「自治会、宗教、地方史」
昭和50年代後半における新住民の急増、または郊外社会の誕生と地域の祭の始まり [編者註:今回は、第一部の No. 5 に挿入することを意図して書かれたものの、破棄されたらしい別稿を掲載します。まず、No. 5 の関連箇所をあらためて提示し、その後、別稿を…
自治会法人 vs 宗教法人、または有名無実化される「社会通念」 A : でも話を聞いて、あなたが自治会と老人憩の家などをめぐるトータルな話をしているにもかかわらず、弁護士のほうは何か誠実な対応をしているような感じはしない。 不動産屋の証言にしても、…
秘匿された「形式的」な文書 A : おそらくそうした事実は都市部や市街地では考えられないかもしれないが、『焼肉ドラコン』という映画を観ると、何となくわかるような気がする。 これは在日韓国人一家の物語なのだが、舞台は郊外の部落で、そこで両親は焼肉…
当時の社会的通念 小田 : そうした事柄に加えて、この「貸借証書」を入手したことによって、新たな事実が浮かび上がってきた。 ひとつはこの文書を作成した人物が判明したことだ。以前 、図書館側が棚や什器などの出入りの民間企業を「業者」とよんでいるこ…
過去の経緯の文書の曖昧さ 小田 : そう、問題はそこなんだ。私の遺族に肩代わりさせるわけにはいかないので、やはり自治会長に引き受けてもらうしかない。だがそこで効いてくるのは450坪の担保で、自治会としても実績のない最初の借り入れだから、保証人を…
自治会の高齢化と資金集めの難しさ 小田 : でもそれは勘弁してほしいと思うわけだ。それだけ広い土地だから、新公会堂の建設に合わせ、ゴミ置き場も整備し、プラスチックゴミや空きビン、空き缶の回収などもスムーズに処理できるようにしたいと考えていたか…
事実上は共同所有/登記上は個人所有の450坪の土地の財産価値 小田 : しかしこれは住職が個人として弁護士に依頼したわけではなく、宗教法人として行なったものなので、弁護士報酬にしても、宗教法人名で支払われる。それゆえに弁護士を立てるためには、檀…
根本的な問題解決にはならない弁護士頼み A : それはよくわかるよ。曲がりなりにも言葉によって成り立つ仕事をしているのだから、法律にたよるべきではないし、何よりも話し合いで、ことの次第を明らかにするべきなんだ。 それに登記にしても併設にしても、…
プロセスのオープン化/コンプライアンスの欠如 小田 : ところがそうではなく、先代の取り巻きにしても、それを知らされていなかった。その一方で、O寺のほうは昭和58、60年の二度にわたって登記され、あたかも老人憩の家はO寺の付属物のような扱いで、実…
藪の中の真相、密室の出来事 小田 : こ れも要約し、同じナンバーによって対置してみます。これは寺の「回答」として出されている。 1.貴自治会の在り方について何か物を申し上げる立場にないと考えていますので応答を差し控える。 2.長年にわたり、宗教…
法的問題と道義的問題 小田 : そのことはひとまずおくとして、弁護士の「受任通知」に対して、「宗教法人法抵触と道義的問題について」という質問状を送った。それを簡略に箇条書きにして挙げてみます。 1.長期にわたる寺と自治会の関係は旧来の寺と檀家の…
登記事実には記されていないこと 小田 : そう、登記事実を至上とするのであれば、他の自治会が行なった、法人化に際しての有力者から自治会名義への移譲はまったくありえないことになる。(編注:登記の経緯については「No. 12 第一部 10 記録として残る登…
自治会問題の弁護士化(歴史的経緯と道義的責任/登記の整合性) 小田 : それはともかく、あなたもご察しのように、2カ月経っても、何の返答も戻ってこなかった。そこでしょうがないから、文書として質問状を出した。もちろん自治会長と建設委員会監事には…
自治会固有の歴史と性格から生じるトラブル(継承されなかった経緯) 小田 : そのようにして建設準備委員会を開いたのだが、出席者の中にはJ寺の檀家総代や取り巻きもいて、現住職を呼ぶべきだと言い出した。 例によって私も浅はかだから、住職は地場の人…
自治体法人としての借り入れ(保証人を引き受ける覚悟) A : うーん、私のところは都市型郊外の自治会だから、そちらほど歴史もないし、宗教や人間関係や土地問題も入り組んでいない。何か聞けば聞くほど迷路に入っていくような感じだし、私も数年間自治会…
記録として残る登記の事実と、記録として残らない真実 小田 : それから総評系の弁護士相談に際し、登記の事実は動かせないとの判断を下した後で、実は自分のところの自治会も、やはり複数の有力者名義だったので、法人化に際し移譲してもらったことを話して…
法人化以前の自治会名義で登記できなかった土地 小田 : 助成金が下りるのは令和15年以降だと考えていたので、私としては助成金を申請するだけで、実際の新公会堂建設は後の自治会長たちに委ねればいいと思っていた。 もちろんそのための自治会自己資金の確…
政教一致的な自治体のツケ 小田 : まさにそうだね。だからその事実を直視しなければならないし、自治会の人たちのメンタリティも大きく変わっていった。それを体現していたのが先代であったと思われるし、様々な登記事実にも反映されている。A : それは想…
農村的相互扶助の自治会と、特権階級的な寺の微妙な関係 小田 : こちらのローカルな話題ばかりで恐縮なんだけど、これは避けて通れないので、順を追って話してみます。 発端は昭和19年の熊野灘を震源地とする東南海大地震で、静岡県中西部に大きな被害が生…
サードプレイス、コモンとしての寺 小田 : ただ当自治会の場合は補正説明が必要なので、簡略にチャートしておきます。 これらは調べてみて、すべてが寺の「先代」絡みで進められたことがわかる。彼は寺の跡継ぎで、戦後に住職となっていたが、昭和30年代末…
老人憩の家、または福祉の下請けとしての自治会 小田 : ところが今回はそうとばかりいえない。少しばかり踏みこんだ話をしてみたいので、またしてもあなたにお願いした。Aさんは実物を見ていないこともあって、よく説明しなければならない。 自治会のO寺…
福祉国家の末端組織としての自治会と老人憩の家 A : 高度成長期の過程で、福祉国家のかたちが準備されつつあったことを伝えているように思われる。小田 : そうした福祉国家の萌芽のかたちが老人憩の家だとは連想できなかったけれど、そういわれてみれば、…
現代の自治会/高度経済成長期における自治会 小田 : それは実感しているよ。自治会長になって、これまで訪れたこともなかった30代の人たちのマイホームにいくと、ホテル暮らしのような設備も整った生活で、生垣もなく、人工芝の上に自家用車が何台も並んで…
コモンとしての自治会 A : 法人化に伴う土地登記の問題では私も苦労したが、あなたのところは私の比ではないのでしょう。私の推測によれば、小田さんは出版業界や図書館の問題と同じく、あなたならではの私立探偵的な(プライベートアイ)捜査によって、謎…
誰も知らない自治会の多様性 小田: Aさん、今回は 自治会法人化とそれに伴う公会堂新築計画 をテーマとして話してみたいと考えています。 でも話を始める前に、これまでの経緯を要約してみます。 自治会を法人化し、老朽化した公会堂の新築のための助成金一…
補遺② 複合的な集団としての自治会 A: それらに関しては後で語ってもらうことにして、自治会のことに戻ります。 自治会のことは地域問題とも考えられるので、山下祐介『地域学入門』(ちくま新書、令和3年)を読んでみた。山下は村や町を地域と見なし、そこ…
補遺① 法人化される自治会/「故郷」としての自治体 A: これは金子仁『新地方自治法』(岩波新書、平成11年)で教えられたのだが、平成11年の地方自治法の大改正は明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革に位置づけられるという。それは従来の中央集権的な行政…
読者の皆様へ 小田光雄の遺した【自治会、宗教、地方史】の原稿は、小田啓子と息子小田透の共同編集によって、お届けすることになりました。ご愛読いただければ幸いです。~・~・~・~・~ 「前口上」 小田光雄の遺稿となった【自治会、宗教、地方史】は、…
読者の皆様へ 小田光雄亡き後もブログをご愛読いただき、誠にありがとうございました。 小田光雄が亡くなったのは2024年6月のことで、本人不在のまま、あまりにも長く引っ張り過ぎてしまったかと思いますし、ここで終了にしようかと考えました。 しかしなが…