2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
前回、堀江敏幸のフランスの『郊外へ』の水先案内人とでもいうべき一冊が、ドアノーの『パリ郊外』だったことにふれたので、今回はこの写真集に言及してみたい。なお日本版としてリブロポートの『パリ郊外』(堀内花子訳)を挙げておいたが、これは写真構成…
またしても飛んでしまったが、もう一度西條八十を取り上げたい。大正時代に本連載380の『砂金』によって、いってみれば、象徴主義的抒情詩人としてデビューした西條八十は関東大震災を経て、昭和に入ると抒情、童謡詩人として確固たる地位を占め、また「…
これは私たちの時代の出来事に属するし、戦後編でと考えていたのだが、三回にわたって矢川澄子の『野溝七生子というひと』に言及し、そこに矢川自身の「散(あら)けし団欒(まどい)」とその投影をも見たばかりなので、ここで続けて書いておくべきだろう。 私が…
前回ふれた、マチュー・カソヴィッツ監督の『憎しみ』が公開されされた一九九五年に、日本でもフランスの郊外をテーマとする一冊の書物が出現した。それは堀江敏幸の『郊外へ』であり、同書に収録された十三編はフィクション的散文でつづられていて、フラン…
前回少しふれたように、矢川澄子が『野溝七生子というひと』を彼女の評伝というよりも、野溝と鎌田敬止と出版の物語のように仕立てたのは、前提としてひとつの出版社をめぐる物語があり、それが範となっていたからだと思える。しかもその出版社はクララ社と…
矢川澄子の『野溝七生子というひと』はタイトルからすれば、当然のことながら野溝の評伝、もしくは彼女に関する回想記のような印象を与える。だが前回記述しておいたように、この一冊の半ばは「鎌田敬止というひと」とその出版の仕事に向けられている。また…
現代の郊外の起源と見なすことができる田園都市の系譜をイギリス、アメリカとたどってきたので、続けてフランスへと飛んでみたい。フランスの現代の都市計画見取図といっていいル・コルビュジエの『ユルバニスム』(樋口清訳、鹿島出版会)にもその痕跡は明…
前回天人社の鎌田敬止については名前を挙げるだけにとどまってしまったが、彼もずっとプロフィルがつかめない人物で、それがようやく判明したのはまったく偶然ながら、矢川澄子の『野溝七生子というひと』(晶文社)を読んだことによっている。何と鎌田は野…
本連載388の『新進傑作小説全集』とほぼ同時期に、天人社から『現代暴露文学選集』全十巻が出ている。実はこの編集者が『平凡社六十年史』に、『大百科事典』編集部のベストメンバーの一人「天人社出身の鎌田敬止」として姿を見せている。この選集は『日…
ロンドン郊外で最初の田園都市レッチワースの開発が始まったのは一九〇三年であり、それからすでに一世紀以上を経ていることになる。イギリスを起源として欧米へも伝播していった田園都市計画は、その後どのような行方をたどったのだろうか。日本の戦後の団…
ずっと平凡社の円本にふれてきたが、ここで『社会思想全集』も取り上げておきたい。これは何度か断片的に言及しているけれど、まとまった一文は書いていないからでもある。それに『社会思想全集』は春秋社の『世界大思想全集』と並んで、岩波文庫の社会科学…
大正時代にヨーロッパから新しい文学、思想、宗教などが明治時代よりもはるかに速く、しかも広範に流入し、それらは出版物として具体化され、さらに昭和円本時代に全集化、シリーズ化されたことを既述してきたが、それは科学も例外ではなく、昭和五年に平凡…
出版状況クロニクル72(2014年4月1日〜4月30日) 前回、3月は学参期で、書店売上は最も伸びる月であるけれど、マイナスが続いているために、出版物推定販売金額の2000億円割れは必至ではないかと記しておいた。それは適中し、13年の2059億円に対し、前年比5.…