2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
小田光雄亡き後も続けてきた「古本夜話」=「近代出版史探索」の旅も、終着駅にたどり着けないまま、1563回で 途中下車となってしまいました。 本人もどんなにか心残りだったと思います。 ブログ「出版・読書メモランダム」は2009年から15年間の長い旅路でし…
前回の石川達三『包囲された日本』において、昭和十四年の日本軍の海南島上陸が仏印にとって大いなる衝撃であったことを見てきた。そこに付された地図にはインドシナ半島の仏印とトンキン湾をはさんで位置する海南島があり、小出正吾の『椰子の樹かげ』の見…
前回、大東亜戦争下における白揚社の『世界地理政治大系』が小牧実繁による「日本地政学宣言」の影響下に企画編纂され、そこに蘭印、仏印なども含まれていたことにふれた。 これもたまたまだが、石川達三の「仏印進駐誌」である『包囲された日本』(集英社、…
前回は引かなかったけれど、小出正吾『椰子の樹かげ』の「はしがき」には「蘭印生活」「蘭印ジャワ」「蘭印旅行」などのタームが使われている。それに照応するように、表裏の見返しには見開き地図が掲載され、日本、アジア大陸における満州国、支那、仏印、…
浜松の時代舎で、小出正吾の『椰子の樹かげ』を入手してきた。菊半上製三〇一ページの一冊だが、「ジャワの思ひ出」というサブタイトルも付された表紙挿画は三雲祥之助による南洋の農村風景を描いたもので、水色を基調として瑞々しく、戦時下の出版のように…
前回の『比島戦記』の後日譚とでもいうべき記録があり、それは今日出海の『山中放浪』(日比谷出版社、昭和二十四年、後に中公文庫)として刊行されている。 (日比谷出版社) (中公文庫) 今は昭和十六年の徴用により、陸軍報道班員として尾崎士郎、石坂洋…
『比島戦記』の第二部「戦塵抄」において、石坂洋次郎、今日出海、三木清たちと並んで、寺下辰夫が「比島遠征詩抄」を寄せている。それは「リンガエン湾敵前上陸」「戦線素描」「バタアン激戦戡定の朝」「戦野傷心」の四編の詩からなり、「戦線素描」から引…
浜松の典昭堂でもう一冊、戦記物を入手してきたばかりなので、これを続けて書いておこう。 それは比島派遣軍報道部編『比島戦記』で、昭和十八年に文藝春秋社から刊行されている。A5判上製、裸本で褪色しているが、ジュートによる造本は横書き題簽タイトルが…
本探索1547『新興日本軍歌集』の版元として、帝国在郷軍人会本部を挙げておいたが、そのような軍人出版社絡みで考えてみると、了承される円本企画もあるので、ここで取り上げておきたい。 それは戦記名著刊行会の『戦記名著集』で、編者は戦記名著刊行会編輯…
やはり昭和十三年に「菊岡久利詩集」と銘打たれた『時の玩具』が刊行されている。それは四六変形判並製の一冊だが、表紙は「詩集」らしからぬ装幀で、下町を背景として、そこで暮らす人々のどよめきが伝わってくるような絵が使われている。その扉裏には題簽…
これも浜松の時代舎で見つけたのだが、菱山修三詩集『荒地』を購入してきた。菱山はヴァレリーの訳者として知っていたし、中井英夫の『虚無への供物』におけるエピグラフの「海にささげる供物にと/美酒少し海に流しぬ/いと少しを」も菱山による訳だったよ…
これも浜松の時代舎で見つけたものだが、龍星閣の本がもう一冊あるので、続けて取り上げておきたい。それは佐藤惣之助の『笑ひ鳥』で、四六判函入、上製三二六ページの一冊である。本探索1518で『佐藤惣之助全集』にふれた際にはこのような随筆集が刊行され…