出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1161 正宗白鳥『人を殺したが・・・』と井伏鱒二

ハイネ『ハルツの旅』の巻末広告「聚芳閣の長篇小説」という一ページを見ていて、紅野敏郎『大正期の文芸叢書』における「新作家叢書」に連想が及んだので、そのことを書いてみよう。 まずそのうちの九作を挙げてみる。 1 中西伊之助 『一人生記録』 2 近藤…

古本夜話1160 ハイネ、古賀龍視訳『ハルツの旅』

金星堂と聚芳閣がリンクする一編を書いておこう。 大正十四年に聚芳閣からハイネの散文詩集『ハルツの旅』が古賀龍視訳で刊行されている。これはハイネが一八二四年にハルツ地方を旅した際に書かれた、詩も含んだ「散文」旅行記といっていい。詩だけのほうは…

古本夜話1159 ヒユネカア『エゴイスト』と「海外芸術評論叢書」

聚芳閣は前回の『院本正本日本戯曲名作大系』とほぼ同時期に、「海外芸術評論叢書」を刊行している。ただこの「叢書」は『全集叢書総覧新訂版』や紅野敏郎『大正期の文芸叢書』にも見当らないこともあり、全巻点数や明細が確定されていない。 (『院本正本日…

古本夜話1158 聚芳閣『院本正本日本戯曲名作大系』と三島才二

本探索1116の『校註日本文学大系』から、ずっと「大系」シリーズをたどってきたが、もう一冊あるので、それも書いておこう。それは『院本正本日本戯曲名作大系』第一巻で、大正十四年に足立欽一の聚芳閣から刊行されている。足立と聚芳閣に関しては拙稿「足…

古本夜話1157 征矢野晃雄『聖アウグスチヌスの研究』、長崎次郎、長崎書店

前回のヤコブ・ベーメ『黎明』の訳者の征矢野晃雄は『キリスト教大事典改新訂版』(教文館、昭和四十三年)に立項されていなかったけれど、その後版と考えられる『日本キリスト教歴史大事典』(同前、同六十三年)において、立項を見出すことができる。それ…

古本夜話1156 南原実『ヤコブ・ベーメ 開けゆく次元』と征矢野晃雄訳『黎明』

確か最初にヤコブ・ベーメの名前を知ったのは、コリン・ウィルソンの『宗教と反抗人』(中村保男訳、紀伊國屋書店、昭和四十三年)で、その第一章がベーメに当てられていたからだ。だがその内容に関してはベーメが靴屋で、著者のウィルソンも靴屋の息子とい…

古本夜話1155 筑摩書房とベルトラム『ニーチェ』

本探索1149の茅野蕭々『独逸浪漫主義』と同じく、高橋巖が『ヨーロッパの闇と光』で言及しているベルトラムの『ニーチェ』は筑摩書房から浅井真男訳で、昭和十六年十一月に刊行されている。私の手許にあるのは十七年二月の再版で、太平洋戦争が迫りつつある…

古本夜話1154 村上静人、赤城正蔵、「アカギ叢書」

前回『ハウプトマン名作選集』が村上静人訳編によることを既述しておいたけれど、村上は『日本近代文学大事典』に立項されておらず、「アカギ叢書」の訳者の一人としての記載を散見するだけである。 (『ハウプトマン名作選集』) それに加えて、「アカギ叢書…

古本夜話1153 『ハウプトマン名作選集』と『寂しき人々』

前々回の「独逸文学叢書」に収録予定だったハウプトマン『ソアーナの異教徒』(奥津彦重訳)は、昭和三年に岩波文庫として刊行された。この特異な小説に言及するつもりでいたが、その岩波文庫が紛れてしまい、出てこないので、代わりに『ハウプトマン名作選…

古本夜話1152 岩波書店『ストリントベルク全集』

岩波書店としては関東大震災直後の企画だが、前回の「独逸文学叢書」と併走するように刊行され、同じく岩波文庫へと移ることで中絶してしまったのは『ストリントベルク全集』だったと思われる。 (「独逸文学叢書」、『世襲山林監督』) その一冊である『大…

出版状況クロニクル157(2021年5月1日~5月31日)

21年4月の書籍雑誌推定販売金額は1073億円で、前年比9.7%増。 書籍は581億円で、同21.9%増。 雑誌は492億円で、同1.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が420億円で、同0.7%減、週刊誌は72億円で、同8.2%減。 返品率は書籍が27.5%、雑誌は40.3%で、月刊誌は39.3%、週…