出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1357 宮嶋資夫とゾラの『金』

これは『宮嶋資夫著作集』(全八巻、慶友社、昭和五十八年)を入手するまで、その作品の存在も書かれていたことも知らなかったのだが、『宮嶋資夫著作集』第五巻に唯一の長編小説『金』が収録されていたのである。この作品は宮嶋が『英学生』の広告取りや編…

古本夜話1356 スタンダール、阿部敬二訳『アンリ・ブリュラールの生涯』、冨山房百科文庫

宮嶋資夫の自伝といっていい『遍歴』には男女、有名無名を問わず、多くの人たちが登場している。しかし書かれたのは戦後の昭和二十五年だが、たどられているのは大正から昭和戦前のことなので、プロフィル不明の人物も少なくない。ないものねだりになってし…

古本夜話1355 飲食物史料研究会編『趣味の飲食物史料』

浜松の時代舎で、飲食物史料研究会編『趣味の飲食物史料』という一冊を見つけ、購入してきた。大阪の公立社書店を版元として、昭和七年に刊行されている。宮嶋資夫たちと『飲料商報』の関係をトレースしてきたこともあるし、私以外にはこのような書籍を取り…

古本夜話1354 百瀬晋、高木六太郎、『飲料商報』

宮嶋資夫の『遍歴』は本探索1289の『エマ・ゴールドマン自伝』ではないけれど、登場人物人名事典を編んでみたいという誘惑にかられるが、それは断念するしかない。そうはいっても『日本アナキズム運動人名事典』が代行してくれる人々も多いからだ。それでも…

古本夜話1353 宮嶋資夫と大下藤次郎

宮嶋資夫の『遍歴』は戦後になってからの回想で、それぞれの確固たる証言や資料に基づくものではなく、彼が思い出すままに書いていった自伝の色彩が強い。そのために時系列、人間関係、社会主義とアナキズム人脈なども交錯し、そこには出版資金、編集、翻訳…

古本夜話1352 宮嶋資夫『遍歴』と古田大次郎『死の懺悔』

宮嶋資夫の『遍歴』におけるアナキズムから仏門への転回点をたどってみると、その発端は関東大震災から昭和初年にかけてのことだったと思われる。 実際に『遍歴』のタイトルが物語るように、宮嶋はこの自伝的著作を「巡礼と遍歴」の章から始め、関東大震災か…

古本夜話1351 笹井末三郎と柏木隆法『千本組始末記』

宮嶋資夫の『禅に生くる』では彼を天龍寺へと誘ったのは「笹井君」で、それをきっかけにして宮嶋はその毘沙門堂の堂守となり、仏門の生活へと入っていったのである。 この「笹井君」は笹井末三郎のことで、柏木隆法によって『千本組始末記』(海燕書房、平成…

古本夜話1350 宮嶋資夫と『禅に生くる』

神近市子の近傍にいた宮嶋資夫の『坑夫』は復刻版が出されていないようなので、『日本近代文学大事典』における書影しか見ていないが、その後、彼が仏門に下り、「蓬州」として著した『禅に生くる』は浜松の時代舎で入手している。四六版上製函入で、昭和七…

古本夜話1349 八木麗子と宮嶋資夫『坑夫』

神近市子の夫の鈴木厚の陸軍画報社との関係から、少しばかり迂回してしまったが、『神近市子自伝』に戻る。八木麗子に言及しなければならないからだ。神近は八木麗子、佐和子姉妹に関して『蕃紅花』の同人で、姉は『万朝報』の記者、妹は神田の英仏和高女の…

古本夜話1348 三つの『家庭雑誌』

もう一冊、博文館の雑誌があるので、これも取り上げておく。それは『家庭雑誌』で、大正十四年四月増大号である。菊判二〇八頁、編輯兼発行人は中山太郎治、すなわち『近代出版史探索』49などの中山太郎に他ならない。(『家庭雑誌』大正13年1月号) 表紙は…

出版状況クロニクル176(2022年12月1日~12月31日)

22年11月の書籍雑誌推定販売金額は915億円で、前年比4.2%減。 書籍は508億円で、同6.3%減。 雑誌は406億円で、同1.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が345億円で、同0.3%増、週刊誌は61億円で、同10.5%減。 返品率は書籍が34.7%、雑誌は40.4%で、月刊誌は39.3%、週…