出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1297 大庭柯公『露国及び露人研究』

本探索1288の荻野正博『弔詩なき終焉』を読むことで、田口運蔵が大庭柯公問題に深く関わっていたことを教えられた。これは大庭と田口の大正十、十一年のモスクワ滞在が重なっている事実からすれば、意外ではないけれど、荻野による田口の評伝の刊行によって…

古本夜話1296 日本評論社『日本歴史学大系』と清水三男『日本中世の村落』

出版は前々回の「社会科学叢書」から十年以上後になるが、続けて同じく日本評論社の『日本歴史学大系』を取り上げておきたい。この『大系』のことは清水三男の『日本中世の村落』を入手したことで知ったのである。本体の裸本は背のタイトルも読めないほどだ…

古本夜話1295 大鎧閣、北一輝『支那革命外史』、平凡社『世界興亡史論』

大鎧閣は前回の石川三四郎『改訂増補西洋社会運動史』に先行して、大正六年に北一輝の『支那革命外史』を出版している。 それを知ったのは、みすず書房の『北一輝著作集』第二巻所収の『支那革命外史』に付された「本巻のテキストについて」によってだった。…

古本夜話1294 日本評論社「社会科学叢書」、石川三四郎『社会主義運動史』、大鎧閣『改訂増補西洋社会運動史』

前回のシンクレア『資本』の表紙カバーの裏面はめずらしいことに、日本評論社の一八〇冊に及ぶ出版目録となっていて、ここで初めて目にする書籍も多く、あらためて日本評論社も全出版目録を刊行していないことを残念に思う。それだけでなく、裏表紙は「社会…

古本夜話1293 シンクレア、前田河広一郎訳『資本』

前回の『セムガ』の前田河広一郎はやはり昭和五年に、同じ日本評論社からアプトン・シンクレア『資本』を翻訳刊行している。両者が併走するかたちで出版されたことは裏表紙見返しの『日本プロレタリア傑作選集』の広告が伝えていよう。そのリストは本探索1…

古本夜話1292 前田河広一郎『セムガ』と田口運蔵

ここで日本へと戻る。本探索1253の日本評論社『日本プロレタリア傑作選集』に前田河広一郎の『セムガ』があったことを覚えているだろうか。 この『セムガ』は入手していないけれど、「セムガ」はタイトル作の他に「長江進出軍」「太陽の黒点」を収録した作品…

古本夜話1291 ボリス・スヴァーリン、ジョルジュ・バタイユ、セルジュ『一革命家の回想』

『エマ・ゴールドマン自伝』において、最も長い第52章「ロシア一九二〇-二一年」のところに、ロシアを訪れてきたヨーロッパラテン諸国共産党のグループへの言及がなされ、その中でも、フランス共産党員のボリス・スーヴァーリーヌが「最も思慮深く鋭い質問…

古本夜話1290 エマ・ゴールドマンとシェイクスピア・アンド・カンパニイ書店

『エマ・ゴールドマン自伝』において、前回既述しておいたように、スペイン内戦やガルシア・オリベルとの関係はふれられていない。それはこの『自伝』がクライマックスというべき第52章「ロシア一九二〇~二一年」で実質的に閉じられているからである。彼女…

古本夜話1289 『エマ・ゴールドマン自伝』をめぐって

前回のインターナショナリスト田口運蔵をめぐる様々な人脈などにリンクして、拙訳『エマ・ゴールドマン自伝』を例にとり、承前的な数編を書いておきたい。 これから田口に関連する日本、アメリカ、ロシア、ドイツなどの社会主義人脈に分け入っていくつもりだ…

古本夜話1288 荻野正博『弔詩なき終焉―インターナショナリスト田口運蔵』

少し飛んでしまったが、本探索1272でふれたトロツキイ『自己暴露』の実質的な翻訳者と思しき田口運蔵に関して、『近代出版史探索Ⅱ』389のウェルズ『生命の科学』の訳者の一人としても挙げているが、荻野正博『弔詩なき終焉』(御茶の水書房、昭和五十八年)…

古本夜話1287 森戸辰男『クロポトキンの片影』と『大原社会問題研究所雑誌』

『日本アナキズム運動人名事典』は「まえがき」などで明言されていないけれど、『近代日本社会運動史人物大事典』におけるアナキスト人名選択と立項の不足不備の問題を発端として、企画編纂へと至っている。 それもあって、前回の若山健治の立項もあるわけだ…

出版状況クロニクル170(2022年6月1日~6月30日)

22年5月の書籍雑誌推定販売金額は734億円で、前年比5.3%減。 書籍は407億円で、同3.1%減。 雑誌は327億円で、同7.9%減。 雑誌の内訳は月刊誌が268億円で、同7.4%減、週刊誌は58億円で、同10.2%減。 返品率は書籍が38.8%、雑誌は45.4%で、月刊誌は45.8%、週刊…