誰も知らない自治会の多様性
小田: Aさん、今回は 自治会法人化とそれに伴う公会堂新築計画 をテーマとして話してみたいと考えています。
でも話を始める前に、これまでの経緯を要約してみます。
自治会を法人化し、老朽化した公会堂の新築のための助成金一千万円を市に申請し、自治会長の役割を終えた。だがそうした経緯と事情から公会堂新築準備員会を設立し、その監事を引き受けざるを得なかった。
A : そうだってね。 静岡県のそちらの市では一千万円しか助成金が出ないことに、いささか驚いた。なぜならば、こちらでは建築費の 4 分の 3 が助成金として出されるからだ。
小田: それは初めて聞く。もっとも都市圏のそちらと静岡県では人口も経済規模もちがうから、それが公会堂新築の際の助成金にも反映されているのだろうね。ということは県によって助成金額は異なる。
A : そこで考慮すべきは自治会問題にしても、全国的に見れば、30万あるという自治会にはそうした助成金だけでなく、多種多様で、ものすごく格差もあるということだ。それは各種の経済データには表われていない。自治会費のことだって、こういうふうに話してみて、それぞれの金額が出され、ちがいを実感したわけだから。
小田: それは本当にそうだし、我々にしても広く自治会に関するデータをつかんでいるとはいい難い。私の市は自治会数は300で、そのうちの 3 分の 1 が法人化されているが、あなたのほうは800で、その半分ではないかという。それでも法人化を通じて、共通の問題とこれまでは明らかでなかった事柄が浮かび上がってくる。私のところもその典型だと思う。だが全国的に法人化がどれほど進んでいるのかはわからない。
A : それでも地方自治会法改正によって、平成3年から自治会名義の不動産などが保有できるようになったのは大きいんじゃないかな。
改正された地方自治会法第260条の2第1項には「町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の許可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と定めることになった。
それまでは自治会は法人化でなかったために、地方自治会から見ても社会的な存在として認められておらず、また任意団体でもあり、法的には幽霊のような存在でもあった。そちらに確かに法人化の設立認定チャートがあったと思いますので、それを示しておいたほうがいい。
小田: これですね。
A : そうそうこのチャートだ。戦後半世紀を経て、自治会もここまできたということになる。そこで我々は自治会長を経験したわけだから、そうした自治会の変革の動向に否応なく対峙しなければならなかった。
小田さんのところの自治会は、このチャートを実行していくプロセスの前半の法人化申請をして、すでに法人格を取得していますよね。だから今回の対談の目的はその後半の法人化以後の問題に関してなんでしょう。
小田: 実はそうなんだ。だがこの問題も調べていくと、戦後と市の関係のみならず、政治と宗教、地方史と教育委員会などが絡んでいて、とても錯綜している。私にしても、真相に至るまでに 3 年ほどを要している。
A : やはりそちらを優先させようよ。当初、新地方自治会の成立、市町村合併、地方分権、財政改革などもたどった上で、そのことに言及していけばと考えていたけれど、そうしたコアの問題から始めたほうがいいんじゃないかな。自治会をめぐる、それらの歴史は後回しにしてもかまわないし。
小田: そう言ってもらえると有難い。確かにそれが今回の話の核心だし、私のところだけの問題ではなく、多くの自治会でも起きている事柄かもしれないので。