出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル113(2017年9月1日~9月30日)

17年8月の書籍雑誌の推定販売金額は976億円で、前年比6.3%減。
書籍は464億円で、同3.7%減、雑誌は511億円で、同8.6%減。
雑誌の内訳は月刊誌が419億円で、同6.9%減、週刊誌は92億円で、同15.7%減。
返品率は書籍が42.2%、雑誌は44.4%で、月刊誌は45.3%、週刊誌は39.8%。
最悪なのは週刊誌の落ちこみで、販売金額も2月と5月に続く3回目の100億円割れで、販売部数に至っては前年比18.3%減となっている。週刊誌の時代が終わろうとしているのかもしれない。
8月までの推定販売金額は、これも前年比6.1%減と、16年の倍の落ちこみを示している。
もはや何が起きてもおかしくない状況が招来されつつある。



1.日販の『書店経営指標2017年版』が出され、過去5年間の書店の損益計算書も含まれているので、その抽出表を示す。

■過去5年間の指標〈損益計算書〉(単位:%)
科目2012年2013年2014年2015年2016年
売上高100.00100.00100.00100.00100.00
売上原価72.3572.0271.1872.3972.52
売上総利益27.6527.9828.8227.6127.48
人件費12.3312.5413.2912.4012.03
販売費3.434.473.353.123.20
設備管理費9.238.218.728.528.15
その他管理費計2.422.243.253.423.99
販売費・一般管理費計27.4127.4628.6127.4627.37
営業利益0.240.520.210.150.11
営業外収入計1.051.011.320.951.12
営業外費用計1.071.030.780.670.80
経常利益0.220.500.750.430.43
当期純利益-0.19-0.080.370.31-0.76

17年度は全国69法人、521店の書店経営データを収集、分析したとされる。
その16年の損益計算書が示すところによれば、売上総利益、営業利益、当期損失はいずれもこの5年間で最低となり、14、15年はかろうじてプラスになっていた当期純利益も0.76%のマイナスに至っている。
調査店分類内訳は出版物売上構成比「80%以上」が36.5%、「50%以上80%未満」が21.2%、「50%未満」が42.3%であり、大半が複合店とわかる。しかもその半分近くが、出版物シェアが50%を割っていて、それによって売上原価72%台は保たれていることになる。
しかしそれであっても経常利益率は「0%以上1%未満」が34.0%、「0%未満」が36.0%で、双方を合わせれば、70%近くが赤字の状態ではないかと推測される。

これを雑誌と書籍を専業とする書店に当てはめてみれば、専業店としての書店は、利益を生み出す業態ではなくなってしまったことを残酷なまでに告げている。そしてまたそれが多くの中小書店を閉店に追いやったことも。
それゆえに現在最も苦しいのは、書店経営とその資金繰りであり、双方の困難さをもあからさまに告げていることにもなろう。もちろん資金繰りの苦労は出版社も取次も同様だが、書店は日銭商売であり、複合化しているとはいえ、ここまで雑誌が凋落していくと、そのダメージは出版社や取次が想像する以上に大きいだろう。

その雑誌がさらに落ちこんでいっている17年はどうなっているのか、これもまた想像するに恐ろしいというしかない。
なお「損益計算書」は『新文化』(9/7)にも掲載されている。



2.くまざわ書店が千葉駅ビルにペリエ千葉本店を322坪で開店。隣接のタリーズコーヒーとコラボするブックカフェスタイル店。
 紀伊國屋書店は10月にイトーヨーカドー川崎店を278坪、11月に名古屋の専門商業施設にプライムツリー赤池店を244坪で出店。
 前者は各種イベントに、体験イベントとしてのワークショップも開催し、後者は海外輸入雑貨販売や大学出張講座、サイエンスカフェなどのイベントも予定。

3.大垣書店は今期決算見通しを発表。
 売上高は108億9600万円で、前年比5.0%増。
 9月にJR神戸駅改札前に36店目のプリコ神戸店70坪を出店。

4.TSUTAYA桜新町店が2FのCD、DVDレンタル売場を改修し、心と体を整えるヨガなどの新サービス「ツタヤコンディション」を導入。

前回も丸善ジュンク堂、三洋堂、トップカルチャーの従来と異なるパラダイムチェンジにふれたが、2の200から300坪、3の70坪といった出店は、16年までの500坪以上大型店出店が不可能となり、中型、小型化していることを象徴しているし、今後の出店もそのようにシフトして行くと思われる。

その背景には1で示した書店状況に求められることはいうまでもないけれど、取次自体が大型店出店を支える体力がなくなりつつあることを示している。
そのような中にあって、3の大垣書店の既存店売上1.1%増、前年を上回る売上高は讃えるべきかもしれないが、これはフランチャイズや今期業務提携した兵庫の三和書房、札幌のなにわ書房、新たな2店の出店を含むものであることも、付記すべきだろう。それに利益に関しては発表されていない。

書籍の売れ行きのほうだが、新書分野の第1位は『応仁の乱』の3748冊で、大垣書店から全国に火が点いたとされている。
応仁の乱
4のTSUTAYA桜新町店の「ツタヤコンディション」導入は、同じく三洋堂のスポーツクラブ、トップカルチャーの化粧品やキッチン用品などの物販売場への転換と同様で、TSUTAYAにも広範に起きてくることを予測させる。それらは雑誌や書籍の専門店からレンタルとの複合店、カフェとのコラボなどを経て、模索し、漂流する現在の書店像を浮かび上がらせている。どのようなところに着地するのか、それは予断を許さない時期に入っているとしかいいようがない。



5.『日経MJ』(9/4)が「街の本屋さん『コンビニになる』」という見出しで、「出版不況、日販、ファミマ提携」を一面特集している。

 そのケーススタディは兵庫県加西市の50年の歴史を持つ書店で、業務転換し、ファミマに加盟し、コンビニと書店が融合し、「ファミリーマート+西村書店加西店」となった。
 「店内に入るとコンビニの5倍近い約700平方メートルの空間が広がり、児童書、新刊本、雑誌などが並ぶ。レジカウンターが店のど真ん中にあり、「ファミチキ」を販売。その奥がコンビニでチルド惣菜や菓子、冷凍食品など3000品目が並ぶ」。
 滑り出しは順調で、客数は伸び、売上高は8割増、出版物売上も1坪当たり2.5倍になり、来客の4割が本とコンビニ商品の両方を購入する。しかし悩ましいのは24時間営業で、書店のほぼ倍となったことである。

この背景には日販がファミマにコンビニ書店展開を持ちかけたことで、日販にとってもは書店を存続させる最終手段、ファミマにとってはFCオーナーの確保と新規出店である。ファミマは書店の1200店舗がコンビニ書店転換の可能性があるとしている。
しかしこれまでの書店とコンビニの関係、高いロイヤリティと24時間営業を考えれば、現在の中小書店が1200店もコンビニ書店に業態転換することはありえないだろう。

日販にしてもファミマにしても、中小書店の危機を救うというよりも、トーハンやセブンイレブンへの対抗と、自らの一方的な都合と思いこみで、コンビニ書店を立ち上げようとしているにすぎない。
その一方で、セブンイレブンは雑誌の定期講読取り置き、ローソンは書棚の設置拡大を試みている。だがそれらも功を奏しないとすれば、コンビニにおける出版物外しも生じてくるかもしれない。



6.紀伊國屋書店は文藝春秋の『蘇える鬼平犯科帳』1万部をすべて買切、国内70店舗とウェブストアで販売。
 また書店団体悠々会にも卸し、重版分も買切とすることで、文藝春秋と同意。
 同書は逢坂剛など7人の作家が「鬼平」を描いた短編と池波正太郎の『鬼平犯科帳』からの一編を選んだもので、四六判上製、384ページ、1750円。

f:id:OdaMitsuo:20170926113030p:plain:h110 職業としての小説家

紀伊國屋としては15年の村上春樹『職業としての小説家』を始めとして、出版社28社から166点の書店直接取引による買切販売を行なっている。
池波の読者は村上よりも裾野が広いので、非再販商品、割引販売対象となって売られていくのだろうが、この内容と定価設定でも1万部売ることは難しいのではないだろうか。
村上の『職業としての小説家』も八木書店ルートで、在庫残部と思われるものがかなり流れていたからだ。



7.ポット出版は新レーベルのポット出版プラスから中村うさぎ編集『エッチなお仕事なぜいけないの?』を刊行する。ポット出版プラスは、トランスビュー扱いで書店と直接取引するために設立されたもので、9月7日までの事前注文は特別正味55%で発送し、返品は68%~70%の通常正味で歩高入帳となる。
 同書は編者の中村がクラウド・ファンディングで資金調達し、製作した。
 A5判並製、340ページ、2500円。

エッチなお仕事なぜいけないの?

7日までの事前注文は700部だったとされているが、中村の知名度と粗利45%であっても、そのぐらいの予約しか上がらないのか。もしくは小出版社とテーマを考えれば、よく集まったというべきなのか、判断を下せないのだが、その後の売れ行きも注視することにしよう。



8.集英社の決算が出された。売上高は1175億円で、前年比4.4%減。当期純利益は53億円、同8.2%減。営業・経常利益は非公表。
 売上高内訳は雑誌576億円、同15.6%減、書籍124億円、同3.8%減、広告93億円、同5.4%減、その他381億円、同19.5%増。
 その雑誌内訳は一般雑誌が280億円、同11.1%減、コミックス295億円、同19.4%減。
 その他は電子書籍、雑誌、コミックスなどのwebが145億円、同19.7%増、版権が159億円、同31.4%増。

9.光文社の決算も出された。売上高221億円で、前年比6.8%減。経常損失1億8200万円、当期純損失2億9300万円となり、7年ぶりの赤字決算。
 販売部門内訳は雑誌が76億円、同13.2%減、書籍が34億円、同6.3%減。

8の集英社と9の光文社に共通しているのは、コミックスも含めた雑誌の凋落で、それが両社の決算にも色濃く反映されている。集英社の雑誌とコミックス、光文社の雑誌の二ケタ減は、それをダイレクトに物語っている。
その一方で、電子雑誌やコミックスは伸びているものの、前年ほどではなく、電子除籍の伸長率は鈍化している。
それに何よりも顕著なのは、雑誌に下げ止まりが見られないどころか、明らかに加速していることが近年の決算ごとに露わになってきている。

集英社は一ツ橋グループ、光文社は音羽グループの中枢として、戦後の講談社や小学館を支えるのみならず、取次のトーハンや日販の成長に不可欠な雑誌出版社であった。そのアイテムが講談社や小学館と同様に、集英社や光文社においても崩壊しようとしている。



10.『出版月報』(8月号)が特殊「デジタルにシフトする雑誌」を組み、近年デジタルメディアに移行した6誌をレポートしている。それらの誌名と出版社名を挙げておく。

*『週刊アスキー』 KADOKAWA
*『クーリエ・ジャポン』 講談社
*『FYTTE web』 学研プラス
*『日刊Ranzuki』 ぶんか社
*『WebマガジンCobalt』 集英社
*『別冊文藝春秋』 文藝春秋


これらは2015年と16年にデジタルメディアに移行した27誌のセレクションで、編集長へのインタビューを試みている。電子化による印刷流通経費の減少、配本、刷り部数、返品率問題の解消はなされたが、有料会員とweb広告だけでは大半が黒字となっていないようだ。

特集がいうごとく、確かに「デジタルメディアに移行しても簡単に収益を上げられるわけではない。読者の認知を広げ、講読習慣を定着させなければならない」との状況の只中に、デジタルメディアも置かれている。
ただそのような状況下であっても、大手出版社の雑誌を始めとして、多くの雑誌が休刊し、16年には雑誌銘柄が10年連続マイナスで、ついに2977点と、3000点を割ってしまった。

それゆえに、デジタル雑誌の移行はまだ増えていくだろうし、『新潮』とヤフーの提携による小説の同時配信、講談社と楽天のスマホ向けファッション雑誌『BE ViVi』の創刊、光文社の女性誌『VERY』の携帯電話事業者などとのコラボも発表されている。しかしそれらが「読者の認知を広げ、講読習慣を定着させ」ることができるかは、まったく未知数だといっていい。



11.岩波書店が佐藤正午『月の満ち欠け』で初の直木賞を受賞。新聞広告によれば、12万部を突破したという。

月の満ち欠け

『選択』(9月号)の「社会文化情報カプセル」で、「苦境の岩波書店に『干天の慈雨』/直木賞受賞作のヒットで一息つく」という記事が掲載されている。
岩波書店が同書に関して、買切ではなく委託としたことで、「注文が殺到」し、「カネを刷っている状態」、つまり「干天の慈雨」とされている。
だが出版社の立場から見れば、恐ろしいのは返品で、岩波書店はそれを経験することなく、12万部を配本してしまったことにある。確認するためにいくつかの書店状況を見てみたが、明らかに完売は難しい量の平積みが見られた。10月から返品を受けつけると伝えられているが、その返品金額の穴埋めに苦労することは目に見えている。
そのかたわらで、岩波書店に関する情報が流れているが、複数の確認がとれていないので、今回は言及を見合わせることにしよう。



12.法政大学出版局より、図書目録と同時に次のような案内が届いた。
 
「2017年謝恩割引のご案内
 平素よりご愛顧いただいております読者のみな様への感謝の意味を込め、同封の注文ハガキにて2017年11月末日までにお申込いただいたばあい、全点2割引価格にて販売させていただきます!」


シベリアと流刑制度 河原巻物 つぶて 蓮

せっかくの案内なので、かねてから読まなければならないと思っていたジョージ・ケナン『シベリアと流刑制度』Ⅰ,Ⅱを注文した。同書も含む「叢書・ウニベルシタス」がなければ、読まずに終わった本も少なくないだろう。
この「叢書」だけでなく、もうひとつのシリーズ「ものと人間の文化史」も、盛田嘉徳『河原巻物』、中沢厚『つぶて』、阪本祐二『蓮』などは好著として忘れ難い。

それからこのような読者向け割引販売だが、再販制ではなかった戦前においてはよく試みられたもので、本ブログの古本夜話364「アルスのバーゲンと東京出版協会の図書祭記念『特売図書目録』」を参照されたい。

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13.創拓社出版と関係会社の創拓社が破産。
 同社は1983年設立で、書籍出版、塾運営、家庭教師派遣などを手がけ、2016年には売上高22億円を計上していたが、人件費や諸経費が重荷となり、今回の措置になったとされる。負債額は20億円。

香具師口上集

創拓社といえば、1980年代に『香具師口上集』という一冊が話題になったことを記憶しているが、その後の刊行物に関してはほとんど目にしていないと思う。
それを考えると、今世紀に入ってから一般書は出していなかったのではないだろうか。

それからこれは出版社ではないけれど、かつて文京区で辞書や辞典の製本業を営んでいた福島製本印刷が自己破産申請、負債額5億円。



14.『新文化』(8/31)の「この人この仕事」欄に、河出興産の荻生明雄社長が登場し、現在の出版倉庫状況について語っている。
 それによれば、一時は100社まで取引先は増えたが、毎年のように出版社の倒産、民事再生、資本の移動による解約などがあり、現在は80社ほどとなる。しかし先期はCCCグループ出版社の倉庫業務の集約によって、増収増益の決算となった。
 ただアマゾンの日販バックオーダー発注終了から完全に潮目が変わり、出版物流の変革の時期に入っている。実際に倉庫会社は新たなシステム、設備などを求められる一方で、激しい原価競争と流通量の減少、出版社の破産によって危機に追いやられ、同業者の破産や廃業も増え、減少しているという。

本クロニクル111で、「出版倉庫業者の現状」を紹介しておいたが、今回はその個別編とでもいえる。
13の製本印刷会社ではないけれど、出版倉庫業も出版業界と運命共同体にあり、やはり同様に危機の中に置かれている。
そしてまたここでもCCCが顔を見せ、大きな役割を果たしているとわかる。同じ『新文化』(9/21)に、大阪屋栗田の服部達也副社長のインタビューも掲載され、彼がCCC、丸善CHIグループ、楽天を経て、現在へと至っていることが明らかにされている。倉庫業界のみならず、取次の日販とMPD以外にも、CCCの人脈が流れこんでいることになる。しかしそれが織りなす出版水脈の行方はどうなっていくのだろうか。

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15.『週刊Newsweek』(9/15)が特集「王者アマゾン 次の一手」を組み、次の6本の記事を収録している。

Newsweek

*Amazonの帝王 ジェフ・ベゾスの野心
*謎に満ちたベゾスの半生
*「世界一」富豪に迫る法の壁
*複雑で周到過ぎる節税対策
*トランプvsベゾス、口論の軍配は?
*低迷スーパーを買ったアマゾンの皮算用

 最初の記事のイントロのところに、アマゾンの従業員の待遇、税金逃れ、独占思考は嫌いだが、「それでも決して逃れられないほど、アマゾンは私たちの文化の中に深く入り込み、愛憎半ばする存在となっている」とある。
 そしてアマゾンが『ワシントンポスト』も買収し、ベゾスは資産総額800億ドルの大富豪として脚光を浴びているとし、次のように書いている。

その脚光が照らし出すものは何なのだろう。書籍でも食品でも何でも売るというアマゾンの業態は既に完成した。今ではCIAにクラウド・コンピューティングのサービスを提供し、NASAとはロケット会社ブルー・オリジンを通じて協力関係にある。一方で映画・テレビの世界でも存在感を強めている。いずれ映画大手のユニバーサルも破綻した書店チェーン大手のボーダーズと同じ目にあわされるかもしれない。

 それに続いて、アマゾンの時価総額は全米4位の4780億ドルであること、プライム会員が8500万人に達したこと、最も秘密主義のテクノロジー企業の側面、次々に新事業を打ち出し、教育産業としてのアマゾン・インスパイアのスタート、児童向け番組ネット配信なども言及されていく。
 そのコアにあるアマゾンの野心的エネルギーの根幹には、ベゾス個人の問題である「彼が非常に複雑だということ」の指摘もなされている。


後の5本も読んでもらうしかないのだが、アマゾンの発展を彼の性格と直接結びつける分析は、アメリカからの発信ゆえであるからだろう。

しかし気になるのは「今やアマゾンは、私たちの生活に欠かせない存在だ。アマゾンなしで生きていけるだろうかと思ってしまう」という告白であり、アメリカではアマゾンが「生活の必要性では、国の行政機関を上回る」存在になってしまっていることだろう。さすがに日本ではそこまでいっていないと思われるが、日本が絶えずアメリカを範としてきたことを考えれば、いずれはそのようになってしまう可能性も否定できない。

それにこのようなアマゾンに関する記事も、CCCメディアが発行する週刊誌だから掲載できたのではないかとの思いに駆られてしまうのである。



16.『週刊東洋経済』(9/23)が「流通新大陸の覇者メルカリ&ZOZOTOWN」特集号を組んでいる。ただここではメルカリだけを取り上げるし、旧大陸とは百貨店とショッピングセンターをさしている。
 個人間通販アプリ「メルカリ」はサービス開始4年で、月間流通総額100億円を超えた。そのダウンロードは国内5000万、米2500万で、4年間で7500万に及び、C to C の新市場となっている。

 その出品手続きは簡単で、スマホで写真撮影し、送るだけで成立するため、毎日100万以上の出品がある。買い取り業者は安すぎるが、メルカリは自分で売り値を決められ、納得感があり、出品者の手数料は10%ですむ。
 それもあって、16年決算では売上高122億円で、前期比3倍、営業利益32億円、こちらの前期は11億円の赤字から急成長している。

 この背景にあるのはリユース市場の成長で、16年には1.9兆円とされ、その中でもフリマアプリは16%を占め、4年間で3000億円市場となり、これからの成長も確実で、メルカリも上場間近とされる。

 創業者で30代の山田進太郎会長の言である。

 世界的なマーケットプレイスを仕掛けるテクノロジーの会社だ。モノとおカネ、モノとモノ、サービスとサービスなどもっと自由にやり取りできれば、無駄になっている資源を有効活用でき、世界が本当に豊かになる。青臭い話ではあるけれど、本気で信じている。

 特集もまたヨイショ気味の「期待」をこめ、次のように書いている。

 日本の小売業界に旋風を起こした流通革命児はこの先どこまで突き進むのか。(中略)日本発のネットサービスが世界で成功した事例はまだほとんどない。メルカリは小売りにとどまらないベンチャー代表としての期待も背負っている。

週刊東洋経済

ここでメルカリのほうだけに言及したのは、最近になって、書籍、CD、DVD分野の商品に特化した「メルカリカウル」を投入したからである。これは前回もふれているし、新しいマーケットプレイスの誕生も確実なように思われる。
特集には4ページにわたって、「メルカリ徹底活用例」が掲載され、売り方の基礎から応用までがマニュアル化されている。「メルカリカウル」だけでなく、このようなフリマアプリが広範に普及すれば、多くの個人が消費者と販売者の双方の存在を兼ねることになり、かつてと異なる消費社会の新しい在り方を提出することになるかもしれない。
このような関係にある詩を連想したが、それはここでは示さない。



17.フリースタイルによって、宮谷一彦の『ライク ア ローリング ストーン』が単行本化された。

Newsweek 劇画狂時代

解説者の中条省平はこの刊行によって、「ようやく日本マンガ史に開いた大きな空白がほぼ半世紀ぶりに埋められることになります]と書いているが、私も同感である。この際だからフリースタイルには、やはり未刊の『太陽への狙撃』の単行本化も望みたい。

1960年代後半において、宮谷はつげ義春と並んで、その特異な劇画の愛読者はかなりいたと思われるが、出版社に恵まれなかったゆえに、その全集も刊行されていない。宮谷もつげも青林堂から単行本を出し、その後つげは北冬書房や筑摩書房からの選集や全集を見たが、宮谷は編集者や読者がいたにもかかわらず、今世紀に入ってからは忘れ去られていたかのようだった。

宮谷とその時代に関しては、これ以上私が贅言をはさむより、岡崎英生の『劇画狂時代』(飛鳥新社、2002年)を参照されたい。



18.「出版人に聞く」シリーズ番外編としての鈴木宏『風から水へ』『週刊文春』(9/21)の鹿島茂の「私の読書日記」において、好書評を得た。
 また産経新聞(10/1)の読書欄には著者インタビューも掲載予定。
風から水へ 週刊文春

 私も論創社のHP「本を読む」20で、「『風から水へ』と同人誌『はやにえ』」を書いているので、読んで頂ければ幸いである。

ronso.co.jp

以下次号に続く