出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話93 八切止夫と日本シェル出版

〇七年の『探偵作家追跡』に続いて、若狭邦男の『探偵作家尋訪―八切止夫・土屋光司』が日本古書通信社から出された。若狭の蒐書をたどっていくと、尋常な努力では収集できないと思われる雑誌や書籍に出会うことになり、私などは本当に横着な古本探究者でしか…

古本夜話92 ヴァン・ダイン、伴大矩、日本公論社

江戸川乱歩は『探偵小説四十年』の中で、日本におけるエラリー・クイーンやヴァン・ダインのいち早い紹介者兼翻訳者が、伴大矩であったと書いている。少し長くなるが、その部分を引いてみる。 伴大矩君は、別名の露下紝と両方を使いわけて、翻訳工場式に拙速…

27 『黒流』のアメリカ流通

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 "> アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本…

古本夜話91 大内三郎『漂魔の爪』と伊藤秀雄『明治の探偵小説』

前々回 記した松柏館のことも詳細は不明だが、それにもまして誰も取り上げていない探偵小説が手元にある。それは国会図書館にも架蔵されていない。しかも江戸川乱歩がいう探偵小説の第二のブームを迎えようとしている昭和八年に出され、「傑作探偵小説全集」…

古本夜話90 梅原北明『殺人会社』とジャック・ロンドン『殺人株式会社』

前回 『夢野久作の日記』にふれたので、それにまつわる一編を挿入しておきたい。彼は昭和元年八月二十八日(ママ)の日記に「夜、暑し。殺人会社を読む」と記している。これは梅原北明の『殺人会社』と判断していいだろう。梅原を読む夢野、それはあらためて二…

26 ナショナリズム、及び売捌としての日本力行会

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話89 探偵小説、春秋社、松柏館

江戸川乱歩の『探偵小説四十年』は何度読んだかわからないほどだが、読む度に新たな発見があり、日本の探偵小説史のみならず、近代出版史、文学史としても比類のない貴重な記録であると実感させられる。今回も松村喜雄の『乱歩おじさん』との関連で読み返し…

古本夜話88 六人社版『真珠郎』と『民間伝承』

前回横溝正史が柳田国男の主宰する『民間伝承』の読者だったのではないかと記しておいたが、実はそれを裏づけると思える事実がある。横溝の『真珠郎』は昭和十二年に六人社という出版社から刊行されている。この作品は昭和十一年十月から翌年二月にかけて、…

25 アメリカと佐藤吉郎

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

古本夜話87 探偵小説、民俗学、横溝正史『悪魔の手鞠唄』

松村喜雄の『乱歩おじさん』に、昭和十一年に発表された乱歩の『緑衣の鬼』に関して、次のような言及がある。 『緑衣の鬼』に登場する夏目菊太郎は「紀伊半島の南端Kという田舎町に隠棲して、粘菌類の研究に没頭している民間の老学者であった。彼の生涯に発…

古本夜話86 平井蒼太と富岡多恵子『壺中庵異聞』

松村喜雄は『乱歩おじさん』の中で、「代作問題について」の一章を設け、全集に収録されていない七作を挙げ、これらは明らかに代作か偽作だと述べ、その中の大正十五年の「陰影」などは乱歩の弟である平井通によるものではないかと推測している。この平井通…

24 日本力行会員の渡米

◆過去の「謎の作者佐藤吉郎と『黒流』」の記事 1 東北書房と『黒流』 2 アメリカ密入国と雄飛会 3 メキシコ上陸とローザとの出会い 4 先行する物語としての『黒流』 5 支那人と吸血鬼団 6 白人種の女の典型ロツドマン未亡人 7 カリフォルニアにおける日本人…

出版状況クロニクル35 (2011年3月1日〜3月31日)

出版状況クロニクル35(2011年3月1日〜3月31日)東日本大震災のもたらした恐るべき被害と衝撃に対して、発する言葉が見つからない。平和な風景を一瞬にして廃墟へと追いやった津波、その直前まで生命を失うことを予測もしていなかった多数の死者たち、それ…