出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

混住社会論131 江藤淳、吉本隆明「現代文学の倫理」(『海』、一九八二年四月号)

(『難かしい話題』、「現代文学の倫理」所収) 「われらは遠くからきた。そして遠くまでいくのだ。……」 白土三平『忍者武芸帖』 前回のカレン・テイ・ヤマシタのアメリカ人日系三世、おそらくブラジル国籍も有するであろう複数の国籍とその出自、彼女の存在…

古本夜話532 丁未出版社と桜井忠温『肉弾』

最初に英文『武士道』を出版した裳華房と異なり、英文と邦文の双方を刊行した丁未出版社についても、その創業者が『出版人物事典』に立項されているので、まずそれを引く。 [土屋泰次郎・つちや・たいじろう]一八七四〜没年不詳(明治七年〜没年不詳)丁未…

古本夜話531 新渡戸稲造『武士道』と桜井鷗村

これもまったくの偶然だが、浜松の時代舎で農文協の『明治大正農政経済名著集』全二十巻と Inazo Nitobe, Bushido : the Soul of Japan (Tuttl Publishing) をほぼ同じころに購入している。前者に山崎延吉の『農村自治の研究』が収録されていることは既述し…

混住社会論130 Karen Tei Yamashita , Circle K Cycles(Coffee House Press、2001年)

ここに挙げたカレン・テイ・ヤマシタの著作は邦訳されておらず、管見の限り、都甲幸治の『21世紀の世界文学30冊を読む』(新潮社)において、『サークルKサイクルズ』として紹介されているだけだと思われる。しかしここではそのタイトルにあるCyclesに関して…

古本夜話530 『日本キリスト教出版史夜話』、長崎書店、小川正子『小島の春』

前回の最後のところで、洛陽堂の河本亀之助の弟の哲夫が関東大震災後に立ち上げたキリスト教専門出版社新生堂にふれておいた。その際に河本哲夫の「新生堂とその時代」における証言を引いておいたが、それが収録されている『日本キリスト教出版史夜話』(新…

古本夜話529 洛陽堂、帆足理一郎『哲理と人生』、新生堂

田中英夫の『洛陽堂河本亀之助小伝』において、前回と前々回の山崎延吉が著者としてまったく言及されていないことに比べ、帆足理一郎は『亀之助追悼録』(河本テル発行、大正十一年)のところで、高島平三郎と並ぶ追悼文寄稿者として紹介され、その後半の全…

混住社会論129 高橋幸春『日系ブラジル移民史』(三一書房、一九九三年)と麻野涼『天皇の船』(文藝春秋、二〇〇〇年)

前回、太平洋戦争の日本の敗戦が植民地台湾にもたらした、蒋介石の国民党軍による占領と独裁、及び「本省人」と「外省人」の混住、それらに端を発する「二・二八事件」にふれておいた。それならば、植民地ならぬ日本人移民の地、まさに混住の地であるブラジ…

古本夜話528 山崎延吉『農村之経営』と裳華房

山崎延吉の著書はもう一冊入手していて、その『農村之経営』もやはり古本屋の均一台で拾ったものだと思う。これは山崎が各地で行なった講演講習をまとめたものだが、やはり菊判上製、五百ページ弱の裸本で、大正四年に裳華房から出されている。同書の巻末に…

古本夜話527 洛陽堂と山崎延吉『農村教育論』

大正三年に洛陽堂から山崎延吉の『農村教育論』が出されている。定価一円九十銭、菊判上製五百五十ページに及ぶ大冊といっていい。私の所持する一冊は裸本だが、おそらく箱入だったと思われる。凡例の言からすると、山崎にとってこれは『農村自治の研究』に…

出版状況クロニクル92(2015年12月1日〜12月31日)

出版状況クロニクル92(2015年12月1日〜12月31日) 15年11月の書籍雑誌の推定販売金額は1145億円で、前年比7.0%減。 その内訳は書籍が506億円で、同2.4%減、雑誌は639億円で、同10.4%減、そのうちの月刊誌は10.0%減、週刊誌は12.2%減。 とりわけ週刊誌…