2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧
またしても『現代商業美術全集』の「月報」のことになってしまうけれども、もう一編書いておきたい。第十巻『売出し街頭装飾集』所収の「商業美術月報」第六号に、吉田謙吉が「バラック装飾社時代」という一ページにわたる回想を寄せている。この事実はかつ…
郊外をめぐる問題として、カルトや宗教のことにも言及しなければと考えていた。日本と同様にアメリカにおいても、前回のディックの『市に虎声あらん』にみたように、カルトや宗教は必然的に寄り添うようなかたちで出現していた。ここで言及したいのはシャロ…
ドイツ人文化史家の近代照明史とでもいうべき『闇をひらく光』や『光と影のドラマトゥルギー』(いずれも小川さくえ訳、法政大学出版局)を読んで、日本の照明の歴史にも関心を覚え、それらの資料を古本屋で買い求めた時期があった。そのうちの一冊について…
アルスの円本時代の出版物として最も異色で先駆的といえるのは『現代商業美術全集』全二十四巻であろう。これはその後の美術デザインを始めとする多くの出版物の範となり、また広く実用的にも参照され、商業美術の現場にも大きな影響を与えたと思われる。こ…
たまたま新刊のフィリップ・K・ディック『市(まち)に虎声(こせい)あらん』(阿部重夫訳、平凡社)を読み、ひとつのミッシングリングがつかめたように思われたので、これから数回書いておきたい。それはこの小説のみならず、そこに付された阿部の「ディックの…
アルスは昭和十年代に「音楽大講座」全十二巻を刊行している。これは円本時代の「西洋音楽大講座」の焼き直しだと思われるが、そのうちの一冊『声楽と歌劇』を入手している。この時代の音楽書というと、ただちに思い出されるのが、第一書房による大田黒元雄…
前回の「写真大講座」第十二巻に、福原信三や森一兵と同じく「芸術写真総論」を寄せているのは中島謙吉である。しかしその文体というよりも語り口には、写真家としての福原や森たちとは異なり、いかにも概論といったニュアンスがつきまとっている。それは中…
前回に続いて、もう一冊写真集を取り上げてみる。それは都築響一の『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(アスペクト)で、『〈郊外〉の誕生と死』を上梓した同年の一九九七年に刊行されていたけれども、その特異なテーマもあって、言及することができなかったから…
所持するアルスの写真書に関して、前回加藤直三郎の『中級写真術』だけで終わってしまったので、今回は「写真大講座」を取り上げたい。しかもたまたま入手している四冊のうちの第一巻は「写真総論」、第十二巻は「芸術写真論」といった内容である。前者には…
アルスの多彩な出版物の中にあって、ひときわ特徴的なのは写真に関する本が集中して出されていることだろう。しかもそれらはいずれもロングセラーとなり、版を重ねたようで、私の手元にも八冊ほどあるのだが、これらは意図的に集めたものではなく、均一台で…
『〈郊外〉の誕生と死』において、日本の郊外の歴史を表象する写真集として、小林のりおの『ランドスケープ』(アーク・ワン、一九八六年)に言及している。この写真集は八〇年代半ばの東京や横浜の郊外の風景が、団地や分譲住宅地の開発によって変容してい…
これも以前に何度も書いているのだが、社史と出版物総目録がいずれも出されていない出版社も数多くあって、それはアルスも例外ではない。しかもアルスの場合は円本時代において、『日本児童文庫』を出版し、菊池寛と興文社の『小学生全集』と激しい広告販売…
出版状況クロニクル65(2013年9月1日〜9月30日)消費税増税が決定となった。それによって、14年4月8%、15年10月10%と続いていくことになるだろう。日書連などは出版物に対する軽減税率の適用を求めているが、新聞と同様に適用されるはずもない。その事情と理…