出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話684 山本熊太郎『新日本地誌』

前回の古今書院の創業者橋本福松の立項のところには見えていなかったけれど、山本熊太郎の『新日本地誌』がある。これは全六巻で、明細を見れば、関東・奥羽篇、北海道・樺太篇、中部地方篇、近畿・中国篇、四国・九州篇、外地篇という構成により、昭和十二…

古本夜話683 佐藤弘、古今書院、パッサルゲ『景観と文化の発達』

前回、ダイヤモンド社の『南洋地理大系』の編輯者の一人が佐藤弘であると既述しておいた。この佐藤は地理学者にふさわしく、古今書院からも翻訳書を刊行している。それは国松久彌との「共抄訳」のパッサルゲ『景観と文化の発達』で、昭和八年の出版である。…

古本夜話682 ダイヤモンド社と『南洋地理大系』

「南進論」と歩みをともにして、出版界も「南へ、南へ」と向かっていた。それをダイヤモンド社の『南洋地理大系』にもうかがうことができる。これは昭和十七年に全八巻で出されている。その明細を示す。 1 『南洋総論』 2 『海南島・フィリピン・内南洋』 3 …

古本夜話681 堀真琴と『世界全体主義大系』

前々回の室伏高信の『戦争私書』の中に堀真琴への言及がある。この堀に関しては『現代人名情報事典』に立項を見出せるので、まずはそれを引いておく。 (中公文庫版) 堀真琴 ほりまこと 政治家(生)宮城1898・5・24‐980・1・16 (学)1923東京帝大政治学科…

古本夜話680 養賢堂、「東亜共栄圏国土計画資料」、田中長三郎『南方植産資源論』

昭和十年代後半における南進論関係の出版ブームは、本連載584、585などでも既述しているが、多くの出版社が参画していったようで、それは養賢堂のような農業書の版元も例外ではなかった。養賢堂に関してはこれも同528で少しだけふれているけれど、…

古本夜話679 室伏高信、日本評論社、『戦争私書』

前回の室伏高信の『南進論』の巻末広告には彼の『論語』『孔子』『山の小屋から』『支那遊記』が並び、室伏と日本評論社の密接な関係を伝えている。実際に彼は昭和九年から十八年にかけて、『日本評論』の主筆を務めていたのである。本連載ではふれてこなか…

古本夜話678 室伏高信『南進論』

本連載675で、大谷光瑞の南進論にふれたが、それは昭和十一年に日本評論社から刊行された室伏高信の『南進論』から始まり、国策としての南進政策と大東亜共栄圏構想がリンクしていたと見なせよう。明治末期から大正前半にかけて唱えられた民間の南進論は…

古本夜話677 東日大毎近衛賞「政治小説」と松永健哉『海の曙』

前回、『純粋小説全集』刊行記念としての「一千円懸賞長篇小説」にふれたが、もうひとつよく知られていない賞があるので、これも続けて書いておきたい。それは「東日大毎近衛賞『政治小説』」であり、私も松永健哉の『海の曙』を入手して知った次第だ。この…

古本夜話676 有光社と『純粋小説全集』

前回の大谷光瑞などの南進論に寄り添った出版社としての有光社についてはまったくふれられなかったので、もう一編書いておきたい。有光社は住所も麹町区丸ノ内三丁目とし、発行者を村田鐵三郎とする版元で、私が最初にこの出版社の本を入手したのは半世紀近…

古本夜話675 有光社、大谷光瑞『蘭領東印度地誌』、澁川環樹『蘭印踏破行』

本連載671でも既述したように、新仏教運動の盛り上がりのひとつのきっかけは、西本願寺の大谷光瑞による桜井義肇の処遇にあった。桜井は『反省会雑誌』時代から編集実務に携わり、タイトルが『中央公論』に代わってからも編集主任を務め、同時に高輪仏教…

出版状況クロニクル110(2017年6月1日〜6月30日)

17年5月の書籍雑誌の推定販売金額は926億円で、前年比3.8%減。書籍は475億円で、同3.0%増、雑誌は451億円で、同10.0%減。 書籍は送品稼働日が1日多かったこと、及び前月がやはり10.0%減だった反動でプラスとなっている。 しかし雑誌は返品率の上昇で、2…