出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話706 『東亜学』、日光書院、米林富男

大東出版社の「東亜文化叢書」、彰国社、龍吟社の「東亜建築撰書」と続けてきたので、もうひとつ日光書院の『東亜学』にもふれてみたい。 これは昭和十四年九月に第一輯が出され、裏表紙には『ORIENTALICA』とあり、英文目次も付されている。その後、同十九…

古本夜話705 島村抱月『文芸百科全書』と隆文館

前回久し振りに草村北星の龍吟社にふれたので、これも本連載151などで言及している北星が以前に設立した隆文館の書物に関する一編を挿入しておきたい。 これは本連載71でも既述していることだが、かつて「『世界文芸大辞典』の価値」(「古本屋散策」4…

古本夜話704 藤岡通夫『アンコール・ワット』と「東亜建築撰書」

本連載680で、農業書の養賢堂も南洋関連書を刊行していることにふれたが、それは建築書の分野にあっても同様で、彰国社からも「東亜建築撰書」が出されている。 この「撰書」に関しては本連載158「龍吟社と彰国社」で言及し、彰国社が戦時下の企業整備…

古本夜話703 井東憲『南洋の民族と文化』と「東亜文化叢書」

大東出版社は前々回の東亜協会との関係の他に、「東亜文化叢書」というシリーズも刊行している。国会図書館を調べると、九冊刊行されているが、昭和十六年十月時点で、四冊までは出版されている。それらを挙げてみる。 1. 実藤恵秀 『近代日支文化論』 2. 井…

古本夜話702 二宮尊徳偉業宣揚会と『二宮尊徳全集』

前回、『東亜連盟』の発売所が育生社で、その住所が『要説二宮尊徳新撰集』の二宮尊徳翁全集刊行会と同じであることから、両社は同じではないかとの推測を述べておいた。 そこで『二宮尊徳全集』の戦前における出版を、書誌研究懇話会編『全集叢書総覧新訂版…

古本夜話701 『東亜連盟』と育生社

前回の東亜協会が北支事変と同時に創立された華北協会の後身で改称されたこと、また同時期に、石原莞爾や宮崎正義たちによって思想運動団体としての東亜連盟が結成されたことを既述しておいた。 東亜連盟は『日本近現代史辞典』に立項されているので、それを…

古本夜話700 東亜協会編著『北支那総覧』

前回岩野夫妻の大東出版社にふれたこともあり、この版元の仏教書以外の書籍も取り上げておきたい。 まずは東亜協会編著『北支那総覧』で、昭和十三年の刊行である。菊判上製五〇五ページ、入手したのは裸本だが、定価が参円八拾銭とされていることからすれば…

古本夜話699 仏教経典叢書刊行会と立川雷平

もう一冊、大正時代の仏教書が残されているので、これもここで書いておこう。それは『現代意訳維摩経解深密教』である。同書は 著訳者を岩野真雄とし、仏教経典叢書刊行会から出版されている。 本連載513で『維摩経』については既述しておいたが、同じく…

古本夜話698 『岩波哲学小辞典』、伊藤吉之助、仲小路彰

前回の仲小路彰のことだが、『砂漠の光』をきっかけにして、出版の世界に足を踏み入れたようで、その痕跡を残している一冊がある。それは岩波書店の四六判『岩波哲学小辞典』に他ならない。これは昭和五年に初版、十三年に増訂版が出され、戦後に至るまでの…

古本夜話697 仲小路彰『砂漠の光』

これはその出版経緯と事情もまったくつかめていないけれど、やはり新光社から大正十一年に仲小路彰の長篇戯曲『砂漠の光』が刊行されている。それは七八一ページに及ぶもので、まさに個人としては前例を見ない長篇戯曲の出版だったと思われる。しかも奥付の…

古本夜話696 三井晶史『法然』

新光社のことは本連載171、172、173などで言及してきたし、同642でも経営者の仲摩照久についてはその経歴などを提出しておいた。だがその出版物に関しては全貌がつかめていない。 とりわけ出版物は雑誌の他に三百余点に及んでいるとされるけれど…

出版状況クロニクル112(2017年8月1日〜8月31日)

17年7月の書籍雑誌の推定販売金額は952億円で、前年比10.9%減。 書籍は467億円で、同6.2%減、雑誌は484億円で、同15.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が382億円で、同17.1%減、週刊誌は102億円で、同6.1%減。 返品率は書籍が42.0%、雑誌は46.2%で、月刊誌は47.8%、…