出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話940 桑原隲蔵『考史遊記』

前回の石田幹之助『増訂 長安の春』に関して、もう一編ふれるつもりでいたが、紙幅が尽きてしまったので、今回のイントロダクションとしたい。 それは「隋唐時代に於けるイラン文化の支那流入」で、これも隋唐における支那とイラン文化の関係に言及して興味…

古本夜話939 石田幹之助『増訂 長安の春』

同じく『民族』編集委員であった石田幹之助は、岩崎久弥が購入した東洋学文献を主とするモリソン文庫を委託され、そのための財団法人東洋文庫の運営に長きにわたって携わっていた。 その石田は昭和十六年に創元社から『長安の春』 を上梓しているが、昭和四…

古本夜話938 ラッツェル『アジア民族誌』

やはり『民族』編集委員の奥平武彦に関連する一編を挿入しておく。 佐野眞一は『旅する巨人』において、澁澤敬三が戦前の日銀時代に、マルクス経済学者の向坂逸郎や大内兵衛に対し、ひそかに経済的支援をするために、日銀の仕事をさせていたことにふれ、その…

古本夜話937 有賀喜左衛門『家』と名子制度

有賀喜左衛門も『民族』の編集委員の一人であり、昭和九年の日本民族学会の設立発起人も務めていた、その翌年に日本民族学会事務局は澁澤敬三邸内のアチック・ミューゼアムに移された。彼は明治三十年長野県生まれ、二高で渋澤と同期、岡正雄は二年後輩で、…

古本夜話936 岡正雄とバーン『民俗学概論』

前回、兄の岡茂雄を取り上げたこともあり、続けて弟の岡正雄にもふれておくべきだろう。 岡正雄は『民族』の編集に携わりながら、「異人その他」(第三巻第六号)を寄稿している。これは「古代経済誌研究序説草案の控へ」というサブタイトルを付した四十ペー…

古本夜話935 岡茂雄、『民族』、渋沢敬三

『民族』は柳田国男と民族学を志向していた岡正雄の出会いをきっかけとして、大正十四年十一月に創刊され、昭和四年四月に休刊となった。休刊に至る経緯は 『柳田国男伝』の「雑誌『民族』とその時代」に詳しいが、創刊のきっかけとなった岡と柳田の不協和音…

古本夜話934 モースの弟子たちと『民族』

もう一編モースに関して続けてみる。山田吉彦は『太平洋民族の原始経済』の「後書」において、講義後のモースとの交流について、次のように書いている。 火曜日には私はモース教授と同じ通りに住んでゐたので一緒に帰るように誘はれた。電車賃は何時もモース…

古本夜話933 シルヴァン・レヴィ『仏教人文主義』とマルセル・モース

本連載929のデュルケム『社会学的方法の規準』の「訳者前がき」において、昭和二年に田辺寿利が関係しているフランス学会と東京社会学研究会の共催で、デュルケム十周年祭が開かれ、そこで当時東京日仏会館フランス学長のシルワ゛ン・レヰ゛、宇野円空、…

古本夜話932 内田老鶴圃、『チ氏宗教学原論』、内田魯庵訳『罪と罰』

前々回の『自殺論』の訳者として、東北帝大で社会学講座を担当していた鈴木宗忠の名前を挙げておいたが、それに先立つ大正五年に、『チ氏宗教学原論』を早船慧雲と共述刊行している。これは内田老鶴圃からの出版で、手元にあるのは菊判上製四七〇余ページの…

古本夜話931 北村寿夫『笛吹童子』と宝文館「ラジオ少年少女名作選」

フランス社会学などの話が続いてしまったので、ここで箸休めの一編を挿入しておきたい。それは前回宝文館にふれたことに加え、浜松の典昭堂で、戦後に宝文館から刊行された北村寿夫『笛吹童子』全三巻を入手したことによっている。 これは昭和二十九年に刊行…

出版状況クロニクル135(2019年7月1日~7月31日)

19年6月の書籍雑誌推定販売金額は902億円で、前年比12.3%減。 書籍は447億円で、同15.5%減。 雑誌は454億円で、同8.9%減。その内訳は月刊誌が374億円で、同8.0%減、週刊誌は80億円で、同12.9%減。 返品率は書籍が43.4%、雑誌は44.7%で、月刊誌は44.8%、週刊…