2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧
前回の『ツルゲネエフ全集』の生田春月訳『春の波』は入手していないが、それにあたる松本苦味訳『春の水』は見つけている。『近代出版史探索Ⅱ』249で、金桜堂の「パンテオン叢書」と松本苦味訳、ゴオリキイ『どん底』を取り上げ、内藤加我の金桜堂の前身が…
新潮社はやはり大正七年から『ツルゲエネフ全集』全十巻を刊行している。それには前史があって、佐藤義亮は「出版おもひ出話」(『新潮社四十年」所収』で、明治四十年頃に外国文学の翻訳出版をツルゲーネフから始めようと思ったと述べ、次のように続けてい…
浜松の時代舎で、勝本清一郎の『前衛の文学』を入手してきた。これは昭和五年に新潮社ら刊行されたもので、『日本近代文学大事典』の勝本の立項において、書影と解題も見える。タイトルと並んで、装幀が村山知義であることはこの一冊の時代的位相を物語って…
やはり籾山書店から大正六年に吉井勇の歌集『こひびと』が出されている。これも菊半截判で、一ページに二首が収録され、最初の一首からして「恋に生き恋に死ぬべきいのちぞと思い知りしも君あるがため」とあり、まさにタイトルにふさわしいオープニングとい…
これも浜松の時代舎で購入してきた一冊だが、マーテルリンク氏作、宮崎最勝解説『青い鳥』で、大正十四年に三星社出版部からの刊行である。 『近代出版史探索Ⅱ』281と227において、三星社が三陽堂、東光社と並んで、植竹書院の紙型と出版物を引き継いだ特価…
前々回の籾山書店の「胡蝶本」と併走するように、大正三、四年に植竹書院から「現代代表作叢書」が刊行されていた。そのラインナップを示す。 1 森田草平 『煤煙』 2 鈴木三重吉 『珊瑚樹』 3 谷崎潤一郎 『麒麟』 4 田山花袋 『小春傘』 5 正宗白鳥 『まぼ…
近代出版史や文学史において、籾山書店が高浜虚子の俳書堂を引き継ぎ、「胡蝶本」を刊行したことは知られていても、自費出版を手がけていた事実はそれほど周知でないと思われるので、続けて書いておこう。しかもしそれは堀口大学の詩集などで、彼は大正七年…
俳書堂編『俳句の研究』と題する菊判上製、五六八ページ、一円五十銭の一冊が手元にあるけれど、とても疲れた裸本で、背文字はほとんど読める状態にはない。 冒頭の俳書堂主人が記す「凡例」によれば、本書は明治三十一年十月の東京版『ホトトギス』第二巻第…
前回、三教書院の「いてふ本」を取り上げたからには、籾山書店の「胡蝶本」にもふれておくべきだろう。前者は袖珍文庫の国文学叢書、後者は文芸書の代表的叢書で、そのアイテムはまったく異なっているけれど、いずれも明治末期から大正にかけての刊行であり…
本探索1135の金星堂=土方屋の福岡益雄に先駆けるようにして、明治末に大阪から出て、やはり東京で国文学叢書などの出版社を興した人物がいる。 それは鈴木種次郎で、出版社は『近代出版史探索Ⅱ』304の三教書院、国文学叢書は「いてふ本」という小型本とされ…
21年5月の書籍雑誌推定販売金額は775億円で、前年比0.7%増。 書籍は420億円で、同0.9%減。 雑誌は355億円で、同2.6%増。 雑誌の内訳は月刊誌が290億円で、同1.1%増、週刊誌は65億円で、同9.5%増。 返品率は書籍が37.5%、雑誌は44.3%で、月刊誌は44.5%、週刊…