22年2月の書籍雑誌推定販売金額は1079億円で、前年比10.3%減。
書籍は677億円で、同5.7%減。
雑誌は402億円で、同17.0%減。
雑誌の内訳は月刊誌が335億円で、同18.8%減、週刊誌は67億円で、同6.4%減。
返品率は書籍が29.5%、雑誌は39.8%で、月刊誌は38.9%、週刊誌は43.7%。
雑誌は6ヵ月連続二ケタマイナスで、コミックス売上の落ちこみが大きい。
書店売上も書籍、雑誌の定期誌はいずれも10%減で、今後の書店動向もコミックス売上次第という状況を迎えつつあると考えられる。
それもあって、1と2のコミック市場も注視すべきであろう。
1.『出版月報』(2月号)が特集「コミック市場2021」を組んでいる。
その「コミック市場全体(紙版&電子)販売金額推移」と「コミックス・コミック誌推定販売金額推移」を示す。
年 | 紙 | 電子 | 合計 | ||||
コミックス | コミック誌 | 小計 | コミックス | コミック誌 | 小計 | ||
2014 | 2,256 | 1,313 | 3,569 | 882 | 5 | 887 | 4,456 |
2015 | 2,102 | 1,166 | 3,268 | 1,149 | 20 | 1,169 | 4,437 |
2016 | 1,947 | 1,016 | 2,963 | 1,460 | 31 | 1,491 | 4,454 |
2017 | 1,666 | 917 | 2,583 | 1,711 | 36 | 1,747 | 4,330 |
2018 | 1,588 | 824 | 2,412 | 1,965 | 37 | 2,002 | 4,414 |
2019 | 1,665 | 722 | 2,387 | 2,593 | コミックス コミック誌統合 | 2,593 | 4,980 |
2020 | 2,079 | 627 | 2,706 | 3,420 | コミックス コミック誌統合 | 3,420 | 6,126 |
2021 | 2,087 | 558 | 2,645 | 4,114 | コミックス コミック誌統合 | 4,114 | 6,759 |
前年比(%) | 100.4 | 89.0 | 97.7 | 120.3 | 120.3 | 110.3 |
年 | コミックス | 前年比(%) | コミック誌 | 前年比(%) | コミックス コミック誌合計 | 前年比(%) | 出版総売上に 占めるコミックの シェア(%) |
1997 | 2,421 | ▲4.5% | 3,279 | ▲1.0% | 5,700 | ▲2.5% | 21.6% |
1998 | 2,473 | 2.1% | 3,207 | ▲2.2% | 5,680 | ▲0.4% | 22.3% |
1999 | 2,302 | ▲7.0% | 3,041 | ▲5.2% | 5,343 | ▲5.9% | 21.8% |
2000 | 2,372 | 3.0% | 2,861 | ▲5.9% | 5,233 | ▲2.1% | 21.8% |
2001 | 2,480 | 4.6% | 2,837 | ▲0.8% | 5,317 | 1.6% | 22.9% |
2002 | 2,482 | 0.1% | 2,748 | ▲3.1% | 5,230 | ▲1.6% | 22.6% |
2003 | 2,549 | 2.7% | 2,611 | ▲5.0% | 5,160 | ▲1.3% | 23.2% |
2004 | 2,498 | ▲2.0% | 2,549 | ▲2.4% | 5,047 | ▲2.2% | 22.5% |
2005 | 2,602 | 4.2% | 2,421 | ▲5.0% | 5,023 | ▲0.5% | 22.8% |
2006 | 2,533 | ▲2.7% | 2,277 | ▲5.9% | 4,810 | ▲4.2% | 22.4% |
2007 | 2,495 | ▲1.5% | 2,204 | ▲3.2% | 4,699 | ▲2.3% | 22.5% |
2008 | 2,372 | ▲4.9% | 2,111 | ▲4.2% | 4,483 | ▲4.6% | 22.2% |
2009 | 2,274 | ▲4.1% | 1,913 | ▲9.4% | 4,187 | ▲6.6% | 21.6% |
2010 | 2,315 | 1.8% | 1,776 | ▲7.2% | 4,091 | ▲2.3% | 21.8% |
2011 | 2,253 | ▲2.7% | 1,650 | ▲7.1% | 3,903 | ▲4.6% | 21.6% |
2012 | 2,202 | ▲2.3% | 1,564 | ▲5.2% | 3,766 | ▲3.5% | 21.6% |
2013 | 2,231 | 1.3% | 1,438 | ▲8.0% | 3,669 | ▲2.6% | 21.8% |
2014 | 2,256 | 1.1% | 1,313 | ▲8.7% | 3,569 | ▲2.7% | 22.2% |
2015 | 2,102 | ▲6.8% | 1,166 | ▲11.2% | 3,268 | ▲8.4% | 21.5% |
2016 | 1,947 | ▲7.4% | 1,016 | ▲12.9% | 2,963 | ▲9.3% | 20.1% |
2017 | 1,666 | ▲14.4% | 917 | ▲9.7% | 2,583 | ▲12.8% | 18.9% |
2018 | 1,588 | ▲4.7% | 824 | ▲10.1% | 2,412 | ▲6.6% | 18.7% |
2019 | 1,665 | 4.8% | 722 | ▲12.4% | 2,387 | ▲1.0% | 19.3% |
2020 | 2,079 | 24.9% | 627 | ▲13.2% | 2,706 | 13.4% | 22.1% |
2021 | 2,087 | 0.4% | 558 | ▲11.0% | 2,645 | ▲2.3% | 21.9% |
21年のコミック市場全体の推定販売金額は6759億円で、前年比10.3%増。4年連続プラスで、その内訳は紙のコミックスが2645億円、同2.3%減、電子コミックスが4114億円、同20.3%増。
前年比マイナスだった2017年の4330億円に比べれば、2429億円のプラスとなり、それは紙のコミックスの売上に相当するものであり、20、21年のコロナ禍、電子コミックの成長、『鬼滅の刃』の神風的ベストセラーに続く『呪術廻戦』や『東京卍リベンジャーズ』のブーム、アニメ化も相乗している。
それに加えて、コミック市場のピークは1995年の5864億円であることを考えれば、数年のうちに電子コミックはそれすらも凌駕していくことになろう。
その95年には『週刊少年ジャンプ』は600万部、『週刊少年マガジン』は400万部台を誇り、コミック誌販売だけでも13億4301万冊に及んでいた。それが21年には1億4878万冊と10分の1になってしまったことになる。
その事実はコミック誌の主要な販売インフラがキヨスク、コンビニ、書店から電子コミック市場へとドラスチックに移行したことを物語っていよう。
21年の紙の出版物推定販売金額は1兆2079億円であり、コミック市場全体の6759億円はその半分を超えるところまできている。
そのことを含め、取次と書店の行方を注視しなければならない。
2.コミックスの新刊点数の推移も見てみよう。
年 | 雑誌扱い | 書籍扱い | 合計 | |||
前年比 | 前年比 | 前年比 | ||||
1995 | 4,627 | 103.9 | 2,094 | 156.3 | 6,721 | 116.0 |
2011 | 9,128 | 103.1 | 2,893 | 92.5 | 12,021 | 100.4 |
2012 | 9,376 | 102.7 | 2,980 | 103.0 | 12,356 | 102.8 |
2013 | 9,481 | 101.1 | 2,680 | 89.9 | 12,161 | 98.4 |
2014 | 9,937 | 104.8 | 2,763 | 103.1 | 12,700 | 104.4 |
2015 | 9,701 | 97.6 | 2,861 | 103.5 | 12,562 | 98.9 |
2016 | 9,762 | 100.6 | 2,829 | 98.9 | 12,591 | 100.2 |
2017 | 9,608 | 98.4 | 2,853 | 100.8 | 12,461 | 99.0 |
2018 | 9,596 | 99.9 | 3,381 | 118.5 | 12,977 | 104.1 |
2019 | 9,295 | 96.9 | 3,510 | 103.8 | 12,805 | 98.7 |
2020 | 9,023 | 97.1 | 3,916 | 111.6 | 12,939 | 101.0 |
2021 | 9,272 | 102.8 | 4,148 | 105.9 | 13,420 | 103.7 |
これは念のために書いておくが、コミックスは雑誌コードが付され、雑誌として配本されるもの、そうではなく書籍として流通するものの2種類がある。
かつては大手出版社と中小出版社、大部数と少部数、ハードカバーとソフトカバー、取次における雑誌コード取得問題など、様々なファクターによって選別されていたが、現在ではそれらの境界の詳細は伝えられていない。
ただこの表から歴然なのは雑誌扱いにしても、書籍扱いにしても、コミック新刊点数はいずれも四半世紀で2倍に及んでいることで、それは今世紀に入っての20年がコミックスの時代であったことを告げている。
書籍新刊点数のほうを見てみると、1995年6万1302点に対して、20世紀に入ると7万点台を推移し、20年には6万8608点と下回り始め、21年の雑誌、書籍扱いコミックスは合わせて1万3420万点で、単純比較すれば、その5分の1に及んでいることになろう。これに電子コミックス新刊点数を加えれば、書籍の新刊点数を上回ってしまうかもしれない。
今後の国際的な電子コミックの普及とアニメ化などと関連して、これらの紙のコミックス新刊点数がどのように推移していくのか予断は許さないにしても、1で示したようにコミック誌の販売部数のドラスチックな落ちこみからすれば、これ以上増えるとはないように思われる。
3.講談社の決算は売上高1707億7400万円、前年比17.8%増。営業利益217億円、同35.6%増。当期純利益155億5900万円、同43.0%増で、当期純利益は過去最高となった。
売上高の内訳は紙媒体の「製品」が662億8600万円、同4.4%増、「事業収入」910億2800万円、同27.4%増、「広告収入」70億4300万円、同27.6%増。
「事業収入」の「デジタル関連収入」は704億円、同29.4%増、そのうちの電子書籍は690億円、同30.2%増で、紙媒体の「製品」売上を初めて上回った。
「国内版権収入」は114億円、同38.9%増、「海外版権収入」は91億円、同4.2%増。
本クロニクル161や164で、デジタルや版権収入で稼ぐ集英社の決算を見てきているが、講談社も同様の決算で、「デジタル関連収入」が紙媒体の「製品」を超えるものとなった。
おそらく小学館の決算も集英社や講談社に続くものになるだろうし、大手出版社3社が揃ってデジタル化へとさらに邁進していくことになろう。
雑誌とコミックの大手出版社がデジタルや版権収入へと移行していく一方で、取次と書店はどのような対応を迫られてくるのか、それが焦眉の問題となっていく。
odamitsuo.hatenablog.com
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4.『日経MJ』(3/7)が「トップに聞く」シリーズで、メディアドゥの藤田恭嗣社長にインタビューしている。
そこにはメディアドゥの2018年から22年にかけての連結業績が付され、22年2月の連結決算は売上高前年比20%増の1000億円、純利益が5%増の16億円とされる。それはコロナ禍による巣ごもり需要と電子書籍の拡大の寄与だが、23年には減益となる可能性も示唆されている。
それもあって電子書籍の流通だけでは長期的成長の維持は難しいので、非代替性トークン(NFT)を付与した流通プラットホーム「FanTop」、メタバースのためのVR電子書籍ビューア「XRマンガ」の開発などが語られている。
メディアドゥに関しては本クロニクル153、トーハンの筆頭株主化は同156ですでにふれてきているし、やはりNFTデジタル特典付の書籍販売も同165で取り上げているが、ここでも言及してみる。
それはまた1の『出版月報』に「コミック関連のNFT始まる」として、コアコミックスの『北斗の拳』、ぴあの『パンダと犬V』、講談社の『code:ノストラ』、集英社の「マンガアート〈リテージ〉」としての『ONE PIECE』などの販売がレポートされていたからでもある。
これらの技術や販売に無知な人間の印象を記しておく。1980年代までは小説や詩集の豪華限定版が盛んで、それらの収集家やマニアは全国で300人はいるとして、多くが出されていた。その一社に成瀬書房があったが、それらの30冊ほどが500円で売られているのをブックオフで見たばかりだ。
もちろん投資の意味が異なってきていることも承知しているが、当時は誰も予想していなかった。コミック関連のNFTもそのようなイメージを否めない。
5.トーハンとDNPは出版流通改革の一環として、東京都北区のDNP書籍流通センター(赤羽SRC)をトーハン桶川センター内へ移設し、桶川書籍流通センター(桶川SRC)とし、関連する取り組みを拡大する。
赤羽SRCはDMPと丸善ジュンク堂が共同整備したDNPグループ書店のための流通拠点だが、埼玉県桶川市の桶川SRC5F、1200坪へと移設となる。
桶川SRCはDNPグループ書店(丸善ジュンク堂など)、トーハングループ書店(ブックファースト、八重洲BCなど)、新規参画の三省堂書店、未来屋書店との共同施策により、共同仕入れ、在庫とメンテンナス、迅速な出荷、POD製造などの環境を整備していく。
このトーハンとDNPの共同施策に関しては両社がニュースリリースを出しているので、詳細を必要とするのであれば、そちらを見てほしい。
これにトーハンの筆頭株主となったメディアドゥも絡み、出版印刷、流通と販売、電子書籍をめぐる出版流通改革が試みられるであろう。
なお桶川SRCは22年10月稼働、移設は23年1月完了予定となっている。
6.『週刊ダイヤモンド』(3/12)が特集「物流危機〔上級企業〕と〔下流宅配〕」を組んでいる。そのリードを示す。
「宅配業界大手が荷物の総量規制と配達料の値上げに踏み切る「宅配クライシス」に新刊したのは2017年。そして昨年末、宅配大手であるヤマト運輸の配送現場は大混乱に陥っていた。クライシスは終わっていなかったのだ。ヤマトだけでもない。物流産業だけでもない。小売り、メーカーなどあまたの企業が物流危機に直面している。」
今回の「物流危機」はインターネット通販の13年の6兆円から20年の12兆円を超えるという倍増に伴う宅配便の激増である。
それはコロナ禍の巣ごもり需要と相まって、20年の宅配取り扱い数は50億個に迫りつつあり、しかも自前の物流配送は含まれておらず、隠れ荷物の10億、20億個も指摘される事態となっている。
それに対してトラックドライバーの大量不足、高齢化、物流コスト大高騰、24年にはドライバーの労働時間問題も控え、物流全体が危機に追いやられているのだ。
それにヤマトとアマゾンの関係が象徴的に描かれ、出版業界にしても、『出版状況クロニクルⅥ』などでもレポートしてきたように、さらに出版輸送が危機を迎えていると推測するしかない。
7.富士山マガジンサービスの決算は売上高59億3000万円、前年比15.3%増。営業利益は5億2500万円、同62.5%増、当期純利益は3億4600万円、同61.6%増と増収大幅増益。
雑誌販売事業における総登録ユーザー数(一般及び法人購読者の合計数)374万9692人、前年比23万0747人増。会員数は雑誌市場の縮小にかかわらず伸びているが、ユーザーの増加率は鈍化しつつある。
デジタル雑誌関連事業は電通との合併会社magaport による雑誌読み放題サービスの成長により、売上の32.2%を占めるに至っている。
会員数は増えているにしても、個人の紙の雑誌定期購読サービスの成長は難しくなっているだろうし、その他の事業展開、例えばTRCと共同での電子図書館業などはどうなるのだろうか。
それに雑誌売読者情報をベースとるイードとの合弁会社イデアによる出版社ECサイトの運営支援事業、CCCの関連会社との雑誌情報を用いたマーケティングデータ検証事業なども、雑誌の凋落の中で企画進行しているわけだから、本当にどうなっていくのだろうか。
8.三省堂書店神保町本店は5月8日まで営業し、建替に伴い、6月11日から靖国通り沿いのヴィクトリアゴルフ御茶ノ水店を仮店舗として営業開始。
9.文教堂GHはFC新規事業として、溝ノ口本店にプログラミング教室を導入し、3月にはR412店(厚木市)にも設け、30店を予定する。
また店長や仕入担当者専従を「ブックトレーナー」として、社会人自己学習を支援する「ブックトレーニング」も新規事業として進めている。
10.明屋書店松山本店が閉店し、76年の歴史を終えた。
3月の書店のいくつかの出来事を挙げてみた。
取次のPOSレジ調査によれば、書店売上は昨年末から二ケタマイナスが続いていて、最悪の状況のように映る。
学参期が終わる5月以降の書店状況が気になるところだ。
11.『月刊CUT』(2月号)が「誰も観てないアニメ37本!」を特集し、『SPY×FAMILY』を始めとする『東京ベンジャーズ聖夜決戦篇』『ゴールデンカムイ第4期』『僕のヒーローアカデミア第6期』『チェーンソーマン』などを紹介している。
この特集に目を通したが、『ゴールデンカムイ』は本クロニクル163で既述しているように、コミックは読んでいるけれど、アニメは観にいかないだろうし、他のアニメは読んでいないで、観にいく気になれないだろう。
それはもちろん前期高齢者になってしまい、コミック誌連載のものを読まなくなったこともあるが、先月も『PEN』(1月号)の「CREATOR AWARDS2021」特集を読んだ時にも同じ感慨に捉われてしまった。
そこでは里河内真衣子、目(mé)、武井祥平、annolab、伊藤亜紗、ヘラルボニー、wetといったCREATORが登場しているが、ほとんど知らないである。
それはまた今月の『文学界』のアナキズム特集、『中央公論』の読書特集にも感じる思いで、雑誌のほうが私から遠ざかっていきつつあるように思われた。
日本の出版業界は雑誌を中心として形成され、戦後はとりわけ週刊誌やコミック誌の創刊なども加わり、編集長にしても読者に合わせて若くなければ務まらない激務ゆえに、雑誌現場から歳をとると外れざるを得なかった。それが雑誌エディターの宿命でもあり、それは書籍にしても同様だった。その功罪は現在に及んで考えると、私たちの世代が読む雑誌や書籍が少なくなってしまったことに表われているのかもしれない。
12.ノーム・チョムスキー+ロバート・ポーリン、聞き手クロニス・J・ポリクロニュー、早川健治訳『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』を読了した。
これは書店で見つけ、スリップに「直」とあり、「トランスビュー取引代行」で、版元は栃木県大田原市の那須里山舎、発行者は白崎一裕とあり、未知の出版社だったことから購入してきた。
内容に関する言及は疑問もあるので、差し控えるが、21年12月第1刷、22年2月第4刷となっているのは何よりだと思う。同書の他にも那須里山舎はやはり同じ早川訳でヤニス・バルファキス『世界牛魔人―グローバル・ミノタウロス』、アンドリュー・ヤン『普通の人々の戦い』などが刊行されているようなので、いずれ読んでみよう。
ひとつだけ気になるのは近年の翻訳版権料の値上がりと出版条件のタイトさで、それらの問題とトランスビューの関係は「グリーンニューディール」に見合っているのだろうかということであった。私の考え過ぎでなければいいのだが」
13.青木正美『戦時下の少年読物』(日本古書通信社)が届いた。
昔懐かしい函入菊半截判を彷彿させる一冊で、著者の長年の古本屋生活によって得られた「資料数百点が語る真実」には大いに啓発され、知らないことを教えられた。
それらの中でも「権ちゃん」本のことは初めて知るものだった。私などは1950年代に祭の高市で露店商が束ねて売っている月遅れ雑誌を買ってもらった最後の世代だと思われるが、「権ちゃん」本は予想外であった。そしてかつての出版物の生産、流通、販売の多様性を思い知らされたのである。
14.『近代出版史探索Ⅵ』は遅れてしまい、4月にずれこみ、中村文孝との対談『私たちが知っている図書館についての二、三の事柄』も同様に5月となる。
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論創社HP「本を読む」〈74〉は「青林堂『つげ義春作品集』」です。
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これから1年ほど、「本を読む」で日本の「バンド・デシネ」的大判コミックに関して連載予定である。
その際はビッグコミックオリジナル特別編『戦争×漫画1970―2020』(小学館)やショーン・タン『アライバル』(河出書房新社)も取り上げるつもりだ。