出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話920 河出書房『世界性学全集』とマリノウスキー『未開人の性生活』

本連載916で、マリノウスキーの『未開人の性生活』も新泉社から刊行されていることにふれたが、実はこれも復刊なのである。それも元版は戦前ではなく、戦後の昭和三十二年に河出書房の、『世界性学全集』第九巻として、泉靖一、蒲生正男、島澄の共訳で出…

古本夜話919 服部之総『明治維新史・唯物史観的研究』

これはまったくの偶然だけれど、前回の新泉社「叢書名著の復興」リストを挙げていて、そのうちの服部之総の『明治維新史』を最近購入したばかりであることに気づいた。それはA5判函入の一冊で、『明治維新史・唯物史観的研究』とあり、昭和五年に大鳳閣書房…

古本夜話918 小汀良久、新泉社、「叢書名著の復興」

前々回の新泉社の「叢書名著の復興」は戦前の、それも昭和四十年代前半の企画刊行だけれど、この「叢書」に関しては考えさせられることもあるし、現在の文庫問題とも重なってくるので、ここで取り上げておきたい。 それにこの「叢書」は単行本復刊ではなく、…

古本夜話917 青山道夫、ウエスターマルク『婚姻と離婚』、改造文庫

前回のマリノウスキー『未開社会における犯罪と慣習』が、新泉社「叢書名著の復興」の一冊としての刊行に際し、青山道夫は改造文庫版にはなかった「訳者の序」を寄せている。 (『未開社会における犯罪と慣習』、新泉社版) そこで青山は「この訳書をはじめ…

古本夜話916 マリノウスキー『未開社会における犯罪と慣習』『原始民族の文化』『神話と社会』

昭和四十二年に新泉社から復刊されたマリノウスキーの青山道夫訳『未開社会における犯罪と慣習』(「叢書名著の復興」6)に寄せた「解説」で、法社会学者の江守五夫は次のように始めている。 (『未開社会における犯罪と慣習』) ブロニスロゥ・カスミパル・マ…

古本夜話915 柳田国男はフレイザーと会っていたのか

前回、メアリー・ダグラスが十九世紀思想の「人間のものの考え方のはじまり」に関する「謎解き競争」の勝利者として、『金枝篇』のフレイザーを位置づけていたことを既述しておいた。日本において、この「謎解き競争」に加わったのは柳田国男、折口信夫、南…

古本夜話914 永橋卓介と『金枝篇』翻訳史

サビーヌ・マコーミック編『図説金枝篇』(内田昭一郎他訳、東京書籍、平成六年)の序文で、メアリー・ダグラスは次のように述べている。「人間のものの考え方のはじまりこそ、十九世紀の思想家たちがもっとも関心を寄せた問題」で、「無意味でばかげてみえ…

古本夜話913 生活社とフレイザー『金枝篇』

タイラーの『原始文化』と並んで、人類学や民俗学、神話と宗教研究に大きな影響を及ぼしたのはフレイザーの『金枝篇』に他ならないけれど、後者にしても、前者を抜きにしては語れないだろう。 この『金枝篇』は一八九〇年に全二巻の初版、一九三六年に全十三…

古本夜話912 ヤジロー伝説と窪田志一『岩屋天狗と千年王国』

比屋根安定の『日本基督教史』の「伝来時代」には、前回の中国景教碑文や太秦伝説の他にも、ヤジロー(以下、ヤジロオ、ヤジロウとも表記)伝説にほぼ一章が割かれ、彼はそれを「日本伝道の計画、パウロ弥次郎の経歴」と題し、次のように始めている。 一五四…

古本夜話911 比屋根安定『日本基督教史』

本連載906などで、タイラーの『原始文化』の訳者が比屋根安定で、彼がヴントの『民族心理学』も誠信書房から刊行していることを既述しておいた。この二冊に加えて、同じく昭和三十年代にマックス・ミュラーの『宗教学概論』の翻訳書もあることからすれば…

出版状況クロニクル133(2019年5月1日~5月30日)

19年4月の書籍雑誌推定販売金額は1107億円で、前年比8.8%増。 書籍は603億円で、同12.1%増。 雑誌は504億円で、同5.1%増。その内訳は月刊誌が416億円で、同5.9%増、週刊誌は88億円で、同1.4%減。 返品率は書籍が31.4%、雑誌は43.0%で、月刊誌は43.1%、週刊誌…