2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧
前回の新栄閣と石渡正文堂の奥付を見ていると、印刷者が石野観山、印刷所が福寿印刷株式会社と共通していることに気づく。本連載194で既述しておいたように、石野と印刷所は成光館の出版物の多くを担当していたことから、特価本業界向けの印刷を得意とし…
前回の成光館に関連する出版を続けて取り上げてみる。『ロシア文学翻訳者列伝』の硨島亘から、未入手だった関東大震災後の大正期の翻訳書三冊の恵贈を受けた。それらはモオパッサン、大澤貞蔵訳『女の戯れ』(新栄閣、大正十三年)、レオンスアルシイ、青柳…
前回ようやくデイヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』に言及できたので、それに関連してもう一編書いてみたい。 一九八〇年代において、ロードサイドビジネスの隆盛によって形成され始めた郊外消費社会の風景の中で、私はその起源を求め、七〇年代に読ん…
特価本業界における成光館の出版活動、及び梅原北明人脈や宮武外骨や中山太郎とのつながりについて、前回も含め、本連載194などでも既述してきた。この他にも多くの出版人脈が成光館へと流れこみ、その全体像は明らかでないにしても、驚くべきほどの多種…
前回の堀内新泉のように、いくつかの立項や言及が見られる作家はまだ幸運だといえるのかもしれない。これもかなり長きにわたって気にかけているのだが、まったく手がかりが浮かび上がってこない作家がいて、それは小川霞堤である。その名前を知ったのは岡田…
一九八〇年代にビデオの時代が到来し、それに伴うレンタル店の増殖によって、多くの未知の外国映画を観ることができるようになった。それらの監督の中で、とりわけ私を魅了したのは二人のデイヴィッドである。その一人のクローネンバーグについては本連載1…
前回に続き、磯部甲陽堂の出版物に関して、もう一編書いておきたい。最近になって浜松の時代舎で、三五判箱入の堀内新泉『人間百種百人百癖』なる一冊を入手しているからだ。同書について、新泉は「序」で、次のように述べている。 現代に成功せんと欲する者…
本連載319でリストアップした、明治四十年時点での特価本業界の流通や販売に携わる十四の取次や書店の中に、磯部甲陽堂があった。この磯部甲陽堂に関しては『全国出版物卸商業協同組合三十年の歩み』の中で、音曲本、どどいつ、小唄などの本を盛んに出版…
もう一本、映画を取り上げてみる。黒沢清も多くのVシネマを送り出し、彼自身が命名した「日本のジャン・ポール・ベルモンド」である哀川翔とのコラボレーションで、九〇年代半ばからの「勝手にしやがれ!!」六部作、「復讐」と「修羅」の各二部作などへと結…
前々回の尚栄堂のように東京書籍商組合員『書籍総目録』に姿を見せていれば、出版物を通じてその時代における出版社のイメージとアウトラインをつかめるのだが、特価本業界の出版社は東京書籍商組合に加盟していないところも多い。その一方で『全国出版物卸…
前回 吉田俊男の『奇美談碁』やその他の囲碁書にもふれたが、それこそ囲碁に関する出版物は実用書を一つの柱とする特価本業界の定番商品であり、明治時代から多くの刊行を見ていたと思われる。たまたまそのことを示す囲碁書を二冊入手したので、それを書いて…
(映画)(小説) 一九九〇年代のVシネマの隆盛は前回の三池崇史のみならず、多くの優れた映画監督を輩出させた。青山真治もその一人であり、最初に『Helpless』(九六年)を観て、これまでと異なる郊外のロードサイドの犯罪と物語の萌芽を感じた。しかしそれ…
出版状況クロニクル63(2013年7月1日〜7月31日)旧知の読者から連絡が入り、様々な情報を伝えてくれたのだが、それには本クロニクルを続け、最後まで見届けてほしいとの依頼も含まれていた。 彼は大手取次経験者なので、取次関係に限定して要約してみる。取…