出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話806 田山花袋『花紅葉』と大盛堂書店

続けて国木田独歩とその周辺にふれてきたが、新潮社の『二十八人集』や改造社の『国木田独歩全集』の編纂者として、田山花袋の功労を見逃すわけにはいかないだろう。本連載77などや262などでも田山に言及しているけれども、独歩と同様に花袋もまた、柳…

古本夜話805 小杉未醒『漫画一年』と独歩

これは本連載801の吉江孤雁『緑雲』や同803の国木田独歩『欺かざるの記』後篇を入手する半年ほど前のことだが、やはり浜松の時代舎で小杉未醒の『漫画一年』を購入している。これは明治四十年に編纂兼発行者を戸田直秀とし発行所を佐久良書房として刊…

古本夜話804 博文館『縮刷独歩全集』と改造社『国木田独歩全集』

国木田独歩の全集は、前回の『欺かざるの記』後篇刊行の翌年の明治四十三年に博文館から『独歩全集』前・後篇が出され、昭和五年には円本として改造社から全八巻の『国木田独歩全集』が刊行されている。これは幸いにしてというべきか、博文館版は大正時代の…

古本夜話803 国木田独歩『欺かざるの記』後篇と隆文館

実は前々回の吉江孤雁『緑雲』と一緒に、浜松の時代舎から購入してきた一冊があり、それは国木田独歩の『欺かざるの記』後篇である。これも続けて書いておくしかない。 (『緑雲』) この『欺かざるの記』は本連載156で、前篇を刊行した佐久良書房にふれ…

古本夜話802 メエテルリンク『貧者の宝』とマーテルランク

前回に続いて、吉江孤雁の翻訳も一冊手元にあるので、それも書いておきたい。それはメエテルリンクの『貧者の宝』で、大正六年に文庫判上製本で出され、入手しているのは大正十一年十二版である。この判型は『新潮社四十年』によれば、こうした小型本は当時…

古本夜話801 吉江孤雁『緑雲』と如山堂

これもまた毎度お馴染みのことになってしまうけれど、前回の『吉江喬松全集』に関する一文を書いてから、浜松の時代舎に出かけたところ、吉江孤雁の『緑雲』を見つけてしまったのである。これは吉江の前史としての孤雁名義ゆえに全集には収録されていないが…

古本夜話800 白水社『吉江喬松全集』とゾラ

前回の辰野隆『仏蘭西文学』の企画の範となったのは、昭和十六年に刊行された『吉江喬松全集』だったと思われる。これはその前年に亡くなった吉江の一周忌に出されたもので、当初全六巻予定だったが、好評、もしくは収録論稿などが増えたためか、十八年に全…

古本夜話799 辰野隆『仏蘭西文学』と改造社『フロオベエル全集』

前回ふれた福武書店の『辰野隆随想全集』は「随想」とあるだけに、辰野のフランス文学研究者としての仕事は第3巻の『フランス文芸閑談』にいわば抄録され、白水社の上下巻、A5判九〇〇ページに及ぶ『仏蘭西文学』はほとんどが省かれてしまったと推測される。…

古本夜話798 弘文堂書房と辰野隆『印象と追憶』

渡辺一夫訳のリラダン『トリビュラ・ボノメ』は「辰野隆博士に捧ぐ」との献辞がしたためられている。それはこの翻訳が辰野の註解などの「書き込み入り御本」を活用した「答案」で、いわば「堂々たるカンニング」によっているからだと述べられている。 渡辺は…

古本夜話797 リラダン『トリビュラ・ボノメ』と「白鳥扼殺者」

前々回、『ボードレール全集』や『プロスペル・メリメ全集』の訳者の一人である渡辺一夫が、装幀家の六隅許六に他ならないことを既述しておいた。それらだけでなく、渡辺は昭和十年代半ばのフランス文学研究と翻訳において、その中心的なポジションにいたは…

出版状況クロニクル122(2018年6月1日~6月30日)

18年5月の書籍雑誌推定販売金額は846億円で、前年比8.7%減。 書籍は433億円で、同8.8%減。雑誌は413億円で、同8.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が322億円で、同9.6%減、週刊誌は90億円で、同4.7%減。 返品率は書籍が43.7%、雑誌が48.6%。 雑誌返品率は16年12月以…