『「大東亜民俗学」の虚実』の中で、川村は太平洋協会が「太平洋図書館」というシリーズも刊行していたと述べ、鶴見祐輔によるその刊行の辞の一部も示しているが、出版社名を記していないことからすれば、おそらく未見のままでの再引用だ…

古本夜話584 太平洋協会編「南太平洋叢書」と泉靖一、鈴木誠共著『西ニューギニアの民族』

これは美作太郎の『戦前戦中を歩む』の中でもふれられていないが、泉靖一、鈴木誠共著『西ニューギニアの民族』が昭和十九年十一月に日本評論社から刊行されている。太平洋協会編の「南太平洋叢書」3としてで、B6判並製一三四ページの造本と用紙は粗末になっ…

混住社会論153 三崎亜紀『失われた町』(集英社、二〇〇六年)

二〇〇六年に三崎亜紀の『失われた町』が刊行された。この物語はガルシア・マルケスの『百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)の消えてしまうマコンドという村、及びその住人であるブエンディア一族の記憶をベースとする変奏曲のように提出されている。 それだけで…

古本夜話583 ハウスホーファー「地政学的基底」と『日本』

前回の『新独逸国家大系』第三巻の中に、ミュンヘン大学教授カール・ハウスホーフェルの「地政学的基底」が収録されている。そこには独逸国有鉄道中央観光局日本支局という名入りの、一九三九年の「大独逸国」の折り込みカラー地図が付され、その地政学を彷…

古本夜話582 日本評論社と『新独逸国家大系』

前回ふれた美作太郎の『戦前戦中を歩む』の中で、昭和十年に日本評論社から『ムッソリーニ全集』が刊行されたことについて「この『兆候』は、ひとり日本評論社に限られたものではなかった」し、すでに数年前からファシズムやナチズムに関連する本が多く出さ…

混住社会論152 エヴァン・マッケンジー『プライベートピア』(世界思想社、二〇〇三年)とE・J・ブレークリー、M・G・スナイダー『ゲーテッド・コミュニティ』(集文社、二〇〇四年)

マッケンジーは『プライベートピア』(竹井隆人・梶浦恒男訳)の中で、本連載59 のハワードの田園都市構想がアメリカに移植されるにつれて、コーポラティヴな思想と方向性を失うかたちで発展していったことを、まず指摘することから始めている。それはジェ…

古本夜話581 東京政治経済研究所『一九二〇−三〇政治経済年鑑』

本連載564「大川周明、井筒俊彦、東亜経済調査局」で、昭和七年に先進社から刊行された東亜経済調査局編『一九三〇年一九三一年支那政治経済年史』を紹介しておいた。[f:id:OdaMitsuo:20160908111403j:image:h120]そこで満鉄は初代総裁の後藤新平の「文装…

古本夜話580 柘植秀臣『東亜研究所と私』と「東研叢書」

前々回、大東亜戦争下にあって、回教の学術研究を目的とする機関として、回教圏研究所、東亜経済調査局、東亜研究所を挙げておいた。前二者に関しては本連載564などで言及してきたので、今回は後者の東亜研究所にふれてみたい。幸いなことに柘植秀臣の「…

混住社会論151 ミネット・ウォルターズ『遮断地区』(東京創元社、二〇一三年)

今世紀に入って、それも団地を背景とするミステリーがイギリスでも刊行されているので、やはり続けて挙げておきたい。本連載62や69などで、フランスの団地における叛乱や暴動に言及してきたし、ちょうど森千香子の「フランス〈移民〉集住地域の形成と変…

出版状況クロニクル100(2016年8月1日〜8月31日)

出版状況クロニクル100(2016年8月1日〜8月31日) 16年7月の書籍雑誌の推定販売金額は1068億円で、前年比5.7%減。 1を見ればわかるように、今年になって最大の落ちこみで、これにオリンピックが重なった8月が控えているのだから、大幅なマイナスはさらに続…