出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話990 西村眞次『人類学汎論』と『世界古代文化史』

前回の西村眞次に関して続けてみる。彼は『新潮社四十年』において、新声社同人の西村酔夢として紹介され、明治三十四年に『日本情史』を刊行し、「花井卓蔵博士をして学位論文の価値あり」と激賞されたという。またこれも未見だが、正続『美辞宝典』(文武…

古本夜話989 西村眞次『神話学概論』

中島悦次の『神話と神話学』の初版に当たる『神話』(共立社)の刊行と同じく昭和二年に、西村眞次の『神話学概論』が早稲田大学出版部から出されている。『早稲田大学出版部100年小史』によれば、同書亜はやはり同年刊行の「文化科学叢書」全8巻のうちの第4…

古本夜話988 中島悦次『神話と神話学』

拙稿「青蛙房と『シリーズ大正っ子』」(『古本探究Ⅱ』所収)や本連載429で、大東出版社の「大東名著選」にふれ、これが戦後に青蛙房を興す岡本経一の編集によるものであることを既述しておいた。その「大東名著選」37として、昭和十七年に中島悦次の『神…

古本夜話987 Favorite Andrew Lang Fairy Tale Books in many colorsと東京創元社『ラング世界童話全集』

前回のアンドルー・ラングの民俗学や神話学の原著は入手していないけれど、『童話集』のほうは原書と翻訳の双方が手元にあるばかりでなく、これも『世界名著大事典』に『童話集』として立項されている。同じ『童話集』の立項にはアンデルセン、オーノワ夫人…

古本夜話986 アンドルー・ラング『神話、祭式、宗教』

前回既述しておいたように、高木敏雄の『比較神話学』は十九世紀のヨーロッパの神話学の成果を参照して書かれているだが、その研究者名は多く挙げられているにもかかわらず、具体的な書名はほとんど挙げられていない。とりわけ高木はアンドリュー・ラングの…

古本夜話985 高木敏雄『比較神話学』と武蔵野書院

前回、高木敏雄の『日本神話伝説の研究 神話・伝説編』の「序」は柳田国男が寄せていることを既述したが、そこには「比較神話学が高木君最初の力作であり日本伝説集が明治末葉の大蒐集であつて、共に最近に覆刻せられた」という一節が見えていた。『日本伝説…

古本夜話984『郷土研究』と高木敏雄『日本神話伝説の研究』

続けてサンカをめぐってきたが、その発端ともいえる柳田国の「『イタカ』及び『サンカ』」(『柳田国男全集』5 所収、ちくま文庫)が発表された時代に戻ってみる。 大正二年に柳田国男は神話学者の高木敏雄とともに、本格的な民俗研究雑誌『郷土研究』を創刊…

古本夜話983 田山花袋「帰国」と『サンカの民を追って』

本連載484の『現代ユウモア全集』第2巻に堺利彦の『桜の国・地震の国』があり、そこに「山窩の夢」という一文が収録され、田山花袋がサンカ小説「帰国」を書いていることを知った。この短編はこれも本連載262の『花袋全集』第七巻所収だとわかったので…

古本夜話982 夢野久作「骸骨の黒穂」

菊池寛と三角寛、『オール読物』とサンカ小説の関係からすれば、やはり昭和九年に『オール読物』に掲載された夢野久作の「骸骨の黒穂(くろんぼ)」にふれないわけにはいかないだろう。実はこの作品もサンカをテーマとしているからである。(「骸骨の黒穂」、…

古本夜話981 菊池寛、平凡社『明治大正実話全集』、永松浅造

三角寛の最初のサンカ小説「山窩お良」は昭和七年に新潮社から刊行された『昭和妖婦伝』に収録され、作品の異同はあるけれど、同タイトルで現代書館の『三角寛サンカ選集』第九巻として復刊されている。 その「序」は菊池寛、加藤武雄、藤沼庄平の三人が書い…

出版状況クロニクル140(2019年12月1日~12月31日)

19年11月の書籍雑誌推定販売金額は1006億円で、前年比0.3%増。 書籍は537億円で、同6.0%増。 雑誌は468億円で、同5.7%減。 その内訳は月刊誌が394億円で、同4.3%減、週刊誌は74億円で、同12.4%減。 返品率は書籍が37.3%、雑誌は41.9%で、月刊誌は41.1%、週刊…