出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話493 横川亮一と集英社『新日本文学全集』

前回、集英社の『新日本文学全集』にふれたが、この全集も昭和四十年代にどこの古本屋でもその端本が売られていたものだった。しかし最近はほとんど見かけないけれど、この全集でしか読むことができない作品もかなりあるはずだ。『平野謙全集』(新潮社)の…

古本夜話492 五味康祐と斎藤十一

少年時代に新潮文庫などに収録されていた時代小説を読み始めたのだが、私の当時のリテラシーと物語嗜好も反映して、愛読したのは柴田錬三郎と山田風太郎である。その他にも手当り次第読んでいき、司馬遼太郎や早乙女貢なども読んだけれども、面白いと思えず…

混住社会論112 藤田 田『ユダヤの商法』(KKベストセラーズ、一九七二年)と『日本マクドナルド20年のあゆみ』(同社、一九九一年)

まず藤田 田に関するささやかなポートレートを提出してみる。彼は一九二六年に大阪に生れ、旧制松江高校を経て、戦後の四八年に東大法学部に入学する。在学中は授業料と生活費を得るためにGHQの通訳として働き、その一方で藤田商店を設立し、クリスチャン・…

古本夜話491 東都書房、『忍法小説全集』、『日本推理小説大系』

小山勝清の『それからの武蔵』の 東都書房版全六巻を所持していると前回書いておいた。その巻末広告に昭和三十九年五月刊行開始とある『忍法小説全集』が掲載されていた。十八巻のラインナップを示す。 1 柴田錬三郎 『赤い影法師』 2 司馬遼太郎 『梟の城』…

古本夜話490 小山勝清『それからの武蔵』

江馬修と柳田民俗学の関係は定かに見えてこないし、『一作家の歩み』に柳田国男は出てこない。柳田の側から見ても、江馬は『柳田国男伝』に妻の三枝子と並んで言及されているが、『ひだびと』に関してだけである。しかしひょっとすると、『山の民』は柳田の…

混住社会論111 ジョージ・リッツア 『マクドナルド化する社会』(早稲田大学出版部、一九九九年)

リッツアの『マクドナルド化する社会』(正岡寛治監訳)はアメリカで初版が一九九三年、改訂新版が九六年に刊行され、後者に基づく邦訳版は九九年に出されている。原タイトルはThe McDonaldization of Society で、直訳すれば、『社会のマクドナルド化』とな…

古本夜話489 江馬三枝子『日本の女性』

江馬修の『山の民』の初稿が飛騨の郷土研究誌『ひだびと』に連載されていたことは既述した。昭和十年から敗戦に至るまで飛騨において、百十二冊が刊行された民俗学と考古学を主とする『ひだびと』の編集や執筆を通じて、江馬を支えたのは二番目の妻の三枝子…

古本夜話488 江馬修『山の民』と出版事情

貴司山治と同じように、日本プロレタリア作家同盟の委員となったが、実録文学研究会にも『文学建設』にも属することなく、昭和十年代に自らの郷里の明治初年の事件を題材として、マルクス主義に立脚した新しい歴史小説に着手しつつある作家がいた。それは江…

出版状況クロニクル86 補遺

出版状況クロニクル86 補遺 本クロニクルとしてはイレギュラーであるが、出版状況が非常事態に入ってきたと見なし、7月7日付で、もうひとつの項目を付け加えておく。それは6月末時点で書くと、まだ、様々な状況が明らかになっているとはいえず、錯綜してしま…

古本夜話487 川端克二『海の魂』とコンラツド『陰影線』

野村尚吾の『週刊誌五十年』(毎日新聞社)に収録された『サンデー毎日』の「大衆文芸」入選、選外佳作者を見ていくと、昭和十三年から十四年にかけて、立て続けに川端克二という名前が出てくる。川端は同十三年上期に「海の花婿」、同十四年上期に「鳴動」…

出版状況クロニクル86(2015年6月1日〜6月30日)

出版状況クロニクル86(2015年6月1日〜6月30日)15年5月の書籍雑誌の推定販売金額は前年比10.7%マイナスという大幅減。書籍雑誌合わせて二ケタ減はかつてない落ちこみである。 その内訳は書籍が7.3%減、雑誌が13.6%減。雑誌のうちの月刊誌は13.2%減、週刊…