出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話452 鷹野弥三郎『山窩の生活』と鷹野つぎ

これは別の機会にと思っていたのだが、前回鷹野弥三郎、つぎ夫妻が営んでいた編集プロダクション的な新秋出版社を取り上げたこともあり、続けて書いておくことにする。既述したように、大正十一年から十五年にかけての『文芸年鑑』は新秋出版社内日本年鑑協…

古本夜話451 武野藤介と『武野藤介風流文学自選集』

前回の『人間探究』のコンセプトと執筆者たちが、『あまとりあ』へと移行していったことは容易に見て取れる。それは主幹の高橋鉄がそうであったし、『人間探究』自体が昭和二十八年に廃刊になってしまったけれど、『あまとりあ』のほうは三十年まで刊行され…

混住社会論93 小島信夫『抱擁家族』(講談社、一九六五年)と『うるわしき日々』(読売新聞社、一九九七年)

東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催された翌年の一九六五年に、小島信夫の『抱擁家族』が『群像』七月号に掲載され、続いて講談社から単行本として刊行された。この小説はアメリカと郊外と家族にまつわる先駆的にして象徴的作品であり、高度成長…

古本夜話450 第一出版社の『人間探究』

これまでも第一出版社に関して、本連載11「謎の訳者帆神煕と第一出版社」や同12「伏見沖敬訳『肉蒲団』をめぐって」、最近でも同412「西原柳雨、岡田甫編『定本誹風末摘花』、有光書房」、あるいは前回の『アドニス』の母体になったのが第一出版社の…

古本夜話449 中城ふみ子『乳房喪失』、作品社、岩田貞夫

前回 原比露志=原浩二が戦後になって、『世界風流譚』(昭和二十六年)を刊行していることを既述しておいた。たまたま浜松の時代舎に同じく作品社の中城ふみ子の『乳房喪失』(同二十九年)、寺山修司の『われに五月を』(同三十二年)が並んでいて、前者は…

混住社会論92 佐藤洋二郎『河口へ』(集英社、一九九二年)

前回の佐藤泰志の『海炭市叙景』とほぼ時代を同じくして、やはり炭鉱を故郷とする青年の物語が提出されていた。しかも『すばる』という掲載誌や単行本化も同様だった。それは佐藤洋二郎の『河口へ』である。ここで取り上げたいのは同書所収の四作のうちの「…

古本夜話448 原比露志『寝室の美学』

『寝室の美学』 『日本好色美術史』 『談奇党』竹内道之助の風俗資料刊行会の発足にあたって、新たに召喚された人物がいて、彼は同刊行会から最も多くの著書を出していくことになる。それは本連載316で言及し、また445で名前を挙げておいた原比露志=…

古本夜話447 荒城季夫と太田三郎

本連載13「前田静秋・西幹之助共訳『アフロディト』と紫書房」のところで、「世界奇書異聞類聚」の『アフロディト』の訳者の太田三郎と荒城季夫のことに少しだけふれておいた。 その後、荒城に関してはその著書『古代美と近代美』(青磁社、昭和十七年)を…

混住社会論91 佐藤泰志『海炭市叙景』(集英社、一九九一年)

ひとつの街が衰退し始め、その代わりに郊外が成長していく現象は、一九八〇年代以後の日本において、全国各地で起きていた出来事であり、現在の私たちはそれらによってもたらされた社会の風景の変容の果てに佇んでいることになる。そうした街とその周辺に生…

古本夜話446 仏蘭西書院と谷書店

本連載443の藤澤衛彦の三笠書房版『日本伝説研究』のところでふれなかったが、奥付には発行者として竹内富子、印刷者として堀内文次郎の名前が並んでいる。発行者は竹内道之助夫人だと見なせるだろう。堀内文治郎のことは本連載53「戦前の戦後の二見書…

出版状況クロニクル80(2014年12月1日〜12月31日)

出版状況クロニクル80(2014年12月1日〜12月31日) 11月の書籍雑誌推定販売金額は1232億円で、前年比3.3%減。その内訳は書籍同5.6%減、雑誌1.6%減で、雑誌のうちの月刊誌は0.8%減、週刊誌は4.9%減。 返品率は書籍が40.0%、雑誌は38.6%で、双方とも高…