出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話24 江戸川乱歩の『幽鬼の塔』

ずっとSM小説に関連して書いてきたが、私は残念ながら実践派でも空想派でもないので、須磨利之や濡木痴夢男のようなマニア編集者たち、及び彼らが雑誌に仕掛けた様々な変態シグナルに魅せられた多くの読者たちの心情を深く理解できているとは言い難い。それ…

9 奥田英朗『無理』

郊外消費社会が全国的に出現し始めたのは一九八〇年代だったことを繰り返し書いてきた。だからその歴史はすでに四半世紀の年月を経てきたことになる。それ以前の六〇年代から七〇年代にかけての郊外はまだ開発途上にあり、新しい団地に象徴されるように、高…

古本夜話23 千草忠夫と『不適応者の群れ』

三十年ほど前に古本屋で買った本がある。貼られたラベルを見ると、今はなくなってしまった古本屋で入手したことがわかる。裸本の上下巻で、珠洲九著『不適応者の群れ』、譚奇会刊と表紙に記されていた。四百字詰千枚以上の長編小説と思われ、縛られた裸体の…

浅岡邦雄『〈著者〉の出版史』

浅岡邦雄の『〈著者〉の出版史』 (森話社)が出た。これはサブタイトルに「権利と報酬をめぐる近代」と付されているように、明治の「出版業の世界もいまだに大きな経済的市場となり得ていなかった」時代における「著者と出版者の経済的営為」を論述した手堅…

古本夜話22 団鬼六の『花と蛇』初版

しばらく間があいてしまったが、再び戦後に戻る。藤見郁の『地底の牢獄』が、当時の日活のアクション映画や島田一男などの同じくアクション小説の模倣だと記した。だが北原童夢と早乙女宏美の『「奇譚クラブ」の人々』によれば、藤見=濡木痴夢男はその他に…

8 山田詠美『学問』

ケータイ小説のような「小説」ならぬ「大説」を続けて読んでいると、「テクストの快楽」どころか、それこそ「テクストの苦痛」に襲われてしまい、口直しに「小説」を味わってみたくなる。だからそのつもりで買っておいた山田詠美の『学問』 (新潮社)を読ん…

古本夜話21 翻訳者としての佐々木孝丸

もう一人だけ、梅原北明の出版人脈を紹介しておきたい。それは佐々木孝丸で、佐藤紅霞などと異なり、俳優として私たちにもなじみ深い人物だからでもある。佐々木は昭和二年に文芸資料研究会(奥付発行所は文芸資料研究会編輯部で、発行人は上森健一郎)から…

出版状況クロニクル21

論創社サイトにて「出版状況クロニクル21(2009年12月26日〜2010年1月25日)」を更新しました。

7 ケータイ小説『Deep Love』

「女王」中村うさぎの欲望のみならず、郊外消費社会の成立と不可分の関係にあるケータイ小説も視野に収めておくべきだろう。それは極東の島国の郊外消費社会とケータイテクノロジーが、ミレニアムに出現させた日本でしか成立しない小説形式とベストセラー現…