出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1009 伊藤整と島崎藤村『飯倉だより』

前回の伊藤整『若い詩人の肖像』の中で、伊藤は昭和三年四月に上京し、北川冬彦と梶井基次郎たちの麻布の飯倉片町にある素人下宿に移り住む。すると北川からその谷底の路地に島崎藤村が住んでいると教えられる。すでに梶井は訪ねていたようだ。 伊藤も実際に…

古本夜話1008 伊藤整、百田宗治『椎の木』、北川冬彦『詩・現実』

前々回、武蔵野書院の『詩・現実』にふれ、そこに伊藤整も辻野久憲、永松定との共訳で、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシイズ』を連載したことを既述しておいた。 その伊藤の長編小説『若い詩人の肖像』(新潮文庫)は自伝であると同時に、大正時代後半の詩人…

古本夜話1007 梶井基次郎、「闇の絵巻」と説教強盗

あらためて梶井基次郎の『檸檬』を初版で、といっても、近代文学館とほるぷ出版の復刻だが、読むことは文庫や文学全集などの場合と異なる読書体験であると実感してしまう。私はかつて「梶井基次郎と京都丸善」(『書店の近代』所収)を書いているので、とり…

古本夜話1006 武蔵野書院とプルースト『スワン家の方』

本連載985の高木敏雄『比較神話学』を復刻した武蔵野書院は、昭和六年にプルーストの『失ひし時を索めて』の第一巻『スワン家の方』を翻訳出版している。手元にそれがあるけれど、この菊判並製の一冊は背がはがれ、表裏双方の表紙も同様、解体寸前の状態…

古本夜話1005 金星堂児童部、武井武雄、島田元麿、東草水訳『青い鳥』

本連載995で、冨山房の「画とお話の本」の一冊、楠山正雄編、岡本帰一画『青い鳥』にふれ、瀬田貞二の『落穂ひろい』での証言を引き、大正九年の民衆座による『青い鳥』初演は「近代演劇史上の一事件」だったことを既述しておいた。 (『青い鳥』)(『落…

古本夜話1004 池田大伍編『支那童話集』と『現代戯曲全集』

前回の一編を書いてから、浜松の時代舎に出かけたところ、本連載994の「模範家庭文庫」の一冊である池田大伍編『支那童話集』を見つけてしまったので、ここで書いておくしかないだろう。 (『支那童話集』) しかも同993の『朝鮮童話集』と異なり、函…

古本夜話1003 弘道閣と『博物辞典』

前回の実質的な培風館の創業者である川村理助の『自由人になるまで』において、気になるエピソードが記されていたので、それに関しても言及してみたい。 明治二十年に森有礼が文部大臣となり、師範教育の改善を経て、東京師範学校を高等師範学校と改め、各府…

古本夜話1002 培風館、山本慶治、川村理助『自由人となるまで』

本連載999の松村武雄の『神話学原論』 を始めとして、彼の著作の大半が戦前戦後を通じて、培風館から刊行されていることを既述しておいた。それは未見であるけれど、同992で挙げた森鴎外、鈴木三重吉、馬淵冷佑とともに編纂した「標準お伽文庫」全六巻…

古本夜話1001 南の会『ニューギニア土俗品図集』

前回のレヴィ=ブリュルの『原始神話学』は主としてニューギニアのマリンド族、ドブ族、マリンド=アニム族などの諸部族と神話をテーマにしていた。 (弘文堂版) そのことで想起されたのは、南洋興発株式会社蒐集『ニューギニア土俗品図集』という一冊である。…

古本夜話1000 J・E・ハリソン『古代芸術と祭式』とレヴィ=ブリュル『原始神話学』

前回松村武雄の『神話学原論』 において、言及頻度が高い著者と著作に、ジェーン・エレン・ハリソンの『テミス―希臘宗教の社会的起原の研究』(Themis : A Study of the Social Origin of Greek Religion)とレヴィ=ブリュルの『原始神話学』がある。(『神…

出版状況クロニクル142(2020年2月1日~2月29日)

20年1月の書籍雑誌推定販売金額は865億円で、前年比0.6%減。 書籍は495億円で、同0.6%増。 雑誌は370億円で、同2.2%減。 その内訳は月刊誌が295億円で、同0.7%減、週刊誌は74億円で、同8.0%減。 返品率は書籍が33.1%、雑誌は45.1%で、月刊誌は46.1%、週刊誌…