出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話950 松山俊太郎、『法華経』、プシルスキー『大女神』

続けて一九三〇年前後のフランス民族学や社会学に大きな影響を与えたと推測される、トリックスター的な「パリのアメリカ人」であるW・B・シーブルックに言及してきた。 本連載935の松本信広はシーブルックがパリに現われる前に帰国している。彼の「巴里よ…

古本夜話949 シーブルック『アラビア遊牧民』と大陸書房

前回のシーブルックだが、真島一郎が「ヤフバ・ハベ幻想」(『文化解体の想像力』所収、人文書院)の「註」で付記しているように、一九六八年=昭和四十三年は「シーブルック元版」で、大陸書房から『アラビア遊牧民』(斎藤大助訳)と『魔法の島〈ハイチ〉…

古本夜話948 シーブルック、ミシェル・レリス、ドゴン族

これは別のところで書くつもりでいたけれど、マルセル・モースやその時代、及び前回の山田吉彦のモロッコ行とも密接にリンクしているので、ここに挿入しておく。 前回、フランス人類学の記念すべき始まりとしての西アフリカのダカール・ジプチ調査団の出発に…

古本夜話947 山田吉彦とモロッコ

山田吉彦もモースの弟子だから、彼のことももう少しトレースしておこう。彼は一九三九年にソルボンヌ大学を中退し、モロッコ旅行を経て、日本へと帰国する。そして二年後の昭和十八年に、マルセル・モース『太平洋民族の原始経済』の版元である日光書院から…

古本夜話946 松平斉光『祭ー 本質と諸相』とアウエハント『鯰絵』

『民族』に関係していた松本信広たちよりも少し遅れてパリに遊学した研究者がいる。それは松平斉光だった。 彼は明治三十年生まれで、大正十年東京帝大法学部卒業後、西洋思想史を講義するかたわらで、日本政治思想を探究する試みを続けていた。しかし北畠親…

古本夜話945 宇野円空『宗教民族学』と岡書院「人類学叢書」

マルセル・モースのもう一人の弟子は宇野円空である。彼も『文化人類学事典』に立項されているので、まずそれを引いてみる。 うのえんくう 宇野円空 1885-1949 宗教民族学者。京都の西本願寺派の尊徳寺で生まれる。1910年に東京帝国大学文科大学哲学科を卒…

古本夜話944 バーバラ・ドレーク、赤松克麿、赤松明子共訳『英国婦人労働運動史』春山行夫

前回の赤松智城が、社会運動家の赤松克麿の兄であることにふれておいた。たまたま昭和二年に厚生閣から出された赤松克麿、赤松明子共訳のバーバラ・ドレーク 『英国婦人労働運動史』を入手しているので、ここで一編を挿入しておきたい。 著者のバーバラ・ド…

古本夜話943 赤松智城『輓近宗教学説の研究』

『民族』の寄稿者にはもう一人の赤松がいて、それは「古代文化民族に於けるマナの観念に就て」(第一巻第三号~第六号)を連載している赤松智城である。彼は前回の赤松秀景と異なり、『文化人類学事典』(弘文堂)に立項が見出されるので、それをまず引いて…

古本夜話942 赤松秀景と高等研究実習院

マルセル・モースが弟子の一人として挙げていた「赤松」とは、昭和二年頃にモースの『呪術の一般理論』を翻訳した赤松秀景だと考えられる。これは岡書院の「原始文化叢書」全七巻のうちの一冊だが、それだけでなく、全冊が未見で、いずれも稀覯本と化してい…

古本夜話941 松本信広「巴里より」と『日本神話の研究』

『民族』における「巴里(松本信広君)より『民族』同人へ」は第一巻第一号だけでなく、同第二号へと続き、第二巻第一号からは「巴里より」として、同第三号、第三巻第一号まで三回分が掲載されている。以下「巴里より」と統一する。それは大正十四年から昭…

出版状況クロニクル136(2019年8月1日~8月31日)

19年7月の書籍雑誌推定販売金額は956億円で、前年比4.0%増。 書籍は481億円で、同9.6%増。 雑誌は475億円で、同1.2%減。その内訳は月刊誌が384億円で、同0.1%減、週刊誌は91億円で、同5.4%減。 返品率は書籍が39.9%、雑誌は43.0%で、月刊誌は43.4%、週刊誌は…